神楽坂学院高等部祓通科

切粉立方体

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Ⅰ 第一学年

65 学年末2

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ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、僕はマスターとしてハルには首位を明け渡さなかった。
最も同点の同率首位だったので偉そうな事は言えないが。

雷子と弥生は二点及ばなくて悔しがっている。
今回も一年、二年の上位成績者は僕の事務所のメンバーですべて独占している。

「酒臭い息で登校した連中が上位独占なんて納得いかんな。他の組の担任も怒ってたぞ。雷夢、もう一度聞くが、本当に花園とは何も無かったんだろうな。嘘だったら、スペシャルな夢一年プレゼントだぞ」

昨夜は試験終了のご苦労様会と銘打って、食事に併せて軽い飲み会をする筈だった、だが気が付いたら事務所で太腿が入り乱れた布団の中に爆睡していた、記憶を辿っても、迷子に一升瓶を口に突っ込まれた所までが限界だった。
人数分の布団を用意して有る筈なのだが、何故か五枚の布団の中に二十数人が密集している、押入れから布団が五枚垂れ下がっているので、何人かは布団を敷こうと努力したらしい。

耳の横で鳴っている携帯を無意識に取ったら、花園の携帯だったのだ、うん、僕も学習していない。
今日は終業式だ、答案が返され、成績発表があって、通知簿を渡されたらお仕舞だ。
帰り支度していたら、明美と香と紅葉がやって来た。

「雷人、今日の夕食のメインメニューは何だ。それに併せて酒用意するからさ」
「買い出しが必要なら手伝いますよ」
「刺身と焼き魚が良いな」
「すまん香、紅葉、明美。今日は進之介さんに頼んである。舞とハルと一緒に迷子の実家に呼ばれてるんだ」

気軽に返事をしたのだが、無茶苦茶立派な招待状が送られて来た、案内図の中の迷子の家がやけに大きかった。
ネットで調べてみたらやはり大きな家で、舞と二人で少々ビビッている。

「それって、今晩の乱動家が主催するパーティーの事か」
「迷子の家でやる迷子の誕生会だけど」
「あっ、やっぱりそーだ。巫女ネットにガンガン書き込みが入ってる奴だ、政界や財界や陰陽師界の重鎮が一杯呼ばれてるらしいぞ。ちゃんとプレゼント用意したのか、お前ら」
「迷子が手ぶらで良いって言ってたから手ぶらだよ、ねー雷君」
「迷子は三百年ぶりの女当主候補らしいぞ、だから正月明けから婿の立候補者が貢物持って殺到してるらしいぞ」
「迷子はまだ高校生だぞ。それに精神年齢は小学生ちょぼちょぼだと思うぞ。結婚の話はちょっとまだ早いんじゃないかな」
「なに迷子の親父みたいな事言ってるんだよ。あんたが一番迷子に近い存在なんだから絶対に最大のライバルと思われてるぞ。普通の高校生ならば会場で苛められて、泣かされるんだろうけど、あんたの面構えじゃなー。きっと鉄砲玉雇って脇腹をブスッだよ。晒と漫画本は準備したの」

やくざの出入りじゃあるまいし、でも三人で花束くらいは用意するか、確か迷子は白い百合が大好きだった。
迷子は、休みを貰って、朝、家に戻って行った。
僕は一仕事あるので、最寄駅で舞とハルと落合う予定だ。

「おーい、雷君。こっちだよ」
「マスター、一分三十二秒の遅刻です」

パーティードレスを着た小柄な若い女性二人が改札口で待っていた、勿論女装した舞とハルだ。

「すまん、鞄をドアに挟んだ奴がいて少し電車が送れた。でも普段着で行く筈じゃなかったのか」
「風華さんと水江さんに、絶対に普段着じゃ可笑しいって言われたんだ。だから僕のをハルちゃんに貸してあげたんだ。雷君!ハルちゃんの服って制服とジャージとエプロンとパジャマしか無かったよ。ちゃんと下着とか服とか買ってあげないと」
「いや、すまん。気が付かなかった」

ハルは式神で具現化している、なので服が必要とは思っていなかった、そーか、普段着ているパジャマは実物だったんだ。
タクシーに乗って行き先を告げる。

「乱動家へ行って下さい」
「お客さん、少し離れた場所でも構いませんか」
「何でです」
「ほら、ナビのここ見て下さい。正門前からずっと渋滞でしょ」

東京世田谷の閑静な高級住宅街、その高級住宅街の中でも一際大きな御屋敷、その御屋敷の前に黒い高級車がズラーと並んでいた。
その高級車の脇をとことこと歩き、正門で忙しそうに動き回っている守衛さんに声を掛ける。

「すいません、僕等今日の誕生会に招待されてるんですが、はい、これが招待状です」
「はい、ありがとうございます。ここの植え込みの脇を抜けて頂くと正面玄関がございます。そこに出迎えの執事が居りますので声を掛けて頂ければ案内します。ガードマンの方は申し訳ありませんが同伴できませんので、そのまま真っ直ぐ進んで頂いて控室でお待ち下さい」
「了解しました、ご苦労様です」

言い訳が面倒臭いので、そのまま敬礼して通り過ぎた、舞が腹を抱えて大笑いしている。
五分程歩いて、うん、門から玄関まで徒歩五分は十分遠いと思うが、高級車から降りる客で賑わっている大きな玄関に辿り着いた。
執事さんとメイドさんが右往左往している。

「すいません、招待客なのですが」

車から降りて来る客に注意力が向いており、気付いて貰えそうもないので、メイドさんを一人、引っ掴まえる。

「きゃっ」

撲を見て一瞬怯えたが、舞とハルを見て営業スマイルに戻る。

「失礼いたしました、ご案内いたしますので招待状を拝見させて頂きます」

招待状をメイドさんに渡す、メイドさんがスマホでリストを確認する。

「確認させて頂きました。迷子様のご学友の皆さまでいらっしゃますね。今日はようこそ乱動家にいらっしゃいました、歓迎いたします」

招待状を何故かハルに手渡した。

「申し訳ありません。もう一人の男性の方は何処にいらっしゃいますでしょうか」
「僕が雷夢雷人です」
「えーー!・・・・もっ、申し訳ありません。ようこそいらっしゃいました。・・・本当ですか、ジョークじゃないですよね」
「本当です!」
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