神楽坂学院高等部祓通科

切粉立方体

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Ⅰ 第一学年

47 新しい仲間2

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あーあ、涙目になっている、こりゃスペシャルなプレゼント確定だな。

一年B組夢野花園かえんさん、そう、夢野先生の妹さんだ。
情報世界へ入る練習で手間取っていたのでここへ連れ出して来たのだが、うん、唇を重ねて。

何時もの作業の積りで頭を押さえて抱き寄せたのだが、ショックを受けたらしい、ハルが肩を抱いて慰めている。

「マスター、酷いです。合意の形成もしないで」
「ヒック、ヒック、ヒック」
「すまん、うっかり」
「マスター、うっかりじゃ済まされません。たぶん彼女のファーストキッスですよ」
「エーン、エーン、エーン」
「よし、お詫びにあんみつ屋さんに連れて行ってあげよう」
「ヒック、ヒック、ヒック」

少し泣き止んだ、うん、この方向性を維持しよう。

「駅の近くなんだけど凄く美味しい有名店なんだよ」
「ヒック、ヒック」
「テレビでも紹介されたらしいよ」
「ヒック」
「クリームあんみつが絶品らしいよ」
「・・・・、苺も食べたい」
「勿論いいよ」

花園ちゃんが嬉しそうにクリームあんみつと苺あんみつを並べて食べている、良かった、一時はどうなることかと心配した。

「雷君は優しいけどデリカシーが無いのよね」
「そう、少し自己中なんだよね」
「マスターには自己研鑽が必要です」
「お兄ちゃんエッチだしね」

迷子と舞、ハルと美子ちゃんも付いて来ている、式神なのにハルも美子ちゃんも杏あんみつをパク付いている、あんみつはどこへ消えるんだろうか。

「あ、居た居た」

明美と香だ、明美は御茶ノ水、香は市ヶ谷のオフィスでの蟲取りの帰りだ、両手に重そうな紙袋を下げている。

「二人ともご苦労様」
「事務所に連絡入れたらここに居るって聞いてよ。ほれ、貰い物だ」

明美が紙袋から木の箱を取り出す。

「ちょっ、ここでお酒は不味いだろ」
「お酒じゃないよ、水だから。ほら、色が一緒でしょ。すいませーん、えび釜飯ととり釜飯お願いします」

”プハー”

花園ちゃんがアルコールの入った水を一気に煽っている。

「雷君!」
「ハイ、なんでしょ」
「言いたいことが有るんだけど、エンジンが温まるまで待ってね。はい、おかわり」

”グビッ、グビッ、グビッ、グビッ、プハー”

うー、ここはどこだ、美子ちゃんを寄宿舎に帰した後、花園に何度もキスを迫られたことは覚えているんだが。
あっ、携帯が鳴っている。

「もしもし」
「雷夢か」
「はい、雷夢ですが」
「花園の携帯になんで貴様が出るんだ。花園はどこだ」

周囲を見回す、事務所の中だった、昨日飲んだメンバーがソファーの上に折り重なる様に寝ている。
脇で明美のお腹を枕にして寝ている花園を起こす。

「姉ちゃんから電話だぞ、ほら」
「んーん」
「△!×$▼×#!!」
「雷君?雷君なら横で寝てるよ」
「▼◆!!$×$$!!」
「昨日?酔ってたから良く覚えてない、覚えてるのは雷君とキスした事くらいかな」
「・・・・○○○」
「お姉ちゃんが雷君と変われって、はい」
「・・・・・」
「おい!雷夢!貴様」

ひー。

結局、一週間連続で続き物のスペシャルな夢をプレゼントされてしまった、トラウマになりそうだ。

ーーーーー

猫耳さんが牙と爪を剥いて僕を威嚇している。

”シャー、ぬし様によこしまな想念を向けるな”

一年C組猫之宮毬さん、猫の使役術を得意としている。
魂を橋渡して精神的な繋がりを構築する技なので、情報世界への侵入は不得意だった。
なので今度はちゃんと説明して連れて来たのだが、唇を合わせて瞬間、使い魔の猫に足を噛付かれた。

「まあ、ミーちゃん付いて来ちゃったの、仕様が無い子ね」

猫耳さんの膝の当りを毬さんが撫でている、どうやら見えてる姿が違うようだ。

”当たり前じゃ、愚か者。ピュアな主様と邪念の権化の様な貴様との違いじゃ”

「嘘こけ、それが本性だろ」

”フー”

それはさておき、

「ハル、ミーちゃんに服持って来てくれ」
「はい、マスター」

うん、猫だから服を着てないのは当たり前なのだが、まっぱの猫耳さんにウロウロされては気が散ってしまう。

「ハル、アニメのじゃなくて普通の服な」
「え!違うんですかマスター」

ハルに驚かれてしまった、確認しておいて良かった、紐みたいな皮の服じゃかえって気が散ってしまう。

「はい、マスター。マスターの好みに合わせました」

メイド服だった、うん、許容範囲だ。

「まあミーちゃん、可愛い服貰って良かったわねー」

毬さんがミーちゃんの膝に話し掛けている。


毬さんに情報世界への侵入や、魂と意識との切り離し方をレクチャーする、ミャーは退屈したのか丸くなって眠り始めた。

「それじゃ毬さん、僕のアシスト無しにできる様になりましたから、魂と意識に注意して一人で練習してみて下さい」
「はい、解りました」

意識を身体に戻す、目の前に無防備状態の毬さん、足元には僕の足に噛付いているミーがいる。
ふっ、ふっ、ふっ、油断したな化け猫め、ミーを僕の膝の上に乗せて尻尾を愛でる。
うーん、この感触、最高だ。
そう、僕の邪な想念は最初からミーの尻尾に向いていた。

”シャー”

あっ、いかん戻って来てしまった、ほれ、猫じゃらしだぞ、ほれ、ほれ、ほれ。

”ミャー、ゴロゴロ”

それ、ゴシゴシゴシ。

”シャー”

そして僕とミーは最高級鰹節のニャンコ飯で折り合いを付けた。
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