奴隷を買うぞ・・異世界煩悩記

切粉立方体

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49 地下遺跡6

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ファーレ

「はい、次の方どうぞ」

神官は人手不足とオークが言っていたのに、控室には応募者が大勢います。
遺跡調査団の神官隊員の募集の筈なのに、十六、七歳位のキャピキャピした女性ばかりで、しかも全員が化粧をして着飾っていて、アカデミックな雰囲気が全然ありません。
なんか、来る場所を間違ってしまった気分です。

「失礼します。十三番ファーレ入ります」

試験官は質素な身形の御爺ちゃんが二人と質素だけど高そうな服を着た中年男性二人、そして派手な服を着た若い男の人が六人でした。

「応募した理由を説明してくれるかね」
「古代刻印については少し学びましたが、刻形に関する記述ばかりで、実際に使われた場所や使用方法の情報がありません。実際の遺跡を見る良い機会だと思って応募しました」
「ふーん、平民の女の子の癖に学問に興味があるなんて珍しいね。僕達を悪霊から守りたいとか、僕達の治療をしたいとか、僕達をサポートしたいって娘が多いんだけどね。君は僕達を護りたいと思わないの」

失礼な質問の主は、一番端に座っていた軽薄そうな若い男性です。
偉そうに鼻の穴を広げて薄笑いを浮かべていますが、自分の頭の軽さを晒していることに気が付かないのでしょうか。

「中身の詰まった酒樽なら、勿論勿体無いからお護りしますが、空っぽの酒樽は労力の無駄なので放置します」
「君は馬鹿か、良く話しを聞けよ。僕は酒樽の話なんかしてないぞ」
「これは失礼いたしました。空の酒樽を護れというお話かと思ってました」

「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、面白い子じゃ。特殊スキルが上級刻書、歌唱、節約、詠唱、魔筆記、格闘術、盾術、笛楽、弦楽、祓術。ふむ、十三歳なのに多彩じゃの。治療はどうじゃ」
「魔道具を使った治療なら出来ます」
「それなら腕前を見せて貰おうかの。ちょうど良い、ケアレス、昨日の酔って転んだ時の傷を癒して貰え」
「えっ、先生、これなら自然に治りますから」

先程の失礼な質問をした男性が、腰を浮かせました。

「駄目じゃ、お前は実験台じゃ。早くしろ、愚図愚図しとると破門じゃぞ」
「はい、先生判りました」

むふふふふ、オークとピーを実験台にして、昨夜ミントさんに特訓して貰いましたから自信はあります。
いひひひひ、思いっきり痛くしてあげましょう。

「さあケアレス様、患部を拝見させて頂ますよ」

椅子に座らせて、患部を確認します。
どうやら転んで膝を擦りむいた程度の怪我のようですが、まだ血が滲んでいます。

「怪我は直ぐに治さないと傷口から雑菌が入って化膿しますよ。それでは念のため殺菌しておきます」

患部の上に手を翳します。

「グルス、メルナス」

ミントさんから借りた治療の指輪が光り、患部に光の粒が降り注いで染み込んで行きます。
一番強力な殺菌の魔法です。

「ぎゃー、痛い、痛い、痛い」

逃げ出そうとしましたが、足に拘束の結界を張って立ち上がらせません。
こいつピーよりも根性がありません。
勿論傷も治療してあげました、念入りに痛みを倍ぐらいにして。

その日の内に合否を言い渡すと言われたので、控室に用意されたお茶と菓子を食べながら待たせて貰います。
うん、良いお茶と美味しいお菓子です、感心感心。

ーーーーー
遺跡調査団団長 ケイロン・リ・カルタナス

「それでは神官職採用者六名を決定したいと思います。各人推薦者六名の名を書いた札を提出して下さい」

アスピ先生とタルトロス先生の札は四点、私とグリッドの札は三点、助手どもの札は一点で集計し、点数の多い者を採用する。
全員からの推薦がまず四人、ニナラス伯の御嬢さんとサウザス伯の御嬢さん、ウエファ男爵の御嬢さんとカスツール男爵の御嬢さん、この四人は無条件で決定。
良かった、四人の父親から頼まれた時は心配したが、今回の審査メンバーを漏らしておいたら、ちゃんと挨拶へ行ってくれた様だ。
今回の調査団のメンバー構成は秘匿しておいた筈なのに、エメノス候の息子さんが参加することがどこからか漏れ、余計な気遣いをさせられている。

残りは二人、聖神殿で修行したというクラシス子爵の御嬢さんとファーレという十三歳の娘さん。
ファーレと言う子には、私と同様に皆関心を持ったようで、両先生と私とグリッド、それに見習い二人が彼女を推薦している。
身上書には一切記載が無かったが、聖神殿の指輪を填めていた。
それに無詠唱の素早い結界構築も見事だったし、上級刻書と魔筆記は調査団にとって心強いサポートになる。

「それでは、神官職はこの六名で決定します」

ーーーーー
ファーレ

「それでは今晩結団式を行い、そのままここへ泊って頂きます。明日は早朝に出発しますので、指示された部屋へ今日中に荷物を運び込んで下さい。なお荷物は必要最小限、自分で背負える量に限定して下さい」
「えー、無理です。荷車三台分もある荷物なんて背負えません」
「駄目です、自分で背負えない量は持ち込まないで下さい」
「あのー、ポーターを独自に雇いますので多少多目でも」
「駄目です、ルールは守って下さい。持ち込めるのは自分で背負える量だけです」
「はい、料理人を連れて来たのですが」
「この町で待たせて下さい。専任の料理人はこちらで用意してあります」
「あのー、私ベットが変わると良く眠れないのでベットを」
「駄目です、頑張って寝袋で寝て下さい」
「あのー、呪術の道具だけで荷車一台分あるんですが」
「簡易道具だけ選んで下さい」
「あのー、お化粧の道具だけでも箪笥一杯有るんですが」

直ぐに説明が終わると思っていましたが、着飾ったお嬢様連中が係員に詰め寄って殴り合い寸前です。
なんか席を立つタイミングを逸してしまいました。
一番端に座っていた私と隣の神官服の人が手持無沙汰です。
この人も私と同じ魔道具の指輪を填めています。
十六歳くらいの白髪の子で、少し浅黒い肌の人です。
だらーっとだらけて、手足を放り出して脱力しています。

「ねえ、あんた」
「はい、私ですか」
「そうあんた、あたいはあんたなんて知らないんだけどさ。その指輪どこで手に入れたのさ」
「あっ、この指輪ですか。昨日ミントさんから借りました」
「げーっ」

がばっと起き上って座り直しました、顔が物凄く真剣です。

「ミ、ミ、ミントって主任神官のミントか」
「まあ、御知り合いなんですか。カシスさんも一緒ですよ」
「うげー、カシスも一緒か。頼む、あたいがここに居る事は内緒にしてくれ」
「ええ、構わないですが、まだお名前伺ってません」
「あっ、すまん。あたいはベラてっんだ」
「私ファーレです宜しく」
「内緒だぞ、絶対に内緒だぞ。あいつらあたいの顔見るとすっ飛んで来ていつも殴るんだよ。一回寮に男連れ込んだ時なんかあいつらに殺されるかと思ったぜ。あー、やっと神官になれて縁が切れたと思ったのに、畜生。絶対内緒だぞ」
「ええ、でも二人ともそんなに怖くないですよ」
「ところでおまえ、あいつ等とはどんな関係なんだよ」
「うーん、一応巡礼の旅の仲間ですかね」
「げーっ、おまえ、聖神殿の密偵か」
「いえ、違いますから、そんなに退かないで下さいベラさん」
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