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【第二話】根幹
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通信校の入口にたどり着いた蒼井。緊張と不安で小刻みに身体が震える。イヤホンをポケットにしまった後、深呼吸をし、気を落ち着かせた後、玄関扉をゆっくり開ける。
中へ入ると、目の前に折り返し階段があり、上から授業している先生や生徒達の声が聞こえてくる。
蒼井は、再度深呼吸をした後、1段ずつ階段を上る。
下段を上りきり、上段にさしかかろうとした時、上から先生らしき人が出迎えているのを目にする。
先生「おはようございます。今日から入学の木ノ内蒼
井くんかな?」
蒼井は小さく頷き、先生の後ろを着いていく。
時刻は12時を過ぎており、お昼休憩で色んな人達がそれぞれお昼ご飯を食べていた。
手続きを済ませた後、先生から課外活動の誘いを受けたが、独り部屋の隅にある空席から眺める事しか出来なかった。
ぼんやりと課外活動を楽しんでいるのを眺めていると、蒼井は肩を軽く叩かれるを感じた。
「ねぇねぇー。」
蒼井は咄嗟に振り向くと、金髪のショートヘアーでピアスを付けた女子が肩の真横に立っていた。
蒼井「あっ!、はい…!」
「君って、今日から来た転校生だっけ?」
蒼井「あ…う、うん。」
「私、戸崎 蘭(トザキ ラン)、よろしくね~!」
蒼井「あっ、よろしく~…!」
初めて人から声をかけられた。内心とても嬉しかった。通信校に来てから、僕にとって最初の友達だった。
蘭はとても明るい性格で、積極的なタイプだ。見た目は少々派手なところはあるが、友達想いの元気な奴だ。
声をかけられた蒼井は、胸の高鳴りを抑えようと小さく深呼吸をしている中、前から呼ぶ声が聞こえる。
「ラーン、先行っちゃうよー。」
蘭「待って!、今行くからー!」
「ごめんね…!、友達待ってるから行くね!」
蒼井「あ…!、うん。」
蘭は蒼井の言葉を流すように、友人の元へ足早に向かって行った。蒼井は10分ほど間を開けた後に、気配を消すように下校した。
時刻は午後3時を指す頃だった。外を出ると、ランドセルを背負った小学生や、スーツを着た人達が歩道を歩っている。蒼井は周りの視線を遮るようにフードを深く被る。そして、イヤホンをポケットから取り出し、周りをシャットアウトした。
改札までの道のりの間、蒼井はホームルームでの出来事を頭の中で振り返っていた。
(何時ぶりだろう……、声を掛けられたのは。)
滲み出てくる過去。思い出したくもない記憶が、胃液のように込み上げてくる。蒼井はそれを必死に抑え込み、ボリュームを上げて半ば強引に揉み消した。
やがて改札前に差し掛かり、リュックから定期券を取り出そうとした時、通行人と肩がぶつかった。
その衝撃でイヤホンが外れ、周りの環境音が一気に耳の奥へ入り込んでくる。
「ごめんなさい…!」
蒼井はその一言が聞こえ、咄嗟に相手の方を向く。
しかしその人は、蒼井の返答よりも先に去っていった。
いち早く謝る事が出来なかった自分を卑下する蒼井。
ふと下を見ると、『健康祈願(けんこうきがん)』と書いてある御守りが落ちていた。
蒼井(さっきの人の落し物だ。一応持っとくか……)
蒼井はそれをリュックのポケットにしまい、帰りの電車に乗った。
家に着いた蒼井は急いで靴を脱ぎ捨てて、自分の部屋に駆け込みベッドへ横たわる。初日の登校による疲労が鉛のように体を重くさせ、ベッドを深く沈み込ませているような感覚を覚える。蒼井は、瞼が徐々に重くなり、気付けば深い眠りについていた。
次の日になり、蒼井は昨日と同様に通信校へ足を運ばせていた。コンビニへ寄りミルクティーを買った後、横断歩道にさしかかろうとした時、後ろから蒼井を呼ぶ声がイヤホン越しに聞こえてきた。
