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(十)恩人の死
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皐姫の婚礼当日を迎えるにあたり、則頼は前日の夜から石切山の出城に兵を率いて乗り込んでいた。
淡河城を見下ろす位置にある石切山の出城の曲輪には、幟がこれみよがしに幾筋も翻っている。
有馬勢が輿入れの行列を高みから見下ろす形を敢えてとるのは、淡河家、ひいては別所家を牽制するためであることは言うまでもない。
しかし、則頼の本音としては、萩原城で振と向かい合うのを避けたいとの思いのほうが強かった。
(うっかり口を滑らせて、策を見抜かれては一大事。それでなくとも、皐姫の輿入れに際して何を言われるか判らぬからのう)
振の冷えた目で見据えられる光景を想像し、思わず背筋を震わせる則頼である。
花嫁となる皐姫を乗せた輿を中心に据えた嫁入り行列は、朝のうちに三木城の大手門をくぐって出立したとの報せが、葛屋の連雀からもたらされた。
昼前には、街道沿いを進む行列が三津田城の前を抜けて淡河領内に入ると見込まれた。
(峠に差し掛かるまで、いましばらくかかるであろうか)
則頼は逸る気持ちを抑えかねて、自ら物見櫓に登って、石切山の出城からおよそ一里足らずほど南西の位置にある峠道を眺める。
わずかに霞んで見える緑に覆われた山麓には、既に襲撃に備えて葛屋の連雀が配置についている筈だ。
則頼のいる場所から彼らの姿が見える筈もないが、何か動きが見えないかと懸命に目を凝らす。
そこへ、則頼の下人が静かに近づいてきたた。
則頼が三好実休の元に身柄を預けられていた頃から、身の回りの世話をしている男だ。
よく物事に気づき、こまめに働くこの男が、実は則頼と実休とのつなぎ役を担っていることを、有馬家中の者は誰も知らない。
「如何いたした」
「殿にお耳に入れたき儀があり」
周囲を憚り、押し殺した声で下人が言った。
則頼がうなずき、案内されるまま物見櫓を降りて人目に付かない物陰に向かう。
そこには頭巾を被った葛屋の豊助が待っていた。
「豊助殿が自らお出ましとは、驚きであるな」
数年ぶりの再会であるが、喜ぶ余裕はない。上ずった声で則頼は尋ねる。
実休の元から離れた後も、則頼は豊助との書状でのやりとりは続けていた。
しかし、豊助が萩原城まで自ら足を運んだのは今回がはじめてである。
されにその顔に、隠しようのない感情が浮かんでいるとなれば、則頼もただ事ではないと身構えざるを得ない。
「今月五日に、和泉国八木郷の久米田にて合戦あり。三好実休様がお討ち死になされました」
沈痛な面持ちで、豊助はそう告げた。
「なにっ」
取り乱して悲鳴を上げなかっただけでも自分を褒めたい、などと頭の片隅でくだらぬことを思い浮かべてしまうほど、則頼は度を失っていた。
その後、豊助は実休の最期について手短かに説明する。
河内国守護の畠山高政勢を相手どり、実休が大将として軍勢を率いて挑んだ合戦は、当初は三好勢の優位に進んでいた。
しかし、三好勢の先備えである三好康長が後退する畠山勢を不用意に追った結果、本陣の守りが一時的に手薄となった。
わずかな隙を衝き、本陣に畠山方についた根来寺衆の伏勢が襲い掛かり、本陣の実休は不覚を取ったのだという。
この合戦は後に、久米田の戦いと呼ばれることになる。
(勝敗は時の運とは申せ、大将が討たれるほどの危うい戦さではなかった筈だ!)
