91 / 101
Ⅱ 第二学年
21 礎空の皮
しおりを挟む
「はい、解りました。それでは微力ながらお手伝いさせて頂きます」
「うむ、それでは礎空への正式な入り方を見せておこう。毎回裏から侵入されると妾の元に見張りから警報が来て煩わしいからの」
そう言うと九尾さんの姿が薄くなって行った、慌てて僕も精神体に姿を変えて九尾さんを追いかけた。
九尾さんは直接定義空間、九尾さん言うところの礎空へは入らず、一層上の定義空間の皮相の様な空間に入って行った。
”此処からでも礎空の様子は感じ取れるのじゃ。此処からならば礎空を荒らさずに済むし、礎空に入るにも空間の負荷が軽くて済む。ほれ、ここの空間からならばこうじゃ”
九尾さんの意志が直接僕の思考として伝わって来る、九尾さんの意志端が柔らかいゼリーに指を刺し込む様に定義空間に入って行く。
感じられる力が驚くほど少なくて済んでいる。
”もし鬼と争うことあらば、この皮に引き擦り出して戦え。礎空が傷つかぬ”
”了解です”
”それとな、お前が連れて来たあの娘”
九尾さんの意志の中に迷子の顔が浮かぶ。
”あの娘には空の使い方をきちんと練習させろ、空の渡り方が無茶苦茶だ。お前達の概念で言うと、米粒一つ通すのに竜が通るような大穴を開けよる。無理な力の行使は空の亀裂に繋がりかねん”
”祝君は”
”蛇は大丈夫じゃ、八又の大蛇の眷属じゃから空の扱いには長けておる、稲、居るか”
”はい、九尾様お側に”
異なる意志が流れ込んできた。
”うむ、稲、小奴が時の手繰り人じゃ、覚えておけ”
”はい、皮の監視を勉めております稲と申します。姉が何時もお世話になっております”
白狐さんの妹さんだった、しかし気配がまるで感じられなかった。
”驚いたろ、小奴は意志を殺すのが得意でな、妾でも感知できん。判らん事は稲に聞け。それでは現世に戻るかの、お前の持ってきたいなり寿司を妾も早く食いたいしな”
ハルの作ったお稲荷さんの映像が浮かんできた、うん、一応お土産と思って残して持って来た。
九尾さんが精神体の尻尾を振っている、精神体でもつやつやとして魅惑に溢れる尻尾だ。
あー、すりすり、はぐはぐ、さわさわしたい。
ほんのちょっと表面を触るだけ、それならば許されるだろう、そう転んで触ってしまった振りだ、それ。
うわー、想像以上に精神体での手触りが良い、精神体の世界なので存在が重なっている、うん、九本一緒に尻尾をスリスリハムハム出来るなんて此処は極楽だ、このさわさわ感、このもふもふ感。
あっ、しまった、気が付いたら尻尾を握って九尾さんを押し倒していた。
”ギャー”
ん?、土産物屋の店の中に立っていた。
「あんさん、お早いおかえりで、お連れ様は」
店の主人だろう、周りを見回している。
「僕だけ追い出されました」
「へっ、守備の兵隊さんになんぞ粗相しなはりましたか」
「いえ、九尾さんに。尻尾を少し舐めただけですよ」
「げー」
店の主人は完全にびびって近寄って来ない。
仕方が無いので、自分でお茶を入れて試供品の生八つ橋や煉羊羹を摘んでいた。
二時間程待ったら、白狐さん達が戻って来た。
「あははは、やーごめん、ちょ・・」
笑って誤魔化そうとしたら全員に睨まれてしまった。
白狐さんは店の奥によろよろと歩いて行き、布団に包まって寝込んでしまった。
雷子達四人は上がり框に腰を下ろして惚けている。
仕方がない、誠意を見せるために全員にお茶を入れて配った。
「みんなあんたの所為よ、なんで私達が怒られなきゃならないのよ」
「雷君、性欲溜まってるんなら何時でも抜いてあげるわ」
「あんな恐ろしい人にセクハラかますなんて、何考えてるのよ」
「怖かったんだよ、雷君」
「雷人さん、あと一日一回増やしても良いですよ」
「ちょっと、ハル、それ何」
「お稲荷さん持って無かったら僕ら死んでたな」
「あー、怖かった。思い出しただけで涙が出て来そうよ」
「全部あんたの所為、なんか私も泣きそう。私達良く生きて帰れたわ」
「うん、殺されずに済んだものね」
「ほんとに、うっく、ひっく」
ハル以外は勝手に付いて来た癖に、でもこれからの人間関係を考えて我慢だ。
「いやー、本当にごめん。反省してるよ、僕が全面的に悪かったよ、ごめん。軽いスキンシップの積もりだったんだけどさ、手触りや舌触りが凄く良かったからつい力が入っちゃったんだ。知ってた、精神体だと九本一緒に触れるんだよ。これがまたさー」
”ゴギャン”
”グワン”
”ゲシゲシ”
”ドゴン”
最後のハルの一撃が一番痛かった。
「反省して下さい。白狐さんは此処に戻ってくる途中、心労で三回も倒れたんですよ」
「いや、すまん」
店の人達がジリジリと僕から遠ざかって行く。
「じゃっ、白狐さんに謝って来る」
立ち上がろうとしたら、四人にすがり付かれて止められた。
「止めて下さい、心臓が止まったらどうするんですか」
なんか僕の扱いが酷い気がする。
