【完結】勝るともなお及ばず ――有馬法印則頼伝

糸冬

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(二十四)播州の勇士

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 清州情への道中は全て織田の領地であり、戦さに参陣する訳でもないから、大人数を連れて馳せ参じる必要はない。

 しかし、比較的他国へ遠出した機会がある則頼にしたところで、東へは京まで足を運んだ経験しかなく、そこからさらに先は、まったくの未踏の地である。

 従う小者の中には播磨から外に出た事のない者さえいる。

 旅慣れていない一行の道行は、予定よりも大幅に遅れた。

 どうにか清州城下に辿り付いたのは、指定されていた二十五日を大幅に遅れ、会合当日の二十七日の夕刻であった。

「これはぬかったわ。日も暮れてしまうが、まずは羽柴殿に報告せねば」
 則頼は渋面を作る。

 秀吉からの叱責を想像すると気鬱であるが、このような時こそ逃げては心証がより悪くなる。腹をくくって対面する他なかった。

 秀吉の近習に割り当てられた宿所を案内された則頼を、先着して調者働きを指図していた豊助が出迎えた。

 則頼は豊助を一目見るなりその痩せぶりに驚き、束の間挨拶も忘れた。

「しばらく会わぬうちに、随分と痩せたではないか。なんぞ病でも得ておるのではないか」

「年も年ですからな。ご放念下され」
 穏やかな語調で豊助が応じる。

 福々しい面影は失われた豊助であるが、目に宿る光には依然として力があった。

「そうは申してもな。この会合が終われば、しっかりと養生いたすのじゃぞ」

「いまはそれがしのことよりも、羽柴様のことで御耳に入れたき儀がござる」

「うむ。なにか掴んだか」

「はい。柴田様家中に羽柴様を仕物にかけんとの談合、これありとの風聞がございます」

「なんじゃと」
 思わぬ報せに、則頼は細い目を見開いた。

 仕物にかけるとは、すなわち暗殺である。

 主君の弔い合戦においてもっとも働いたのが秀吉であることは衆目の一致するところである以上、議論で主導権を握るのは避けられない。

 秀吉の風下に立つぐらいならば密かに命を縮めてしまおうというのか。

 しかし、いくらなんでも、織田家は主君を家臣の謀叛で失ったばかりなのだ。
 その筆頭重臣である柴田勝家ともあろう男が、そんな短慮だろうか。

「あくまでも風聞でございますれば、確たる証などはございませぬ」
 顔色を変えた則頼をなだめるように、豊助が言葉を重ねた。

「承知しておる。そもそも葛屋の働きとは、人の口から発せられた風聞を聞き集めることにあろう」

「恐れ入りまする」

 数拍のあいだ黙考した則頼は、自らを鼓舞するように大きくうなずいた。

「やはりこれは、放置してはおけぬ。殿の御耳に入れねばならぬ」
 旅装を解くのももどかしいところであるが、敢えて甲冑に身を固める。

 ただし、いつものように兜はかぶらず、禿頭を晒した出で立ちだ。

 しかし、当然のことではあるが、秀吉の元に向かおうとした則頼一行は清州城の大手門を守る番卒達に行く手を阻まれる。

「織田家に仇なす者がここまで来られる訳ないであろう。儂は羽柴筑前様に随身しておる有馬法印という者じゃ」

「困りますな。既に登城の刻限は過ぎておりますれば、お通しは致しかねる」
 番卒達は口先でこそ丁寧さを装っているが、則頼の風体を見てか、彼らの目は明らかに則頼一行を侮っていた。

 織田家重臣が一堂に会する場を警備しているとの自負からか、番卒達はひどく気負っているようだ。

「のう、問答しとる場合ではないのじゃ。儂は織田家の行く末に関わる一大事を防ぐべくお伝えしに参ったゆえな。それを伝え損ねて取り返しがつかなくなった時は、その方らが皆揃って腹を切ったところで詫びきれぬぞ」
 怒りを腹の底にしまい込み、努めて穏やかな口ぶりで諭す。

「なんと……」
 わずかながら番卒達がひるむ。

「万が一にも、後にお主らの上役から叱責があるようなら、儂に言いくるめられたうえ、刀鑓て脅されて押し通られたと申せ。全ての責は儂にある。もっとも、褒められこそすれ、責められることはあるまいがな」

「そこまで仰せであれば。ただし、通られるのは御一方のみとしていただきたい。言付けされるのに供は不要でござろう」
 番卒達は顔を見合わせ、不承不承といった体で道を開いた。

