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Ⅰ 第一学年
14 本音と建前
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周囲の教室からモップとバケツを引っ掻き集めて全員での清掃作業が始まった、でもさすがに陰陽師を養成する高校だ、転んでもただでは起きない。
全員が水を入れたバケツの前で呪文を唱えさせられた、うん、臭いを残さない様に清掃に使う水を清めるのだ。
「天端を流るるこの水の清き井の清水にして・・・」
手印を結んで”えい”と気合を入れる。
でも初心者の悲しいところで、やはり先生から先ほど説明が有った通り不安定だった。
脳裏の奥の煩悩が混じり込むらしく、バケツの中の水が神酒、そう、日本酒に変わっていた、うんこりゃ密造だ、ヤバイかもしれない。
迷子ちゃんも唖然としていた、覗き込んだらバケツの中身が昨日の夜食べたカレーに変わっており、肉やニンジンやジャガイモもしっかり転がっている。
舞君はお湯だった、うん辛うじてセーフだろう、何故お湯なのかと聞いたら、頬を赤く染めて睨まれた。
仕方が無いので、セーフの舞君のお湯を使って清掃に参加した。
「濁という濁は幣に掛かけ清と化し祓いて・・」
最後に幣を持った巫女さん達を先頭に場全体を祓う、しっかり清掃作業が実習に化けていた。
「それでは今日の講義はこれで終了します、来週からは先程お話したグループ分けに変えますから使役術の人達も安心して参加して下さい。今日出来なかった個所は良くテキストを読んで各自勉強するように、以上です」
迷子ちゃんと僕と舞君、この術特性がまるで異なる三人を一グループにすると宣言されてしまった。
舞君は巫女グループの女の子達から”がんばってー”と手を振られていたが何を頑張るのだろうか。
舞君と別れて迷子ちゃんと二人で符術の教室に向かう。
うん、なんと講義は墨を磨るための水の清めから始まった。
僕の日本酒はお酒臭いことを我慢すればどうにか使えたが、迷子ちゃんのは担当の先生も腕組みして考え込んでいた、うん、前途多難だ。
翌朝のホームルーム、昨日の発術でのトラブルを聞いた様で夢野先生が迷子ちゃんと一日中手を繋いでいろなんて無茶を言い始めた。
撲を冷やかすクラスメイトは皆無だ、舞君が少し不機嫌な表情をしたくらいだ、使役術の連中何て一生懸命先生の発言に頷いていた。
午前中の授業は無事終わる、水曜日の午後は主要術式と従属術式の両方の講義が有る日で、主要術式の講義を従属術式の単位として取得できる。
僕はせっかく光術と幻術の能力を持っているので、両方を少しづつ齧って見る積りでいた。
教室に入ってみて驚いた、殆どが女子なのだ、僕はなんか白い目で見られている気がした。
これは後から知った事なのだが、この同じ教室で続いて行われる光術二時間、幻術二時間の講義は、密かにセットで化粧術の講義と呼ばれていて女子に絶大な人気があるそうなのだ。
摩耶と雷子も履修していたが、珍しく雷子が寄って来ない、そして休み時間に教室の外から手招きされた。
「隣の女は誰なの」
珍しく雷子が怖い顔で聞いて来た、摩耶と雷子を囲んで数人の女の子がいるから、二人のクラスメートなのだろう、確かA組だった筈だ。
「クラスメートの乱動さんだ」
『ひっ』
摩耶と雷子も含めて全員が後退った、迷子ちゃんはA組でも有名人らしい。
「どうりで、何か強烈な厄災の気配が教室の前の方に漂ってると思ったのよ、あんた平気なの」
摩耶だ、しきりに頷いていたから相当気になっていたのだろう。
「初日は空間にぼこぼこ穴が開いてて危なかったが、今は護符着けてるから大丈夫だよ」
さすがにA組の優等生達だ、”ぼこぼこ”だけで状況が解った様で青くなっている。
「雷君、護符着けててあの気配は尋常じゃないわよ。近寄らない方がいいんじゃない」
真剣に心配してくれて居る様だ、でも僕だって積極的に関わっている訳じゃ無い。
「担任の先生から世話を頼まれててさー、寮も隣の部屋だし」
話を聞いていた女の子達の表情が変わる、いきなり雷子に胸倉を掴まれた。
「えっ、何よそれ。男と女が同じフロアなんて信じられない。雷君あの子の部屋なんかに行ったことないわよね」
「いや、大きな4LDKだった」
あう、あう、あう、首を大きく揺すられてしまった、受け身の稽古で首を鍛えておいて良かった。
「だめー、だめよ雷君、浮気しちゃ。私達婚約者なんだから」
なんかこの数日で恋人からグレードアップしている、俺には婚約した記憶は無い。
講義再開、化粧に役立つかどうかは別にしても、確かに光術と幻術は親和性の良い術式だった、光の点滅で幻術の世界に引き入れたり、光で幻を作って惑わせる事ができるのだ。
でも少々気になったのは、明らかに対人手法の説明なのに、先生が必ず”人に使っちゃ駄目ですよ”と最後に付け加えるのだ。
