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【第六話】告白
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夏祭りから3日が経ち、蒼井はいつものように目を覚ます。
何も変わらない日常。しかしその日の目覚めは少しだけ爽やかに感じた。
目を擦りながら、カーテンを開けると、太陽の光が暗い部屋を一気に照らす。
眩しさのあまりに咄嗟に瞼を閉じ、廊下を歩き出すも、床に横たわる空のペットボトルを踏み上り、大胆に尻餅をつく。
蒼井「痛ってぇ…。」
痛めた腰を抑えながらゆっくり立ち上がり、リビングへ向かう。
そこでは、朝食を配膳している母と、コーヒーを片手に、ニュース番組を観ている父の姿がいた。
父「物騒な世の中になったもんだなぁ…。」
母「このニュース、うちらの地区じゃないの。」
父「あぁ、本当だな…。」
母「あら起きてたの、さっき大きな音がしたけど。」
蒼井「いや、別に…。」
蒼井はテレビ脇にあるソファーに座り、スマホの画面を見つめていると、報道の内容と同じニュースサイトを目にする。
『速報、〇〇県〇〇市在住の女子高校生が行方不明。』
蒼井は、背筋が凍るものを感じた。
同時に、最悪なケースが頭の中を駆け巡る。あの日に交わした会話の内容がフラッシュバックする。その時、あの時に楓が泣いていた理由が直感的に分かった気がした蒼井は、考えるよりも先に、あの公園へ向かう。
母「ちょっと!、今度はどこ行くの…!」
父「まぁ、蒼井もそういう時期なんだよ。」
母「もぉ…、朝ごはん作ったのに…。」
蒼井は、電車で駅のホームへ着き、駆け足で改札口を出る。そして、一目散に公園へ走り出す。がむしゃらに向かう蒼井の額には汗をかき、咳き込んでしまうほどに息を切らせていた。
蒼井(楓は…あの日、僕に言っていた…。消えてしまう前
に、ここでまた先輩と出会いたいなって。)
公園に着いた蒼井は全身で隈なく辺りを探し回った。
しかし、楓の姿はどこにもなく、蒼井は近くにあったベンチに腰掛け、冷静に心を落ち着かせる。
蒼井(まぁまぁ…、あのニュースが楓な訳ないよな…。)
蒼井は、悪い予感を揉み消そうと、必死に自分にそう言い聞かせながら来た道を戻る。
やがて、フードコートを通り過ぎ、改札口を差し掛かろうとした時、
楓「あっ…、先輩…!」
蒼井「えっ…?」
蒼井の横から思いもよらなかった楓の声が聞こえ、咄嗟に振り向く。
そこには、紛れもなく楓がビニール袋を片手に立っていた。
楓「はぁ…はぁ…。いつもフードコートにいるから、ま
た会えるかなって思っ…、」
蒼井は、行方不明だった人物が楓ではなかった事を理解すると、膝から崩れ落ちるように、その場に倒れ込み、大粒の涙を流す。
楓「だっ…、大丈夫ですかっ…!?」
蒼井「うぅん…、俺…てっきり楓ちゃんが…。」
楓「私ですかっ…!、私ならまだここにいますよ…!」
蒼井「ごめん、ごめん…。なんでもないんだ…。」
人前で泣きなくない蒼井。そんな羞恥心など上の空になるほどに嬉しいものだった。
蒼井「あっ…ごめんねぇ…!、なんで泣いてんだァ…!」
楓「えへ…、でもなんか心配してくれてありがとうござ
います…。」
2人は、電車の時間が来るまで、フードコートで時間を潰すことにする。
蒼井「でも…まさかいると思わなかったよ…!」
楓「私も、まさか来てると思いませんでしたよ…!」
蒼井「だって…この前の公園であんな事言うからさ…。」
楓「いや…!、えっと今日は…その…。」
楓の表情が少し曇り、視線を下に逸らす。
蒼井「あぁ…!、なんか勝手に心配してごめん…!」
楓「いや…!、大丈夫ですよ…!」
2人の間に沈黙の空間が流れる。蒼井が重くなった空気感を断ち切ろうと、話題を持ちかけようとした時、楓が思いもよらない言葉を発言する。
蒼井「それにしても…!、この間の祭…、」
楓「私、ずっと前から死に場所を探してるんです…。」
蒼井「…、えっ…。」
蒼井の思考が一瞬にして止まる。蒼井はしばらくの間、聞き返す事すら出来ずにいた。
蒼井「えっ…ど、どうして…?」
楓「実は私…、生まれつきガンを患ってるんです…。」
蒼井「ガン…?、そんな…。」
楓「前は親からの遺伝で、すい臓ガンになってたんで
すけど…、いつの間にか、心臓の方に転移しちゃっ
てたみたいで…。」
蒼井「そのガンは…、治りそうなの…?」
