義兄妹になったその日、恋は帰る場所を失った

恋せよ恋

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番外編

シモンのやきもち日記

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「ねえ、聞いてほしいの。シモンのこと……」
 メルローズは午後の柔らかな日差しの差し込む客間で、親友のレティシアに紅茶を差し出しながら、少し照れくさそうに笑った。

「また、夫の自慢話?」レティシアが笑う。
「違うの……自慢じゃないの。やきもちの話なの」

 メルローズはカップを手元に置き、少し遠くを見つめるようにして語り始めた。

「こんなことがあったの。葡萄畑でね、収穫をしていたとき。私が少し離れたところで若い農夫に声をかけられただけで、シモンはすぐに背後から現れて、腕を絡めて私を引き寄せたの。『俺の妻に笑顔を向けるのは、俺の許可がある場合だけだ』って。顔は冷たくて、でも瞳の奥には……赤い光が滲んでて、怖くて、でもなんだか嬉しくて……」

 レティシアは目を丸くして息をのむ。
「……すごいわね」

 メルローズは微笑みながら続ける。
「こんなこともあったの。市場に出かけたとき。私が領民と話して笑っていたら、シモンは後ろからさっと手を握って、軽く腕を絡めたの。『俺の妻に笑顔を向けるのは、俺の許可がある場合だけだ』って、さっきと同じ言葉をささやいて。私は笑っちゃったんだけど、心臓がドキドキして……あの時のシモンは、まるで空気の温度を全部支配しているみたいだったわ」

「……本当に独占欲が強いのね」
 レティシアが息をつく。

「ええ、でもそれだけじゃないの。書斎でもね、書類を整理していた私を椅子に座ったまま膝に引き寄せて、『書類より俺を見ろ』って言うのよ。もう、なんていうか……頬が熱くなっちゃって。沈黙の書斎に、私たちだけの笑い声がこだまして……」

 メルローズはカップを握り直し、少し照れた。
「それに、雨の日もあったわ。少し離れた歩道を歩こうとしただけで、シモンは傘を差し出して肩越しに私を引き寄せたの。『俺の妻は、決して一人で濡れさせない』って。雨の匂いと葡萄畑の香りが混ざって……もう、息が詰まりそうだった」

 レティシアは小さくため息をついた。
「……すごいわね」

 メルローズはにっこり笑う。
「まだまだあるの。薔薇園のことも覚えてる? 庭の薔薇園で、他の貴族女性が話しかけてきたとき、シモンは軽く眉をひそめて、手を握り、目を細めたの。『俺の妻に話しかけるのは、事前に俺の許可が必要だ』って言うのよ。冗談めかしているのかと思ったら、本気で嫉妬してるのが手に取るように分かって……」

「……相手は女性でしょ? それも独占欲なのね……」
「そう、独占欲と愛情と、全部が混ざり合った、甘くて少し怖い感覚なの」

 メルローズは一息つき、少し遠くを見つめる。
「晩餐会でもあったわ。令嬢たちが私に話しかけると、シモンは自然に腕を絡めて横に引き寄せるの。視線を合わせるたびに、彼の独占欲が静かに、でも力強く伝わるの。夜の書斎でもね、報告書を読んでいた私を後ろから抱き寄せて、『俺以外の男に視線を向けるな』ってささやくの」

「……なんだか、ドキドキするわね」
 レティシアは思わず手を胸に当てる。

「もっとあるのよ。郊外を散歩しているとき、若い騎士が挨拶するだけで、シモンは手を握って少し強めに腕を絡めるの。『シモン、やきもち焼きね』って笑う私に、シモンは無言で小さく唇を噛んで……その表情だけで胸がぎゅっとなるの」

 メルローズは微笑み、頬を指先でそっと触れる。
「夜の葡萄倉庫も忘れられないわ。熟成を確認しに行く私を、シモンは忍び込み、肩越しに抱き寄せてささやくの。『ここはメルローズと俺だけの場所だ』って。薄暗い倉庫で二人だけの時間が流れるの……その瞬間、世界が二人だけになるみたいで……」

「……まるで映画のワンシーンみたい」
 レティシアの瞳が輝く。

「最後に……子供の話で嫉妬したこともあったの。新しい命の話をしていたら、シモンは少し拗ねた顔で『俺と子供の間に入るな』って冗談交じりに言うのよ。もう、可笑しくて、でも心の奥は温かくて……」

 メルローズはカップを置き、肩の力を抜いて息をつく。
「こんなことばかり。シモンは、私のすべてを守りたいんだと思う。怖いくらい、独占欲も溺愛も全部が混ざり合って……でも、私は幸せ。こんな夫と日常を過ごせるなんて、夢のようよ」

「……すごいわね」
 レティシアは言葉を失い、ただメルローズの笑顔を見つめた。

「ねえ、これでもまだ、シモンのやきもちの一部にすぎないのよ」
 メルローズは微笑み、窓の外の葡萄畑に目をやった。

「ねえ、私、ここに来てから、何度、『すごいわね』って言ったかしら?」
 レティシアが、呆れたようにため息をついた。

 秋の日差しが、二人の甘く熱い日常を優しく照らしていた。
______________

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