愛を知らない高嶺の花は孤高の騎士に身請けされて毎晩愛される

かべうち右近

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1巻

1-1

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   一章:高嶺の花と孤高の騎士


 いかに娼婦の身上は人それぞれとはいっても、元の身分が貴族令嬢だった者は極めて珍しい。とはいえ、いないわけではない。アルヤもその一人である。
 タッサ国にある国営娼館に所属するアルヤは、元はといえば高位の貴族だった。だが生家の没落により、一生かかっても払いきれない負債を肩代わりするために、娼婦に身をやつしたのだ。
 アルヤのように貴族でなくとも、親の借金を負って娼館に売られてくる娘は少なくない。だからこそ誰も娼婦の素性を聞きはしないし、情事に際して名前すら尋ねない者も多かった。このため、指名の時点で知らされるにもかかわらず、馴染みの客でもないかぎり、娼婦の名前は忘れられている。
 だが、アルヤは違う。

『男なら一度は抱いてみたいと思うものだ』

 ちまたでそうまで言わしめるのが、アルヤである。彼女はそもそも、予約がいっぱいで会うことすら難しい。だというのに、その噂は彼女の名前と共に王都の男たちの間でもちきりだ。
 きちんと手入れのされた金の巻き毛に、同じ色のたっぷりとした長いまつ毛。その下に覗く美しい緑の瞳は、ランプの心もとない光の下でさえきらめいて彼女をあでやかに見せる。紅をひいた唇は形がよく、つややかに潤んでおり、いつも上品な微笑みを浮かべている。その顔だけでも並の娼婦とはほど遠い印象なのに、客から貢がれた気品のあるドレスを身に着けているおかげで、彼女は麗しい貴族の淑女のようにしか見えなかった。
 見た目だけではない。普通ならただ女を抱きに来るだけの場所に、アルヤは会話までたのしませる。だが、ひとたび肌をあらわにすれば、貴族の女にはあるまじき手練手管てれんてくだでどんな男も惑わせた。おかげで一夜の夢にはできないと娼館に通う男たちはため息を吐くものだ。なのに、二度目を願うにはチャンスに乏しく、何度も会うのは金持ちの貴族でなければ難しい。まさに高嶺の花である。あるいは一度会ったら虜にしてやまない魔性の娼婦とも言われている。
 つまり、アルヤは娼館一の娼婦だった。彼女の実力なら娼館という囲いがなくとも、独立して高級娼婦としてもやっていけるだろう。そうすれば貴族のような暮らしだって夢ではない。
 とはいえ巨額の借金があるので、彼女は娼館から出ることなどできない。アルヤは別にそれで構わなかった。

(わたくし、どうせ『貴族のお嬢様』なんて性分じゃなかったのよね)

 貴族令嬢だった頃は家に閉じこめられ、やれ刺繍だの、礼儀作法だの、日に焼けるなだの、うるさいことこのうえなかった。さらには大して気の合わない婚約者まであてがわれて、令嬢時代の彼女は辟易していたものだ。

(仕事さえこなせば、昼間に何をしていても怒られないもの。……けど。やっぱり何か物足りないのよね)

 個室を与えられているアルヤはソファに腰掛けながら、ふう、とため息を吐いて窓の外を見る。外は暗くなり始め、気の早い客が徐々にやってくる時間だ。本来なら娼館の一階にある控室で他の娼婦たちと一緒に並び、買ってくれる男を待つ決まりである。だが、どうせアルヤは連日予約が入っているので、自室で待機している。
 待ち時間は暇とはいえ別のことをするわけにもいかず、今日は何を考えて過ごそうかと思った、そのときである。不意に、ドアがノックされた。

(あら、今日はずいぶんせっかちな方ね。がっついてるって思われたくなくて、わざと遅れてくる方が最近は多いのに)
「どうぞ、お入りになって」

 窓の外からドアの方へと目を向けなおしたアルヤは、悠然とした笑みを浮かべ、客を待つ。本来ならここで案内の者が先に入ってくるところだ。だが、開いたドアから、ぬうっと現れたのは、見知らぬ屈強な男だった。並の男なら余裕で通れるそのドアを、彼は頭を屈めて入ってきたのだ。その瞬間、アルヤはどきりとする。