楓「一応…、抗がん剤の治療を受ければ回復の見込みは
あるみたいなんです…、でも…。」
蒼井「そうだよね…。病院での生活…だもんね…。」
楓「っ…!ごめんなさい…。こんなこと話してしまっ
て…。」
蒼井「ううん…!、むしろ僕なんかに話してくれてあり
がとう…!。」
楓「えっ、いや…そんな…!」
蒼井「治療するなら…、俺、お見舞いに来るわ…!」
楓「えっ、ありがとうございます…!」
蒼井「えへへ…!」
楓「私、今までガンが理由で人と遊んだりしてこなかっ
たけど…、皆と遊ぶのがこんなに楽しいなんて思わ
なかったんです…。」
蒼井「そうだったんだね…。」
楓「いつもどうやったら人に迷惑をかけないで楽に死ね
るかを考える毎日でしたが…、皆さんとの出会い
で、もう少し頑張ってみようかなって思えたんで
す…。」
蒼井「よっ、良かった!、それは…!。楓ちゃんはよく
頑張ってるよ!。」
楓「ありがとう…ございます…。」
蒼井(あぁ…そうか。あの時…なんで楓ちゃんが泣いて
いたのか、今なら分かった気がする。)
蒼井「あのさ…!、治療受けて無事治ったらさ…!、楓
ちゃんの誕生日の日にふたっ…皆でクリスマスパ
ーティーしよ!」
楓「はい…!、ありがとうございます…!」
楓から、入院先の病院を教えて貰った後、改札口まで足を運んだ蒼井と楓。2人の歩幅は、まるで息を合わせているかのように重なり合っていた。
楓「あの、この話は…秘密にしておいて下さい…。」
蒼井「分かった!。こんな大事な話、僕なんかにしてく
れてありがとね。」
楓「いえいえ…!。」
蒼井「あっ…あのさ…、」
楓「…?、どうしました…!?」
蒼井は、あの時に言いそびれてしまった事を告げる。
蒼井「あの…、連絡先…交換しても…いい?」
楓「あっはい!、是非是非!」
蒼井「良かった…!。これでよしっと…!」
楓「では…私、頑張って来ます…!」
蒼井「うん…!、僕も見舞いに行くよ!」
楓「はい…!。」
勇気を出して言えた蒼井の背中は、生き生きとしていた。楓は改札口を出ると、照れくさい表情で、小さく手を振った。その時の楓は、今までになく、最高に可愛いらしく、宝石のように輝いて見えた。
蒼井は楓の姿が見えなくなる最後まで、笑顔で見送った。後悔のないように。
第六話【告白】-終了-
何も変わらない日常。しかしその日の目覚めは少しだけ爽やかに感じた。
目を擦りながら、カーテンを開けると、太陽の光が暗い部屋を一気に照らす。
眩しさのあまりに咄嗟に瞼を閉じ、廊下を歩き出すも、床に横たわる空のペットボトルを踏み上り、大胆に尻餅をつく。
蒼井「痛ってぇ…。」
痛めた腰を抑えながらゆっくり立ち上がり、リビングへ向かう。
そこでは、朝食を配膳している母と、コーヒーを片手に、ニュース番組を観ている父の姿がいた。
父「物騒な世の中になったもんだなぁ…。」
母「このニュース、うちらの地区じゃないの。」
父「あぁ、本当だな…。」
母「あら起きてたの、さっき大きな音がしたけど。」
蒼井「いや、別に…。」
蒼井はテレビ脇にあるソファーに座り、スマホの画面を見つめていると、報道の内容と同じニュースサイトを目にする。
『速報、〇〇県〇〇市在住の女子高校生が行方不明。』
蒼井は、背筋が凍るものを感じた。
同時に、最悪なケースが頭の中を駆け巡る。あの日に交わした会話の内容がフラッシュバックする。その時、あの時に楓が泣いていた理由が直感的に分かった気がした蒼井は、考えるよりも先に、あの公園へ向かう。
母「ちょっと!、今度はどこ行くの…!」
父「まぁ、蒼井もそういう時期なんだよ。」
母「もぉ…、朝ごはん作ったのに…。」
蒼井は、電車で駅のホームへ着き、駆け足で改札口を出る。そして、一目散に公園へ走り出す。がむしゃらに向かう蒼井の額には汗をかき、咳き込んでしまうほどに息を切らせていた。
蒼井(楓は…あの日、僕に言っていた…。消えてしまう前
に、ここでまた先輩と出会いたいなって。)
公園に着いた蒼井は全身で隈なく辺りを探し回った。
しかし、楓の姿はどこにもなく、蒼井は近くにあったベンチに腰掛け、冷静に心を落ち着かせる。
蒼井(まぁまぁ…、あのニュースが楓な訳ないよな…。)
蒼井は、悪い予感を揉み消そうと、必死に自分にそう言い聞かせながら来た道を戻る。
やがて、フードコートを通り過ぎ、改札口を差し掛かろうとした時、
楓「あっ…、先輩…!」
蒼井「えっ…?」
