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64 大迷宮13
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僕の魔素を見る目で把握できるのは、壁などの殆ど光を発っしない物はせいぜい三キロ先まで、魔法陣や魔力を帯びたお宝ならば六キロ先程度だが、光を発する魔獣ならば十キロでも大きさが解る。
僕達が飛ばされたフィールドは、結局、縦六十キロ、横四十キロ近い広さがあった。
直径百キロの迷宮内にこんな駄々広いエリアがあるなんて何か不自然だ。
迷宮の真ん中で光っている都市を目印に、簡単な測量をしてみたら、その都市から二百キロ程離れていた。
大迷宮の周囲に存在する未知のエリアへ、僕達は飛ばされたことになる。
しかも、魔法陣も下の階層への降り口も、この広いフィールドの中には一カ所しか無かった。
たぶんこのフィールドで襲って来る大量の魔獣を倒せる実力が有ったとしても、僕の魔素を見る目が無かったら、完全に飢え死にしていたと思う。
深さ関係も少し可笑しかった。
二百七十七階層にある筈の都市がだいぶ横方向に見えるのだ。
これも大雑把に測量して確認したら、飛ばされたフィールドは、二百五十階層程の深さにあった。
近道と言えば近道なのだが、普通の冒険者ならば、地獄への近道になっていた筈だ。
ほぼ万遍なく探索する羽目になったので、手付かずのお宝を大量に入手することが出来た。
しかも、二百五十階層のお宝なので、装飾具などは、使われている宝石の質の違いが素人目で見ても解った。
魔法陣で戻る時も心配だった。
真上に放り出されたら砂漠のど真ん中の筈なので、夜の時間帯になるのを待って魔法陣を稼働させた。
戻った先は、ちゃんと見慣れた光景、僕達が拠点としている丘陵だった。
迷宮入口で、商会連合会の人達が大勢憔悴しきった顔で待っており、僕達の姿を見て、小躍りしながら歓声を上げていた。
後から聞いた話なのだが、その日の競りは、出品されたお宝のレベルが高く、大騒ぎなったそうだ。
装飾品などの、他大陸の王族達が目の色を変えて欲しがりそうな品も多く、全てを捌くのに、昼夜通しで五日間も掛ったそうだ。
七日ぶりの帰還、小粒だが大量の魔石、突然レベルアップしたお宝。
何か普通と違う状態だったのは、当然察しが付く。
商会連合会から説明を求められたので、酒と料理を出して貰うとの条件で、まだ荷の入っていない倉庫にテーブルと椅子を運び込み、宴会兼説明会を開催した。
「大迷宮はもっと広大で、手付かずのエリアがまだまだ有るってことですよね」
「ええ、少なくとも直径は、今言われている噂の五倍以上ありそうですね」
「今後も、あのレベルのお宝が続々と出て来るんですよね」
「次の階層の様子が解りませんから、確約はできません」
「一回の探索が長期化するってことですか」
「ええ、たぶん」
「少数精鋭じゃ無理ってことかい」
「万単位の魔獣と三日三晩戦える戦力が有るなら別ですがね」
キムノさんと僕が協力して、空中に大きなスクリーンを作り出して説明している。
商会連合会開催の説明会なのだが、伝手を頼んだのか、有力な冒険者達も多数参加している。
冒険者の人達は、腕を組んで考え込んでいる人が多い。
冒険者にとっては、地獄への近道へ飛ばされる話なので当然だ。
「あんたら六日で帰り道を発見したそうだが、普通ならどのくらい掛るとおもう」
「一月は必要だと思いますよ」
ーーーーー
ハンゾー
タケが予想したとおり、次の階層は海だった。
しかも上の階層への登り坂に見えない障壁が出現し、戻れなくなってしまったのだ。
昨夜の話し合いでは、魔布で作った袋を持ち込み、膨らませて筏のように浮かべて使う案や、船の部材を持ち込んで、迷宮の中で組み立てる案も出されたのだが、荒れた海の中で無数の巨大な蛸や烏賊や海蛇に囲まれて戦う状況を考えると、船や筏を維持することが自体が不可能という結論に達した。