則頼は天を仰いだ。
則頼にとって、淡河家との抗争において三好の支援をあてに出来たのは、突き詰めれば実休との個人的な友誼に基づくものでしかない。
その実休が討たれたとなれば、今後は淡河を相手に荒事に打って出ても、別所から一方的に見捨てられ、孤立して自滅するだけになりかねない。
思えば、前年に三好長慶の末弟である十河一存が突然、病死したことも痛手である。
四国方面の兵を率いるべき将を相次いで失ったことで、今後の三好の勢いに翳りが出ることは避けがたい、則頼はそう予感した。
大きく息を吐いて無理やり気持ちを切り替えながら、則頼は豊助にひたと視線を据えた。
「これは一大事じゃ。此度の策は中止いたそう。今は皆、心が千々に乱れ、浮き足だっておる。このような折になにか事を為そうとしても、しくじるのは目に見えておる」
取り繕う言葉を口にする則頼であるが、皐姫の拉致に成功したところで、その身柄を預かってくれる実休がいないのでは既に策は破れていた。
「承知いたしました。中止の段、急ぎ手配いたしまする」
大きく頷いた豊助は、配下の連雀に襲撃の中止を伝えるべく、素早くその場から立ち去った。
(人倫にもとる策を弄した天罰であろう)
その場に立ち尽くす則頼は、父が誅殺されたと聞いたときにはさして感じなかった人の命のはかなさを思った。
大恩ある実休が、もはやこの世の人ではない。そのことに思いを巡らせるだけで、涙があふれそうになる。
その一方で、自ら画策したことながら、嫁入り行列を襲撃するような卑劣な真似をせずに済んで良かったと胸をなで下ろす思いも抱いていた。
憑き物が落ちるとはこのことか、と思う。
足元が崩れ去るような感覚の中、いったいどれほどのあいだ放心していたのだろうか。
「殿はいずこにおわす! 皐姫様の輿が、峠を抜けて淡河領に入ったようにござりますぞ!」
吉田大膳の呼ばわる声が、どこか遠くから聞こえてきた。
その後、則頼は花嫁行列が無事に淡河城へと入る様を萩原城から望見した後、手勢を率いて萩原城に戻った。
(果たして、これからどうすればよいのじゃ)
どんな顔をして振に顔を合わせて良いかもわからず途方に暮れる則頼の元に、豊助が大手門に訪いを入れていると下人が報せてきた。
「なに、すぐに案内せよ」
則頼は本丸の書院に豊助を招き入れさせた。
「先ほどは礼を言う余裕もなく、済まなんだ。先走って輿を襲う前に、無事に人数を引き上げられたようで何よりであった」
則頼は豊助を前に、素直に頭を下げる。
さほどの感慨も見せずに豊助は頷き返し、ややあって口を開いた。
「手前は、これより堺に戻りまする。有馬様におかれては、どうかご自愛のほどを。そうお伝えしたく、参上した次第にございまする」
今にも腰を浮かせようとする豊助を、則頼は慌てて引き留める。
「待たれよ。一つ聞かせてくれぬか。豊助殿は、この後の御身の振り方をいかに考えておるのか」
「いかに、とは?」
「葛屋の働きを、三好御家中のどなたかに引き継がせるつもりがあるのか、ということじゃ」
則頼としては、是非知っておきたい事柄であった。
「さて、どういたしましょうかな。三好家の重臣ともなれば、いずれの御方であっても、既に手前どもと同じような働きをしておる者を抱えておりましょうからな」
則頼から視線を外し、どこか遠くを眺めるような目になって豊助は応じる。
実休には、少なくとも二名の男子がいたとされる。
未だ補佐を必要とする幼少であり、いずれ長男が家督を継ぐことになるにせよ、しばらくの間は本国の阿波での働きが主になることは明らかだった。
将来的にはともかく、現状では葛屋の調者働きを使いこなせる見込みはない。
「このような折に口にすべきことではないやも知れぬが、当てがないのであれば、よければこれからも儂に協力してくれぬか。……いや、このような頼み方では失礼というもの。言いなおす。仮に目星があったとしても、是非とも儂に手を貸してくれ」
