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11 ゾンビ
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次の日の早朝、森の中の小さな町に到着した。
門前の広場で朝の礼拝の儀式を執り行い、寄付を集めることにした。
礼拝の開始は歌で知らせる。
テンポの良い手拍子に乗せて、明るい歌をシャウトするように合唱する。
僕は墓地で毎日歌わされて慣れていたが、この世界では、人前で歌う習慣はあまり無いらしく、三人は最初物凄く緊張してビビッて声が裏返っていた。
だが、僕と一緒に偽神官生活を送っているうちにすっかり慣れ、今はノリノリでシャウトしている。
礼拝の儀式を終えると、町人を少し待ち受ける。
埋葬の儀式を頼まれることが多く、実はこちらの方が実入りが良いのだ。
この日も礼拝が終わって少し待つと、町人が数人連れ立ってやって来た。
裕福な感じの人達なので、夕食は少し美味い物が喰えそうな気がした。
四人で期待して待ち受けた。
「神官様、死んだ爺様の埋葬に失敗しました。爺様がゾンビになって、若い娘を追い回して迷惑を掛けてますので祓ってくだせー」
ゾンビなんて祓った事が無い、断わろうと思ったのだが・・・。
「はい、はい大丈夫ですよ。悪霊祓いが必要ですので、儀式料が少々お高くなりますがよろしいですか」
ファーレが勝手に受け負ってしまった。
「如何ほどお支払すりゃ宜しいんで」
「金貨一枚」
「もう少しまけてくだせー」
「それなら、大サービスで銀貨五十枚」
「解りやした、それじゃお願いしますだ」
ーーーーー
「おいファーレ、ゾンビ払いなんて僕は知らないぞ」
「大丈夫よ、埋葬の儀式をやり直せばきっと大丈夫よ。前金で貰っておいたから、朝御飯は美味しい物食べよ。昨日の夜ご飯、ちゃんと食べれなかったから、今日はお腹ペコペコ」
取り敢えず腹拵えしてから、指定された家に向かった。
御屋敷だった、死んだ爺さんが一代で築いた身上らしく、埋葬の為に田舎から出て来た親戚一同は、帰るに帰れず困っていた。
息子夫婦は既に亡くなっており、孫娘夫婦が屋敷を継いでいるのだが、その孫娘も追掛けられる対象に含まれており、げっそり憔ていた。
「生前は優しい御爺ちゃんだったんですよ」
「へん、死んで本性表したんだよ」
「うん、きっとそうよ、男なんて皮一枚剥いたらみんな野獣なのよ」
「気に食わない爺さんだから、もう少し吹っかけてみるかな」
ゾンビ爺さんは三人に見向きもしない、守備範囲が僕より少し上のゾーンに有る様だ。
三人は女としてのプライドを傷付けられたらしく、凄く怒っている。
取り敢えず、墓穴を掘って追い込む作戦を実行してみたのだが、ゾンビ爺さんが元気で捕まらない。
若い女の子を見付けると、手当たり次第、涎を垂らしながらテコテコと足早に追掛けて行くのだから、確かにこれは迷惑だ。
墓穴に囮を置いて誘い込む作戦も考えたのだが、孫娘も含めて誰も応じてくれなかった。
うちの三人娘は役立たずだったので、この作戦は諦めた。
「オーク、ちょっと失礼じゃないの」
「そうよ、あの爺さんの趣味が悪いだけよ」
「僕は、墓穴に入るの怖かったから良いけど」
作戦を変更して、埋葬に使う刻印を描いた紙を地面に敷き詰め、その上にゾンビ爺さんを誘い込むことにした。
若い女性を広場に集め、その周りを、刻印を描いた紙で囲う。
その光景を大勢の野次馬が取り囲んで眺めていたが、その人垣の一画から悲鳴が上がり、女性が数人、刻印の中に走り込んで来た。
