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33 聖都2
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ハル
アキちゃんのタケさん捜しは数日しか続きませんでした。
アキちゃんが作った歌で、タケさんに私達のことを知らせようとしたのですが、アキちゃんは歌が上手すぎるので、直ぐに聖都中に噂が広がり、身元がばれてしまったのです。
監視が付いて、第一群域から出して貰えなくなりました。
それでもめげないで、王族達に招かれたパーティーでは、歌を披露しているようです。
メイド達の噂話では、その甲斐あって、聖都の外にまでアキちゃんの歌が流行っているそうです。
光季の休暇も終わりに近づき、帰省していた王族達も続々と聖都に戻って来ました。
舞踏会を開催し、国から持ち帰った土産を配るという習慣があるようで、私達も呼ばれることが多くなりました。
年頃の王子を持つ国からの誘いが多く、毎日大勢の美男子に囲まれています。
「ハル姉、やっぱり兄ちゃんの方が良い」
「そうよねー、なんだかタケさんの方が誠実で安心感あるのよねー」
「お兄ちゃんまだ行方不明なの」
「ええ、メアリーさんも心配してるの」
「大丈夫だよ、兄ちゃんだもの。きっと会いにくるよ」
「うん、あれでお兄ちゃん、結構しぶといもんね」
「浮気してるかも」
「・・・」
「・・・」
「大丈夫よ、ユウとは違うから」
メイド情報によると、ユウを巡る王女達のバトルが、凄い事になっているそうです。
コウもタカもまだ子供なので、数年後に正式な交際が可能となるユウは、貴重な存在なのでしょう。
でも、調子こくといけないので、そのうち殴りに行って説教しとこうと思います。
昨日の舞踏会で、メトロノ王国に竜殺と呼ばれる伝説の勇者が現れたとの噂を聞きました。
年齢は私より少し年上なので、直ぐにでも正式な交際が可能です。
王女達が浮き足だっています。
しかも、その勇者をメトロノ王国の第二王女が、今日聖都に連れて来るらしいのです。
懇意になった王女達に誘われ、私も興味があるので、見分に行くことにしました。
でも、ずいぶんと待たされたあと、馬車から降りて来たのは人形の様な王女様一人でした。
「狡い、あの子独り占めにする積りよ」
ーーーーー
親切な人が現れて、僕を牢から解放してくれた。
喜び勇んで自由の世界へ飛び出そうとしたら、目の前に監獄の高い塀が聳えていた。
僕の気持ちはそんな感じだ、一度喜び舞い上がった後だけに、余計落胆が大きい。
屠殺場へ向かう牛の様な心境で、聖都へと向かった。
だが世の中は捨てたもんじゃない、意外な場所で、僕に救いの手が差し伸べられた。
「この方には第一群域への居住権はありません」
「何でなの、メトロノ王国の王女たる私のフィアンセで勇者様なのよ」
「居住規則第八条で居住が許されているのは王族の方々です。フィアンセ殿は含まれません」
「それなら勇者様なら良いんでしょ。お父様が書いて下さった勇者証明書があるわ」
「居住規則第二条に定められている勇者の定義では、国家連合が認めた者と定義されております。国家連合発行の認定証をお持ちで無い方は、お通しできません」
「それって可笑しいでしょ、国家連合の保護局が勇者様だから来いって呼び付けたのよ」
「それに関しては保護局へ苦情を申し入れて下さい。警備部が関与する話ではありません。我々は規則に沿って判断するだけです」
「それって少しお役所仕事過ぎるんじゃない」
「はい、警備部は、聖都の安全を司る役所ですから、役所としての当然の判断です」
「キー、もう良いわ。メトロノ王国の客人として通してもらうわ」
「その方の第一群域立入り許可は、メトロノ国から申請されておりません」
「それじゃここで申請するわ」
「ここは申請窓口ではありません。群域内の国家連合事務所の窓口で必要書類を添付して申請して下さい。一週間程で許可が出ます」
「がう!」
犬歯をスパークさせて警備兵に襲い掛かろうとするマルカートを抱き留め、耳元でそっと呟く。
「マルカート、暴力は良くないよ、彼は仕事に忠実なだけなんだから」
「でも勇者様」
「大丈夫、国家連合で聞いてみるよ。マルカートと少し離れるのは悲しいけれど、我慢するよ」
「ごめんなさい、一人で興奮して。お城で待ってるから直ぐに来てね」
「ああ、解ってるよ」
マルカートを乗せた馬車が門の中へと消えて行った。
「申し訳ない。ご協力感謝する」
「いえいえ、助かりましたよ」
そのまま聖都から逃亡しようと思ったら、外に出して貰えなかった。
仕方がないので、表通りにある国家連合本部で、外へ出して貰えるように交渉した。
「申し訳ありません。居住規則の規定を失念しておりました。急いで認定証発行の起案を致します」
「いえいえ、認定証は要らないから、外に出してよ」
「駄目です。とりあえず、第四群域への入学者の中に身分を確保いたしますので、認定証が発行されるまでの間、そちらの寮で生活して下さい」
「聖都の外で待ってるから、気を使わないでよ」
