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第一章
41 Ωはαと
「レジナルド様のことを完全に信頼できたわけではございませんが、日頃からオメガのために尽力されているナサニエル様のご家族ですから、今回はこちらが引きましょう。ですが、ユリウスの両親は私の幼なじみです。つまり私は、王都での彼の親のようなもの。もしまたユリウスが辛い思いをすることがあれば、黙ってはおりませんよ。ユリウス、困ったことがあったら、いつでも訪ねて来なさいね」
バート商会副会頭のルイスにキツイお言葉をいただき、「ユリウスに二度と辛い思いはさせません」と頭を下げ、ふたりは侯爵家に戻った。そして、
「良かった、無事で。帰ってきてくれてありがとう。もお、本当に心配したんだよ? 相談してくれたっていいじゃないか、そんなに信用ならなかった? 私はユーリのこと、弟のように思っていて、幸せになってほしいって心から願っているのに……ああでも、とにかく今日はいいよ、休みなさい。私は明日、時間をもらうから」
ナサニエルが涙をこぼしながらもそう言ってくれたので、ユリウスは早めの夕食をとり、入浴を済ませた。そしてその後部屋で休んでいると、
「レジナルドだ、ちょっといいか?」
レジナルドが訪ねてきて、ユリウスは少し緊張しながら招き入れた。
「疲れているか?」
「大丈夫。お茶入れるよ。おれが作ったよく眠れる薬茶が」
「今はいい」
「わっ!」
手を引かれて驚いていると、そのまま強く抱きしめられた。
「うぁっ、なにっ?」
「…………しばらく、一緒にいてもいいか?」
「一緒に……はっ!? えっ? なにっ? それってどういう……」
「言葉のままだ。一緒にいたい」
「あー……」
大きく力強い体に抱きしめられているのだが、声の感じが、縋り付かれているような気がする。
抱きしめられているせいであまり自由が利かない腕を動かし、レジナルドの背中を撫でる。
「いいよ。まあ、とにかく座って、わっ!」
足が床から離れ、ユリウスは驚いて声を上げた。
「うわっ! ちょっとちょっと‼」
この声を無視し、荷物を担ぐかのようにユリウスを肩に持ち上げスタスタと部屋を横断し、あっという間にベッドにたどり着くと、丁寧にベッドの上に下ろした。
「えっ? なにっ?」
「もし許してくれるのなら……抱きしめて、俺の腕の中にいるのを実感していたい」
そう言った顔はいつもと違いどこか少し頼りなさげで、拒絶するのは可哀想だと感じられ、ユリウスはレジナルドに向けて「いいよ」と両手を広げた。
「おれも、レジナルド様とくっついていたいから」
「……ユリウス……」
許可を得てベッドに上がったレジナルドは、ユリウスをギュッと抱きしめた。
「ああ……もう一度抱きしめることができて、本当に良かった……すまなかった、酷いことを言って傷付けて」
「許してあげるけど……もう、ああいうのやめてよ? おれはレジナルド様のこと、本当に好きだから」
「…………」
「んんっ? 疑ってる? 好きだよ! ホントだよ!」
「ああ、わかっている。だが……すまない、二度とああいうことはしないと約束したかったのに、改めてお前に言われたら、できるのか自信が……」
「?」
「俺はまた、他のアルファに嫉妬したり、自分に自信がもてなかったりで、ユリウスを傷つけてしまうかもしれない。自信がない……」
「ん~、じゃあいいよ。また嫉妬したり不安になったら、文句言ったり拗ねたりして」
「はっ?」
抱きしめていた体を離し、まじまじと顔を見るレジナルドに、ユリウスはサッと口づけをした。
「そしたらその度に、おれがどんなにレジナルド様のことを好きか、教えてあげるから。あの時は好かれてるってわかんなかったから泣くことしかできなかったけど、これからは大丈夫。それにさ、完璧で正しいって思ってたレジナルド様も間違う事があるってわかったから、今後はおれ、素直に言うこときかないから。違うって思ったら遠慮なく反論するからね。だから、大丈夫だよ」
「ユリウス……ありがとう……」
今度はレジナルドが、ユリウスに口づけをした。
ユリウスとは違う、深い口づけを。
「んっ、ちょっ、んんっ」
一向に離れない唇に戸惑い、止めるように言おうと開いた唇の隙間から舌が入り込み、驚いたユリウスは体を離そうとしたが、しっかりと背中と腰を抱かれているため離れられない。
(うわっ! どうしよう! うわわわわっ)
逃げる舌を追われ、絡められ、どうしていいのかわからず焦る口の端から、唾液が零れてしまう。
「んんっ!」
パンパンと肩を叩くと、ようやく唇が離れた。
「ハッ! ちょっ……」
顔を覗き込まれ、恥ずかしくなり横を向いてしまったが、さらに覗き込まれて思わず両手で胸を押して距離をとった。