冗談で氷の障壁で筒を作り、水の中に潜って進むという案も出されたが、結局、降口を拠点にして魔海獣と戦い、地道に時間を掛けて数を減らし安全になってから、船か筏を持ち込むと言う案に落ち着いた。
だが上の階層に戻って、魔法陣から拠点の丘陵へ戻れないとなると話が全然違う。
時間を掛けて魔海獣を減らしていたら、先にこちらの食糧が尽きてしまう。
そう、魔海獣との戦いだけではなく、時間との戦いにもなってしまった。
冗談の様な方法しか、選択肢が無くなってしまった。
ーーーーー
「傀儡の糸で骨組みを作る。光魔法で見えるようにするから、その周りに氷の障壁を作ってくれ」
蔓は氷で囲まれるのが嫌な様子だったのだが、もう一つの仕事を提示したら、快く応じてくれた。
もう一つの仕事は、攻撃担当達の命綱替りになって貰うことだった。
魔海獣は電撃にすこぶる弱い。
攻撃魔法担当が電撃を喰らわせたら、攻撃担当が氷の障壁から海中へと出て、気を失っている魔海獣に止めを刺して貰う。
出入り口は二重部屋構造にして海水の侵入を防ぐし、補助魔法担当が風魔法で海中から空気を取り出し、攻撃担当が水中でも呼吸できる様にする。
最大の弱点は、攻撃担当達が、魔海獣に比べて海中を素早く動けないことだったのだが、これは命綱替りの蔓に頑張って貰う。
攻撃担当は全員女性だ、しかも海中での戦闘なので、自由に動ける様にと余計な物は一切身に着けない。
死ぬか生きるかの事態なので全員がすっぽんぽんだ、そう、もう恥も外聞も無い裸族集団だ。
命綱は物凄く重要、万が一外れたら命に直結する。
攻撃の邪魔にならず、しかも対象者を動かし易い箇所が良い。
なので蔓に白い布の映像を被せ、褌の様に巻いて貰った。
多少食い込むが、腰を後ろを持ち上げる状態なので動かし易い。
蔓が物凄く喜んでいるので、攻撃担当が、”アハン”とか”ウフン”とか色っぽい声を出しているのは目を瞑った。
一旦海底まで潜り、海底の地形を利用して、雲霞の様に押寄せて来る魔海獣を迎え討った。
氷の障壁は外が見えるので、僕も光魔法を駆使する必要が無い。
攻撃担当達の褌の映像に集中できた。
そして三日後、このフィールドの魔海獣を無事倒し終わった。
僕達が飛ばされたフィールドは、結局、縦六十キロ、横四十キロ近い広さがあった。
直径百キロの迷宮内にこんな駄々広いエリアがあるなんて何か不自然だ。
迷宮の真ん中で光っている都市を目印に、簡単な測量をしてみたら、その都市から二百キロ程離れていた。
大迷宮の周囲に存在する未知のエリアへ、僕達は飛ばされたことになる。
しかも、魔法陣も下の階層への降り口も、この広いフィールドの中には一カ所しか無かった。
たぶんこのフィールドで襲って来る大量の魔獣を倒せる実力が有ったとしても、僕の魔素を見る目が無かったら、完全に飢え死にしていたと思う。
深さ関係も少し可笑しかった。
二百七十七階層にある筈の都市がだいぶ横方向に見えるのだ。
これも大雑把に測量して確認したら、飛ばされたフィールドは、二百五十階層程の深さにあった。
近道と言えば近道なのだが、普通の冒険者ならば、地獄への近道になっていた筈だ。
ほぼ万遍なく探索する羽目になったので、手付かずのお宝を大量に入手することが出来た。
しかも、二百五十階層のお宝なので、装飾具などは、使われている宝石の質の違いが素人目で見ても解った。
魔法陣で戻る時も心配だった。
真上に放り出されたら砂漠のど真ん中の筈なので、夜の時間帯になるのを待って魔法陣を稼働させた。
戻った先は、ちゃんと見慣れた光景、僕達が拠点としている丘陵だった。
迷宮入口で、商会連合会の人達が大勢憔悴しきった顔で待っており、僕達の姿を見て、小躍りしながら歓声を上げていた。
後から聞いた話なのだが、その日の競りは、出品されたお宝のレベルが高く、大騒ぎなったそうだ。
装飾品などの、他大陸の王族達が目の色を変えて欲しがりそうな品も多く、全てを捌くのに、昼夜通しで五日間も掛ったそうだ。
七日ぶりの帰還、小粒だが大量の魔石、突然レベルアップしたお宝。