(とっても大きな方だわ)
「あっ困ります!」
「金は払っただろう、部屋まで来ればもう案内はいらない」
「旦那!」

 ばたん、と大きな音をたてて案内の者を締め出すと、客の男はずんずんと大股で三歩歩いて、たったそれだけでアルヤとの距離を詰めた。
 目の前に立たれると壁でもあるかのような圧迫感を覚えるその男は、初めて見る。背が高すぎて顎と鼻の穴しか確認できないが、そもそもこんな巨大な身体の客に出会ったことがない。

(そういえば、今日はいつもの方が予約されてるんじゃなかったかしら?)

 座った状態では見上げても顔が見えないほどに大きい男は、すっ、とその場で跪いて、アルヤに目線を合わせた。ちっとも笑っていない顔の、赤い瞳と視線が交わる。

「本来なら順番待ちをすべきところ、金を積んで今夜の貴女の時間を買った。貴女は相手がどんな男であれ、相手をしてくれる女性だと聞いたが、合っているか?」

 こんな直接的にセックスのことを聞かれたのは久しぶりである。しかも尋ねる声音は固い。ぱちぱちと目を瞬かせたアルヤは、すぐにくすくすと笑った。

「どんな噂が出回っているのかは存じませんが、わたくしは娼婦でございますよ?」

 つまりは客なら拒まないという意味だ。

「だが、俺の身体は大きいだろう。それに顔にこの傷だ。相手を拒む女性は多い。受け入れたとして震えて泣き叫ぶばかりでな」
「あら……」

 アルヤはそっと手を伸ばして、男の頬に触れる。ぴくん、と身体を震わせたものの、男は避けることなくアルヤの好きにさせてくれた。
 ランプの灯った部屋ではわかりづらかったが、ここまで近づけば男の顔が見てとれる。彼の言う通り、額から頬にかけて大きな傷痕があった。しかし、きりっとした眉に涼やかな目元、引き締まった唇もあいまって、その傷痕が不思議と映えて彼を凛々しくかっこよく見せている。きっと彼は軍人なのだろう、短く刈りこまれたこげ茶の髪は、貴族だとしたら不格好だが彼にはよく似合っている。服に包まれていてさえ、その下の筋肉の形を想像させる身体つきに、アルヤは、ふ、と小さく息を漏らした。

(どうしたらいいの、この方……)
「こんなに雄々しくたくましい方を、拒む方がいるんですの?」

 すり、と傷痕をなぞってみれば、それはすでに古傷となっているのだろう、しっかりと塞がった傷痕は、周りの皮膚よりなんだかつるりとしていて触り心地がいい。高揚し始める胸中をよそに、アルヤは優美な笑みを浮かべた。

「わたくしは素敵だと思いますよ」
(好みど真ん中だわ……!?)
「……っ」

 両頬を包んで言えば、驚いて息を呑んだ男がアルヤを凝視する。緊張させていた身体をやがてゆるゆると解くと、ため息を吐いて、彼はアルヤの両手を自身のもので包みこんだ。

「……噂は本当のようだな。では、今から貴女を抱いて構わないな?」
「もちろんでございます」
(一晩あるのに、会話をたのしむ余裕すらないのね。可愛らしい方)

 ふふふ、と笑って答えたアルヤを、男はエスコートする仕草で立たせる。

「あなた様のお名前をうかがってもよろしいですか?」

 ベッドに誘われる途中に――今度は先ほどの大股と違って、アルヤに合わせて歩幅を小さくしてくれている――尋ねると、ぴた、と止まって男はアルヤの顔をまじまじと見た。

(あ……この緊張したお顔、好きだわ)
「貴女は誰にでも……いや。名前を聞かれたのは初めてだ」
「そうなのですか? わたくし、あなた様のお名前を呼びながら……」

 なぜかそこで止まって、アルヤは緊張する。

「抱かれ、たいです……」
(やだ……初めてでもないのに、どきどきしてきた)

 かあ、と頬を赤らめたのをどう思ったのだろう、男はまだアルヤの顔をじいっと見つめていたが、おもむろに彼女の指先に口づけた。それは貴族らしい挨拶のようでいて、もっと親愛がこもったような仕草だった。

