神楽坂学院高等部祓通科

切粉立方体

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Ⅰ 第一学年

40 そして夏休み7

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出雲空港を朝一番の便で飛び立ち羽田に向かう、阿蘇の火見さんや熊野の水見さん、飛騨の風見さんに比べれば、まだ交通の便には恵まれているのかもしれない。

「生と死の境界が揺らいでしまった」

父さんの言葉が耳に残っています、一族の帰趨ではなく、人の生き物として生き方に懸念を感じているようです。

私が小学生の頃、里帰りした兄様と姉様が父さんと虚実の議論を交わしているのを聞いたことがあります。
情報網の発達で虚実の境界が揺らぎ、虚が実を持ち始めたという話題だったと思います、兄さんが情報世界への関与を強く主張し、姉さんは否定的でした、たぶん私達が家の道具的な扱いをされるのが嫌だったのだろうと思います。
父さんはどちらの否定も肯定もせず、ただ、風の吹く方では無く、神々の示す川の流れに従うと仰っていました。
そして今、私は雷夢さんの元に向かっています、これは神々の示す川の流れなのでしょうか、父さん。

ん、雷子からラインが送られてきました、うっ、雷夢さんに御姫様抱っこして貰っている写真が付いてます、あん畜生。

ーーーーー

昨日は楽しかったです、昼間は六人で泳ぎ回り、夜も雷子さんが半分お眠でしたが飲み捲りました。
情報世界を行き来して、ハルさんと美子ちゃんも誘って一緒に騒ぎました。
舞君がハルさんに頼んでスパリゾートの光景を再現して貰い、裸で飛び込んで行きました。
明美と香も裸で飛び込んで行ったので、酔った勢いで私も続きました。
迷子とハルさんが雷君を裸に剥いて連れてきました。
半分寝ぼけている雷子の手を美子ちゃんが引いています。

人気の無い静まり返った広いプールも温泉も私達の貸し切りです、お店の中で裸で鬼ごっこしても誰も文句は言いません、みんなで舞台に上がって、裸で踊ってみました。
お風呂の中で雷君の背中に身体を擦り付けると、なんか暖かくて凄く気持ちが良かったです。
ハグして貰ったら、すっぽりと包み込まれるような感じで幸せな気分になりました。

気が付いたら、雷君の腕枕で寝ていました、慌てて身体を確認したら、浴衣を着ていたので安心しました。
うわー、酔っていたとはいえ、思い出しただけで恥ずかしいです。

「雷人、昨日情報世界で美子の教育上宜しく無いことしてた気がするんだが覚えてるか」
「すまん明美、記憶が飛んでるんだ」
「香は」
「私も開放感が有った様な気がするんだけど良く覚えてない」
「迷子と舞は勿論覚えてないよな」
「うん、ぜんぜん」
「私も」
「雷子は」
「最初っから何にも無い、うー、頭が痛い」
「紅葉は」
「ごめんなさい、私も全然」

うー、ごめんなさい、覚えてますが恥ずかしくて言えません。

「仕方ない、美子に直接聞くか、ちょい、ちょい、ちょいっと。おはようございます、風間谷です、お世話になってます。すいません、美子ちゃんに変わって下さい。おう、美子か、昨日の事忘れちゃったんで教えてくれないか」
「変な明美お姉ちゃん、良いよ、えーとね」

きゃー。

プールに行ったら水着を着ていることに凄い違和感を感じました、危ないです、変な性癖が芽生えそうです。

ーーーーー

夕食時までには全員が戻って来た、話を聞いた限り、各家は今回の件を、死と生の境界の有り方として重く受け止めているらしい。

「紅葉、お前の家はどうした」
「うん、まだ返事が全然返って来ない」

「雷夢さん、後で試したい事が有るの、良いかしら」
「弥生、エッチー事は駄目だからね」
「あんたと違うわよ、雷子」
「宴会前の方が良いかい」
「ええ、全てを雷夢さんに委ねる事になるからお酒が入る前の方が良いわ」
「こらー、やっぱりエッチー事じゃないか」
「違うわよ」

布団の中で横たわる大神宮さんの上に馬乗りになって、僕は大神宮さんと唇を重ねる、決してエッチな事を始めようとする訳ではない、真剣だ、大神宮さんの唇に神経を集中する。

「私幽体離脱が出来るんです。これは思い付なのですが、霊体になれば情報世界に入れるんじゃないでしょうか」
「身体は大丈夫なの」
「身体は呼吸や脈拍が減って、深く寝ている状態になります。一週間くらいは離脱が可能です」
「離脱している時、幽体には意識があるの」
「お酒を飲んだ時の様にふわふわした感じになりますが、意識はあります」
「ならばその意識が感知出来れば、情報世界に連れて行ってあげられると思うよ」
「でしたら一番密度の濃い状態で感知して下さい、幽体は口を介して外界に出て行くんです」

とっ、言うことで僕は大神宮さんと唇を重ねることとなった。
唇を重ねたまましばらく動きを止める、大神宮さんが一瞬ピクリと痙攣し、僕の口の中に何かが立ち昇って来る。
懸命にその中の大神宮さんの意識探し求める、居た、引き寄せて抱留め、情報世界、僕のパソコンの中に連れて行った。

「へー、ここが情報世界なんだ。言葉じゃ全然理解出来なかったけど、体験してみると入る感覚が判る気がする。少し練習に付き合ってくれる」
「うん、良いよ」

何回も唇を重ねると、僕のサポート無しに大神宮さんは情報世界へ入れる様になった。

「雷夢君、私達も幽体離脱なら出来るの、私達も情報世界に連れて行って。お尻からも幽体離脱できるけど、どっちが良い」
「口からでお願いします」

火見さん、水見さん、風見さんの練習にも付き合った、他の女性陣が怖い顔をして睨んでいる。
これは練習なんだけど。
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