「嫌か?」
「いっ? 嫌じゃ、ないっ! でもっ! いきなりあんなキスされたらどうしていいかわかんないし恥ずかしいし緊張するし」
「はぁ……そうだったな、お前、覚えていないんだものな」
「はっ?」
「これくらいの口づけは、もうしてるんだがな」
「はあっ? うそっ!」
「嘘じゃない。……まあ、いい。それじゃあ俺は部屋に戻る」
「えっ?」
ユリウスは、ベッドから降りようとするレジナルドの袖を慌てて掴んだ。
「ちょっと待ってよ! 一緒にいるって言ってなかった? 言ったよね?」
「あー……そのつもりだったが……それだけで済ませられそうにない。情けないが、自制できそうにないから」
「え、あ……」
「そういうことだ。じゃあまた明日」
「まままって! 待って待って!」
慌てて掴んでいた袖を引き、ベッドへと引き戻す。
「い、いいじゃない! 一緒にいようよ!」
その言葉に、レジナルドは「は―――っ」と大きく息を吐いた。
「俺の話を聞いていたのか?」
「き、聞いてたよ、ちゃんと! だから……そのぉ……ヒートじゃなくったって、別に、してもいいじゃない」
「……は?」
グイッと上から顔を近づけて聞き返すレジナルドに、ユリウスは『ひゃーっ』と心の中で叫びながらも頑張って言った。
「ルイスさんが言ってた、ヒート以外もそういうことするって。だから別に、したい時はすればいいじゃん!」
「それはそうかもしれないが……お前はどうなんだ、無理しているんじゃないのか? 口づけだけであんな」
「それはっ! さっきも言ったけど嫌なんじゃなくて恥ずかしいだけっ!」
「それじゃあ、いいのか?」
「え?」
「ヒートに関係なく、俺は今すぐお前を抱きたい。ヒート時じゃないと番にはなれないが、それでも、抱いて、俺のものにしたい」
レジナルドの真剣な表情に、ユリウスは真っ赤になり、そしてコクリとうなずいた。
「お、おれも、レジナルド様をおれのものしたい!」
「俺を、ユリウスのものに?」
「そう! あれっ?」
驚いたようなレジナルドの表情に、ユリウスは少し考え、
「あ、もしかして、レジナルド様のものになりたいって言うべきだった?」
そう尋ねたが、
「いや、そうじゃない。ただ、俺はとっくにお前のものだ、と思ってな」
「はっ? いやそんなこと言うなら、おれだってとっくにレジナルド様のものだよ。あーもー! はいっ!」
そう言うとギュッと目を瞑り唇を突き出したユリウスに思わず笑いながら、レジナルドは口づけをした。
第一章 完
※付きはあと一話あります
バート商会副会頭のルイスにキツイお言葉をいただき、「ユリウスに二度と辛い思いはさせません」と頭を下げ、ふたりは侯爵家に戻った。そして、
「良かった、無事で。帰ってきてくれてありがとう。もお、本当に心配したんだよ? 相談してくれたっていいじゃないか、そんなに信用ならなかった? 私はユーリのこと、弟のように思っていて、幸せになってほしいって心から願っているのに……ああでも、とにかく今日はいいよ、休みなさい。私は明日、時間をもらうから」
ナサニエルが涙をこぼしながらもそう言ってくれたので、ユリウスは早めの夕食をとり、入浴を済ませた。そしてその後部屋で休んでいると、
「レジナルドだ、ちょっといいか?」
レジナルドが訪ねてきて、ユリウスは少し緊張しながら招き入れた。
「疲れているか?」
「大丈夫。お茶入れるよ。おれが作ったよく眠れる薬茶が」
「今はいい」
「わっ!」
手を引かれて驚いていると、そのまま強く抱きしめられた。
「うぁっ、なにっ?」
「…………しばらく、一緒にいてもいいか?」
「一緒に……はっ!? えっ? なにっ? それってどういう……」
「言葉のままだ。一緒にいたい」
「あー……」
大きく力強い体に抱きしめられているのだが、声の感じが、縋り付かれているような気がする。
抱きしめられているせいであまり自由が利かない腕を動かし、レジナルドの背中を撫でる。
「いいよ。まあ、とにかく座って、わっ!」
足が床から離れ、ユリウスは驚いて声を上げた。
「うわっ! ちょっとちょっと‼」
この声を無視し、荷物を担ぐかのようにユリウスを肩に持ち上げスタスタと部屋を横断し、あっという間にベッドにたどり着くと、丁寧にベッドの上に下ろした。
「えっ? なにっ?」
「もし許してくれるのなら……抱きしめて、俺の腕の中にいるのを実感していたい」
そう言った顔はいつもと違いどこか少し頼りなさげで、拒絶するのは可哀想だと感じられ、ユリウスはレジナルドに向けて「いいよ」と両手を広げた。
「おれも、レジナルド様とくっついていたいから」
「……ユリウス……」
