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Ⅱ 第二学年
21 礎空の皮
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「はい、解りました。それでは微力ながらお手伝いさせて頂きます」
「うむ、それでは礎空への正式な入り方を見せておこう。毎回裏から侵入されると妾の元に見張りから警報が来て煩わしいからの」
そう言うと九尾さんの姿が薄くなって行った、慌てて僕も精神体に姿を変えて九尾さんを追いかけた。
九尾さんは直接定義空間、九尾さん言うところの礎空へは入らず、一層上の定義空間の皮相の様な空間に入って行った。
”此処からでも礎空の様子は感じ取れるのじゃ。此処からならば礎空を荒らさずに済むし、礎空に入るにも空間の負荷が軽くて済む。ほれ、ここの空間からならばこうじゃ”
九尾さんの意志が直接僕の思考として伝わって来る、九尾さんの意志端が柔らかいゼリーに指を刺し込む様に定義空間に入って行く。
感じられる力が驚くほど少なくて済んでいる。
”もし鬼と争うことあらば、この皮に引き擦り出して戦え。礎空が傷つかぬ”
”了解です”
”それとな、お前が連れて来たあの娘”
九尾さんの意志の中に迷子の顔が浮かぶ。
”あの娘には空の使い方をきちんと練習させろ、空の渡り方が無茶苦茶だ。お前達の概念で言うと、米粒一つ通すのに竜が通るような大穴を開けよる。無理な力の行使は空の亀裂に繋がりかねん”
”祝君は”
”蛇は大丈夫じゃ、八又の大蛇の眷属じゃから空の扱いには長けておる、稲、居るか”
”はい、九尾様お側に”
異なる意志が流れ込んできた。
”うむ、稲、小奴が時の手繰り人じゃ、覚えておけ”
”はい、皮の監視を勉めております稲と申します。姉が何時もお世話になっております”
白狐さんの妹さんだった、しかし気配がまるで感じられなかった。
”驚いたろ、小奴は意志を殺すのが得意でな、妾でも感知できん。判らん事は稲に聞け。それでは現世に戻るかの、お前の持ってきたいなり寿司を妾も早く食いたいしな”
ハルの作ったお稲荷さんの映像が浮かんできた、うん、一応お土産と思って残して持って来た。
九尾さんが精神体の尻尾を振っている、精神体でもつやつやとして魅惑に溢れる尻尾だ。
あー、すりすり、はぐはぐ、さわさわしたい。
ほんのちょっと表面を触るだけ、それならば許されるだろう、そう転んで触ってしまった振りだ、それ。
うわー、想像以上に精神体での手触りが良い、精神体の世界なので存在が重なっている、うん、九本一緒に尻尾をスリスリハムハム出来るなんて此処は極楽だ、このさわさわ感、このもふもふ感。
あっ、しまった、気が付いたら尻尾を握って九尾さんを押し倒していた。
”ギャー”
ん?、土産物屋の店の中に立っていた。
「あんさん、お早いおかえりで、お連れ様は」
店の主人だろう、周りを見回している。
「僕だけ追い出されました」
「へっ、守備の兵隊さんになんぞ粗相しなはりましたか」
「いえ、九尾さんに。尻尾を少し舐めただけですよ」
「げー」
店の主人は完全にびびって近寄って来ない。
仕方が無いので、自分でお茶を入れて試供品の生八つ橋や煉羊羹を摘んでいた。
二時間程待ったら、白狐さん達が戻って来た。
「あははは、やーごめん、ちょ・・」
笑って誤魔化そうとしたら全員に睨まれてしまった。
白狐さんは店の奥によろよろと歩いて行き、布団に包まって寝込んでしまった。
雷子達四人は上がり框に腰を下ろして惚けている。
仕方がない、誠意を見せるために全員にお茶を入れて配った。
「みんなあんたの所為よ、なんで私達が怒られなきゃならないのよ」
「雷君、性欲溜まってるんなら何時でも抜いてあげるわ」
「あんな恐ろしい人にセクハラかますなんて、何考えてるのよ」
「怖かったんだよ、雷君」
「雷人さん、あと一日一回増やしても良いですよ」
「ちょっと、ハル、それ何」
「お稲荷さん持って無かったら僕ら死んでたな」
「あー、怖かった。思い出しただけで涙が出て来そうよ」
「全部あんたの所為、なんか私も泣きそう。私達良く生きて帰れたわ」
「うん、殺されずに済んだものね」
「ほんとに、うっく、ひっく」
ハル以外は勝手に付いて来た癖に、でもこれからの人間関係を考えて我慢だ。
「いやー、本当にごめん。反省してるよ、僕が全面的に悪かったよ、ごめん。軽いスキンシップの積もりだったんだけどさ、手触りや舌触りが凄く良かったからつい力が入っちゃったんだ。知ってた、精神体だと九本一緒に触れるんだよ。これがまたさー」
”ゴギャン”
”グワン”
”ゲシゲシ”
”ドゴン”
最後のハルの一撃が一番痛かった。
「反省して下さい。白狐さんは此処に戻ってくる途中、心労で三回も倒れたんですよ」
「いや、すまん」
店の人達がジリジリと僕から遠ざかって行く。
「じゃっ、白狐さんに謝って来る」
立ち上がろうとしたら、四人にすがり付かれて止められた。