蘭「あら、蒼井君じゃん!おはよー!」
蒼井「あっ…お、おはよぉ……!」
蘭「昨日はごめんね、友達に呼ばれちゃってさぁ…!」
蒼井「いや…!、全然大丈夫だよ…!」
今までずっと人と関わる事を恐れていた蒼井にとって、人から話しかけて貰えるのは、間の夢の様な話だった。
この出来事をきっかけに、蒼井と蘭はすぐに仲良くなり、蘭を通して、徐々に友達も増えていった。
蒼井はいつの間にか、イヤホンを付ける頻度が下がっていき、胸を張って歩けるようになっていた。
根暗な印象から本来の明るい蒼井へと変わっていく。
時折、学校をサボる悪事行為の楽しさも友人達と一緒に覚えていった。夏休みでは、皆で祭りを楽しんだり、秋は友人の家でハロウィンパーティーを満喫した。冬になると、皆でクリスマスを満喫した。
その日の冬はとても心地よく、暖かいものだった。
冬休みが終わり、3年生になった蒼井はいつもの様に電車を降り、改札口までの階段に差し掛かる。ふと何気なく辺りを見ると、杖をつく高齢の方が重い荷物を持ちながら階段を登っているのを目にする。
蒼井は、頭の中で激しく動揺した。
(助けてあげたい、……でも…。)
蒼井は隣にあるエスカレーターへ乗った。
緩やかに登っていく蒼井はスマホを片手に高齢者を横目で見つめる。
蒼井(僕なんかよりもずっと上の人が階段を使ってるの
に。いや…そこじゃない。なんで、見て見ぬふりを
してしまったんだろう……。)
蒼井はこの時、ある事に気付かされる。
それは、自分から行動に移していないということに。
お小遣いがあるのは親のおかげ。
友達が出来たのは蘭の力。
先に謝ったのは通行人の方。
蒼井は、悪い物に蓋をしながら学校へ向かった。
4時間目が終わり、休み時間になるも、蒼井は疲労のせいか、机に横たわりながらぼんやりと廊下を眺めていると、先生の後ろを着いて歩く転校生らしき人を目にする。
蒼井は眠気が一気に覚め、突拍子に立ち上がる。
その転校生は、あの時肩がぶつかった少女だった。
第二話【根幹】―終了―
中へ入ると、目の前に折り返し階段があり、上から授業している先生や生徒達の声が聞こえてくる。
蒼井は、再度深呼吸をした後、1段ずつ階段を上る。
下段を上りきり、上段にさしかかろうとした時、上から先生らしき人が出迎えているのを目にする。
先生「おはようございます。今日から入学の木ノ内蒼
井くんかな?」
蒼井は小さく頷き、先生の後ろを着いていく。
時刻は12時を過ぎており、お昼休憩で色んな人達がそれぞれお昼ご飯を食べていた。
手続きを済ませた後、先生から課外活動の誘いを受けたが、独り部屋の隅にある空席から眺める事しか出来なかった。
ぼんやりと課外活動を楽しんでいるのを眺めていると、蒼井は肩を軽く叩かれるを感じた。
「ねぇねぇー。」
蒼井は咄嗟に振り向くと、金髪のショートヘアーでピアスを付けた女子が肩の真横に立っていた。
蒼井「あっ!、はい…!」
「君って、今日から来た転校生だっけ?」
蒼井「あ…う、うん。」
「私、戸崎 蘭(トザキ ラン)、よろしくね~!」
蒼井「あっ、よろしく~…!」
初めて人から声をかけられた。内心とても嬉しかった。通信校に来てから、僕にとって最初の友達だった。
蘭はとても明るい性格で、積極的なタイプだ。見た目は少々派手なところはあるが、友達想いの元気な奴だ。
声をかけられた蒼井は、胸の高鳴りを抑えようと小さく深呼吸をしている中、前から呼ぶ声が聞こえる。
「ラーン、先行っちゃうよー。」
蘭「待って!、今行くからー!」
「ごめんね…!、友達待ってるから行くね!」
蒼井「あ…!、うん。」
蘭は蒼井の言葉を流すように、友人の元へ足早に向かって行った。蒼井は10分ほど間を開けた後に、気配を消すように下校した。