何か普通と違う状態だったのは、当然察しが付く。
商会連合会から説明を求められたので、酒と料理を出して貰うとの条件で、まだ荷の入っていない倉庫にテーブルと椅子を運び込み、宴会兼説明会を開催した。
「大迷宮はもっと広大で、手付かずのエリアがまだまだ有るってことですよね」
「ええ、少なくとも直径は、今言われている噂の五倍以上ありそうですね」
「今後も、あのレベルのお宝が続々と出て来るんですよね」
「次の階層の様子が解りませんから、確約はできません」
「一回の探索が長期化するってことですか」
「ええ、たぶん」
「少数精鋭じゃ無理ってことかい」
「万単位の魔獣と三日三晩戦える戦力が有るなら別ですがね」
キムノさんと僕が協力して、空中に大きなスクリーンを作り出して説明している。
商会連合会開催の説明会なのだが、伝手を頼んだのか、有力な冒険者達も多数参加している。
冒険者の人達は、腕を組んで考え込んでいる人が多い。
冒険者にとっては、地獄への近道へ飛ばされる話なので当然だ。
「あんたら六日で帰り道を発見したそうだが、普通ならどのくらい掛るとおもう」
「一月は必要だと思いますよ」
ーーーーー
ハンゾー
タケが予想したとおり、次の階層は海だった。
しかも上の階層への登り坂に見えない障壁が出現し、戻れなくなってしまったのだ。
昨夜の話し合いでは、魔布で作った袋を持ち込み、膨らませて筏のように浮かべて使う案や、船の部材を持ち込んで、迷宮の中で組み立てる案も出されたのだが、荒れた海の中で無数の巨大な蛸や烏賊や海蛇に囲まれて戦う状況を考えると、船や筏を維持することが自体が不可能という結論に達した。
冗談で氷の障壁で筒を作り、水の中に潜って進むという案も出されたが、結局、降口を拠点にして魔海獣と戦い、地道に時間を掛けて数を減らし安全になってから、船か筏を持ち込むと言う案に落ち着いた。
だが上の階層に戻って、魔法陣から拠点の丘陵へ戻れないとなると話が全然違う。
時間を掛けて魔海獣を減らしていたら、先にこちらの食糧が尽きてしまう。
そう、魔海獣との戦いだけではなく、時間との戦いにもなってしまった。
冗談の様な方法しか、選択肢が無くなってしまった。
ーーーーー
「傀儡の糸で骨組みを作る。光魔法で見えるようにするから、その周りに氷の障壁を作ってくれ」
蔓は氷で囲まれるのが嫌な様子だったのだが、もう一つの仕事を提示したら、快く応じてくれた。
もう一つの仕事は、攻撃担当達の命綱替りになって貰うことだった。
魔海獣は電撃にすこぶる弱い。
攻撃魔法担当が電撃を喰らわせたら、攻撃担当が氷の障壁から海中へと出て、気を失っている魔海獣に止めを刺して貰う。
出入り口は二重部屋構造にして海水の侵入を防ぐし、補助魔法担当が風魔法で海中から空気を取り出し、攻撃担当が水中でも呼吸できる様にする。
最大の弱点は、攻撃担当達が、魔海獣に比べて海中を素早く動けないことだったのだが、これは命綱替りの蔓に頑張って貰う。
攻撃担当は全員女性だ、しかも海中での戦闘なので、自由に動ける様にと余計な物は一切身に着けない。
死ぬか生きるかの事態なので全員がすっぽんぽんだ、そう、もう恥も外聞も無い裸族集団だ。
命綱は物凄く重要、万が一外れたら命に直結する。
攻撃の邪魔にならず、しかも対象者を動かし易い箇所が良い。
なので蔓に白い布の映像を被せ、褌の様に巻いて貰った。
多少食い込むが、腰を後ろを持ち上げる状態なので動かし易い。
蔓が物凄く喜んでいるので、攻撃担当が、”アハン”とか”ウフン”とか色っぽい声を出しているのは目を瞑った。
一旦海底まで潜り、海底の地形を利用して、雲霞の様に押寄せて来る魔海獣を迎え討った。
氷の障壁は外が見えるので、僕も光魔法を駆使する必要が無い。
攻撃担当達の褌の映像に集中できた。
そして三日後、このフィールドの魔海獣を無事倒し終わった。
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