上 下
15 / 30
社会人時代

①兄と友人と(3)

しおりを挟む
 そして、入社3年目で兄が秘書課へ配属された。兄も私も驚いていたけれど、『秘書検定受けててよかった』と言っていた。秘書の仕事をしていく中でその知識は役立っているらしい。『舞さんのおかげだわ』と嬉しそうに言っていた。そして半年後には専務秘書になっていた。専務はなんと、あの美人な舞さん。この春に専務になったのだと言う。ずっと同じ会社にいたのに、大きな会社すぎて一度もすれ違わなかったのだという。そんなことあるんだ、と兄と2人で驚いた。

 舞さんが専務になって、彼女が社長の長女ということを知った。だから兄の告白を1度断ったのだという。交際すると、兄がもしこの会社に就職したら、『社長令嬢の彼氏だから入社できたのでは』とか言われるかもしれないし、実力を認められて秘書になっても『彼氏だから専務秘書になったのでは』とかいう噂がでるかもしれない、と思ったのだという。そして専務と専務秘書となり数ヶ月経った日、無事彼女から告白を受け交際することになったという。兄は仕事もできるし気配りもできるから2人の交際はみんなに祝われていた。兄は嬉しそうに『付き合うことになった!』と報告してくれた。そして、数週間後の舞さんの『妹さんに会いたい』という一言で3人でご飯を食べに行くことになった。

 仕事終わりに指定されたお店に行った。少し仕事が長引いてしまったので先に入っていてもらった。

「お待たせしてしまい申し訳ありません」
「いいって。仕事大丈夫か?」
「うん、もう大丈夫」
「気にしないで。仕事ではないから、硬くならないで」
「ありがとうございます」

 そう挨拶して私は席についた。

「こちら、恋人の白川舞さん」
「白川舞です」
「妹の橋水美紗です」
「橋水美紗です」

 兄が紹介してくれてお互いに頭を下げた。そして元の位置に戻したら。

「か、かわいい」

 彼女がそう言ってくれた。嬉しくてはずかしくて「あ、ありがとうございます」と照れながら言ったら、「頭撫でていい?」と尋ねてきて優しく撫でてくれた。

「たまに行くカフェでバイトしてたわよね?」
「はい!」

 彼女が私を認識していてくれた。嬉しくて、それをきっかけとして私たちは打ち解けた。そしてバイト時代に『すごく美人さんがいる』と思っていたということを伝えたら

「嬉しい!」

 と言って今度は抱きしめてくれた。誰かに抱きしめられてドキドキしたのはこれが初めてだ。嬉しくて、私も抱きしめ返してしまった。

 その後は主に兄の話で盛り上がった。小さい頃どんな子だったのか、や、兄が舞さんのことをどんな風に話していたのかなどたくさん話した。たまに兄が恥ずかしがっていたけれど、最終的には『2人が仲良くなって嬉しい』と言っていた。

 そして4年目。私は秘書課へ配属された。秘書課の先輩たちに色々と教えてもらいながら仕事を覚えていった。そしてそれから1年後。常務秘書になった。そして今日。春から常務となった人と初めての顔合わせだ。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

百々五十六の小問集合

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:200pt お気に入り:2

若妻の穴を堪能する夫の話

現代文学 / 完結 24h.ポイント:149pt お気に入り:17

先生、あなたは前世で恋人だった

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:0

管をつなぐ

SF / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:0

彼女は処女じゃなかった

現代文学 / 完結 24h.ポイント:99pt お気に入り:20

処理中です...