蒼井の横から思いもよらなかった楓の声が聞こえ、咄嗟に振り向く。
そこには、紛れもなく楓がビニール袋を片手に立っていた。
楓「はぁ…はぁ…。いつもフードコートにいるから、ま
た会えるかなって思っ…、」
蒼井は、行方不明だった人物が楓ではなかった事を理解すると、膝から崩れ落ちるように、その場に倒れ込み、大粒の涙を流す。
楓「だっ…、大丈夫ですかっ…!?」
蒼井「うぅん…、俺…てっきり楓ちゃんが…。」
楓「私ですかっ…!、私ならまだここにいますよ…!」
蒼井「ごめん、ごめん…。なんでもないんだ…。」
人前で泣きなくない蒼井。そんな羞恥心など上の空になるほどに嬉しいものだった。
蒼井「あっ…ごめんねぇ…!、なんで泣いてんだァ…!」
楓「えへ…、でもなんか心配してくれてありがとうござ
います…。」
2人は、電車の時間が来るまで、フードコートで時間を潰すことにする。
蒼井「でも…まさかいると思わなかったよ…!」
楓「私も、まさか来てると思いませんでしたよ…!」
蒼井「だって…この前の公園であんな事言うからさ…。」
楓「いや…!、えっと今日は…その…。」
楓の表情が少し曇り、視線を下に逸らす。
蒼井「あぁ…!、なんか勝手に心配してごめん…!」
楓「いや…!、大丈夫ですよ…!」
2人の間に沈黙の空間が流れる。蒼井が重くなった空気感を断ち切ろうと、話題を持ちかけようとした時、楓が思いもよらない言葉を発言する。
蒼井「それにしても…!、この間の祭…、」
楓「私、ずっと前から死に場所を探してるんです…。」
蒼井「…、えっ…。」
蒼井の思考が一瞬にして止まる。蒼井はしばらくの間、聞き返す事すら出来ずにいた。
蒼井「えっ…ど、どうして…?」
楓「実は私…、生まれつきガンを患ってるんです…。」
蒼井「ガン…?、そんな…。」
楓「前は親からの遺伝で、すい臓ガンになってたんで
すけど…、いつの間にか、心臓の方に転移しちゃっ
てたみたいで…。」
蒼井「そのガンは…、治りそうなの…?」
楓「一応…、抗がん剤の治療を受ければ回復の見込みは
あるみたいなんです…、でも…。」
蒼井「そうだよね…。病院での生活…だもんね…。」
楓「っ…!ごめんなさい…。こんなこと話してしまっ
て…。」
蒼井「ううん…!、むしろ僕なんかに話してくれてあり
がとう…!。」
楓「えっ、いや…そんな…!」
蒼井「治療するなら…、俺、お見舞いに来るわ…!」
楓「えっ、ありがとうございます…!」
蒼井「えへへ…!」
楓「私、今までガンが理由で人と遊んだりしてこなかっ
たけど…、皆と遊ぶのがこんなに楽しいなんて思わ
なかったんです…。」
蒼井「そうだったんだね…。」
楓「いつもどうやったら人に迷惑をかけないで楽に死ね
るかを考える毎日でしたが…、皆さんとの出会い
で、もう少し頑張ってみようかなって思えたんで
す…。」
蒼井「よっ、良かった!、それは…!。楓ちゃんはよく
頑張ってるよ!。」
楓「ありがとう…ございます…。」
蒼井(あぁ…そうか。あの時…なんで楓ちゃんが泣いて
いたのか、今なら分かった気がする。)
蒼井「あのさ…!、治療受けて無事治ったらさ…!、楓
ちゃんの誕生日の日にふたっ…皆でクリスマスパ
ーティーしよ!」
楓「はい…!、ありがとうございます…!」
楓から、入院先の病院を教えて貰った後、改札口まで足を運んだ蒼井と楓。2人の歩幅は、まるで息を合わせているかのように重なり合っていた。
楓「あの、この話は…秘密にしておいて下さい…。」
蒼井「分かった!。こんな大事な話、僕なんかにしてく
れてありがとね。」
楓「いえいえ…!。」
蒼井「あっ…あのさ…、」
楓「…?、どうしました…!?」
蒼井は、あの時に言いそびれてしまった事を告げる。
蒼井「あの…、連絡先…交換しても…いい?」
楓「あっはい!、是非是非!」
蒼井「良かった…!。これでよしっと…!」
楓「では…私、頑張って来ます…!」
蒼井「うん…!、僕も見舞いに行くよ!」
楓「はい…!。」
勇気を出して言えた蒼井の背中は、生き生きとしていた。楓は改札口を出ると、照れくさい表情で、小さく手を振った。その時の楓は、今までになく、最高に可愛いらしく、宝石のように輝いて見えた。
蒼井は楓の姿が見えなくなる最後まで、笑顔で見送った。後悔のないように。
第六話【告白】-終了-
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