則頼は身を乗り出し、声に力を込めて頭を下げる。
無謀な頼みであることはは充分に承知していた。
しかし、このまま縁が切れてしまっては、それこそ実休に顔向けできない。それだけはなんとしても避けたかった。
豊助は呆れもせず、怒りもしなかった。
ただ数拍の間、思案の表情をみせてから、やがて口を開いた。
「面をお上げくださいませ。それで、有馬様は天下を御取りになられますかな」
「天下、じゃと」
豊助から思いもよらない言葉が出てきたことで、則頼はしばし言葉を失う。
「天下にございます。手前は実休様の元で、三好家が担う天下の景色を確かに目の当たりにして参りました。有馬様は、同じ景色を見せてくださるのでしょうかな」
聞きようによっては、実休が討たれたことで畿内を制している三好家の天下は終わりだとも受け取れる、かなりきわどい発言である。
しかし、その予測自体は則頼も否定しない。
むしろ、豊助も自分に負けぬほど、実休の器量を買っていたのだと知れたことは心強くさえある。
だがそれはそれとして、豊助の問いかけは則頼の胸に痛い。
わずかな領地を巡って延々と争い続け、遂には花嫁行列を襲うことを企むような男に天下など、あまりにも遠い。
しかし、だからといってここで引き下がる訳にもいかない。
「難しいことを申すのう。今の我が身では、いや、別所とて、たやすくは請け負えぬ大言壮語じゃ」
則頼の返事に、豊助はさほど表情を動かさないが、その目には失望の色が伺える。
だが、則頼の言葉は終わっていなかった。
「されど、三好が盛り返すにせよ、他家がとってかわるにせよ、いずれ天下に号令する存在がこの播州まで手を伸ばして来よう。その者に儂が従う時には、手を貸してくれると約束してくれるか」
しばしの間をおいて、豊助が微笑んだ。
「ようございます。手前も播州まで足を延ばした甲斐がございました。連雀は変わらず送りますゆえ、御贔屓にしていただければ幸い。手前は商いを続けながら、その日が来ることを楽しみに待っておりまする」
「それはありがたい。いずれ吉報を届けよう」
今日この時より、自分は生まれ変わるのだ。
則頼は決意を新たにした。
淡河城を見下ろす位置にある石切山の出城の曲輪には、幟がこれみよがしに幾筋も翻っている。
有馬勢が輿入れの行列を高みから見下ろす形を敢えてとるのは、淡河家、ひいては別所家を牽制するためであることは言うまでもない。
しかし、則頼の本音としては、萩原城で振と向かい合うのを避けたいとの思いのほうが強かった。
(うっかり口を滑らせて、策を見抜かれては一大事。それでなくとも、皐姫の輿入れに際して何を言われるか判らぬからのう)
振の冷えた目で見据えられる光景を想像し、思わず背筋を震わせる則頼である。
花嫁となる皐姫を乗せた輿を中心に据えた嫁入り行列は、朝のうちに三木城の大手門をくぐって出立したとの報せが、葛屋の連雀からもたらされた。
昼前には、街道沿いを進む行列が三津田城の前を抜けて淡河領内に入ると見込まれた。
(峠に差し掛かるまで、いましばらくかかるであろうか)
則頼は逸る気持ちを抑えかねて、自ら物見櫓に登って、石切山の出城からおよそ一里足らずほど南西の位置にある峠道を眺める。
わずかに霞んで見える緑に覆われた山麓には、既に襲撃に備えて葛屋の連雀が配置についている筈だ。
則頼のいる場所から彼らの姿が見える筈もないが、何か動きが見えないかと懸命に目を凝らす。
そこへ、則頼の下人が静かに近づいてきたた。
則頼が三好実休の元に身柄を預けられていた頃から、身の回りの世話をしている男だ。
よく物事に気づき、こまめに働くこの男が、実は則頼と実休とのつなぎ役を担っていることを、有馬家中の者は誰も知らない。
「如何いたした」