許可を得てベッドに上がったレジナルドは、ユリウスをギュッと抱きしめた。
「ああ……もう一度抱きしめることができて、本当に良かった……すまなかった、酷いことを言って傷付けて」
「許してあげるけど……もう、ああいうのやめてよ? おれはレジナルド様のこと、本当に好きだから」
「…………」
「んんっ? 疑ってる? 好きだよ! ホントだよ!」
「ああ、わかっている。だが……すまない、二度とああいうことはしないと約束したかったのに、改めてお前に言われたら、できるのか自信が……」
「?」
「俺はまた、他のアルファに嫉妬したり、自分に自信がもてなかったりで、ユリウスを傷つけてしまうかもしれない。自信がない……」
「ん~、じゃあいいよ。また嫉妬したり不安になったら、文句言ったり拗ねたりして」
「はっ?」
抱きしめていた体を離し、まじまじと顔を見るレジナルドに、ユリウスはサッと口づけをした。
「そしたらその度に、おれがどんなにレジナルド様のことを好きか、教えてあげるから。あの時は好かれてるってわかんなかったから泣くことしかできなかったけど、これからは大丈夫。それにさ、完璧で正しいって思ってたレジナルド様も間違う事があるってわかったから、今後はおれ、素直に言うこときかないから。違うって思ったら遠慮なく反論するからね。だから、大丈夫だよ」
「ユリウス……ありがとう……」
今度はレジナルドが、ユリウスに口づけをした。
ユリウスとは違う、深い口づけを。
「んっ、ちょっ、んんっ」
一向に離れない唇に戸惑い、止めるように言おうと開いた唇の隙間から舌が入り込み、驚いたユリウスは体を離そうとしたが、しっかりと背中と腰を抱かれているため離れられない。
(うわっ! どうしよう! うわわわわっ)
逃げる舌を追われ、絡められ、どうしていいのかわからず焦る口の端から、唾液が零れてしまう。
「んんっ!」
パンパンと肩を叩くと、ようやく唇が離れた。
「ハッ! ちょっ……」
顔を覗き込まれ、恥ずかしくなり横を向いてしまったが、さらに覗き込まれて思わず両手で胸を押して距離をとった。
「嫌か?」
「いっ? 嫌じゃ、ないっ! でもっ! いきなりあんなキスされたらどうしていいかわかんないし恥ずかしいし緊張するし」
「はぁ……そうだったな、お前、覚えていないんだものな」
「はっ?」
「これくらいの口づけは、もうしてるんだがな」
「はあっ? うそっ!」
「嘘じゃない。……まあ、いい。それじゃあ俺は部屋に戻る」
「えっ?」
ユリウスは、ベッドから降りようとするレジナルドの袖を慌てて掴んだ。
「ちょっと待ってよ! 一緒にいるって言ってなかった? 言ったよね?」
「あー……そのつもりだったが……それだけで済ませられそうにない。情けないが、自制できそうにないから」
「え、あ……」
「そういうことだ。じゃあまた明日」
「まままって! 待って待って!」
慌てて掴んでいた袖を引き、ベッドへと引き戻す。
「い、いいじゃない! 一緒にいようよ!」
その言葉に、レジナルドは「は―――っ」と大きく息を吐いた。
「俺の話を聞いていたのか?」
「き、聞いてたよ、ちゃんと! だから……そのぉ……ヒートじゃなくったって、別に、してもいいじゃない」
「……は?」
グイッと上から顔を近づけて聞き返すレジナルドに、ユリウスは『ひゃーっ』と心の中で叫びながらも頑張って言った。
「ルイスさんが言ってた、ヒート以外もそういうことするって。だから別に、したい時はすればいいじゃん!」
「それはそうかもしれないが……お前はどうなんだ、無理しているんじゃないのか? 口づけだけであんな」
「それはっ! さっきも言ったけど嫌なんじゃなくて恥ずかしいだけっ!」
「それじゃあ、いいのか?」
「え?」
「ヒートに関係なく、俺は今すぐお前を抱きたい。ヒート時じゃないと番にはなれないが、それでも、抱いて、俺のものにしたい」
レジナルドの真剣な表情に、ユリウスは真っ赤になり、そしてコクリとうなずいた。
「お、おれも、レジナルド様をおれのものしたい!」
「俺を、ユリウスのものに?」
「そう! あれっ?」
驚いたようなレジナルドの表情に、ユリウスは少し考え、
「あ、もしかして、レジナルド様のものになりたいって言うべきだった?」
そう尋ねたが、
「いや、そうじゃない。ただ、俺はとっくにお前のものだ、と思ってな」
「はっ? いやそんなこと言うなら、おれだってとっくにレジナルド様のものだよ。あーもー! はいっ!」
そう言うとギュッと目を瞑り唇を突き出したユリウスに思わず笑いながら、レジナルドは口づけをした。
第一章 完
※付きはあと一話あります
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