ゾンビ爺さんが現れたのだ、野次馬の中から、刻印の中へ走り込む女性が続く。
中には爺さんの守備範囲外と思われる年齢層の高い方もいらっしゃったが、邪魔では無さそうなので放って置いた。
おいこら、お前ら三人もなんで走って行くんだ。
ゾンビ爺さんが左右を見回しながら、刻印の上に踏み込んだ。
僕は、額に指を二本立てる。
「ゲリト、メルト、ノリト。ゲリト、メルト、ノリト。ゲリト、メルト、ノリト」
目の前の空間に縦三本、横三本の線を指で引いて、祈祷を唱え終わる。
すると、刻印から無温の青い炎が立ち上がり、ゾンビ爺さんの全身に纏わり付いた。
動きを止めて痙攣しているので、効力は有りそうなのだが、祓う程の力は無い。
思い付きで、脳天を一発棍棒で殴ってみた。
”ボコ”
”ギャッ”
悲鳴を上げて、口から黒い塊が出掛っている。
追撃として、掬い上げる様な感じで、尻に一発スウィングを叩き込んで見た。
”ドギャン”
”キュー”
ゾンビ爺さんの身体が三十センチくらい持ち上がり、変な音を立てて口から黒い魂の様な物と白い魂の様な物が抜け出て来た。
黒い魂は町の周囲の森に向かって飛んで行き、白い魂は未練たっぷりに空へ昇って行った。
この世に煩悩を残した爺さんが、世に留まる為に悪霊を身体に引き入れた、何となくそんな感じがした。
「それでは皆様、悪霊に囚われて居りました故人の魂は無事天に召されました。冥福を祈って手を合わせたいと思います。合掌」
無事天に召されたかどうかなんて、僕に判る訳が無い。
なんとなく、聖職者らしい科白を並べてみただけだ。
要するに、無理矢理身体から強引に魂を叩き出しただけだ、たぶん成仏していないと思う。
だが町の人達からはとても感謝され、豪華な夕飯を振舞って貰えた。
どさくさに紛れて、ファーレが追加料金を受け取っていたようだ。
三人の僕を見る目が、少し改善された気がする。
門前の広場で朝の礼拝の儀式を執り行い、寄付を集めることにした。
礼拝の開始は歌で知らせる。
テンポの良い手拍子に乗せて、明るい歌をシャウトするように合唱する。
僕は墓地で毎日歌わされて慣れていたが、この世界では、人前で歌う習慣はあまり無いらしく、三人は最初物凄く緊張してビビッて声が裏返っていた。
だが、僕と一緒に偽神官生活を送っているうちにすっかり慣れ、今はノリノリでシャウトしている。
礼拝の儀式を終えると、町人を少し待ち受ける。
埋葬の儀式を頼まれることが多く、実はこちらの方が実入りが良いのだ。
この日も礼拝が終わって少し待つと、町人が数人連れ立ってやって来た。
裕福な感じの人達なので、夕食は少し美味い物が喰えそうな気がした。
四人で期待して待ち受けた。
「神官様、死んだ爺様の埋葬に失敗しました。爺様がゾンビになって、若い娘を追い回して迷惑を掛けてますので祓ってくだせー」
ゾンビなんて祓った事が無い、断わろうと思ったのだが・・・。
「はい、はい大丈夫ですよ。悪霊祓いが必要ですので、儀式料が少々お高くなりますがよろしいですか」
ファーレが勝手に受け負ってしまった。
「如何ほどお支払すりゃ宜しいんで」
「金貨一枚」
「もう少しまけてくだせー」
「それなら、大サービスで銀貨五十枚」
「解りやした、それじゃお願いしますだ」
ーーーーー
「おいファーレ、ゾンビ払いなんて僕は知らないぞ」
「大丈夫よ、埋葬の儀式をやり直せばきっと大丈夫よ。前金で貰っておいたから、朝御飯は美味しい物食べよ。昨日の夜ご飯、ちゃんと食べれなかったから、今日はお腹ペコペコ」
取り敢えず腹拵えしてから、指定された家に向かった。