「殿にお耳に入れたき儀があり」
周囲を憚り、押し殺した声で下人が言った。
則頼がうなずき、案内されるまま物見櫓を降りて人目に付かない物陰に向かう。
そこには頭巾を被った葛屋の豊助が待っていた。
「豊助殿が自らお出ましとは、驚きであるな」
数年ぶりの再会であるが、喜ぶ余裕はない。上ずった声で則頼は尋ねる。
実休の元から離れた後も、則頼は豊助との書状でのやりとりは続けていた。
しかし、豊助が萩原城まで自ら足を運んだのは今回がはじめてである。
されにその顔に、隠しようのない感情が浮かんでいるとなれば、則頼もただ事ではないと身構えざるを得ない。
「今月五日に、和泉国八木郷の久米田にて合戦あり。三好実休様がお討ち死になされました」
沈痛な面持ちで、豊助はそう告げた。
「なにっ」
取り乱して悲鳴を上げなかっただけでも自分を褒めたい、などと頭の片隅でくだらぬことを思い浮かべてしまうほど、則頼は度を失っていた。
その後、豊助は実休の最期について手短かに説明する。
河内国守護の畠山高政勢を相手どり、実休が大将として軍勢を率いて挑んだ合戦は、当初は三好勢の優位に進んでいた。
しかし、三好勢の先備えである三好康長が後退する畠山勢を不用意に追った結果、本陣の守りが一時的に手薄となった。
わずかな隙を衝き、本陣に畠山方についた根来寺衆の伏勢が襲い掛かり、本陣の実休は不覚を取ったのだという。
この合戦は後に、久米田の戦いと呼ばれることになる。
(勝敗は時の運とは申せ、大将が討たれるほどの危うい戦さではなかった筈だ!)
則頼は天を仰いだ。
則頼にとって、淡河家との抗争において三好の支援をあてに出来たのは、突き詰めれば実休との個人的な友誼に基づくものでしかない。
その実休が討たれたとなれば、今後は淡河を相手に荒事に打って出ても、別所から一方的に見捨てられ、孤立して自滅するだけになりかねない。
思えば、前年に三好長慶の末弟である十河一存が突然、病死したことも痛手である。
四国方面の兵を率いるべき将を相次いで失ったことで、今後の三好の勢いに翳りが出ることは避けがたい、則頼はそう予感した。
大きく息を吐いて無理やり気持ちを切り替えながら、則頼は豊助にひたと視線を据えた。
「これは一大事じゃ。此度の策は中止いたそう。今は皆、心が千々に乱れ、浮き足だっておる。このような折になにか事を為そうとしても、しくじるのは目に見えておる」
取り繕う言葉を口にする則頼であるが、皐姫の拉致に成功したところで、その身柄を預かってくれる実休がいないのでは既に策は破れていた。
「承知いたしました。中止の段、急ぎ手配いたしまする」
大きく頷いた豊助は、配下の連雀に襲撃の中止を伝えるべく、素早くその場から立ち去った。
(人倫にもとる策を弄した天罰であろう)
その場に立ち尽くす則頼は、父が誅殺されたと聞いたときにはさして感じなかった人の命のはかなさを思った。
大恩ある実休が、もはやこの世の人ではない。そのことに思いを巡らせるだけで、涙があふれそうになる。
その一方で、自ら画策したことながら、嫁入り行列を襲撃するような卑劣な真似をせずに済んで良かったと胸をなで下ろす思いも抱いていた。
憑き物が落ちるとはこのことか、と思う。
足元が崩れ去るような感覚の中、いったいどれほどのあいだ放心していたのだろうか。
「殿はいずこにおわす! 皐姫様の輿が、峠を抜けて淡河領に入ったようにござりますぞ!」
吉田大膳の呼ばわる声が、どこか遠くから聞こえてきた。
その後、則頼は花嫁行列が無事に淡河城へと入る様を萩原城から望見した後、手勢を率いて萩原城に戻った。
(果たして、これからどうすればよいのじゃ)
どんな顔をして振に顔を合わせて良いかもわからず途方に暮れる則頼の元に、豊助が大手門に訪いを入れていると下人が報せてきた。
「なに、すぐに案内せよ」