「絶対に駄目です。指示に従って下さい」
アキちゃんのタケさん捜しは数日しか続きませんでした。
アキちゃんが作った歌で、タケさんに私達のことを知らせようとしたのですが、アキちゃんは歌が上手すぎるので、直ぐに聖都中に噂が広がり、身元がばれてしまったのです。
監視が付いて、第一群域から出して貰えなくなりました。
それでもめげないで、王族達に招かれたパーティーでは、歌を披露しているようです。
メイド達の噂話では、その甲斐あって、聖都の外にまでアキちゃんの歌が流行っているそうです。
光季の休暇も終わりに近づき、帰省していた王族達も続々と聖都に戻って来ました。
舞踏会を開催し、国から持ち帰った土産を配るという習慣があるようで、私達も呼ばれることが多くなりました。
年頃の王子を持つ国からの誘いが多く、毎日大勢の美男子に囲まれています。
「ハル姉、やっぱり兄ちゃんの方が良い」
「そうよねー、なんだかタケさんの方が誠実で安心感あるのよねー」
「お兄ちゃんまだ行方不明なの」
「ええ、メアリーさんも心配してるの」
「大丈夫だよ、兄ちゃんだもの。きっと会いにくるよ」
「うん、あれでお兄ちゃん、結構しぶといもんね」
「浮気してるかも」
「・・・」
「・・・」
「大丈夫よ、ユウとは違うから」
メイド情報によると、ユウを巡る王女達のバトルが、凄い事になっているそうです。
コウもタカもまだ子供なので、数年後に正式な交際が可能となるユウは、貴重な存在なのでしょう。
でも、調子こくといけないので、そのうち殴りに行って説教しとこうと思います。
昨日の舞踏会で、メトロノ王国に竜殺と呼ばれる伝説の勇者が現れたとの噂を聞きました。
年齢は私より少し年上なので、直ぐにでも正式な交際が可能です。
王女達が浮き足だっています。
しかも、その勇者をメトロノ王国の第二王女が、今日聖都に連れて来るらしいのです。
懇意になった王女達に誘われ、私も興味があるので、見分に行くことにしました。
でも、ずいぶんと待たされたあと、馬車から降りて来たのは人形の様な王女様一人でした。
「狡い、あの子独り占めにする積りよ」
ーーーーー
親切な人が現れて、僕を牢から解放してくれた。
喜び勇んで自由の世界へ飛び出そうとしたら、目の前に監獄の高い塀が聳えていた。
僕の気持ちはそんな感じだ、一度喜び舞い上がった後だけに、余計落胆が大きい。
屠殺場へ向かう牛の様な心境で、聖都へと向かった。
だが世の中は捨てたもんじゃない、意外な場所で、僕に救いの手が差し伸べられた。
「この方には第一群域への居住権はありません」
「何でなの、メトロノ王国の王女たる私のフィアンセで勇者様なのよ」
「居住規則第八条で居住が許されているのは王族の方々です。フィアンセ殿は含まれません」
「それなら勇者様なら良いんでしょ。お父様が書いて下さった勇者証明書があるわ」
「居住規則第二条に定められている勇者の定義では、国家連合が認めた者と定義されております。国家連合発行の認定証をお持ちで無い方は、お通しできません」
「それって可笑しいでしょ、国家連合の保護局が勇者様だから来いって呼び付けたのよ」
「それに関しては保護局へ苦情を申し入れて下さい。警備部が関与する話ではありません。我々は規則に沿って判断するだけです」
「それって少しお役所仕事過ぎるんじゃない」
「はい、警備部は、聖都の安全を司る役所ですから、役所としての当然の判断です」
「キー、もう良いわ。メトロノ王国の客人として通してもらうわ」
「その方の第一群域立入り許可は、メトロノ国から申請されておりません」
「それじゃここで申請するわ」
「ここは申請窓口ではありません。群域内の国家連合事務所の窓口で必要書類を添付して申請して下さい。一週間程で許可が出ます」
「がう!」
犬歯をスパークさせて警備兵に襲い掛かろうとするマルカートを抱き留め、耳元でそっと呟く。
「マルカート、暴力は良くないよ、彼は仕事に忠実なだけなんだから」
「でも勇者様」
「大丈夫、国家連合で聞いてみるよ。マルカートと少し離れるのは悲しいけれど、我慢するよ」
「ごめんなさい、一人で興奮して。お城で待ってるから直ぐに来てね」
「ああ、解ってるよ」
マルカートを乗せた馬車が門の中へと消えて行った。
「申し訳ない。ご協力感謝する」
「いえいえ、助かりましたよ」
そのまま聖都から逃亡しようと思ったら、外に出して貰えなかった。
仕方がないので、表通りにある国家連合本部で、外へ出して貰えるように交渉した。
「申し訳ありません。居住規則の規定を失念しておりました。急いで認定証発行の起案を致します」
「いえいえ、認定証は要らないから、外に出してよ」
「駄目です。とりあえず、第四群域への入学者の中に身分を確保いたしますので、認定証が発行されるまでの間、そちらの寮で生活して下さい」
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「絶対に駄目です。指示に従って下さい」
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