想告 ー オモツゲ ー

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【第九話】榊原

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 ―2001年12月25日(火曜日)―

     辺りはイルミネーションに包まれたクリスマスの夜に、元気な女の子が生まれた。名は、榊原 楓。
 しかし、誕生から間もなくして、母親からの遺伝による、すい臓ガンを患わせていることを告げられた。

 私は小学生になり、特別支援学級へ通っていた。
 それによる周りからのいじめや、差別される事から、母親に何故自分はこんな体なのかを問うと、母親は謝りながら、そっと私を抱きしめながら、何度も謝っていた。
『ママのせいでごめんね……』と。
     私は、この生活が当たり前だと思っていたが、成長していくに連れて、自分の生活が周りと違う事を徐々に理解していった。
 次第に私は、学校へ行く事や人と関わる事を恐れていった。高校生になる頃には、自分の病気に関して理解するも、それ故に生きる気力を無くしてもいた。
 死んでしまいたい、消えてしまいたい、そんな事を考える毎日だった。
 この時から私は親と喧嘩したり、親戚等に対してのあしらいをする中で、ストレスが限界に来ていた。
 私はこの時から、死に場所を探すようになっていった。毎日飲まなければ行けない錠剤すらも、飲まずに過ごす日も多くなっていった。
 飲まなければ、いづれ消えゆく命だから。
     治療により、普通の生活ができるようになった私は、大好きなレモンティーを買いにコンビニへ向かっていると、ある男性と肩がぶつかった。
 その拍子に、相手のイヤホンを外してしまい、私は咄嗟に謝り、その場を逃げるように去ってしまった。
 その数分ぐらいしてから、御守りを落としたことに気付き、先程の場所を探しても、見つかる事は無かった。
 それから、母親と高校について話し合い、通信校へ通うことにした。
 先生と手続きを済ませた後、廊下を出ると、あの時に方がぶつかった人が、友達と一緒に下校していく背中が見える。
 でも、相手はきっと私の事なんて。それに、私の周りには友達なんていやしない。同時に劣等感すら感じた。 
     私は、ほんの少しだけ、その光景が羨ましかった。
 でも、私は病人。こんな私だと知ればきっと前みたいにイジメられる事だと思い、なるべく独りでいることにした。
 毎日窓の外を眺めながら時間を潰す日々。
 妬みの感情を押し殺し、今日も私は孤独のまま。
 夏休みに入り、私は一人フードコートで時間を潰していた時、私の肩に誰かがポンポンと叩かれるのを感じ、
 咄嗟に振り向くと、そこには蒼井先輩がいた。
 私はあの日、肩がぶつかった時の事を覚えているかを知るべく、勇気を出して声に出す。

 楓「あの…。」

 しかし私の声は、蒼井先輩の友人の声に上書きされて、届きそうになかった。
 正直、その瞬間は少しだけ…悔しかった。でも、こんな私なんかと一緒にいるよりも…。
 そんな事を考えながら、私は遠に席を立ち、リュックを背負っていた。でも、向かう先に見えた景色はとても美しく、暖かいものだった。
 今まで目を背けてきたものに背中を押された私は、いつしか暗い夜空に咲く花火を見上げていた。
 次第に私の視界は、ぼやけて頬を滴り落ちる事すら気付かないほど鮮明で美しかった。

 私は、あの時泣いてしまった理由が今分かった気がする。いや、本当は心の奥で分かってしまっていた。
 きっと、死ぬのが怖くなっちゃったんだ。
 もっと、早く皆と出逢っていたらなって。
 いつも死に場所を探していた日々が、あの短い時間で、生きる希望を与えてくれた事を。


 神様は酷いよね。生きたいと思わせてくれたのにさ。


 夏祭りから3日後、私は母親とかかりつけの病院で、余命宣告を告げられる。
    家に帰った後、私はひとりでに駅のホームへ足を運んでいた。

『これが、私の最期だから…?。』

 未だに実感の湧かない現実を受け入れる為に、あのフードコートへ歩み寄る。心のどこかで、彼を探してしまう自分がいた。
でも、今目の前にしてしまったら、この世界から離れてしまうのが辛くなるから、会いたくなかった。でも、蒼井先輩は本当に現れてくれた。
 その後、私は勇気を振り絞って、先輩にガンを患っていることを打ち明け、皆でクリスマスパーティーの約束をした。
 治るかどうかも、間に合うかすらも分からないのに。
 それでも私は、僅かな希望を信じて、治療を受ける事を決意した。
 皆と、元気なって逢いたいから。 

 第九話【榊原】-終了-
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