「俺はエーギルだ。俺にも、貴女の名前を教えてくれ。貴女のことをなんと呼べばいい?」

 じっとアルヤを見つめる赤い瞳は、先ほどにも増して熱を帯びている。それは男が女を求めているときに見せる、情欲の炎を灯した目だ。

(案内の者に聞いているはずなのに、わざわざ聞いてくださるのね)
「アルヤとお呼びください。エーギル様」
「ああ、アルヤ。いい名前だ」

 目を細めた男――エーギルは、ここで初めて笑む。

(わ……)

 彼の笑顔に見惚れているうちに、エーギルの手がアルヤの頬に添えられ、顔が近づいてきた。だが、唇が触れる直前に彼は止まる。

「口づけてもいいか?」

 彼も童貞ではないのに、間近でそんなことを聞かれて、アルヤも目を細めた。長身の彼が標準程度しかないアルヤに立ったまま口づけるのは、骨が折れるだろうに。

(ほんとう、可愛らしい方)
「許可なんていりませんわ」

 答えながら唇をついばむと、アルヤが離す前にその口を追って唇をはまれる。リップ音をたてて口づけをくりかえしていると、そのうちにアルヤの身体がふわっと浮きあがった。

「あ……」

 エーギルの太い腕に抱き上げられ、声を漏らしたアルヤに、彼は心配そうな顔になる。

「す、すまない。ベッドに行くのがもどかしくて……いやだっただろうか」
「いいえ、お好きになさって」

 首に腕を回せば、安心したようにエーギルはまた口づけを再開する。今度は唇を割って入ってきた舌に応じたところで、アルヤはどきりとする。

(エーギル様の舌、大きいわ。身体が大きいからなの?)

 ちゅるちゅると舌を絡めている間に、アルヤの身体はベッドにもう移動している。そっと静かに下ろされたのに、エーギルがギシっと音をたててベッドに乗り上げたせいで、アルヤの身体がぼわんと揺れる。その揺れにくすくすと笑うと、彼は困ったような顔になった。

「すまないな、俺は重いから」
「楽しいです」
「……では続きをする」

 いちいち律儀に断ったエーギルは、アルヤのドレスのスカートをたくしあげてくる。もう秘部への愛撫をしようとしているらしい。

(あら。そんなに切羽つまってらっしゃるの?)

 ちらりとエーギルの下半身に目を向けるとズボンは形を変えて押し上げられていた。

「お待ちになって」

 そっと彼の腕に手を添えて止めると、エーギルは眉間に皺を寄せてため息を吐いた。

「……大男に組み敷かれるのはいやかもしれないが、少しばかり」
「そうではありません。もう少し、ゆっくりたのしみましょう?」
たのしむ……?」
「ええ」

 太ももに添えられていた手を離したエーギルに笑んで見せて、アルヤは上半身を起こすと、彼の胸に両手を当てる。

「わたくしが脱がせてもよろしいですか?」
(普段は聞かないけれど、エーギル様は確認してくださるもの。わたくしも聞かなきゃ)
「あ、ああ……」
「その代わり、わたくしの服も脱がせてくださいませ」

 背中のリボンを示してエーギルにねだれば、彼は生唾を呑みこむ。

「……いいのか?」
「肌を合わせるのに、脱がないなんて」

 膝立ちになってエーギルに口づけ、拗ねたような声で囁くと、彼は苦笑いを浮かべた。

「どうかなさいまして?」
「いや。『服を脱がすな』『できるだけ触るな』『身体を見せるな』と今まで言われてきたからな……普通はそういうものだと思っていた」

 他の娼婦と寝たときのことを、あけすけに話す。本来ならそれはマナー違反だろう。だがアルヤは怒ったりしない。

(震えて泣き叫ぶだとか、どんな男でも相手にするだとか、冗談かと思ったけど……エーギル様のこのご様子、本当なんだわ)

 そう思うと、なんだかきゅぅんと胸が締めつけられて、気づけばアルヤは再びエーギルに唇を重ねていた。ちゅ、ちゅる、とくりかえしむさぼって、糸を伝うほどに舌を絡め合ってから、アルヤはエーギルの頬の傷の撫でながら微笑む。