 則頼一人であれば、荒事はなにも出来まいと踏んだ節がある。

(舐めおってからに、まったく)
 腹立たしいが、しかしケチをつけている暇も惜しい。

 「済まぬ」と一声かけて、則頼は城内に入った。



「筑前様っ! 羽柴筑前様はいずこにおわす!」
 本丸御殿まで辿り付いた則頼は、大音声で呼ばわりながら廊下を走る。

「おうおう、いかがした。えらく遅参ではないか。会合はすでに終わってしもうたぞ!」
 控えの間に続く廊下に姿を見せた秀吉が笑いながら大声を上げて則頼を迎える。

 その向こうからは、お世辞にも友好的と言い難い空気を醸しだす重臣が、取り巻きの家臣らと共に何事かといった表情で様子をうかがっている。

 則頼は面識はなかったが、髭面の厳めしい風貌からおそらくは柴田勝家であろうと辺りを付けた。

 勝家が居合わせる場で秀吉と出会ったことは天祐だと感じた。

「御身が無事で安堵いたしましたぞ。いや、良かった」
 則頼は腹に力を込めて、あえてあたりに聞こえるように力のこもった声を発する。

「待て待て、なんの話じゃ」
 秀吉がけげんな表情を浮かべるが、則頼の口は止まらない。

「筑前様のお命を頂戴しようと企む不逞の者どもがいる、との風聞を聞きつけましてな」
 そう言いながら、則頼は秀吉の前に立ちはだかって勝家らから身を挺して守る構えをとる。

「なんじゃと。その方、何者か」
 則頼に視線を向けられた勝家が顔を紅潮させ、ずいと前に出て吼えた。戦場往来で鍛えた胴間声が御殿じゅうに響く。

 これに対し、則頼より先に秀吉が反応した。

「おお、皆さまもぜひお見知りおきくだされ。この者こそ、にて、有馬法印と申す荒法師。我が家来でござる」

 相好を崩した秀吉が、則頼の肩を叩いて自慢気に答えた。

 その拍子に合わせるように、則頼も金剛力士像のように力んで腕を振り上げた構えをとってみせる。

 これがもし仮に、加藤清正や福島正則といった秀吉自慢の子飼いの荒武者であれば、たちまち剣呑な空気となっていた場面であろう。

 しかし、頭を丸め、鶏卵に目鼻を描いたような面立ちの則頼が、どう気負って胸を張ってみせたところで様にはならない。

 勝家は毒気を抜かれたとしか言いようのない表情をみせる。

「くだらぬ。さような風聞など聞き流せ」

「ややっ、これは済みませぬ。こりゃ、有馬の坊主よ、もちっと空気を読め」
 秀吉がわざとらしく則頼の禿頭をぴしゃりと音を立ててはたく。

「申し訳ございませぬ」
 音にあわせて則頼が奇妙な表情を作って応じたため、空気は一層緩んだ。

「ま、ま、皆様方。この者のそれがしを思う忠心からの勇み足なれば、どうかお許しくだされ。有馬の坊主よ、これよりお主はそのまま儂を警護せよ」

 この後、一説では織田家重臣が打ち揃った宴席において、則頼は秀吉の傍らから離れず、四方に目を光らせて万が一の変事に備え続けて秀吉に賞された、との話が伝わる。

 もっとも、いかに織田家の後継者が決まったとはいえ、この場で重臣が打ち揃い、則頼のように織田家の内情から遠い立場の者までが宴席の場に参加するというのは考えにくい話である。

 様々な憶測によって生み出された雑説というべきであろう。

 秀吉は抜け目なく、「当地に長居しては、命を狙われる懸念が払拭できないため」と吹聴して、子飼いの近習らに警固させて夜のうちに清州を離れていた。



 則頼は、のちにこの会合において決められた内容を伝え聞くことになる。
 まず、世継については、信長の嫡男、織田信忠も討たれたため、跡継ぎ候補として信長次男の織田信雄か三男の織田信孝が有力とみられていた。
 しかし、秀吉は筋目を立てるべきと主張して信忠の子、すなわち信長の嫡孫である三法師を推した。

