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第弐帖・デッサン
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木枯らしが彼女の髪を乱し、その冷たさに思わずマフラーを巻き直す。
(お祓いをしてもらった方がいいのかな。でも、どこでやってくれるか判らないし、料金だって)
まだ高校生の自分に、大金は払えない。家族に話せば、何故そんな怪しい噂を検証しようとしたのだと叱責されるのは、目に見えている。
(でも、こんなスマホを持っているのも嫌だし。あぁもう!)
足取りも重く、佳奈は自宅に帰り着く。
佳奈の祖父と父は宮大工で、その腕を買われて全国の神社仏閣から修繕する際にはお呼びがかかるほどだ。故に厳格で、佳奈が面白半分に奇妙なことに首を突っ込んだことが判れば、こっぴどく叱られることが容易に想像できた。
(だからといって、黙っているわけにもいかないよね)
このスマホは、誕生日のプレゼントとして先月に贈られたものだ。今まで使っていた機種が経年劣化で、通話が聞こえにくくなったり各種アプリが起動しなかったりといった中、ようやく買って貰えたのだ。ひと月も経たないのにまた換えたいなどと言ったら、理由を述べるまで追求は続くことが目に見えていた。
「ただいま」
母が玄関まで出迎えてくれ、遅かったわねと投げかけてくる。後ろめたいことがあると、人間は挙動不審になる。明らかに無理した笑みを貼り付け、佳奈は逃げるように自室へと駆けていった。中学2年生の弟も部活から帰ってきたらしく、玄関はまだ騒々しい。円城寺家は三世帯同居で、必ず夕食を家族全員で摂る。祖父母も食卓に着き、合掌してすぐに祖父が鋭い眼光を孫娘に投げかけた。
「佳奈、学校で何かあったのか?」
口調は穏やかだが、目は一切笑っていない。箸へと伸ばした手が止まり、佳奈は金縛りにかかったかのように動けない。
「おじいちゃん、何でそんな事を聞くの?」
気付けば祖母も、両親までもがじっと佳奈を見つめていた。ただ弟だけは我関せずとばかりに、箸を進めている。同時に8つの眼に射竦められ、指一本動かすことが出来ない。いつもそうだ。家族の前では、隠し事などできない。自分が隠すのが下手なのか、神聖な場所で働く祖父と父には何かが視えるのか。判らないが、素直に言わないとこの状況は変わらない。
「母さん、おかわり」
場の空気を見事に読まない弟の康平だったが、今は女性陣が誰も動かないと判ると、しぶしぶ自分で山盛りのご飯を盛りつけた。
「あの……実は」
康平のお陰で一瞬だけ緩んだ空気だが、問い詰めるような視線の厳しさは変わらない。観念した佳奈は、全てを洗いざらい白状した。怒られると身構えていたが、一向に叱責が飛んでこないので、徐々に全身の力を抜いて家族の顔を見渡した。
「その携帯を見せてごらん」
携帯じゃなくてスマホだよと祖父に内心でツッコミを入れつつも、素直に差し出す。一瞥した祖父は、隣に座る息子に渡した。
「これは……父さん、久遠家に連絡した方が良さそうですね」
「うむ。わしもそう思う。これは久遠さんのお力を借りねば」
父と祖父の発した久遠家という単語に、佳奈の身体がびくんと跳ねた。
(お祓いをしてもらった方がいいのかな。でも、どこでやってくれるか判らないし、料金だって)
まだ高校生の自分に、大金は払えない。家族に話せば、何故そんな怪しい噂を検証しようとしたのだと叱責されるのは、目に見えている。
(でも、こんなスマホを持っているのも嫌だし。あぁもう!)
足取りも重く、佳奈は自宅に帰り着く。
佳奈の祖父と父は宮大工で、その腕を買われて全国の神社仏閣から修繕する際にはお呼びがかかるほどだ。故に厳格で、佳奈が面白半分に奇妙なことに首を突っ込んだことが判れば、こっぴどく叱られることが容易に想像できた。
(だからといって、黙っているわけにもいかないよね)
このスマホは、誕生日のプレゼントとして先月に贈られたものだ。今まで使っていた機種が経年劣化で、通話が聞こえにくくなったり各種アプリが起動しなかったりといった中、ようやく買って貰えたのだ。ひと月も経たないのにまた換えたいなどと言ったら、理由を述べるまで追求は続くことが目に見えていた。
「ただいま」
母が玄関まで出迎えてくれ、遅かったわねと投げかけてくる。後ろめたいことがあると、人間は挙動不審になる。明らかに無理した笑みを貼り付け、佳奈は逃げるように自室へと駆けていった。中学2年生の弟も部活から帰ってきたらしく、玄関はまだ騒々しい。円城寺家は三世帯同居で、必ず夕食を家族全員で摂る。祖父母も食卓に着き、合掌してすぐに祖父が鋭い眼光を孫娘に投げかけた。
「佳奈、学校で何かあったのか?」
口調は穏やかだが、目は一切笑っていない。箸へと伸ばした手が止まり、佳奈は金縛りにかかったかのように動けない。
「おじいちゃん、何でそんな事を聞くの?」
気付けば祖母も、両親までもがじっと佳奈を見つめていた。ただ弟だけは我関せずとばかりに、箸を進めている。同時に8つの眼に射竦められ、指一本動かすことが出来ない。いつもそうだ。家族の前では、隠し事などできない。自分が隠すのが下手なのか、神聖な場所で働く祖父と父には何かが視えるのか。判らないが、素直に言わないとこの状況は変わらない。
「母さん、おかわり」
場の空気を見事に読まない弟の康平だったが、今は女性陣が誰も動かないと判ると、しぶしぶ自分で山盛りのご飯を盛りつけた。
「あの……実は」
康平のお陰で一瞬だけ緩んだ空気だが、問い詰めるような視線の厳しさは変わらない。観念した佳奈は、全てを洗いざらい白状した。怒られると身構えていたが、一向に叱責が飛んでこないので、徐々に全身の力を抜いて家族の顔を見渡した。
「その携帯を見せてごらん」
携帯じゃなくてスマホだよと祖父に内心でツッコミを入れつつも、素直に差し出す。一瞥した祖父は、隣に座る息子に渡した。
「これは……父さん、久遠家に連絡した方が良さそうですね」
「うむ。わしもそう思う。これは久遠さんのお力を借りねば」
父と祖父の発した久遠家という単語に、佳奈の身体がびくんと跳ねた。
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