「少なくともわたくしは、今、エーギル様と肌を合わせたいです。ですから……」
「……ああ、わかった」

 返事とともに、今度はエーギルから口づけられる。同時に背中に手を回されて、リボンの位置を探られた。初めて脱がすドレスに手間取ったのだろうか、最初のほうはたどたどしかったが、すぐにコツを得てするすると背中の編み上げリボンを抜いていく。彼女は伽のためにコルセットをつけていない。だから背中のリボンを解いてしまえば、すぐに胸元が緩んで彼女の豊かな谷間がふるんと揺れた。胸があらわになったのに、またエーギルが生唾を呑みこんだ。
 その間にアルヤもエーギルの上着を脱がせ、クラバットを解き、シャツブラウスを脱がせにかかっている。すっと胸元の素肌に両手をあてて、シャツを広げるように肩まで這わせると、エーギルがぴくぴくと震える。しっかりとした筋肉のついた胸板は、触れた瞬間は柔らかかったのに、緊張が走ったせいかごつごつと硬くなってアルヤは驚く。

「エーギル様……」

 二の腕までシャツをずり下ろして、あらわになったエーギルの上半身を見たアルヤはほうっとため息を吐く。筋骨隆々のその肌には、顔と同じく、大きな古傷がいくつもあった。

「……見苦しいだろう」
「素敵なお身体ですわ」

 うっとりとしたアルヤがまたため息を吐き、彼の胸元に唇を寄せる。

「どうか、ご奉仕させてくださいませ」
「ほ、奉仕?」

 戸惑いの声をあげたエーギルはしかし、アルヤのすることを遮ったりはしない。それをいいことに、アルヤはそのまま唇を順番に下の方へと這わせていき、ズボンまでたどり着くと、腰の帯を口でくわえて解きにかかった。

「……っ」

 息を呑んだエーギルの股の間で、アルヤは彼のズボンをくわえてずりおろす。勢いよくぶるん、と飛び出した肉棒は、すでに中を穿うがてそうなくらいに屹立していた。興奮で体温が高くなっているのだろう、ズボンから飛び出したそれはむわっと男の匂いを漂わせて、脈に合わせてぴくんぴくんと揺れている。

(まあ……!)

 目をみはったアルヤは、そっと竿を両手で包む。今まで見たどの男よりも、目の前にあるそれは大きい。指を精一杯伸ばしても、片手では握りきれず、親指と人差し指がつきようがないほどに太かった。それを根元からゆっくりと穂先に向かってしごく。

「っアルヤ……」
「おいやですか?」

 ちゅう、と先端に口づけて上目遣いを送れば、エーギルははっと息を吐いた。

「貴女がそんなことをする必要は……」
「わたくしがしたいのです」

 きゅっと握りこむ力を強くして、上下にさするとエーギルは快楽に耐えかねたように、シーツを握りこんだ。

(まだ大きくなるのね……!?)

 しごくたびに熱をはらんだ肉棒は膨らみ、硬くなる。竿の裏側に浮かんだ筋に強く舌を這わせるたびに、エーギルの口から荒い息が漏れた。

(気持ちよさそう……)

 ふふ、と内心笑んで、彼女は怒張の根本にある袋に手を触れる。

「そこは」
「こちらも気持ちがいいでしょう?」
「だが……ぐっだ、めだ……」

 ふにゅ、と子種の袋を揉みながら、舌を使い、手で肉杭を擦りあげる。びくんびくんと跳ねる竿はますます硬くなって、きゅうっと袋も強張り、そろそろ彼の限界が近いのをアルヤに伝えた。

「アルヤ、このままじゃ、出て……くっ」
「んっ」

 かぷ、と唇を穂先に寄せて、子種の出口をちろちろと舌で舐めながら両手で握って上下させれば、いよいよ彼の屹立が強張る。太すぎて口にくわえるのはどうしてもできないが、しごき続けていると、びくん、と先端が揺れた。