「止めて下さい、心臓が止まったらどうするんですか」
なんか僕の扱いが酷い気がする。
「うむ、それでは礎空への正式な入り方を見せておこう。毎回裏から侵入されると妾の元に見張りから警報が来て煩わしいからの」
そう言うと九尾さんの姿が薄くなって行った、慌てて僕も精神体に姿を変えて九尾さんを追いかけた。
九尾さんは直接定義空間、九尾さん言うところの礎空へは入らず、一層上の定義空間の皮相の様な空間に入って行った。
”此処からでも礎空の様子は感じ取れるのじゃ。此処からならば礎空を荒らさずに済むし、礎空に入るにも空間の負荷が軽くて済む。ほれ、ここの空間からならばこうじゃ”
九尾さんの意志が直接僕の思考として伝わって来る、九尾さんの意志端が柔らかいゼリーに指を刺し込む様に定義空間に入って行く。
感じられる力が驚くほど少なくて済んでいる。
”もし鬼と争うことあらば、この皮に引き擦り出して戦え。礎空が傷つかぬ”
”了解です”
”それとな、お前が連れて来たあの娘”
九尾さんの意志の中に迷子の顔が浮かぶ。
”あの娘には空の使い方をきちんと練習させろ、空の渡り方が無茶苦茶だ。お前達の概念で言うと、米粒一つ通すのに竜が通るような大穴を開けよる。無理な力の行使は空の亀裂に繋がりかねん”
”祝君は”
”蛇は大丈夫じゃ、八又の大蛇の眷属じゃから空の扱いには長けておる、稲、居るか”
”はい、九尾様お側に”
異なる意志が流れ込んできた。
”うむ、稲、小奴が時の手繰り人じゃ、覚えておけ”
”はい、皮の監視を勉めております稲と申します。姉が何時もお世話になっております”
白狐さんの妹さんだった、しかし気配がまるで感じられなかった。
”驚いたろ、小奴は意志を殺すのが得意でな、妾でも感知できん。判らん事は稲に聞け。それでは現世に戻るかの、お前の持ってきたいなり寿司を妾も早く食いたいしな”
ハルの作ったお稲荷さんの映像が浮かんできた、うん、一応お土産と思って残して持って来た。
九尾さんが精神体の尻尾を振っている、精神体でもつやつやとして魅惑に溢れる尻尾だ。
あー、すりすり、はぐはぐ、さわさわしたい。
ほんのちょっと表面を触るだけ、それならば許されるだろう、そう転んで触ってしまった振りだ、それ。
うわー、想像以上に精神体での手触りが良い、精神体の世界なので存在が重なっている、うん、九本一緒に尻尾をスリスリハムハム出来るなんて此処は極楽だ、このさわさわ感、このもふもふ感。
あっ、しまった、気が付いたら尻尾を握って九尾さんを押し倒していた。
”ギャー”
ん?、土産物屋の店の中に立っていた。
「あんさん、お早いおかえりで、お連れ様は」
店の主人だろう、周りを見回している。
「僕だけ追い出されました」
「へっ、守備の兵隊さんになんぞ粗相しなはりましたか」
「いえ、九尾さんに。尻尾を少し舐めただけですよ」
「げー」
店の主人は完全にびびって近寄って来ない。
仕方が無いので、自分でお茶を入れて試供品の生八つ橋や煉羊羹を摘んでいた。
二時間程待ったら、白狐さん達が戻って来た。
「あははは、やーごめん、ちょ・・」
笑って誤魔化そうとしたら全員に睨まれてしまった。
白狐さんは店の奥によろよろと歩いて行き、布団に包まって寝込んでしまった。
雷子達四人は上がり框に腰を下ろして惚けている。
仕方がない、誠意を見せるために全員にお茶を入れて配った。
「みんなあんたの所為よ、なんで私達が怒られなきゃならないのよ」
「雷君、性欲溜まってるんなら何時でも抜いてあげるわ」
「あんな恐ろしい人にセクハラかますなんて、何考えてるのよ」
「怖かったんだよ、雷君」
「雷人さん、あと一日一回増やしても良いですよ」
「ちょっと、ハル、それ何」
「お稲荷さん持って無かったら僕ら死んでたな」
「あー、怖かった。思い出しただけで涙が出て来そうよ」
「全部あんたの所為、なんか私も泣きそう。私達良く生きて帰れたわ」
「うん、殺されずに済んだものね」
「ほんとに、うっく、ひっく」
ハル以外は勝手に付いて来た癖に、でもこれからの人間関係を考えて我慢だ。
「いやー、本当にごめん。反省してるよ、僕が全面的に悪かったよ、ごめん。軽いスキンシップの積もりだったんだけどさ、手触りや舌触りが凄く良かったからつい力が入っちゃったんだ。知ってた、精神体だと九本一緒に触れるんだよ。これがまたさー」
”ゴギャン”
”グワン”
”ゲシゲシ”
”ドゴン”
最後のハルの一撃が一番痛かった。
「反省して下さい。白狐さんは此処に戻ってくる途中、心労で三回も倒れたんですよ」
「いや、すまん」
店の人達がジリジリと僕から遠ざかって行く。
「じゃっ、白狐さんに謝って来る」
立ち上がろうとしたら、四人にすがり付かれて止められた。
「止めて下さい、心臓が止まったらどうするんですか」
なんか僕の扱いが酷い気がする。
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