夢見るオメガは番いたい

ミモザ

文字の大きさ
41 / 42
第一章

41 Ωはαと

「レジナルド様のことを完全に信頼できたわけではございませんが、日頃からオメガのために尽力されているナサニエル様のご家族ですから、今回はこちらが引きましょう。ですが、ユリウスの両親は私の幼なじみです。つまり私は、王都での彼の親のようなもの。もしまたユリウスが辛い思いをすることがあれば、黙ってはおりませんよ。ユリウス、困ったことがあったら、いつでも訪ねて来なさいね」

 バート商会副会頭のルイスにキツイお言葉をいただき、「ユリウスに二度と辛い思いはさせません」と頭を下げ、ふたりは侯爵家に戻った。そして、

「良かった、無事で。帰ってきてくれてありがとう。もお、本当に心配したんだよ? 相談してくれたっていいじゃないか、そんなに信用ならなかった? 私はユーリのこと、弟のように思っていて、幸せになってほしいって心から願っているのに……ああでも、とにかく今日はいいよ、休みなさい。私は明日、時間をもらうから」

 ナサニエルが涙をこぼしながらもそう言ってくれたので、ユリウスは早めの夕食をとり、入浴を済ませた。そしてその後部屋で休んでいると、

「レジナルドだ、ちょっといいか?」

 レジナルドが訪ねてきて、ユリウスは少し緊張しながら招き入れた。

「疲れているか?」
「大丈夫。お茶入れるよ。おれが作ったよく眠れる薬茶が」
「今はいい」
「わっ!」

 手を引かれて驚いていると、そのまま強く抱きしめられた。

「うぁっ、なにっ?」
「…………しばらく、一緒にいてもいいか?」
「一緒に……はっ!? えっ? なにっ? それってどういう……」
「言葉のままだ。一緒にいたい」
「あー……」

 大きく力強い体に抱きしめられているのだが、声の感じが、縋り付かれているような気がする。
 抱きしめられているせいであまり自由が利かない腕を動かし、レジナルドの背中を撫でる。

「いいよ。まあ、とにかく座って、わっ!」

 足が床から離れ、ユリウスは驚いて声を上げた。

「うわっ! ちょっとちょっと‼」

 この声を無視し、荷物を担ぐかのようにユリウスを肩に持ち上げスタスタと部屋を横断し、あっという間にベッドにたどり着くと、丁寧にベッドの上に下ろした。

「えっ? なにっ?」
「もし許してくれるのなら……抱きしめて、俺の腕の中にいるのを実感していたい」

 そう言った顔はいつもと違いどこか少し頼りなさげで、拒絶するのは可哀想だと感じられ、ユリウスはレジナルドに向けて「いいよ」と両手を広げた。

「おれも、レジナルド様とくっついていたいから」
「……ユリウス……」

 許可を得てベッドに上がったレジナルドは、ユリウスをギュッと抱きしめた。

「ああ……もう一度抱きしめることができて、本当に良かった……すまなかった、酷いことを言って傷付けて」
「許してあげるけど……もう、ああいうのやめてよ? おれはレジナルド様のこと、本当に好きだから」
「…………」
「んんっ? 疑ってる? 好きだよ! ホントだよ!」
「ああ、わかっている。だが……すまない、二度とああいうことはしないと約束したかったのに、改めてお前に言われたら、できるのか自信が……」
「?」
「俺はまた、他のアルファに嫉妬したり、自分に自信がもてなかったりで、ユリウスを傷つけてしまうかもしれない。自信がない……」
「ん~、じゃあいいよ。また嫉妬したり不安になったら、文句言ったり拗ねたりして」
「はっ?」

 抱きしめていた体を離し、まじまじと顔を見るレジナルドに、ユリウスはサッと口づけをした。

「そしたらその度に、おれがどんなにレジナルド様のことを好きか、教えてあげるから。あの時は好かれてるってわかんなかったから泣くことしかできなかったけど、これからは大丈夫。それにさ、完璧で正しいって思ってたレジナルド様も間違う事があるってわかったから、今後はおれ、素直に言うこときかないから。違うって思ったら遠慮なく反論するからね。だから、大丈夫だよ」
「ユリウス……ありがとう……」

 今度はレジナルドが、ユリウスに口づけをした。
 ユリウスとは違う、深い口づけを。

「んっ、ちょっ、んんっ」

 一向に離れない唇に戸惑い、止めるように言おうと開いた唇の隙間から舌が入り込み、驚いたユリウスは体を離そうとしたが、しっかりと背中と腰を抱かれているため離れられない。