御屋敷だった、死んだ爺さんが一代で築いた身上らしく、埋葬の為に田舎から出て来た親戚一同は、帰るに帰れず困っていた。
息子夫婦は既に亡くなっており、孫娘夫婦が屋敷を継いでいるのだが、その孫娘も追掛けられる対象に含まれており、げっそり憔ていた。
「生前は優しい御爺ちゃんだったんですよ」
「へん、死んで本性表したんだよ」
「うん、きっとそうよ、男なんて皮一枚剥いたらみんな野獣なのよ」
「気に食わない爺さんだから、もう少し吹っかけてみるかな」
ゾンビ爺さんは三人に見向きもしない、守備範囲が僕より少し上のゾーンに有る様だ。
三人は女としてのプライドを傷付けられたらしく、凄く怒っている。
取り敢えず、墓穴を掘って追い込む作戦を実行してみたのだが、ゾンビ爺さんが元気で捕まらない。
若い女の子を見付けると、手当たり次第、涎を垂らしながらテコテコと足早に追掛けて行くのだから、確かにこれは迷惑だ。
墓穴に囮を置いて誘い込む作戦も考えたのだが、孫娘も含めて誰も応じてくれなかった。
うちの三人娘は役立たずだったので、この作戦は諦めた。
「オーク、ちょっと失礼じゃないの」
「そうよ、あの爺さんの趣味が悪いだけよ」
「僕は、墓穴に入るの怖かったから良いけど」
作戦を変更して、埋葬に使う刻印を描いた紙を地面に敷き詰め、その上にゾンビ爺さんを誘い込むことにした。
若い女性を広場に集め、その周りを、刻印を描いた紙で囲う。
その光景を大勢の野次馬が取り囲んで眺めていたが、その人垣の一画から悲鳴が上がり、女性が数人、刻印の中に走り込んで来た。
ゾンビ爺さんが現れたのだ、野次馬の中から、刻印の中へ走り込む女性が続く。
中には爺さんの守備範囲外と思われる年齢層の高い方もいらっしゃったが、邪魔では無さそうなので放って置いた。
おいこら、お前ら三人もなんで走って行くんだ。
ゾンビ爺さんが左右を見回しながら、刻印の上に踏み込んだ。
僕は、額に指を二本立てる。
「ゲリト、メルト、ノリト。ゲリト、メルト、ノリト。ゲリト、メルト、ノリト」
目の前の空間に縦三本、横三本の線を指で引いて、祈祷を唱え終わる。
すると、刻印から無温の青い炎が立ち上がり、ゾンビ爺さんの全身に纏わり付いた。
動きを止めて痙攣しているので、効力は有りそうなのだが、祓う程の力は無い。
思い付きで、脳天を一発棍棒で殴ってみた。
”ボコ”
”ギャッ”
悲鳴を上げて、口から黒い塊が出掛っている。
追撃として、掬い上げる様な感じで、尻に一発スウィングを叩き込んで見た。
”ドギャン”
”キュー”
ゾンビ爺さんの身体が三十センチくらい持ち上がり、変な音を立てて口から黒い魂の様な物と白い魂の様な物が抜け出て来た。
黒い魂は町の周囲の森に向かって飛んで行き、白い魂は未練たっぷりに空へ昇って行った。
この世に煩悩を残した爺さんが、世に留まる為に悪霊を身体に引き入れた、何となくそんな感じがした。
「それでは皆様、悪霊に囚われて居りました故人の魂は無事天に召されました。冥福を祈って手を合わせたいと思います。合掌」
無事天に召されたかどうかなんて、僕に判る訳が無い。
なんとなく、聖職者らしい科白を並べてみただけだ。
要するに、無理矢理身体から強引に魂を叩き出しただけだ、たぶん成仏していないと思う。
だが町の人達からはとても感謝され、豪華な夕飯を振舞って貰えた。
どさくさに紛れて、ファーレが追加料金を受け取っていたようだ。
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