「うむ、それでは礎空への正式な入り方を見せておこう。毎回裏から侵入されると妾の元に見張りから警報が来て煩わしいからの」
そう言うと九尾さんの姿が薄くなって行った、慌てて僕も精神体に姿を変えて九尾さんを追いかけた。
九尾さんは直接定義空間、九尾さん言うところの礎空へは入らず、一層上の定義空間の皮相の様な空間に入って行った。
”此処からでも礎空の様子は感じ取れるのじゃ。此処からならば礎空を荒らさずに済むし、礎空に入るにも空間の負荷が軽くて済む。ほれ、ここの空間からならばこうじゃ”
九尾さんの意志が直接僕の思考として伝わって来る、九尾さんの意志端が柔らかいゼリーに指を刺し込む様に定義空間に入って行く。
感じられる力が驚くほど少なくて済んでいる。
”もし鬼と争うことあらば、この皮に引き擦り出して戦え。礎空が傷つかぬ”
”了解です”
”それとな、お前が連れて来たあの娘”
九尾さんの意志の中に迷子の顔が浮かぶ。
”あの娘には空の使い方をきちんと練習させろ、空の渡り方が無茶苦茶だ。お前達の概念で言うと、米粒一つ通すのに竜が通るような大穴を開けよる。無理な力の行使は空の亀裂に繋がりかねん”
”祝君は”
”蛇は大丈夫じゃ、八又の大蛇の眷属じゃから空の扱いには長けておる、稲、居るか”
”はい、九尾様お側に”
異なる意志が流れ込んできた。
”うむ、稲、小奴が時の手繰り人じゃ、覚えておけ”
”はい、皮の監視を勉めております稲と申します。姉が何時もお世話になっております”
白狐さんの妹さんだった、しかし気配がまるで感じられなかった。
”驚いたろ、小奴は意志を殺すのが得意でな、妾でも感知できん。判らん事は稲に聞け。それでは現世に戻るかの、お前の持ってきたいなり寿司を妾も早く食いたいしな”
ハルの作ったお稲荷さんの映像が浮かんできた、うん、一応お土産と思って残して持って来た。
九尾さんが精神体の尻尾を振っている、精神体でもつやつやとして魅惑に溢れる尻尾だ。
あー、すりすり、はぐはぐ、さわさわしたい。
ほんのちょっと表面を触るだけ、それならば許されるだろう、そう転んで触ってしまった振りだ、それ。
うわー、想像以上に精神体での手触りが良い、精神体の世界なので存在が重なっている、うん、九本一緒に尻尾をスリスリハムハム出来るなんて此処は極楽だ、このさわさわ感、このもふもふ感。
あっ、しまった、気が付いたら尻尾を握って九尾さんを押し倒していた。
”ギャー”
ん?、土産物屋の店の中に立っていた。
「あんさん、お早いおかえりで、お連れ様は」
店の主人だろう、周りを見回している。
「僕だけ追い出されました」
「へっ、守備の兵隊さんになんぞ粗相しなはりましたか」
「いえ、九尾さんに。尻尾を少し舐めただけですよ」
「げー」
店の主人は完全にびびって近寄って来ない。
仕方が無いので、自分でお茶を入れて試供品の生八つ橋や煉羊羹を摘んでいた。
二時間程待ったら、白狐さん達が戻って来た。
「あははは、やーごめん、ちょ・・」
笑って誤魔化そうとしたら全員に睨まれてしまった。
白狐さんは店の奥によろよろと歩いて行き、布団に包まって寝込んでしまった。
雷子達四人は上がり框に腰を下ろして惚けている。
仕方がない、誠意を見せるために全員にお茶を入れて配った。
「みんなあんたの所為よ、なんで私達が怒られなきゃならないのよ」
「雷君、性欲溜まってるんなら何時でも抜いてあげるわ」
「あんな恐ろしい人にセクハラかますなんて、何考えてるのよ」
「怖かったんだよ、雷君」
「雷人さん、あと一日一回増やしても良いですよ」
「ちょっと、ハル、それ何」
「お稲荷さん持って無かったら僕ら死んでたな」
「あー、怖かった。思い出しただけで涙が出て来そうよ」
「全部あんたの所為、なんか私も泣きそう。私達良く生きて帰れたわ」
「うん、殺されずに済んだものね」
「ほんとに、うっく、ひっく」
ハル以外は勝手に付いて来た癖に、でもこれからの人間関係を考えて我慢だ。
「いやー、本当にごめん。反省してるよ、僕が全面的に悪かったよ、ごめん。軽いスキンシップの積もりだったんだけどさ、手触りや舌触りが凄く良かったからつい力が入っちゃったんだ。知ってた、精神体だと九本一緒に触れるんだよ。これがまたさー」
”ゴギャン”
”グワン”
”ゲシゲシ”
”ドゴン”
最後のハルの一撃が一番痛かった。
「反省して下さい。白狐さんは此処に戻ってくる途中、心労で三回も倒れたんですよ」
「いや、すまん」
店の人達がジリジリと僕から遠ざかって行く。
「じゃっ、白狐さんに謝って来る」
立ち上がろうとしたら、四人にすがり付かれて止められた。
「止めて下さい、心臓が止まったらどうするんですか」
なんか僕の扱いが酷い気がする。
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん
菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる