愛を知らない高嶺の花は孤高の騎士に身請けされて毎晩愛される

かべうち右近

文字の大きさ
2 / 19
1巻

1-2

しおりを挟む
 ぎちぎちになった蜜壺を指で容赦なく暴かれ、快楽の芽を舌で執拗に虐められて、これ以上の快感に耐えるのはもう無理だった。

「だめえええぇえええ……っ!」

 叫び声とともに、アルヤはぎゅうっとエーギルの指を締めつけて、がくんがくんとはらを揺らしながら絶頂に達した。

「あ、あ、…………は、ぁあ、あ……」

 浅く息を吐きながら、アルヤは絶頂の波を堪えるように受け流す。だがエーギルはそれを許さないかのように、止まっていた指を動かし中をかき混ぜてくる。

「だめっいま……ぁぁあっ」

 だめ押しの愛撫を受けて、アルヤはがくがくと腰を揺らして痙攣けいれんした。長い絶頂がおさまったところでようやく指をゆっくりと抜いて、エーギルは笑んだ。

「少しはアルヤを乱せたか?」
(ちょっとどころか……!)

 息も絶え絶えに呼吸をくりかえすアルヤは、うまく返事できずに、胸を上下させている。

「だが、これで俺のも入るだろう」

 エーギルはアルヤの太ももをつかむと、熱い猛りを割れ目に押しつけた。途端に、先ほどまで激しすぎる快楽で苦しかったはずなのに、奥は太いものを求めて再びうねる。

「ん……き、てください……」
「ああ」

 甘えた声にこたえて、エーギルがぐっと腰を沈める。

「あんっ」

 だが、簡単には入っていかない。彼の男根はあまりに太すぎる。

(握ったときに太いとは思っていたけど……彼の言う通り、しっかり解さなきゃ無理だったか、も……あっ!?)

 ずにゅう、と唐突に巨根が侵入してきた。蜜壺をこれ以上ないくらいに広げて、みちみちになった奥へとさらに進もうと、怒張がはらを押し上げる。

「んぁぁあっ」
「痛いか?」
「ちが、あ……っあああっ」

 最奥まで到達して、はらがごつん、とノックされる。だというのに、肉棒は彼女の中に納まりきっていない。先ほど絶頂したばかりの身体が、太いもので満たされて強すぎる快楽に喘ぐ。

「やはり根元までは無理か……」

 はくはくと息をしているアルヤをよそに、エーギルは結合部を見下ろしてそんなことを呟いた。

(うそ、これでまだ……!?)

 奥まで隙間なくぎちぎちだ。そう思うのに、まだあるという。根元まで呑みこんだら、一体どうなるのだろう。
 そう思った途端に、広がりきった蜜壺がうねった。

「っアルヤ、もう少し緩めてくれ」
「だ、だって……エーギルさまの……熱くて……ぁぅ……う、動いてください。奥を、わたくしの奥を突いて」

 本当ならまだ、大きさに慣れていないから静止したままでいた方がいいのだろう。だが、待ちきれなかった。

「……ゆっくり、な」

 宣言どおり、もどかしいとも思えるほどに、エーギルは腰をゆっくりと動かす。ずるる、と引き抜いては、にゅうっと奥まで挿入しなおしていく。ただそれだけの動作でピストンに工夫も何もないが、太すぎる男根は彼女のよがるポイントを全部刺激していくうえ、奥にまで到達したところで壁を強くえぐられるから、口からは勝手に甘い声が漏れる。

「あ、あ……、え、ぎるさま……あっんんっそこ、あぁぁっ」
「こうか?」
「ひああああ……っ」

 奥をグリグリと押されて、はらを揺さぶられる。それがどうしようもなく気持ちがいい。普段なら、いかに客に気持ちよくなってもらうかなど、計算を頭の中で巡らせるのに、今の彼女にはそんな余裕がない。

「もう、そろそろ……激しくしてもいいな」

 宣言とともに、彼の抽送は早くなり始めた。ずるるるる、と体内で響いていた音が、水を跳ねさせたちゅとんちゅとんという音に切り替わる。

「あっえぎ、あぁあ……っきもちぃ、い、えぎるさま、きもちい、ですか? ふぁぁ……っ」
「っああ」

 途端にピストンはさらに激しくなり、アルヤの太ももが高く持ちあげられてばちゅばちゅと強く腰が打ちつけられる。

「ひぁっあっ……んぁっあっはげし……あんんっ」

 いつのまにか肉棒は根本までしっかり彼女の中に侵入していた。肉をえぐり、泡立った愛液が二人の間で跳ねてずりゅずりゅと滑る。ベッドは軋んで激しく揺れているが、彼らはもうそんな音も耳に入らず、ただ二人の息遣いと喘ぎ声ばかりに集中していた。

「えーぎ、るさま……はだを、くっつけ、て……ああっやっ」
「貴女を……潰すから、だめだ」

 そう言う彼は、上半身を起こしたままアルヤを突き上げている。

「んっ」

 エーギルの拒絶にもかかわらず、アルヤはまるで恋人に甘えるかのように両腕を彼に向かって伸ばした。

「っ貴女は……また……っ」

 その腕をつかんで引っ張ると、勢いよくアルヤの身体を起こし、エーギルは繋がったまま彼女を自らの膝の上に乗せる。対面に座った状態で抱きしめる体勢だ。

「ひゃんっこれ、あっつ、よ……っ」
「これで触れられるだろう」

 背に腕を回したエーギルは、言いながら突き上げを再開する。先ほどと違って根本までは入らないが、この姿勢は角度が変わって別の場所をえぐられる。そして体重が乗るせいで、より強くはらがノックされた。

「んぅ……っ、あぁっえぎ、るさまぁああっ」

 ぎゅうっと抱き着いてアルヤは必死に叫ぶ。エーギルが『潰す』と言ったように、対面ですら抱き着けば彼の豊満な大胸筋に埋もれてしまいそうだ。だが、行為で汗ばんだその肌が愛おしい。

「は、ぁ、きもち、い……ま、またあああ……っイく……んんっぁああっ」
「く……っアルヤ、俺も……!」

 ばちゅんばちゅんと激しく突かれて、アルヤは背をのけぞらせた。

「んぁああああ……っ」

 ぎゅううっと蜜壺がうねり、がくんと搾り取るリズムに合わせて、熱い迸りが勢いよく奥に叩きつけられる。

「ぁ……ぅ、んん……」

 とぷ、とぷ、と何度か痙攣けいれんしながら吐き出された白濁は、アルヤのはらに広がっている。栓をしている肉杭は、熱を放ったがやはりまだ足りないらしい、今すぐピストンを再開するにはやや硬さに欠けるものの、太さを保っている。

「はあ……」

 絶頂のおさまったアルヤは、こてん、とエーギルの胸に頭を預けて、そのまま荒い呼吸を吐く。鼻先には彼の汗のにおいが刺激して、また奥が揺れた。

(エーギル様、こんなにお元気なのに、今まで一回で済まされていたなんて……さぞお辛かったでしょうに)

 彼を哀れに思えば、またもはらがうねって、胸がきゅうっと詰まった。

「アルヤ、そんなふうに締めつけられると……」

 ぐっと眉間に皺を寄せたエーギルが、彼女の身体を離そうと、そっと肩に触れる。だが、逆に彼女は抱き着いた腕にきゅっと力をこめて、エーギルの胸に頭を預けたまま上目遣いで彼を見つめた。

「まだ……満足なさってらっしゃらないのでは?」

 快楽に耐えかね、涙をこぼした彼女の瞳は潤んでいる。柔らかくも滑らかな肌はしっとりと汗を帯び、彼女の甘い香りを漂わせていて酷く情欲をそそる。大きな胸を押しつけての美女のお誘いを、断れる男などいないだろう。

「本当に……俺を最後まで相手してくれるのだな」

 言いながらエーギルは、アルヤに唇を落とす。それは続きの行為を始めるという答えだった。
 その夜、空が白むまでずっと、アルヤの部屋からは嬌声が響いていた。エーギルが寝かす暇を与えず、吹っ切れたように彼女を抱いていたせいだ。よがり狂い、はらがエーギルの子種でいっぱいになってなお、何度も突き上げられて、アルヤは文字通り朝まで抱きつぶされたのだった。


   ***


 翌朝になって、エーギルは身支度を整えながらアルヤを振り返った。彼女は一晩中責め立てられ、後ろから突かれたり自ら上に乗ったりと激しすぎたため、今は足腰が立たずベッドに寝そべったままだ。本来なら娼婦は部屋の外まで客を見送るのが慣習なのに、今朝はどう考えても無理だった。

