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Ⅰ 第一学年
44 期末試験
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当たり前の話だが、夏休みが終わっても仕事の注文は延々と続いている。
対応する時間が減ったのだが、雷子と明美と香が簡単な依頼なら対応してくれるようになったので助かっている。
紅葉と迷子と舞は蟲取りが出来る様になったし、(水見)水江さんも(風見)風華さんも霊体と意識の分離がだいぶ上手になって来た。
灯さんと弥生も、もう一息だ。
水江さんも風華さんも灯さんも弥生も、旅行から帰って来たら、何か精神的な鎧が一皮剥けた様な、精神的にタフになった様な感じで親しげに接する様になって来た。
土日の出張スケジュールも雷子と灯さんが有資格者なので多少手伝ってもらって調整している。
灯さんは情報世界を使った新しい除霊方法を完全に会得しているので、需要の増えた除霊依頼に対応してもらっている。
新しい除霊方法の講習会を依頼して来る陰陽師協会の地方支部も多く、灯さんを中心に水江さん、風華さん、弥生にも講師をお願いして対応している。
小さい子の共通した才能なのだろうか、美子ちゃんは情報世界に順応して、外界へ自由に出入りが可能な程習熟した。
霊体を外界に残し、意識のみを情報世界に送り込む技量は、水江さんや風華さんを上回っており、灯さんや弥生さんに爪の垢を煎じて飲ませたいレベルだ。
霊覚の香水と呼ばれる霊を知覚する為のアイテムを使って彼女の霊体が見える様にしたら、ご両親に泣いて喜ばれた。
画面越しの会話では、やはり距離を感じて居たらしい、触れなくとも、一緒にテレビを見たり喋ったりする彼女に目を細めている。
水戸の実家と僕等の間を飛び回り、彼女は凄くアクティブナ生活を送っている。
ーーーーー
気が付いたら前期期末試験が一週間後に迫っていた。
余程の急ぎでも無い限り、頼んで少し日程を後送りにしてもらって試験勉強時間を確保した。
専門教育科目の中で、特に符術には迷子も僕も相変わらず苦労していた。
墨を磨るための水の清めには何とか二人とも到達したのだが、僕は墨を磨れば磨るほど墨が脱色して行くし、迷子に至っては、墨を磨ると何か違う物が出来上がってしまうのだ。
化学品メーカーや製薬会社の担当者が廊下に控えていて、喜んでその出来上がった怪しげな物を引き取って行く。
迷子の講座に振り込まれるそんな会社から報酬は、僕の収入なんかより、ずっと多いという話だ。
でもこれじゃ試験で出題される符を描く事が出来ない、迷子は真剣にカレーで字を描くことを考えているし、僕は酒臭い墨で字を描く事を考えている。
ただその方法で字を書くと、出来上がる符に変な効力が付与されてしまうので、毎回二人でどきどきしている。
授業中、怖がって助手の人は僕たちに近づこうとすらしない。
その他の専門教育科目
雷術はおじさんが僕に問題を作らせているので絶対に自信が有る、良いいんだろうか、これで。
速術と祓い術は実技試験なので自信がある、光術と幻術は筆記試験だがまあ大丈夫だろう。
滅術も実技試験で、きちんと道場には通っているので大丈夫だろう。
発術も実技試験だし、たぶん数をこなしてるんで大丈夫だと思う。
「雷人、勉強教えてくれよー、赤点取ったら夢野先生から酷い目見せるって言われてるんだよー」
「雷君お願い、数1と物理が自信ないの」
「化学と生物もお願い」
「雷君、雷子も数学ヘルプなの」
「数学の先生はハルだぞ」
「嫌、ハルに教わるくらいなら赤点取る、雷君教えて」
とりあえずハルに部屋を作ってもらって、情報世界で一般教養科目の勉強を始めることにした。
ここならば、御茶を飲みながらまったりと勉強しても、現実世界よりは捗っている筈だ。
結局全員が参加して事務所と同じような広いテーブルで勉強を始めた。
ーーーーー
「ねえ、ねえ、ねえ、お兄ちゃん。美子も学校行きたい」
僕等は勉強に忙しく、美子ちゃんとあまり遊んであげられなくなった、僕等が勉強する姿を見て寂しく思ったのか、美子ちゃんが珍しく駄々を捏ね始めた。
無理だとはっきり言うのも可哀そうだったので、卑怯だとは思ったのだが、結論を先送りにしてしまった。
「解った、解った。初等部に申し込んで見るけど、駄目だったら諦めるんだぞ」
「わーい、わーい」
凄く喜んでいる、その姿を見て、僕は凄く後悔した。
翌日、僕は良心が咎めたので、学務課に出向いて手続きを聞いて見た。
初等部担当の職員さんは優しい人で丁寧に編入手続きを説明して、募集要項と願書などの必要書類を渡してくれた。
結論から言うと、たぶん想定していないと思うのだが、募集要項に霊体では駄目との記載は無かった。
本籍地、生年月日、現住所、性別、国籍、両親の履歴、在学中の成績表もブランクは休学扱いすれば願書の必要事項欄や必要書類も一先ず揃ってしまう。
両親にお願いして必要書類を送ってもらい、手続してみることにした。
ーーーーー
「明美、私こんな点数見た事ないよ」
「香もか、全部九十点台なんて夢見てるみたいだな。おーし、今夜は祝杯だ」
四日間に及ぶ期末試験が終わり、答案用紙が返ってきて学年の成績順位が貼り出された。
なんと僕は学年一位だった、二位が弥生、三位が雷子、迷子と舞と明美と香が同点の四位、僕の事務所のメンバーが上位七人を占めている。
弥生と雷子はともかく、D組の僕を含めた五人はビックリだ。