 わずか三歳の三法師を擁立することに柴田勝家は難色を示したものの、謀叛人の明智光秀を討った秀吉の発言力を一蹴できなかった。

 結局は、三法師を当主と仰ぎ、叔父にあたる信雄と信孝を後見人とし、執権として羽柴秀吉、柴田勝家、丹羽長秀、池田恒興の重臣四名で支えると決した。

 ただし、秀吉は後継者に関して己の主張を押し通す代わり、遺領の配分においては勝家に対して譲る構えを示して釣り合いを取っている。

 元からの勝家の所領である越前国を安堵するのは無論のこと、敢えて秀吉が領している北近江三郡十二万石および長浜城を勝家に差し出すと提案したのだ。

 勝家には、信長死去の報を知った領内に不穏な動きがあったため、仇討ちに参加できずじまいに終わった負い目があった。

 これから三法師を御支えするにあたっての費えを賄うための分にござる、との秀吉の殺し文句を前に、この申し出を呑まざるを得なかった。

 もっとも、北近江を譲った秀吉も、所領を減らしている訳ではない。

 しっかりと河内国と山城国を新たな己の所領として確保している他、信長の四男で秀吉の養子になっている羽柴秀勝にも、明智光秀の旧領である丹波国を加増させていたのだ。



 会議を終え、姫路まで戻る秀吉一行の中に、則頼主従の姿があった。

 途中までは同じ道を帰るのであるから、わざわざ別行動せねばならない理由もない。

 なにより、旅慣れない道中の苦労を思えば、寄らば大樹の陰といった考えに到るのはやむを得なかった。

 則頼は、何食わぬ顔でさりげなく軍列の後ろについていくつもりだったが、いくらも進まないうちに、秀吉の使者がやってきて呼び寄せられた。

 うやむやのまま不問となっていた遅参の件を、織田家の他の重臣の目が届かぬころで咎められるのかと則頼は身構えたが、呼んだ秀吉本人は則頼の顔を見ても至って上機嫌であった。

「此度はようしてのけた。大声で儂の命が危ないと叫んだのは良かった。実際に企みがあったか、そもそも風聞自体があったかなど、どうでもよいのじゃ」

 自らの策が当たり、三法師を織田家後継者と認めさせた喜びが先に立ち、則頼の失態は気にならない様子である。

(やれ、助かったわ)
 さりげなく追従しながら、則頼は内心で胸をなでおろす。

 もっとも、まさかこのような騒ぎを起こさせるために秀吉もわざわざ則頼を清州くんだりまで呼んだはずがない。

 しかし、今この場で秀吉の真意を問い質すわけにもいかない。

 愛想笑いにも、どこか顔が引きつる則頼である。

 一方の秀吉は、則頼が駆け付けて勝家の前に立ちはだかった様子がよほどおかしかったらしい。
 道中、飽きることなくその話題を則頼相手に何度も繰り返したのだった。




 淡河城に帰還した則頼を、思わぬ客人が待っていた。

「お久しぶりにございます、有馬殿」
 大広間の下座で、晴れやかな声で頭を下げたのは、渡瀬好光であった。

 渡瀬城落城の折、則頼を頼って現れた際の泥と垢にまみれた姿からは程遠い、さっぱりとした小袖の似合う、爽やかな出で立ちだった。

「おお、無事であったか。荒木摂津が背いてのちは消息も聞こえなんだが、如何しておったのじゃ」

 実際のところ、則頼もその後の好光の行方は気になっていたものの、積極的に骨を折ってまで行方を探していた訳ではない。

 後ろめたさもあり、則頼の言葉は若干歯切れが悪かった。

「仰せの通り、荒木様の別心により有岡にはおれぬようになり、京に上って隠れ潜んでおりました」

 則頼のばつの悪い思さをよそに、好光はこれまでの事を明るい口調で語り出す。

 伝承によれば、荒木村重の元を離れた好光は山城国北小路にて、摂関家の一つ二条家の家臣・本庄周防守宗正の屋敷に身を寄せていたという。

 好光の妹の嫁ぎ先である縁を頼ったものとされるが、本庄宗正は天正八年(一五八〇年)生まれとされており、年代が合わない。

 いずれにせよ、別所方に立って城を落とされて逃れ、また荒木村重に与した以上は、織田方にみつかれば問答無用で首を落とされかねない。

 そう考えて逼塞して機をうかがっていたところ、本能寺にて信長が横死した。

 これを知って、好光は賭けに出た。主君の仇討のために常識外れの速さで備中から戻ってきた秀吉の陣に陣借りを願い出たのだ。

 別所討伐時の経緯を持ち出されて捕縛される危険もあったが、すでに別所も滅んで数年が過ぎ、信長も討たれた今となっては処罰されずにすむ、との好光の読みはあたった。

 秀吉の陣には陣借りを求める牢人者が群れを成して馳せ参じており、秀吉もほとんど身元を調べることもなく受け入れていたのだ。

 そして好光は牢人暮らしの身の上とはいえ、かつては城主として城の防りを差配した経験の持ち主である。

 自然と、陣借りをする牢人者たちを束ねて采配を振るう形となり、明智勢を相手に大いに働いたという。

「お陰様で、羽柴様の目に留まり、召し抱えていただくことと相成りましたゆえ、一言ご挨拶をしたいと参上した次第。これも皆、有馬様があの折にお情けをかけていただいたお陰にございます」
 好光が神妙な顔つきで頭を下げる。

「おお、そうであったか。いやなに、何ほどのこともしれおらぬが、嬉しき事よ」

「ついては、これを機に名も改めております。以後、渡瀬左衛門佐繁詮と名乗りまする。これからも、御力をお貸しいただきますよう、お願いいたしまする」

「いやいや、羽柴の御家にあっては儂も外様じゃからな。播州武者が同僚におるというのは心強い。こちらこそお頼み申しまするぞ」
 則頼の返事は、決して世辞ではなかった。

 則頼には、好光改め繁詮がこれから立身するであろうとの予感めいたものがあった。
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