(うわっ! どうしよう! うわわわわっ)

 逃げる舌を追われ、絡められ、どうしていいのかわからず焦る口の端から、唾液が零れてしまう。

「んんっ!」

 パンパンと肩を叩くと、ようやく唇が離れた。

「ハッ! ちょっ……」

 顔を覗き込まれ、恥ずかしくなり横を向いてしまったが、さらに覗き込まれて思わず両手で胸を押して距離をとった。

「嫌か?」
「いっ? 嫌じゃ、ないっ! でもっ! いきなりあんなキスされたらどうしていいかわかんないし恥ずかしいし緊張するし」
「はぁ……そうだったな、お前、覚えていないんだものな」
「はっ?」
「これくらいの口づけは、もうしてるんだがな」
「はあっ? うそっ!」
「嘘じゃない。……まあ、いい。それじゃあ俺は部屋に戻る」
「えっ?」

 ユリウスは、ベッドから降りようとするレジナルドの袖を慌てて掴んだ。

「ちょっと待ってよ! 一緒にいるって言ってなかった? 言ったよね?」
「あー……そのつもりだったが……それだけで済ませられそうにない。情けないが、自制できそうにないから」
「え、あ……」
「そういうことだ。じゃあまた明日」
「まままって! 待って待って!」

 慌てて掴んでいた袖を引き、ベッドへと引き戻す。

「い、いいじゃない! 一緒にいようよ!」

 その言葉に、レジナルドは「は―――っ」と大きく息を吐いた。

「俺の話を聞いていたのか?」
「き、聞いてたよ、ちゃんと! だから……そのぉ……ヒートじゃなくったって、別に、してもいいじゃない」
「……は?」

 グイッと上から顔を近づけて聞き返すレジナルドに、ユリウスは『ひゃーっ』と心の中で叫びながらも頑張って言った。

「ルイスさんが言ってた、ヒート以外もそういうことするって。だから別に、したい時はすればいいじゃん!」
「それはそうかもしれないが……お前はどうなんだ、無理しているんじゃないのか? 口づけだけであんな」
「それはっ! さっきも言ったけど嫌なんじゃなくて恥ずかしいだけっ!」
「それじゃあ、いいのか?」
「え?」
「ヒートに関係なく、俺は今すぐお前を抱きたい。ヒート時じゃないと番にはなれないが、それでも、抱いて、俺のものにしたい」

 レジナルドの真剣な表情に、ユリウスは真っ赤になり、そしてコクリとうなずいた。

「お、おれも、レジナルド様をおれのものしたい!」
「俺を、ユリウスのものに?」
「そう! あれっ?」

 驚いたようなレジナルドの表情に、ユリウスは少し考え、

「あ、もしかして、レジナルド様のものになりたいって言うべきだった?」

 そう尋ねたが、

「いや、そうじゃない。ただ、俺はとっくにお前のものだ、と思ってな」
「はっ? いやそんなこと言うなら、おれだってとっくにレジナルド様のものだよ。あーもー! はいっ!」

 そう言うとギュッと目を瞑り唇を突き出したユリウスに思わず笑いながら、レジナルドは口づけをした。




 
 第一章 完


 ※付きはあと一話あります
感想 0

あなたにおすすめの小説

記憶の代償

槇村焔
BL
「あんたの乱れた姿がみたい」 ーダウト。 彼はとても、俺に似ている。だから、真実の言葉なんて口にできない。 そうわかっていたのに、俺は彼に抱かれてしまった。 だから、記憶がなくなったのは、その代償かもしれない。 昔書いていた記憶の代償の完結・リメイクバージョンです。 いつか完結させねばと思い、今回執筆しました。 こちらの作品は2020年BLOVEコンテストに応募した作品です

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

君と秘密の部屋

325号室の住人
BL
☆全3話 完結致しました。 「いつから知っていたの?」 今、廊下の突き当りにある第3書庫準備室で僕を壁ドンしてる1歳年上の先輩は、乙女ゲームの攻略対象者の1人だ。 対して僕はただのモブ。 この世界があのゲームの舞台であると知ってしまった僕は、この第3書庫準備室の片隅でこっそりと2次創作のBLを書いていた。 それが、この目の前の人に、主人公のモデルが彼であるとバレてしまったのだ。 筆頭攻略対象者第2王子✕モブヲタ腐男子

【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜

キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。 モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。 このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。 「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」 恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。 甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。 全8話。

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!