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Ⅰ 第一学年
13 従属術式
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「今日からやっと復帰できる様になった。皆に迷惑を掛けて申し訳なかった。私は少し慢心していたようだ、だが地獄巡りして閻魔様と面識ができるなんて良い経験だったと思っている」
担任の夢野先生が無事復帰してホームルームで話をしている、何か頬が少し扱けたようだ。
「確かに良い経験だったが、度々続くと私の講義に支障を来す。そこで学年主任から提案が有った、主要術式は仕方ないとしても、乱動、お前はなるべく雷夢と同じ従属術式を履修しろ、雷夢、お前は乱動と履修を調整して乱動をサポートしろ」
要するに厄介事を俺に押し付けて処理させる積りらしい、これは一言、言って置かなければ。
「先生、僕と乱動さんじゃ能力の属性が大きく違い過ぎます。同じ従属術式を履修するのは難しいと思います」
「何だ、雷夢は乱動が嫌いなのか」
「いえ、嫌いじゃありません」
「なら、好きなんだな。好きに違いない、いや、絶対に好きなんだ、お前は恋している」
「先生、幻術使わないで下さい」
「ちっ」
うん、先生も必死だ、三途の川を越えたのだから良く解る。
「えーと、そうだった、雷夢、これは職員会議での決定事項だから従え、おまえクラス委員だろ」
うん、絶対に嘘くさい。
「それにお前なら大丈夫だ、恭平の研究室で助手やってるんだろ、なら絶対に大丈夫だ」
クラスの女子から感嘆と小さな悲鳴が漏れた、でもこれは少し違う、手伝いはしたが助手に雇われた覚えは無い。
「あっ、もうこんな時間だ。雷夢、宜しく頼む」
先生は教室から急いで出て行ってしまった、うー、逃げられた。
「雷人君、履修予定教えて」
乱動さんが椅子を抱えてやって来た、なんか嬉しそうだ。
「雷夢君、私達にも履修予定教えてくれる」
クラスの女子達が寄って来た、こんな経験生まれて初めてだ。
「うん、いいよ。えーとね、もう履修してるのが滅鬼術」
『えー!』
何か一遍で退かれてしまった。
午前の普通の授業も終わり、迷子ちゃんと舞君と一緒に昼飯を食っている。
迷子ちゃん?乱動さんから舞君と同じ様に名前で呼んで欲しいとのリクエストがあったのだ。
今日の午後一番の発術の講義が同じなので、高等部の食堂で一緒に飯を食っている、発術の講義は履修希望者が多いので大講堂で行うのだ。
「ふーん、雷人は符術も覚えるんだ」
「ああ、自分で書ければ安上がりだからな、炬燵鬼が出る度に六千円掛かってたら堪らないしさ」
「迷子ちゃんも符術覚えるの」
「うん、私護符作って貰ってから凄く気が楽になったでしょ、だから私も護符を作れたらなって思って」
「僕も履修したいけど音術だと呪符は使わないからなー、じゃっ、僕は着替えが有るから先に行くね」
コーヒーを一杯飲んでから迷子ちゃんと二人で大講堂へ向かう、少々出遅れた様で講堂の前の方の席しか空いてなかった、なので最前列の教壇の前に座る。
講堂を見回して驚いた、使役術なのだろう、犬連れや猿連れ、鷹や烏や鵜を連れた奴もいる。
その中でも最も多いのが巫女姿、三分の一くらいがそうで、鈴・扇・笹・榊・幣など依り代となる採物を持って中程に固まっている、うん、一大勢力だ。
その集団から一人、鈴を持った可愛い子がこちらに向かって歩いて来た。
「どう、雷人」
「おー、舞か。なんか物凄く良く似合ってるから解らなかったぞ」
「ふふふ、ありがとう」
舞君が僕の脇の席にちょこんと座った、そして講義が始まった。
「この中で発術の講義を聞くのが初めて人手を挙げて」
僕らのクラスの生徒、約四十人が手を挙げる。
「その中で陰陽と全く関わりの無かった人は」
初心者の六人が手を挙げる。
「呪文とは危険な物です、間違えば魔を呼び出して周囲に迷惑を掛けかねません。今日、何種類かの呪文と印を教えますが、今手を挙げた六人は、呪文に慣れるまでは使わないで下さいね。じゃっ、次に実際に呪文を唱えた事がある人」
殆ど全員が手を挙げる、だが、最前列に座った僕がそれに紛れることはない。
「君は初心者だったよね」
「はい、すいません」
「次に実戦で鬼や魔物を祓った事がある人は」
これはさすがに数人しか居ない、最前列で手を挙げてる僕は良く目立つ。
「君は私をからかってるのかい」
「いえ違います」
「なら祓った相手を言ってごらん」
「今朝炬燵鬼を祓いました」
「ん?君は鬼門寮の生徒かい」
「はい」
「すまなかった、それなら良く解った」
僕は凄く不安そうな顔をしたらしい。
「大丈夫だよ、数を熟せば上達するよ」
いえ、先生、僕が心配してる理由は違うんです、鬼祓うのにお金が掛かるんです。
講義の後半は、主要術式の性質で小グループに分かれることになった。
僕は火術や水術などの基本術のグループ、舞君は巫女さん集団に戻って行き、そして迷子ちゃんの偶発術は使役術のグループと一緒になった。
ここでトラブルが発生した、使役術グループは教壇前に呼ばれたのだが、犬や猿が迷子ちゃんに怯えて押しても引いても教室の後ろから降りて来なかったのだ。
仕方が無いので、迷子ちゃんが教室の後ろに向かったのだが、これで動物たちがパニックになった。