本音と建前と言う奴だろう、聴講している女生徒達は、最後のフレーズには特に深く真剣に頷いていた。
全員が水を入れたバケツの前で呪文を唱えさせられた、うん、臭いを残さない様に清掃に使う水を清めるのだ。
「天端を流るるこの水の清き井の清水にして・・・」
手印を結んで”えい”と気合を入れる。
でも初心者の悲しいところで、やはり先生から先ほど説明が有った通り不安定だった。
脳裏の奥の煩悩が混じり込むらしく、バケツの中の水が神酒、そう、日本酒に変わっていた、うんこりゃ密造だ、ヤバイかもしれない。
迷子ちゃんも唖然としていた、覗き込んだらバケツの中身が昨日の夜食べたカレーに変わっており、肉やニンジンやジャガイモもしっかり転がっている。
舞君はお湯だった、うん辛うじてセーフだろう、何故お湯なのかと聞いたら、頬を赤く染めて睨まれた。
仕方が無いので、セーフの舞君のお湯を使って清掃に参加した。
「濁という濁は幣に掛かけ清と化し祓いて・・」
最後に幣を持った巫女さん達を先頭に場全体を祓う、しっかり清掃作業が実習に化けていた。
「それでは今日の講義はこれで終了します、来週からは先程お話したグループ分けに変えますから使役術の人達も安心して参加して下さい。今日出来なかった個所は良くテキストを読んで各自勉強するように、以上です」
迷子ちゃんと僕と舞君、この術特性がまるで異なる三人を一グループにすると宣言されてしまった。
舞君は巫女グループの女の子達から”がんばってー”と手を振られていたが何を頑張るのだろうか。
舞君と別れて迷子ちゃんと二人で符術の教室に向かう。
うん、なんと講義は墨を磨るための水の清めから始まった。
僕の日本酒はお酒臭いことを我慢すればどうにか使えたが、迷子ちゃんのは担当の先生も腕組みして考え込んでいた、うん、前途多難だ。
翌朝のホームルーム、昨日の発術でのトラブルを聞いた様で夢野先生が迷子ちゃんと一日中手を繋いでいろなんて無茶を言い始めた。
撲を冷やかすクラスメイトは皆無だ、舞君が少し不機嫌な表情をしたくらいだ、使役術の連中何て一生懸命先生の発言に頷いていた。
午前中の授業は無事終わる、水曜日の午後は主要術式と従属術式の両方の講義が有る日で、主要術式の講義を従属術式の単位として取得できる。
僕はせっかく光術と幻術の能力を持っているので、両方を少しづつ齧って見る積りでいた。
教室に入ってみて驚いた、殆どが女子なのだ、僕はなんか白い目で見られている気がした。
これは後から知った事なのだが、この同じ教室で続いて行われる光術二時間、幻術二時間の講義は、密かにセットで化粧術の講義と呼ばれていて女子に絶大な人気があるそうなのだ。
摩耶と雷子も履修していたが、珍しく雷子が寄って来ない、そして休み時間に教室の外から手招きされた。
「隣の女は誰なの」
珍しく雷子が怖い顔で聞いて来た、摩耶と雷子を囲んで数人の女の子がいるから、二人のクラスメートなのだろう、確かA組だった筈だ。
「クラスメートの乱動さんだ」
『ひっ』
摩耶と雷子も含めて全員が後退った、迷子ちゃんはA組でも有名人らしい。
「どうりで、何か強烈な厄災の気配が教室の前の方に漂ってると思ったのよ、あんた平気なの」
摩耶だ、しきりに頷いていたから相当気になっていたのだろう。
「初日は空間にぼこぼこ穴が開いてて危なかったが、今は護符着けてるから大丈夫だよ」
さすがにA組の優等生達だ、”ぼこぼこ”だけで状況が解った様で青くなっている。
「雷君、護符着けててあの気配は尋常じゃないわよ。近寄らない方がいいんじゃない」
真剣に心配してくれて居る様だ、でも僕だって積極的に関わっている訳じゃ無い。
「担任の先生から世話を頼まれててさー、寮も隣の部屋だし」
話を聞いていた女の子達の表情が変わる、いきなり雷子に胸倉を掴まれた。
「えっ、何よそれ。男と女が同じフロアなんて信じられない。雷君あの子の部屋なんかに行ったことないわよね」
「いや、大きな4LDKだった」
あう、あう、あう、首を大きく揺すられてしまった、受け身の稽古で首を鍛えておいて良かった。
「だめー、だめよ雷君、浮気しちゃ。私達婚約者なんだから」
なんかこの数日で恋人からグレードアップしている、俺には婚約した記憶は無い。
講義再開、化粧に役立つかどうかは別にしても、確かに光術と幻術は親和性の良い術式だった、光の点滅で幻術の世界に引き入れたり、光で幻を作って惑わせる事ができるのだ。
でも少々気になったのは、明らかに対人手法の説明なのに、先生が必ず”人に使っちゃ駄目ですよ”と最後に付け加えるのだ。
本音と建前と言う奴だろう、聴講している女生徒達は、最後のフレーズには特に深く真剣に頷いていた。
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