神楽坂学院高等部祓通科

切粉立方体

文字の大きさ
45 / 101
Ⅰ 第一学年

44 期末試験

しおりを挟む
当たり前の話だが、夏休みが終わっても仕事の注文は延々と続いている。
対応する時間が減ったのだが、雷子と明美と香が簡単な依頼なら対応してくれるようになったので助かっている。
紅葉と迷子と舞は蟲取りが出来る様になったし、(水見)水江さんも(風見)風華さんも霊体と意識の分離がだいぶ上手になって来た。
灯さんと弥生も、もう一息だ。
水江さんも風華さんも灯さんも弥生も、旅行から帰って来たら、何か精神的な鎧が一皮剥けた様な、精神的にタフになった様な感じで親しげに接する様になって来た。

土日の出張スケジュールも雷子と灯さんが有資格者なので多少手伝ってもらって調整している。
灯さんは情報世界を使った新しい除霊方法を完全に会得しているので、需要の増えた除霊依頼に対応してもらっている。
新しい除霊方法の講習会を依頼して来る陰陽師協会の地方支部も多く、灯さんを中心に水江さん、風華さん、弥生にも講師をお願いして対応している。

小さい子の共通した才能なのだろうか、美子ちゃんは情報世界に順応して、外界へ自由に出入りが可能な程習熟した。
霊体を外界に残し、意識のみを情報世界に送り込む技量は、水江さんや風華さんを上回っており、灯さんや弥生さんに爪の垢を煎じて飲ませたいレベルだ。
霊覚の香水と呼ばれる霊を知覚する為のアイテムを使って彼女の霊体が見える様にしたら、ご両親に泣いて喜ばれた。
画面越しの会話では、やはり距離を感じて居たらしい、触れなくとも、一緒にテレビを見たり喋ったりする彼女に目を細めている。
水戸の実家と僕等の間を飛び回り、彼女は凄くアクティブナ生活を送っている。

ーーーーー
気が付いたら前期期末試験が一週間後に迫っていた。
余程の急ぎでも無い限り、頼んで少し日程を後送りにしてもらって試験勉強時間を確保した。

専門教育科目の中で、特に符術には迷子も僕も相変わらず苦労していた。
墨を磨るための水の清めには何とか二人とも到達したのだが、僕は墨を磨れば磨るほど墨が脱色して行くし、迷子に至っては、墨を磨ると何か違う物が出来上がってしまうのだ。
化学品メーカーや製薬会社の担当者が廊下に控えていて、喜んでその出来上がった怪しげな物を引き取って行く。
迷子の講座に振り込まれるそんな会社から報酬は、僕の収入なんかより、ずっと多いという話だ。

でもこれじゃ試験で出題される符を描く事が出来ない、迷子は真剣にカレーで字を描くことを考えているし、僕は酒臭い墨で字を描く事を考えている。
ただその方法で字を書くと、出来上がる符に変な効力が付与されてしまうので、毎回二人でどきどきしている。
授業中、怖がって助手の人は僕たちに近づこうとすらしない。

その他の専門教育科目
雷術はおじさんが僕に問題を作らせているので絶対に自信が有る、良いいんだろうか、これで。
速術と祓い術は実技試験なので自信がある、光術と幻術は筆記試験だがまあ大丈夫だろう。
滅術も実技試験で、きちんと道場には通っているので大丈夫だろう。
発術も実技試験だし、たぶん数をこなしてるんで大丈夫だと思う。

「雷人、勉強教えてくれよー、赤点取ったら夢野先生から酷い目見せるって言われてるんだよー」
「雷君お願い、数1と物理が自信ないの」
「化学と生物もお願い」
「雷君、雷子も数学ヘルプなの」
「数学の先生はハルだぞ」
「嫌、ハルに教わるくらいなら赤点取る、雷君教えて」

とりあえずハルに部屋を作ってもらって、情報世界で一般教養科目の勉強を始めることにした。
ここならば、御茶を飲みながらまったりと勉強しても、現実世界よりは捗っている筈だ。
結局全員が参加して事務所と同じような広いテーブルで勉強を始めた。

ーーーーー

「ねえ、ねえ、ねえ、お兄ちゃん。美子も学校行きたい」

僕等は勉強に忙しく、美子ちゃんとあまり遊んであげられなくなった、僕等が勉強する姿を見て寂しく思ったのか、美子ちゃんが珍しく駄々を捏ね始めた。
無理だとはっきり言うのも可哀そうだったので、卑怯だとは思ったのだが、結論を先送りにしてしまった。

「解った、解った。初等部に申し込んで見るけど、駄目だったら諦めるんだぞ」
「わーい、わーい」

凄く喜んでいる、その姿を見て、僕は凄く後悔した。
翌日、僕は良心が咎めたので、学務課に出向いて手続きを聞いて見た。
初等部担当の職員さんは優しい人で丁寧に編入手続きを説明して、募集要項と願書などの必要書類を渡してくれた。

結論から言うと、たぶん想定していないと思うのだが、募集要項に霊体では駄目との記載は無かった。
本籍地、生年月日、現住所、性別、国籍、両親の履歴、在学中の成績表もブランクは休学扱いすれば願書の必要事項欄や必要書類も一先ず揃ってしまう。
両親にお願いして必要書類を送ってもらい、手続してみることにした。

ーーーーー
「明美、私こんな点数見た事ないよ」
「香もか、全部九十点台なんて夢見てるみたいだな。おーし、今夜は祝杯だ」

四日間に及ぶ期末試験が終わり、答案用紙が返ってきて学年の成績順位が貼り出された。
なんと僕は学年一位だった、二位が弥生、三位が雷子、迷子と舞と明美と香が同点の四位、僕の事務所のメンバーが上位七人を占めている。
弥生と雷子はともかく、D組の僕を含めた五人はビックリだ。

他の組に衝撃が走り、僕の事務所へのアルバイト希望の問い合わせが殺到した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん

菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処理中です...