他の組に衝撃が走り、僕の事務所へのアルバイト希望の問い合わせが殺到した。
対応する時間が減ったのだが、雷子と明美と香が簡単な依頼なら対応してくれるようになったので助かっている。
紅葉と迷子と舞は蟲取りが出来る様になったし、(水見)水江さんも(風見)風華さんも霊体と意識の分離がだいぶ上手になって来た。
灯さんと弥生も、もう一息だ。
水江さんも風華さんも灯さんも弥生も、旅行から帰って来たら、何か精神的な鎧が一皮剥けた様な、精神的にタフになった様な感じで親しげに接する様になって来た。
土日の出張スケジュールも雷子と灯さんが有資格者なので多少手伝ってもらって調整している。
灯さんは情報世界を使った新しい除霊方法を完全に会得しているので、需要の増えた除霊依頼に対応してもらっている。
新しい除霊方法の講習会を依頼して来る陰陽師協会の地方支部も多く、灯さんを中心に水江さん、風華さん、弥生にも講師をお願いして対応している。
小さい子の共通した才能なのだろうか、美子ちゃんは情報世界に順応して、外界へ自由に出入りが可能な程習熟した。
霊体を外界に残し、意識のみを情報世界に送り込む技量は、水江さんや風華さんを上回っており、灯さんや弥生さんに爪の垢を煎じて飲ませたいレベルだ。
霊覚の香水と呼ばれる霊を知覚する為のアイテムを使って彼女の霊体が見える様にしたら、ご両親に泣いて喜ばれた。
画面越しの会話では、やはり距離を感じて居たらしい、触れなくとも、一緒にテレビを見たり喋ったりする彼女に目を細めている。
水戸の実家と僕等の間を飛び回り、彼女は凄くアクティブナ生活を送っている。
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気が付いたら前期期末試験が一週間後に迫っていた。
余程の急ぎでも無い限り、頼んで少し日程を後送りにしてもらって試験勉強時間を確保した。
専門教育科目の中で、特に符術には迷子も僕も相変わらず苦労していた。
墨を磨るための水の清めには何とか二人とも到達したのだが、僕は墨を磨れば磨るほど墨が脱色して行くし、迷子に至っては、墨を磨ると何か違う物が出来上がってしまうのだ。
化学品メーカーや製薬会社の担当者が廊下に控えていて、喜んでその出来上がった怪しげな物を引き取って行く。
迷子の講座に振り込まれるそんな会社から報酬は、僕の収入なんかより、ずっと多いという話だ。
でもこれじゃ試験で出題される符を描く事が出来ない、迷子は真剣にカレーで字を描くことを考えているし、僕は酒臭い墨で字を描く事を考えている。
ただその方法で字を書くと、出来上がる符に変な効力が付与されてしまうので、毎回二人でどきどきしている。
授業中、怖がって助手の人は僕たちに近づこうとすらしない。
その他の専門教育科目
雷術はおじさんが僕に問題を作らせているので絶対に自信が有る、良いいんだろうか、これで。
速術と祓い術は実技試験なので自信がある、光術と幻術は筆記試験だがまあ大丈夫だろう。
滅術も実技試験で、きちんと道場には通っているので大丈夫だろう。
発術も実技試験だし、たぶん数をこなしてるんで大丈夫だと思う。
「雷人、勉強教えてくれよー、赤点取ったら夢野先生から酷い目見せるって言われてるんだよー」
「雷君お願い、数1と物理が自信ないの」
「化学と生物もお願い」
「雷君、雷子も数学ヘルプなの」
「数学の先生はハルだぞ」
「嫌、ハルに教わるくらいなら赤点取る、雷君教えて」
とりあえずハルに部屋を作ってもらって、情報世界で一般教養科目の勉強を始めることにした。
ここならば、御茶を飲みながらまったりと勉強しても、現実世界よりは捗っている筈だ。
結局全員が参加して事務所と同じような広いテーブルで勉強を始めた。
ーーーーー
「ねえ、ねえ、ねえ、お兄ちゃん。美子も学校行きたい」
僕等は勉強に忙しく、美子ちゃんとあまり遊んであげられなくなった、僕等が勉強する姿を見て寂しく思ったのか、美子ちゃんが珍しく駄々を捏ね始めた。
無理だとはっきり言うのも可哀そうだったので、卑怯だとは思ったのだが、結論を先送りにしてしまった。
「解った、解った。初等部に申し込んで見るけど、駄目だったら諦めるんだぞ」
「わーい、わーい」
凄く喜んでいる、その姿を見て、僕は凄く後悔した。
翌日、僕は良心が咎めたので、学務課に出向いて手続きを聞いて見た。
初等部担当の職員さんは優しい人で丁寧に編入手続きを説明して、募集要項と願書などの必要書類を渡してくれた。
結論から言うと、たぶん想定していないと思うのだが、募集要項に霊体では駄目との記載は無かった。
本籍地、生年月日、現住所、性別、国籍、両親の履歴、在学中の成績表もブランクは休学扱いすれば願書の必要事項欄や必要書類も一先ず揃ってしまう。
両親にお願いして必要書類を送ってもらい、手続してみることにした。
ーーーーー
「明美、私こんな点数見た事ないよ」
「香もか、全部九十点台なんて夢見てるみたいだな。おーし、今夜は祝杯だ」
四日間に及ぶ期末試験が終わり、答案用紙が返ってきて学年の成績順位が貼り出された。
なんと僕は学年一位だった、二位が弥生、三位が雷子、迷子と舞と明美と香が同点の四位、僕の事務所のメンバーが上位七人を占めている。
弥生と雷子はともかく、D組の僕を含めた五人はビックリだ。
他の組に衝撃が走り、僕の事務所へのアルバイト希望の問い合わせが殺到した。
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