犬なんか尻尾を後ろ足の間に挟んで震えていたのだが、迷子ちゃんが近づくと、糞や尿を垂れ流して逃げ出したのだ、猿なんか泡吹いて倒れてる奴もいる。
そして教室中が大騒ぎになった。
担任の夢野先生が無事復帰してホームルームで話をしている、何か頬が少し扱けたようだ。
「確かに良い経験だったが、度々続くと私の講義に支障を来す。そこで学年主任から提案が有った、主要術式は仕方ないとしても、乱動、お前はなるべく雷夢と同じ従属術式を履修しろ、雷夢、お前は乱動と履修を調整して乱動をサポートしろ」
要するに厄介事を俺に押し付けて処理させる積りらしい、これは一言、言って置かなければ。
「先生、僕と乱動さんじゃ能力の属性が大きく違い過ぎます。同じ従属術式を履修するのは難しいと思います」
「何だ、雷夢は乱動が嫌いなのか」
「いえ、嫌いじゃありません」
「なら、好きなんだな。好きに違いない、いや、絶対に好きなんだ、お前は恋している」
「先生、幻術使わないで下さい」
「ちっ」
うん、先生も必死だ、三途の川を越えたのだから良く解る。
「えーと、そうだった、雷夢、これは職員会議での決定事項だから従え、おまえクラス委員だろ」
うん、絶対に嘘くさい。
「それにお前なら大丈夫だ、恭平の研究室で助手やってるんだろ、なら絶対に大丈夫だ」
クラスの女子から感嘆と小さな悲鳴が漏れた、でもこれは少し違う、手伝いはしたが助手に雇われた覚えは無い。
「あっ、もうこんな時間だ。雷夢、宜しく頼む」
先生は教室から急いで出て行ってしまった、うー、逃げられた。
「雷人君、履修予定教えて」
乱動さんが椅子を抱えてやって来た、なんか嬉しそうだ。
「雷夢君、私達にも履修予定教えてくれる」
クラスの女子達が寄って来た、こんな経験生まれて初めてだ。
「うん、いいよ。えーとね、もう履修してるのが滅鬼術」
『えー!』
何か一遍で退かれてしまった。
午前の普通の授業も終わり、迷子ちゃんと舞君と一緒に昼飯を食っている。
迷子ちゃん?乱動さんから舞君と同じ様に名前で呼んで欲しいとのリクエストがあったのだ。
今日の午後一番の発術の講義が同じなので、高等部の食堂で一緒に飯を食っている、発術の講義は履修希望者が多いので大講堂で行うのだ。
「ふーん、雷人は符術も覚えるんだ」
「ああ、自分で書ければ安上がりだからな、炬燵鬼が出る度に六千円掛かってたら堪らないしさ」
「迷子ちゃんも符術覚えるの」
「うん、私護符作って貰ってから凄く気が楽になったでしょ、だから私も護符を作れたらなって思って」
「僕も履修したいけど音術だと呪符は使わないからなー、じゃっ、僕は着替えが有るから先に行くね」
コーヒーを一杯飲んでから迷子ちゃんと二人で大講堂へ向かう、少々出遅れた様で講堂の前の方の席しか空いてなかった、なので最前列の教壇の前に座る。
講堂を見回して驚いた、使役術なのだろう、犬連れや猿連れ、鷹や烏や鵜を連れた奴もいる。
その中でも最も多いのが巫女姿、三分の一くらいがそうで、鈴・扇・笹・榊・幣など依り代となる採物を持って中程に固まっている、うん、一大勢力だ。
その集団から一人、鈴を持った可愛い子がこちらに向かって歩いて来た。
「どう、雷人」
「おー、舞か。なんか物凄く良く似合ってるから解らなかったぞ」
「ふふふ、ありがとう」
舞君が僕の脇の席にちょこんと座った、そして講義が始まった。
「この中で発術の講義を聞くのが初めて人手を挙げて」
僕らのクラスの生徒、約四十人が手を挙げる。
「その中で陰陽と全く関わりの無かった人は」
初心者の六人が手を挙げる。
「呪文とは危険な物です、間違えば魔を呼び出して周囲に迷惑を掛けかねません。今日、何種類かの呪文と印を教えますが、今手を挙げた六人は、呪文に慣れるまでは使わないで下さいね。じゃっ、次に実際に呪文を唱えた事がある人」
殆ど全員が手を挙げる、だが、最前列に座った僕がそれに紛れることはない。
「君は初心者だったよね」
「はい、すいません」
「次に実戦で鬼や魔物を祓った事がある人は」
これはさすがに数人しか居ない、最前列で手を挙げてる僕は良く目立つ。
「君は私をからかってるのかい」
「いえ違います」
「なら祓った相手を言ってごらん」
「今朝炬燵鬼を祓いました」
「ん?君は鬼門寮の生徒かい」
「はい」
「すまなかった、それなら良く解った」
僕は凄く不安そうな顔をしたらしい。
「大丈夫だよ、数を熟せば上達するよ」
いえ、先生、僕が心配してる理由は違うんです、鬼祓うのにお金が掛かるんです。
講義の後半は、主要術式の性質で小グループに分かれることになった。
僕は火術や水術などの基本術のグループ、舞君は巫女さん集団に戻って行き、そして迷子ちゃんの偶発術は使役術のグループと一緒になった。
ここでトラブルが発生した、使役術グループは教壇前に呼ばれたのだが、犬や猿が迷子ちゃんに怯えて押しても引いても教室の後ろから降りて来なかったのだ。
仕方が無いので、迷子ちゃんが教室の後ろに向かったのだが、これで動物たちがパニックになった。
犬なんか尻尾を後ろ足の間に挟んで震えていたのだが、迷子ちゃんが近づくと、糞や尿を垂れ流して逃げ出したのだ、猿なんか泡吹いて倒れてる奴もいる。
そして教室中が大騒ぎになった。
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