(わたくし、足腰はけっこう丈夫な方だと思っていたのだけれど……エーギル様は凄いわ……)

 だが、彼が身支度をする背中を見ていると、あのたくましい腕が自分の身体を暴いたのだと思い出し、奥がうずく。

(あんなに抱かれたのに、まだ足りないのかしら。でも……)

 しょせんは一夜の夢である。

(見た目も中身も、とっても素敵な方だと思うけれど……大金を積んだとおっしゃられていたし、もう来られないかもしれないわ)

 そんなことを思いながら、彼の姿を目に焼きつけるようにアルヤは見つめる。身支度を終えたエーギルは大股でベッドに近づくと、ベッド前に跪いて、昨日と同じようにアルヤと目線を合わせた。

「アルヤ。その……無理をさせてすまなかった」

 横になったままのアルヤに全く怒りもせず、エーギルは労わるように彼女の手をとる。

「いいえ。エーギル様は満足されましたか?」

 尋ねに対して彼は苦笑した。

「実のところ、まだ、貴女を抱き足りない」
(うそ、あんなにして……!? 絶倫って彼のことを言うのね!)
「だから、今夜もまたここに来てもいいだろうか」
「え……」

 仕事の顔も忘れて、アルヤはぽかんとする。
 彼女の予約は、連日埋まっている。だというのに、同じ男が二日連続で彼女を買えるわけがない。できたとして、それはとんでもない金を積んで間入りをする必要があるだろう。加えて、ここは普通の娼館とは違うのだから、コネだって必要だ。

「だめだろうか……」
「いえ、わたくし、またエーギル様にお会いできないかって思ってましたの。嬉しいです」

 本音が滑って口から出て、アルヤは自分でどきりとしたが、構わず微笑んだ。少しだけ緊張を滲ませていた彼も、アルヤにつられたようにほんのりと顔を緩ませる。

「……そうか。では、今夜も貴女を一人占めさせて欲しい」
「はい」

 返事には指先への口づけで返される。

(そんなこと無理かもしれないけれど……)

 ちょっぴり残念に思いながらも、エーギルもまた、娼婦に対するリップサービスを言っているのだろうと思いこむことにして、アルヤは微笑んでみせる。

(そうなったら、いいわ……)

 ほのかに淡い期待を胸に、アルヤは部屋から出て行くエーギルを見送った。


   ***


 いつものアルヤは昼間には部屋の外に出て、許された範囲内で街の散策を楽しんだりもしている。だが、エーギルと過ごしたあとの今日に限っては、部屋に引きこもりほとんどを寝て過ごした。朝方まで抱かれていたのだから仕方のないこととはいえ、どうにも足腰がだるくて立ち上がれない。娼婦として日々組み敷かれるのには慣れている彼女が、こうも体力を削られたのは、ひとえにエーギルの責めが激しかったせいだろう。

(昨夜は、夢のようだったわ)

 昼をずいぶんと過ぎてから湯あみをし、ベッドを整えて軽食をとったら、もうそれだけで客をとる時間が近い。この日の彼女は、ベッドと食事の世話をしてくれた下女以外とは会話をすることもなかった。しかし夢見心地で浮ついていた気持ちも、日が落ちるころになってようやくしゃっきりとしてきた。

(今夜はどなただったかしら……)

 いつものように部屋のソファに身を預けて、アルヤは娼館前の通りをぼんやりと見る。昼間はほとんど人通りのないこの娼館の周りだが、夕暮れどきともなるとにわかに人で賑わっている。その歩く人の中に、見覚えのある背格好の男を見つけて、アルヤはぽかんとした。

「うそ……」

 思わず立ち上がって窓に顔を近づければ、どうにも見間違いではない。むしろ人波の中で頭一つ抜けた彼を見間違えようはずもなかった。彼は、アルヤのいる娼館に入ってくる。

(本当に……?)