(早いのは、慣れてらっしゃらないからね。……可愛い)
「待ってく……ぁあっ」

 制止の声は間に合わない。途端にびゅうっと勢いよく、アルヤの口の中に白濁が吐き出される。痙攣けいれんに合わせて、二度三度と叩きつけられるその迸りが口から溢れる前に、熱くどろどろの雄の匂いを漂わせた精液をアルヤはこくんこくんと飲み干した。

「ふぁ……っ」
(とっても濃いわ……)

 うっとりとつやめいた吐息を漏らしながら、熱を放ってなおまだたけっている肉棒をアルヤはさする。続きをしようと彼女が顔をあげてみれば、エーギルは暗い表情である。

(え!?)
「……あ、あの、やっぱり、おいや……でしたか……?」
(調子に乗りすぎたかしら……)

 しゅんとしたアルヤの口元に、手を伸ばしてエーギルが唇のはしを拭う。どうやら白濁が垂れていたらしい。首を振ったエーギルは苦笑いをする。

「いや、気持ちよかったが……。出てしまったからな。もう、俺は帰らなくては」

 ズボンをずりあげようとした彼の下半身はしかし、まだ猛って満足していないと訴えかけている。

「お時間がないのですか?」
「いや、今日は明日の朝まであけていた。もしかしたら、と思ってな」
「もしかしたら?」

 一瞬ためらったように息を詰まらせた彼は、アルヤの瞳にされたように口を開く。

「評判の貴女なら、朝までつきあってくれるのではないかと……」

 ため息を吐いたエーギルに、アルヤはきょとんとする。

(ひょっとして……)
「一晩空いてらっしゃるのでしたら、まだこちらはお元気なようですし、その……わたくしもまだですし……傍にいてくださいませんか?」
「だが、もう一度シてしまったからな。どんな形であれ、一度出たらそれでしまいだろう?」
(やっぱり……一度だけだって言って他の娼婦に断られていらしたのね)

 困ったように言ってはいるものの、拒まれることを慣れきった様子のエーギルに、アルヤはまたも胸の奥がきゅうっと鳴る。

(これを言うのは、娼婦らしくないわ。けれど……)
「いいえ……他の方なんて知りませんわ。エーギル様のお時間が許すのでしたら、わたくしを朝まで可愛がってくださいませ」

 意を決してアルヤが言えば、ぽかんとしたエーギルがやがてくしゃりと顔を歪めて苦しそうに笑む。

「貴女は……勘違いしそうになるな。俺にだけ、こんな優しいのかと」
「勘違いではありませんわ。その、わたくし」
「いい、皆まで言うな」

 ふっと笑んだエーギルは、脱ぎかけだったシャツを脱ぎ捨てて、アルヤを押し倒した。そうして胸元の緩んだ彼女のドレスを肩からずらして脱がしながら、彼はアルヤの唇と重ね合わせる。

(あ。さっき、飲んだのに……)

