奴隷を買うぞ・・異世界煩悩記

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78 カザノリア9

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アマゾフ北部国境第二十四小隊第二拠点守備隊長 サチ

 突然北部国境指令本部へと呼び出された。
 今年二回目の呼び出しだ。

 前回の呼び出しは、貴族の糞餓鬼に撤退指令を伝えなかった件についての尋問だった。

「サチ部隊長、貴様なぜドルファの部隊だけに撤退命令を伝えなかった」

 諮問官はあの糞餓鬼のおば、胸糞悪い貴族だった。

「ドルファ殿の部隊は撤退指令が出た時点で敵軍に囲まれておりました。伝令が敵軍に囚われた場合に発生する我が軍への追撃による被害を勘案し、不本意ながら伝令の派遣は見送りました」
「それは、第七拠点も、第九拠点も条件は一緒だっただろ、第十三拠点などは交戦の真っ最中だった筈だぞ」
「デリノフ指令補佐殿、何れの拠点も背後に崖を抱えております。崖を下るルートがありますので伝令が敵兵に捕えられる危険性はありません。第八拠点は斜地に設営された拠点であります。当然リスクが大きく違います」
「うっ」

 現場を知らない貴族の上官殿は騙し易すかった。
 自分を睨み付けるだけで、他の同席した査問官の手前、それ以上の追及は無かった。
 尋問後、叩き上げ組の指令本部付きの上官殿達が集まって、酒を奢ってくれた。
 デリノフ指令補佐と貴族達の悪口を肴に盛り上がった。

 今日の呼び出しは戦略室付けの人事部隊からだった。

「なんの用事すかね、隊長」
「あたいにだって解らないさ、がさつな連中だけ選んで呼び出されてるしよ。おまえら、この間の合同訓練で他の部隊の上官にちょっかい出したんじゃないだろうな」
「大丈夫すよ、襟首掴んで締め上げただけで、殴ってないすから」
「そうっすよ、泣いて謝ったから許してやったし」
「ちっ、しょうがねーなー。後で御礼参りに行くから名前教えろよな」
「でも、小物っすよ」
「うん、小物。違うんじゃないっすか」

 確かに喧嘩のチクリなら、先輩が多い治安隊が出向いて来て、此奴等を殴り飛ばして終わりにする筈だ。
 若い頃、貴族の生意気な餓鬼を半殺しにして投獄されたことがあるが、呼び出しは確か人事部隊からじゃなかった。

 他の前線で大きな戦闘が起こったとの話は聞かないし、配置換えならば、呼び出されたのが私と私の部隊の分隊長の半分だけというのも腑に落ちない。
 第一、配置換えならば、先に先輩達から連絡が入る筈だ。

”コン、コン”

「二十四小隊第二拠点守備隊長サチ及び部下分隊長八名、出頭いたしました」
「入れ」
「はい、失礼します。うっ」

 デリノフ指令補佐と人事部隊長が並んで座って待っていた。

「さあ、ソファーに腰を下ろして楽にして頂戴」
「いえ、結構であります」

 勿論誰一人としてソファーに座る者はいない。
 直立不動で要件を聞いた。

 特殊任務中隊への転属と、国外潜入特殊任務隊の隊長を命じられた。
 実際の隊員は見た事が無いが、隊名は誰でも知っている有名な隊だ。
 通称”まんこ隊”、他国の男と子作りして情報収集する部隊だと聞いている。

「指令補佐殿、自分の知る限り国外潜入隊は、男を欲情させる容姿を基準に隊員を集める隊と聞いております」
「ええ、そのとおりよ。男は子作りの時に一番無防備になるから、子作りに引き込むためにそんな基準になるのよ」
「自分の知識では、二十歳前の胸と腰が大きく、顔立ちが整った者が適任だと聞いております」
「ええ、そのとおりよ。良く勉強しているわね」
「ありがとうございます。命じられれば、軍人として地獄へでも切り込みますが、自分達九名、今述べた基準に最も適さない人材であると愚行いたします。自分は来月で三十三になります。部下の最も若い者でも二十八であります」
「ああ、それなら、私の把握している情報では何の問題もないわ」
「指令補佐殿、自分達には子作りの経験がありません」
「サチ特殊任務隊長、これは命令です。軍はナトチウスとの戦闘において、この作戦が国の存亡を決する大変重要な要素であると考えています。実際にこの数か月でナトチウスの攻勢が治まって、こちらが押し返しているでしょ」
「ええ、確かに」
「それくらい重要な任務なのですよ」
「はい、了解いたしました。喜んでお受け致します」

 事務方から資料を受け取って目を通す。
 ナトチウスへの命懸けの潜入と攪乱工作と思って、襟を正して資料を読み始めたが違った。
 潜入地はナトチウスを越えた向う側の国クルシュ皇国。
 ナトチウスと国境を接しているカザノリアと言う地方だった。
 そこには既に小隊が潜入しており、私達はそこに合流するとの内容だった。
 ほっと、息を吐いたが、次の瞬間息が詰まった。

「事務官殿、指揮官名にドルファ部隊長の名が記載されておりますが、奴と奴の部隊は、軟弱にも敵軍に投降して、今頃ナトチウスの慰み物になっている筈です。誤記と推測されますので御確認願います」
「いいえ、ドルフェ小隊長殿の部隊は、クルシュ皇国のカザノリア地区で活動を継続されております」

 何かからくりが見えて来た。

ーーーーー
特殊任務中隊カザノリア小隊副官兼特殊任務隊隊長 サチ

「ドルファ小隊長、貴官の副官として着任したサチだ、宜しく頼む。貴様の指名した分隊長八名も同伴したが、紹介は必要ないな。ところで貴様、何を企んでおる」
「うっふっふっふ。私だけ重要な任務を頂いては申し訳ないから、お世話になった皆様にもお手伝いして頂こうかと思いまして御呼びしたの。私達の雇い主であるオーク男爵を紹介するから付いて来て下さい」
「私は軍務で赴任しただけで、穢らわしい男に雇われる気は無いぞ」
「私がオーク男爵に雇われていますから、私の配下である貴方達も雇われて貰います」
「拒否をする。軟弱な男の配下なんぞに入れるか。なあ」
『おー』
「うわー、嬉しい。軍人らしい誇るべき態度ですわ。私に雇用解除の権限はありませんから、あなた達でオーク男爵を説得して下さい。力の違いを見せつければ、直ぐに納得して貰えると思いますよ。今鎧と剣を用意しますから、殺しちゃっても構いませんよ」

 何かこいつ、言葉に感情が籠り、表情も物凄く豊かになった様な気がする。
 無表情に平板な声で喋っていた奴とは別人の様だ。

「オーク、新しい人を紹介するわ。勝負してあげてね。お昼御飯と夕御飯は部屋に運ばせるわね」

 それだけ言うと、ドルファは鼻歌混じりに部屋を出て行った。
 書斎の椅子から立ち上がって近づいて来たのは、オーガだった。
 くそっ、ドルファに騙された。

「囲んで倒すぞ」
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