 高鳴る胸を抑えながら、それでもアルヤは高級娼婦の顔で悠然とソファに身体を預けなおした。表面上は取り繕っているが、予想外のことに内心はふわふわとしている。開店にはまだ少し早いが、多少は問題ないだろう。
 落ち着かない気持ちのままアルヤは待つ。だが、受付を済ませたであろう時間が過ぎても、部屋のドアはノックされなかった。支払いに手間取ったとしても、ずいぶんと遅い。

(……人違い、だったのかしら)

 ドアを見つめていたアルヤの胸には、先ほど湧き上がった喜びが嘘のように、じわじわと憂いが沁みこんでくる。

(ううん……。そうよ、いくらなんでも、二日連続で、なんてそんなこと……)

 あるわけがない。その最後の一言を思い浮かべることさえできなかったが、アルヤはふう、と息を吐いてゆっくりと首を振った。たったそれだけの動作で、彼女は浮かんでいた期待と落胆を振り切る。

(わたくしは、ただの娼婦だわ)

 そう心の中で呟くと、アルヤは再び窓の外に目を向けた。その横顔にも瞳にも、一見して憂いなど微塵も浮かんでいない。すでに普段通りの彼女である。
 夕日に照らされていた道は徐々に暗くなり、店先に灯されたランプでうすぼんやりと道行く人が浮かびあがる。そんな時間になって、いつもと同じ娼館の営業が始まった。
 ソファで客を待つアルヤの見た目は完璧な貴族令嬢の居ずまいだ。だというのに、そのドレスを一枚剥げば、ドロワーズもコルセットも身に着けていない、いやらしい娼婦の身体である。見た目通りの令嬢ならいざ知らず、娼婦である彼女が淡い想いに身を焦がすことは許されないのだ。

(今日はあと一刻は待つかしらね)

 記憶にある予約客だとしたら、そうなるだろう。だがその予想に反して、それからいくばくもせずにドアのノック音が響いた。今日も、いつもに比べたら客が来る時間にはずいぶんと早い。

「どうぞ、お入りになって」

 返事に応じて、店の男が入ってきた。昨日とは、違う。

(……やっぱりエーギル様じゃ、なかった……)
「アルヤさん、お客さんをお連れしました」

 案内してきた男がドアの前から避けると、その影から客が現れる。ぬぅっと、身を屈めて入ってきた男の姿に、アルヤはぽかんとした。

「エーギル様……?」
「ではごゆっくり」

 店の男は定常通りのセリフを告げて、エーギルを残すとドアを閉めて出て行ってしまった。ランプにぼんやりと照らされたエーギルは、ドアとソファとで離れていてもわかるほどに、渋面を作っている。

「本当に、いらっしゃったんですね」

 アルヤが言い、ソファから立ち上がってエーギルに近寄る。そうしてそっと手をとると、エーギルはなぜか眉間の皺を深めた。

「……ああ」
「さあ、こちらにいらして」

 まずは会話を楽しもうと、アルヤはエーギルをソファへと導く。引かれるままに彼はついてきたが、まだしかめ面のままだ。

「今夜も来て下さるなんて、嬉しいです」
「……そうか?」
「エーギル様?」

 ソファに座る直前に、アルヤは彼を見上げてどきりとする。渋面に見えていたエーギルは、困惑したふうだった。

「……迷惑では、なかったか?」

 顔を歪めてのその問いに、アルヤは昨晩何度も感じた、胸がきゅうっと締めつけられる感覚に陥る。

(エーギル様ったら、わたくしの言葉を娼婦の社交辞令だと思ったのね。それは、間違ってないのかもしれないけれど……)

 アルヤはふるふると首を振って意志を伝えてから、エーギルの手を引いてソファに座らせる。そのうえで、大胆にも彼の膝の上に横むきに乗り上げた。彼の太ももは厚いから、通常よりもずいぶんと床から高い。この状態なら、立っているよりかは目線が合いやすい。

「……っ?」

 驚きで両腕を浮かせたエーギルに、アルヤは悪戯っぽく笑いかけた。

「酷い方だわ。わたくし、心待ちにしておりましたのに」
「だが」
「だからさっき、ちょっぴりがっかりしたんですの」
「なに」

 腕の置きどころに惑って手をさまよわせたままのエーギルが、ぴくんと止まった。

「昨日のエーギル様は、お部屋に入られるとき、店の者より先に入られていたでしょう? だから今夜は別の方が来られたんだって一瞬勘違いしましたのよ?」
「……娼館に通うなら、ルールを守れと叱られてな」

 定常なら店の男に招き入れられるまで娼婦の部屋に入るべきでない。どうやらそのルールを守るように小言を言われたらしい。金も腕力も圧倒的に上であろうエーギルが叱られて渋面を作りながらも従ったのかと思うと、アルヤは笑みがこぼれた。