則頼は本丸の書院に豊助を招き入れさせた。
「先ほどは礼を言う余裕もなく、済まなんだ。先走って輿を襲う前に、無事に人数を引き上げられたようで何よりであった」
則頼は豊助を前に、素直に頭を下げる。
さほどの感慨も見せずに豊助は頷き返し、ややあって口を開いた。
「手前は、これより堺に戻りまする。有馬様におかれては、どうかご自愛のほどを。そうお伝えしたく、参上した次第にございまする」
今にも腰を浮かせようとする豊助を、則頼は慌てて引き留める。
「待たれよ。一つ聞かせてくれぬか。豊助殿は、この後の御身の振り方をいかに考えておるのか」
「いかに、とは?」
「葛屋の働きを、三好御家中のどなたかに引き継がせるつもりがあるのか、ということじゃ」
則頼としては、是非知っておきたい事柄であった。
「さて、どういたしましょうかな。三好家の重臣ともなれば、いずれの御方であっても、既に手前どもと同じような働きをしておる者を抱えておりましょうからな」
則頼から視線を外し、どこか遠くを眺めるような目になって豊助は応じる。
実休には、少なくとも二名の男子がいたとされる。
未だ補佐を必要とする幼少であり、いずれ長男が家督を継ぐことになるにせよ、しばらくの間は本国の阿波での働きが主になることは明らかだった。
将来的にはともかく、現状では葛屋の調者働きを使いこなせる見込みはない。
「このような折に口にすべきことではないやも知れぬが、当てがないのであれば、よければこれからも儂に協力してくれぬか。……いや、このような頼み方では失礼というもの。言いなおす。仮に目星があったとしても、是非とも儂に手を貸してくれ」
則頼は身を乗り出し、声に力を込めて頭を下げる。
無謀な頼みであることはは充分に承知していた。
しかし、このまま縁が切れてしまっては、それこそ実休に顔向けできない。それだけはなんとしても避けたかった。
豊助は呆れもせず、怒りもしなかった。
ただ数拍の間、思案の表情をみせてから、やがて口を開いた。
「面をお上げくださいませ。それで、有馬様は天下を御取りになられますかな」
「天下、じゃと」
豊助から思いもよらない言葉が出てきたことで、則頼はしばし言葉を失う。
「天下にございます。手前は実休様の元で、三好家が担う天下の景色を確かに目の当たりにして参りました。有馬様は、同じ景色を見せてくださるのでしょうかな」
聞きようによっては、実休が討たれたことで畿内を制している三好家の天下は終わりだとも受け取れる、かなりきわどい発言である。
しかし、その予測自体は則頼も否定しない。
むしろ、豊助も自分に負けぬほど、実休の器量を買っていたのだと知れたことは心強くさえある。
だがそれはそれとして、豊助の問いかけは則頼の胸に痛い。
わずかな領地を巡って延々と争い続け、遂には花嫁行列を襲うことを企むような男に天下など、あまりにも遠い。
しかし、だからといってここで引き下がる訳にもいかない。
「難しいことを申すのう。今の我が身では、いや、別所とて、たやすくは請け負えぬ大言壮語じゃ」
則頼の返事に、豊助はさほど表情を動かさないが、その目には失望の色が伺える。
だが、則頼の言葉は終わっていなかった。
「されど、三好が盛り返すにせよ、他家がとってかわるにせよ、いずれ天下に号令する存在がこの播州まで手を伸ばして来よう。その者に儂が従う時には、手を貸してくれると約束してくれるか」
しばしの間をおいて、豊助が微笑んだ。
「ようございます。手前も播州まで足を延ばした甲斐がございました。連雀は変わらず送りますゆえ、御贔屓にしていただければ幸い。手前は商いを続けながら、その日が来ることを楽しみに待っておりまする」
「それはありがたい。いずれ吉報を届けよう」
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