 案の定、変な味がしたらしい。エーギルは眉間に皺を寄せたが、くくっと喉を震わせて愉快そうに笑った。

「苦いものなのだな。こんなものを貴女は飲んでくれたのか」

 そう言ってまたすぐに唇を重ね合わせると、ぬろぬろと舌を絡めてその口内に残った苦味を分け合うように深く吸う。

「ん……ふ……んんっ!?」

 不意にエーギルの手が乳房に触れて、中央の尖りを指でつまんだ。急な愛撫に驚いて息を荒くしたアルヤに彼は手を止めて、顔をうかがってくる。

「すまない。ここに触れるのは初めてなんだ。痛くはないか?」
「いえ……き、きもちよくて、びっくりしただけです」
「っそうか」

 ぐっと奥歯を噛んだエーギルは首筋へと舌を這わせ始めた。

「あ……っん……っ」

 曲げた指の背で硬くなった尖りをこすられると、こり、こりと揺れてピリピリと柔らかな快感をアルヤに伝える。

「貴女の胸は柔らかいな……アルヤ。これはどうだ?」
「ふぁっあ、き、もちいい、ですわ……あっ」

 唇が胸へと到達し、口に含まれて乳首が甘噛みされる。そのまま尖らせた舌で中央の周りをこねるようにねぶられて、アルヤの声は甘くなっていく。

「あっあっ、そんな、は、じめて、だなんて……うそ……あんんっエーギル様……」

 腰を跳ねさせながら喘ぎ声が止まらない。緩急をつけて舌で嬲られると、はらの奥に響いて触れられてもいない秘部から蜜がこぼれた。

「いや、胸に触れるのは初めてだ。だが、こちらは満足してもらえると思う」
「……?」

 ちゅぱっと音をたてて胸から口を離し、エーギルは腹あたりまでずりおろしていたドレスを一気に下に引き抜いて、アルヤを産まれたままの姿にした。ベッドに横たわり無防備な状態の彼女を見て、エーギルは目元を緩ませる。

「綺麗だ」

 穏やかな声音に、どきん、とアルヤの胸が跳ねた。

「ありがとう……ございます」
(こんなの、何度も言われ慣れているのに……エーギル様が、かっこいいから……?)

 とくとくとうるさい心臓を抑えながらアルヤが答えれば、エーギルは彼女の股に手を差しこんだ。

「あ……っ」
「もうぬるぬるだな……アルヤは濡れやすいのか?」
「それは……ひゃぁんっ、あっそれ……あっ」

 秘部の溝を割るように指を這わせて、にゅうっと蜜をすくう。その指先に触れた肉の芽は、胸への愛撫でもはや潤滑液を必要としないほどに濡れそぼっている。エーギルの太く熱い肉棒を舐め慰めているときからすでに、彼女の蜜壺は熱く熟れていたのだろう。

「ふぁっあ……っぁぅ……っえ、ぎるさま……っあああっ」

 指が、ねっとりと肉の芽をこねて虐める。固く膨らんだ快楽の芽は指が左右に動かされるたびに、こりゅ、こりゅ、と動き、親指で潰されるとぬめりで滑ってこすられる。そのたびにきゅんきゅんと中がうねって奥が切なくなった。

「あ、えーぎる、さま、も、もう……れて、くださいませ。はやく……なか、欲しいです」

 愛撫で徐々に開いてきていた股を、意識的にさらに広げてみせたアルヤは、はしたなくも雄をねだる。エーギルに差し出した秘部はぱっくりと口をあけて、ヒクついた割れ目から新たな蜜が垂れるのが丸見えだ。誰だって夢中で腰を沈めたくなるそのお誘いに、エーギルは首を振った。

「まだだ」
「そんな……!」

 開き気味だった股をさらに大きく広げさせて、エーギルは彼女の股に顔を寄せる。そうして、指で虐めていた肉芽を今度は舌で嬲り始めた。

「ひゃあああんんんっ!」

 同時に指が中に二本入ってきて、ぐちゅぐちゅと入り口すぐの浅いところを責めたてる。身体の大きいエーギルの指は太く、節くれだった指が二本入っているだけで、細めの男根が挿入されているかのような錯覚を覚えた。しかもそれが実に器用に動いて、アルヤの蜜壺の感じるところを確実に探りあてる。秘部から漏れる愛液をじゅるじゅると吸いあげながら、舌では肉芽をこね、指はいところをくりかえし押してくるのだ。おかげでアルヤの口からはひっきりなしに嬌声が漏れる。

「あっぁっそんな、ぁっやぁ……んんっきもち、よすぎて……だめ、だめです! え、ぎるさまぁ……!」
(舌が大きいから!? あそこがまるごとエーギル様に食べられているみたい……!)

 隘路あいろせばめて指を締めつけながら、アルヤは絶頂が近いことを悟る。男をイかせるのはアルヤの仕事であって、奉仕される立場ではない。だから、今まで手淫だけでこんなふうに絶頂させられたことはなかった。その初めての体験をしようとしている彼女は、肉棒で与えられるのではない刺激に、目をチカチカとさせながら喘ぐ。

「やめ、あああ……っだめ、も、やめ……っ」
「だめだ。俺のをれるには、まだ狭い」

 言いながらエーギルは、指を三本に増やす。それだけで普通の男根よりも大きく、太い。きっとそれは、娼婦たちに拒まれてきたエーギルが、彼なりに考えた方法なのだろう。秘部へだけ愛撫をしっかりやり、解れきってから挿入するのだ。


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