「あら……ふふ。そうですね、ルールは守ってくださいませんと、わたくしも困ってしまいます」
「その様子なら、今朝の言葉は社交辞令ではなかったようだな」
「まだ疑ってらっしゃるなんて。わたくしが何を申しあげたら信じてくださるのかしら?」

 くすくすと笑いながら、アルヤは未だに宙でさまよっていたエーギルの腕をそっと触れて引き寄せる。そうして掌に口づけを落として上目遣いで視線を送った。その瞬間に、アルヤの太ももに、ずくりと熱源が押し当てられる。

(もう興奮してらっしゃるの?)

 自然と目元が緩んで、アルヤは頭をエーギルの胸に預けながら、彼の手を自分の頬に当てる。

「エーギル様。口づけてくださいませんか?」
「……ああ」

 答えたエーギルの唇がゆっくりと近づいてくる。膝の上に乗っていてさえまだ遠い顔を、彼は身を屈めて近づけてくれるのだ。エーギルがアルヤを見つめるその瞳は、昨夜も見せたような戸惑いの色を浮かべている。

(本当に、可愛らしい方)

 その唇を受けながら、アルヤは頬に当てたエーギルの手をすりすりと撫でる。その動作で、太ももに当たっているものの硬度が増したようだった。

「ん……」

 軽く重ね合わせて離されたのを、すぐに追いかけて彼の唇をはむ。もったいぶるように柔らかに下唇を甘噛みして、わざとリップ音をたてて口を離しながら、アルヤは至近距離にあるエーギルの赤い瞳を見た。たったそれだけの触れあいで、彼の瞳はすでに情欲の色に染まっている。

(あ。くる……)
「アルヤ」

 低い声が耳をくすぐって、すかさず唇が重なった。先ほどは触れるだけだったのに、今度は噛みつくようにアルヤの唇を吸ってくる。むさぼるようなリップ音をたてながらエーギルは幾度もアルヤの唇を奪った。
 火が灯ったように口づけるエーギルは、必死でアルヤを求めている。そんな彼の様子に、アルヤは内心ほっとした。

(エーギル様は、言葉だけじゃなく身体でも示したほうがいいんだわ)

 頬に添えられていただけの手が、彼女の顔を逃がすまいと力がこもる。そのエーギルの手を安心させるようにすりすりと撫でてやれば、唇を割って入ってきた舌がアルヤの口内を犯した。熱い舌に積極的にこたえると、エーギルはますます舌をむさぼる。

「ん……んぅ……」

 息をつく間もなく口を吸い合い、唇の紅がすっかり落ちたころになって、ようやくエーギルはアルヤの唇を解放した。

「……アルヤ」

 眉尻を下げたエーギルが、助けを求めるような声を出す。その理由はわかりきっていた。アルヤの太ももに当たった熱源は、今にもはちきれそうだ。

「どうなさりたいんです? おっしゃってください」

 首に腕を回しながらアルヤが尋ねたときには、エーギルの腕は彼女の背に伸びて、ドレスのリボンに手をかけている。

「抱いてもいいか」
「もちろんです」

 ふふ、と笑ってアルヤがこたえると、ほっとしたようなエーギルが、彼女のリボンを解き始めた。だが、半ばまで解いたところで胸元が緩んだのを見た彼は、もどかしそうにすぐスカートをたくしあげる。ドレスを脱がす時間も待てないらしい。昨夜はゆっくりと、なんて言ったアルヤも今夜はそれを止めず、彼の求めるままに腰を浮かせて秘部を触りやすいように腰を浮かせた。ドロワーズを穿いていない無防備な蜜口に指が侵入して、あっという間にとろとろに解される。

「エーギル様、もう……」
「まだ少し硬いだろう。少し待ってくれ」

 彼の手淫でぐずぐずになった身体を持て余し、挿入をねだればエーギルは生真面目な顔で断る。もう彼の怒張は張り詰めていてつらいだろうに、それを我慢してアルヤを解そうとしているのだ。

「貴女に痛い思いをさせたくない」
「あぅ……っ」

 囁かれた低い声と同時に、指が奥を揺らしてきゅうっと胸とはらが揺れる。女を口説くためのポーズでなく、本心からそう言ってくれているのだろう。

(どうしてエーギル様はこんなに、わたくしに真摯に向き合ってくださるのかしら)