時刻は午後3時を指す頃だった。外を出ると、ランドセルを背負った小学生や、スーツを着た人達が歩道を歩っている。蒼井は周りの視線を遮るようにフードを深く被る。そして、イヤホンをポケットから取り出し、周りをシャットアウトした。
改札までの道のりの間、蒼井はホームルームでの出来事を頭の中で振り返っていた。
(何時ぶりだろう……、声を掛けられたのは。)
滲み出てくる過去。思い出したくもない記憶が、胃液のように込み上げてくる。蒼井はそれを必死に抑え込み、ボリュームを上げて半ば強引に揉み消した。
やがて改札前に差し掛かり、リュックから定期券を取り出そうとした時、通行人と肩がぶつかった。
その衝撃でイヤホンが外れ、周りの環境音が一気に耳の奥へ入り込んでくる。
「ごめんなさい…!」
蒼井はその一言が聞こえ、咄嗟に相手の方を向く。
しかしその人は、蒼井の返答よりも先に去っていった。
いち早く謝る事が出来なかった自分を卑下する蒼井。
ふと下を見ると、『健康祈願(けんこうきがん)』と書いてある御守りが落ちていた。
蒼井(さっきの人の落し物だ。一応持っとくか……)
蒼井はそれをリュックのポケットにしまい、帰りの電車に乗った。
家に着いた蒼井は急いで靴を脱ぎ捨てて、自分の部屋に駆け込みベッドへ横たわる。初日の登校による疲労が鉛のように体を重くさせ、ベッドを深く沈み込ませているような感覚を覚える。蒼井は、瞼が徐々に重くなり、気付けば深い眠りについていた。
次の日になり、蒼井は昨日と同様に通信校へ足を運ばせていた。コンビニへ寄りミルクティーを買った後、横断歩道にさしかかろうとした時、後ろから蒼井を呼ぶ声がイヤホン越しに聞こえてきた。
蘭「あら、蒼井君じゃん!おはよー!」
蒼井「あっ…お、おはよぉ……!」
蘭「昨日はごめんね、友達に呼ばれちゃってさぁ…!」
蒼井「いや…!、全然大丈夫だよ…!」
今までずっと人と関わる事を恐れていた蒼井にとって、人から話しかけて貰えるのは、間の夢の様な話だった。
この出来事をきっかけに、蒼井と蘭はすぐに仲良くなり、蘭を通して、徐々に友達も増えていった。
蒼井はいつの間にか、イヤホンを付ける頻度が下がっていき、胸を張って歩けるようになっていた。
根暗な印象から本来の明るい蒼井へと変わっていく。
時折、学校をサボる悪事行為の楽しさも友人達と一緒に覚えていった。夏休みでは、皆で祭りを楽しんだり、秋は友人の家でハロウィンパーティーを満喫した。冬になると、皆でクリスマスを満喫した。
その日の冬はとても心地よく、暖かいものだった。
冬休みが終わり、3年生になった蒼井はいつもの様に電車を降り、改札口までの階段に差し掛かる。ふと何気なく辺りを見ると、杖をつく高齢の方が重い荷物を持ちながら階段を登っているのを目にする。
蒼井は、頭の中で激しく動揺した。
(助けてあげたい、……でも…。)
蒼井は隣にあるエスカレーターへ乗った。
緩やかに登っていく蒼井はスマホを片手に高齢者を横目で見つめる。
蒼井(僕なんかよりもずっと上の人が階段を使ってるの
に。いや…そこじゃない。なんで、見て見ぬふりを
してしまったんだろう……。)
蒼井はこの時、ある事に気付かされる。
それは、自分から行動に移していないということに。
お小遣いがあるのは親のおかげ。
友達が出来たのは蘭の力。
先に謝ったのは通行人の方。
蒼井は、悪い物に蓋をしながら学校へ向かった。
4時間目が終わり、休み時間になるも、蒼井は疲労のせいか、机に横たわりながらぼんやりと廊下を眺めていると、先生の後ろを着いて歩く転校生らしき人を目にする。
蒼井は眠気が一気に覚め、突拍子に立ち上がる。
その転校生は、あの時肩がぶつかった少女だった。
第二話【根幹】―終了―
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