神楽坂学院高等部祓通科

切粉立方体

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Ⅰ 第一学年

43 そして夏休み10

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正義を成した後の朝は清々しい、日本語は解らないがテレビのニュース番組ではイケブクロの映像を映し出して大騒ぎをしていた。
もう少し少年との楽しい時を過ごしたかったのだが、日本の警察が私を感知する前にこの国を出よう思う、早朝に宿を出発した。
勿論あの少年は、証拠を消すために愛情を込めて部屋の中で処分してきた。

手続きを済ませ、空港の出発ロビーの椅子で寛ぐ、これでもう安心だ。
すると、携帯電話を見ながら少年が真っ直ぐ私の方へ歩いて来てぶつかって転んだ。
騒ぎを起こしたくないので我慢したが、まったくこの国はマナーがなっていない。

ーーーーー

「ハル、ご苦労様」
「どういたしまして、マスター」

ぶつかることで相手の怒りの意識を引き出し、ハルに作ってもらった周りの光景をそのまま映した情報世界に引き込んだのだが、上手く行った。
情報世界の中の、ハルが作った光景の中で独り相撲を取って貰い、先程椅子に座らせてから意識を戻したのだ。
彼は昨晩空港の中で寝かされていたなんて、気が付いていないだろう、今頃、達成感に浸りながら日本を飛び立った筈だ。

身体に落書きを一杯書いておいたので、これが警告であることは理解するだろう。
たぶん、もう心配は無い筈だ、何時の時点で意識を奪われたのか解らない筈なので、恐ろしくて日本にはもう来られないだろう。

「ハル、この天使の水晶って相場はどの位なんだろう」
「この一月の闇オークションの平均入札額が一億二千三百六十三万百二十三円です」

うわー、これってそんなに高いんだ。

「じゃっ、この大天使は」
「一昨年十二月の入札事例ですと、四十七億八千二百万円です」

うん、どうせ警視庁に対しては無料奉仕なのだから、手間賃として貰っておこう。

「でも雷君、僕のキャラの役回りが酷いんじゃない」
「仕方無いだろう、彼奴の嗜好なんだから」
「そうですわよ、私達のキャラなんか首をチョンと切られてお終いのザコキャラですわよ。可笑しくありません」
「いいえ、正確なシュミレーション結果です」
「そうなのハル、じゃ、なんで私のキャラだけ真っ先に八つ裂きなの、あんた私情が入ってたでしょ」
「いいえ、適切な役回りと最適な表現です」

「でもあのいじめめ方と攻め方は参考になったなー」
「ええ、なかなかテクニシャンでしたよね、舞も色っぽかったし」
「あー、みんな僕の方視てる。変な事考えてないよね、止めてよね絶対」

「じゃっ、成田で何か美味い物でも食ってから帰るか」
「賛成、私新勝寺の参道へ行きたい」
「鰻も食いたい」
「霊堂の近くの御蕎麦が美味しいらしいわよ」
「大きなお寿司がいい」
「あんみつ、あんみつ」

僕らの世界は相変わらず平和だ。

ーーーーー
翌日、有楽町での依頼を片付けた後、権田さんに顛末を報告しに行った。
すると権田さんがおもむろに何処かへ電話をかけ始めた。

「よしっ、ママさんが心配してたから報告に行こう。出入り禁止は解けてるしよ」

うわー、僕の大好きな尻尾が待っている、彼女達に恩を売ったのだから、少しナメナメ、スリスリさせて貰っても罰は当たらないだろう。

「ママー、来たよー、僕だよー」
「いらっしゃ・・・・・・・、何しに来たの」

あれ?何か退かれてしまった。

「権田さん、僕が来ること話してないの」
「すまん、雷人、店閉められると困るんでまだ言ってない」

「ママ、そんなに邪険にしないでやってくれるか、此奴が例の神父を追い返してくれたんだからよ」
「本当に」
「本当ですよ、ママー」
「はー、仕方が無いか、今日は特別よ。ミミちゃーん、お願い」
「はーい、ママ。いらっしゃ・・・・・・。帰れ、この野郎」

中級試験で僕の相手をしてくれたサキュバスのお姉さんだ。

「ミミちゃんごめん、ちょっと義理があるの。あなたじゃないと務まらないからお願い」
「うー、仕方がないなー。お前、尻尾は触るなよ」

胸と腿は触らせてくれるのだが、お尻に手を出すとぴしゃりと叩かれる、うーん手強い。
強行手段だ、テーブルの上のレミーマルタンを口に含んでミミさんを引き寄せる。

”ぶちゅ”

得意の口移しだ、それ、おかわり。

”ぶちゅ”

「此奴、何しやがる」

ミミさんが両手で僕を押し返そうとする、うっふっふっふ、お尻ががら空きだ。

「きゃー」

そうだ、僕が求めていたのはこの尻尾の感触だ。

「ママー!ミミ姉さんが大変」
「ちょっとあなた、止めて頂戴」

それっ、ママさんも一緒に、ママさんの尻尾の毛も柔らかい。

「キャー」

「おっ、雷人やるな、俺も負けられん」
「キャー、止めてー」
「キャー、嫌ー」

そして夜が更けて行った。

ーーーーー

翌朝、ママさんが物凄い不機嫌な顔でお茶漬けを作ってくれた。

「あんた達、三か月出入り禁止」

うー、頭が痛い、寮に戻ろうとしたら、制服を着た生徒が大勢歩いていた。

「雷夢、初日から酒臭い息して遅刻なんて嘗めてるのか。乱動は別か」
「はーい、昨日は雷君一人で池袋へ飲みに行きました」
「なら、雷夢には、特別にスペシャルな夢をプレゼントしよう」
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