 国営の娼館だから、もともと変な客は来ない。そうはいっても、娼婦相手であることへのあなどりは、どの客にもあった。
 エーギルからはそれが感じられない。目線を合わせ、彼女の身体を労わりながら、二人で気持ちよくなろうとしてくれる。
 身体を襲う快楽の波に声をあげながらも、エーギルの真意を読み取ろうと赤い瞳を見つめるが、ただただ彼が必死なことしかわからない。ぎらぎらと熱情を灯しながらも、指先が繊細に動いているのが可愛かった。

「もう、いいか?」
「もちろんですわ」

 横座りだったアルヤはエーギルの膝に跨りなおし、二人して服を脱ぐ手間も惜しんですぐに挿入した。ぐちゅっと奥まで突き上げられたら、すぐにゆすゆすと中をえぐって揺さぶられる。

「ん、ぁ……っそこ、きもち、い……あ……」

 対面で抱き合いながら性器だけを露出させて交わるのは、いかにも余裕がない。いつもならソファで始めたとしてももっとゆっくり時間をかけて相手を焦らすのだが、エーギルの求めがあまりにも可愛くて、アルヤも我慢ができなかったのだ。

(エーギル様とするのは、不思議だわ)

 ぎっぎっとソファを揺らし、嬌声を漏らしながら頭のどこかで考える。こんなふうに彼女が上に乗っているのだから、他の客ならアルヤが腰を振るところなのに、エーギルは下から突き上げて、アルヤをむさぼりつつも彼女への奉仕をしている。
 これではどちらが客なのかわからない。

「はぁん……っイ、っちゃ……ぁんんっ」
「……っアル、ヤ……」

 ずんっと深くえぐられて、うねった蜜壺がエーギルをぎちぎちと締めあげる。昨晩ならばそれだけでエーギルも達していただろうが、締めつけを受けながらも彼はまだ腰を揺すぶっていた。

(ふわふわして……考えられなくなっちゃう……)
「んっんぅ」

 絶頂に至って背をしならせたアルヤの身体を、エーギルの腕が支えてくれる。彼はそのまま背中を丸めて彼女の首筋に唇を押し当ててきた。性急にまぐわっているのにその口づけは酷く優しくて、余計にアルヤは乱れてしまう。

「……そろそろ……出す、ぞ」
「来て……んぁっ……熱いの、ぁっあんんっ」

 腰をぎゅっと抱き締めた途端に、股を貫く肉棒がびくんと震える。昨晩だって何度も吐き出したにもかかわらず、勢いの衰えない子種がアルヤの最奥にびゅうびゅうと激しく注ぎこまれた。しかし、昨晩と同様に満足しきっていない男根はまだ硬い。

「アルヤ、もっと……」
(もっとシてください……)

 射精したばかりでそのまま突き上げを再開したエーギルのおかげで、アルヤの返事は嬌声で紡がれることはなかった。だが、繋がった身体は蜜壺のうねりで続きを求める気持ちをエーギルに伝えてくれる。二人は引き続き子種と愛液の混ざった水音を激しく響かせた。
 そうしてソファの上でのまぐわいのあとも、まだ行為は終わらない。ベッドに移りドレスを脱がされてからも身体をむさぼられ、アルヤはひたすらに喘がされる。エーギルが三度目に果てたあとは、すぐに次の行為を始めず横向きで寝そべっていたが、口づけを交わしているうちにまたすぐに彼の下半身が欲を訴え始めた。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつもりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

余命わずかな私は、好きな人に愛を伝えて素っ気なくあしらわれる日々を楽しんでいる

ラム猫
恋愛
 王城の図書室で働くルーナは、見た目には全く分からない特殊な病により、余命わずかであった。悲観はせず、彼女はかねてより憧れていた冷徹な第一騎士団長アシェンに毎日愛を告白し、彼の困惑した反応を見ることを最後の人生の楽しみとする。アシェンは一貫してそっけない態度を取り続けるが、ルーナのひたむきな告白は、彼の無関心だった心に少しずつ波紋を広げていった。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも同じ作品を投稿しています ※全十七話で完結の予定でしたが、勝手ながら二話ほど追加させていただきます。公開は同時に行うので、完結予定日は変わりません。本編は十五話まで、その後は番外編になります。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。