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第三章 ダンジョンメーカーのお仕事
038-4
「ちゃんと、眠れてますか?」
そう尋ねると、殿下は苦笑いを浮かべて頷いた。
「大丈夫、睡眠は取っている。
あれだけベッドに横になっていたのが嘘のようだ。嫌いだったベッドに、早く横になりたいと思う程なんだから」
「良い傾向じゃないですか」
ラズロさんの言葉に僕も頷く。
「不思議なものだ。
僕はあのまま死ぬのだと思っていた。諦めてもいた。
けれど、心の奥底ではそうではなかったのだろうと思う。
生きていて良かったとは思う」
ふぅ、と大きく殿下は息を吐く。
「ただ、目の前は問題ばかりで、時折全てが嫌になる事もある」
少し悲しそうな、困ったような笑みを浮かべて殿下はミルクを飲む。
問題を起こした人たちはもういない。
今は残された人たちで後始末をしている。
いくらたくさんの人たちが助けてくれていると言っても、それが本当に正しいのかも分からないし、色んなことを決めるのは結局殿下で。
王様も殿下の話を聞いてくれてはいるみたいだけど、殿下しかいないから、次の王様として厳しくされているって聞いた。
責任が重すぎて、嫌になってしまうのは当然な気がする。
「ただ、ひとつ事を成し終えた時の達成感は、それまでの苦労を洗い流す程のものがあるな。
書物からは得られないものだと知った」
達成感は大事だよね。
大きさは違うけど、やり終えた時の清々しい気持ちは僕も経験があるから分かる。
…………でも。
「……天気は、王様でも変えられないですよね?」
当然だ、と殿下は答える。
「どんなに準備してても、大雪とか台風とか、対応出来ないこともありますよね?」
「無論だ」
僕が何を言おうとしているのか分からない殿下は、きょとんとした顔で答える。
「頑張ることと、無理をすることは、一緒じゃないです、殿下」
殿下の顔が無表情になる。
「頑張るってことがそもそも、普通よりも努力してるってことで、無理はその上だと僕はパフィに教わりました」
僕なんかが言うのは、本当ならおかしいんだけど。
みんなも言ってるだろうけど、殿下が耳を貸さないかも知れない。
食堂で働いてる僕にまで言われれば、少しは届くかも知れないって思って。
「僕が言いたいのは、上手くいかなくても、殿下が頑張ったことはなくならないってことなんです」
うんうん、とラズロさんが頷く。
「もし悪く言う人がいたら、僕、仕返ししてきます」
殿下が笑う。
「古の魔女の庇護を受けるアシュリーからの仕返しか、恐ろしくてみんな言えないな」
「言っても良いですけど、じゃあ、あなたならどうしますか? って聞いてきます」
くっくっ、とラズロさんも笑う。
「何もせず批判だけなら、子供だって言えるもんなぁ」
本当にそう。
ただ、見えないのだから、そう言った気持ちになることも不思議じゃない。
どっちも悪くないことで誤解されたり、嫌われたりっていうのは嫌だなって思う。
みんな、立場が違うのは普通で。
分からないことがあるのも普通。
少しずつ分かり合えて、この国がまた、元気になると良いなって思う。
そう尋ねると、殿下は苦笑いを浮かべて頷いた。
「大丈夫、睡眠は取っている。
あれだけベッドに横になっていたのが嘘のようだ。嫌いだったベッドに、早く横になりたいと思う程なんだから」
「良い傾向じゃないですか」
ラズロさんの言葉に僕も頷く。
「不思議なものだ。
僕はあのまま死ぬのだと思っていた。諦めてもいた。
けれど、心の奥底ではそうではなかったのだろうと思う。
生きていて良かったとは思う」
ふぅ、と大きく殿下は息を吐く。
「ただ、目の前は問題ばかりで、時折全てが嫌になる事もある」
少し悲しそうな、困ったような笑みを浮かべて殿下はミルクを飲む。
問題を起こした人たちはもういない。
今は残された人たちで後始末をしている。
いくらたくさんの人たちが助けてくれていると言っても、それが本当に正しいのかも分からないし、色んなことを決めるのは結局殿下で。
王様も殿下の話を聞いてくれてはいるみたいだけど、殿下しかいないから、次の王様として厳しくされているって聞いた。
責任が重すぎて、嫌になってしまうのは当然な気がする。
「ただ、ひとつ事を成し終えた時の達成感は、それまでの苦労を洗い流す程のものがあるな。
書物からは得られないものだと知った」
達成感は大事だよね。
大きさは違うけど、やり終えた時の清々しい気持ちは僕も経験があるから分かる。
…………でも。
「……天気は、王様でも変えられないですよね?」
当然だ、と殿下は答える。
「どんなに準備してても、大雪とか台風とか、対応出来ないこともありますよね?」
「無論だ」
僕が何を言おうとしているのか分からない殿下は、きょとんとした顔で答える。
「頑張ることと、無理をすることは、一緒じゃないです、殿下」
殿下の顔が無表情になる。
「頑張るってことがそもそも、普通よりも努力してるってことで、無理はその上だと僕はパフィに教わりました」
僕なんかが言うのは、本当ならおかしいんだけど。
みんなも言ってるだろうけど、殿下が耳を貸さないかも知れない。
食堂で働いてる僕にまで言われれば、少しは届くかも知れないって思って。
「僕が言いたいのは、上手くいかなくても、殿下が頑張ったことはなくならないってことなんです」
うんうん、とラズロさんが頷く。
「もし悪く言う人がいたら、僕、仕返ししてきます」
殿下が笑う。
「古の魔女の庇護を受けるアシュリーからの仕返しか、恐ろしくてみんな言えないな」
「言っても良いですけど、じゃあ、あなたならどうしますか? って聞いてきます」
くっくっ、とラズロさんも笑う。
「何もせず批判だけなら、子供だって言えるもんなぁ」
本当にそう。
ただ、見えないのだから、そう言った気持ちになることも不思議じゃない。
どっちも悪くないことで誤解されたり、嫌われたりっていうのは嫌だなって思う。
みんな、立場が違うのは普通で。
分からないことがあるのも普通。
少しずつ分かり合えて、この国がまた、元気になると良いなって思う。
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