欲しがる妹アナベルは『ざまぁ』されたい!

花房いちご

文字の大きさ
4 / 20
第1部

4話 まさかの展開

しおりを挟む
「は?今のアナベルが本当のアナベルだと?何を言っている?」

「アナベルちゃん!その話し方はなに!?可愛い貴女には似合わないわ!やめなさい!」

 今の私を否定する両親。前世を思い出したため、確かに性格は変わってしまったかも知れない。
 だけど、確かにこの世界に生まれて育った記憶がある。私は私だ。そもそも両親は、私を愛玩するばかりで躾することも育てることもしなかった。
 私を育てたのはマルグリットお姉様、亡き祖父母、使用人たちだ。
 こんな人たちの言うことなんて聞くもんか!

「いいえ。やめません。……マルグリットお姉様」

「アナベル……」

 私はお姉様の目を見つめ、想いを込めて言葉を紡ぐ。

「マルグリットお姉様は私を慈しんで育てて下さりました。そして、誰よりも領地経営と家政に勤しんで下さった。
 新しい特産品を生み出して大きな利益を上げて下さりました。お姉様の勤勉さと賢明さ。そしてその慈悲深さのお陰で私は今日まで生き延び、聖女ミシエラ様の治療を受けることができました。
 お姉様は私の命の恩人です。だというのに私はあまりにも恩知らずでした。
 改めて謝罪します。お姉様に酷い事をして申し訳ございませんでした」

「アナベル……そんな風に謝らないで。私は貴女の病気を治して、また仲良く過ごしたかっただけなの。むしろ私がお礼を言うべきだわ。治ってくれてありがとう」

「お姉様……」

 なんて慈悲深く優しい人だろう!
 泣いてすがりそうになるのを必死にこらえた。
 そんな資格、私には無い。私は……。

「お待ちください。マルグリットさんが領地経営と家政に勤しんでいた。と、おっしゃいましたか?何年間も?」

 鋭い声は聖女ミシエラ様のものだ。真剣な眼差しで私を見ている。

「え、ええ。少なくとも8年は越えていたと思います」

「8年も……。では、マルグリットさんは領地経営と家政にどの程度関わっていましたか?」

「私の知る限りでは社交以外の全てを担っていました。お姉様、そうよね?」

「はい。その通りです」

 お姉様はどんな仕事をしていたか説明した。お姉様がどんな風に働いているかは、我が家では誰もが知っている常識だ。さらに私は、お姉様本人や侍女たちから詳しい話を聞いていた。

「領内各地への視察、嘆願の確認と精査、領内の産業および公共事業の采配、税収の監督および記録、国に提出する様々な書類の作成、屋敷内の采配、食料などのストックの購入と資産の管理、他家や商会との手紙のやり取りなどをしています」

 改めて気が遠くなる仕事量だ。しかも、他にも色々としている。

「……膨大な量ですね。それをお一人で差配していたのですか?」

 お姉様が話すほどに、聖女ミシエラ様の顔が険しくなっていく。側から聞いても酷い話だよね。どう考えてもおかしい。
 なのに、お姉様はなんてことないように頷く。

「はい。ですが私だけの働きではございません。執事や領官たちも良く働いてくれています」

「つまり、子爵夫妻は貴女に仕事を押し付けて何もしていないということか」

 聖騎士ルグラン様が思わずと言った様子で発言した。お姉様は言い淀んだ。

「いえ、その……両親は社交で忙しいので……」

「社交だけしかしていないということですか?いくら社交が重要とはいえそれだけしかしない。他は一人に押し付けるというのはおかしい」

 ルグラン様と聖女ミシエラ様の顔がさらに険しくなっていった。
 そうですよね!おかしいですよね!うちの両親!この国ではのが腹立つ!

「ベルトラン子爵、夫人。マルグリットさんたちのお話は本当ですか?」

 私は恥ずかしくて情けなくて仕方なかったけど、両親はきょとんとした顔だ。

「ええ。そうですわ。それが何か?貴族は社交につとめ、つまらない雑務は他にやらせるもの。それが夜の理ですわ」

 そんな訳あるか!昔からそうだったけど、お母様ってお花畑というか非常識すぎない!?

「その通りだ!聖女ミシエラ様!私たちはこの不細工でも出来る仕事を与えてやっているだけです!当家にタダ飯ぐらいは要りませんからな!」

 不細工なのもタダ飯食いなのもお前だ!
 小説で読んでた時も思ってたけど、お母様もお父様も腹立つなあ!一度、痛い目をみせてや……。

「ぐえ!」

「ぎゃあ!」

 怒りでクッションを投げつけようとしたけど、それより早くルグラン様がお父様とお母様の背後に回って床にひざまずかせた。
 流石は聖騎士!素早い!お父様達ざまぁ……いや、なんで?

「痛い痛い!離してよ!」

「き、貴様!いきなり何をする!」

 本当だよ!ルグラン様何してるの!?
 確かに両親は、お姉様に酷いことをしているけど、法で裁けないはず……。

「ベルトラン子爵、夫人。貴殿らには王国貴族法違反の嫌疑がある」

「王国を護る聖女ミシエラと聖騎士エリック・ルグランの名において、貴方がたを拘束し貴族院による調査を申請します」

「お、王国貴族法違反?なんのことだ?」

「私たちを罪人扱いする気!?何も悪いことなんてしてな……ヒッ!」

 聖女ミシエラ様とルグラン様の目が、氷よりも冷ややかに刃よりも鋭くなった。こ、怖いけどカッコいい!
 やっぱり【聖女はドアマットを許さない】の、聖女と聖騎士は最高だぜ!
 いや、そんな場合じゃないけど!王国貴族法違反って何!?

「はぁ……。今の会話でわかりませんか?それにマルグリットさんは16歳。未成年ですよ」

「そ、それが何だと言う……あ」

 両親の怒りで紅潮してた顔が、一気に真っ青になった。どういうこと?確かに、この国で成人は17歳。16歳のお姉様は未成年だけど……。

「王国貴族法では、領主が領地経営を放棄することと、未成年者に領地経営をさせることを禁じています。
 やむおえない事情で当主が領地経営を行えず、未成年者が領地経営に関わる場合は、貴族院の審査と国王陛下からの認可が必要です。そして、認可されたことを公表しなければなりません」

「俺たちは子爵家を調べたが、マルグリット嬢が認可を受けたという情報はなかった。領地経営の主だった仕事は、全てベルトラン子爵が行ったことになっている。
 ベルトラン子爵、夫人、以上が事実ならば、貴方がたには厳しい罰が下るだろう。
 最低でも、爵位の剥奪と労役刑が課せられるのは間違いない」

 え?そんな法律があるの?知らなかった。



◆◆◆◆◆◆



閲覧頂きありがとうございます。

「第19回恋愛小説大賞」に参加しています。
投票、お気に入り登録、エール、感想、リアクションなど、皆様の反応がはげみです。よろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

妖精隠し

恋愛
誰からも愛される美しい姉のアリエッタと地味で両親からの関心がない妹のアーシェ。 4歳の頃から、屋敷の離れで忘れられた様に過ごすアーシェの側には人間離れした美しさを持つ男性フローが常にいる。 彼が何者で、何処から来ているのかアーシェは知らない。

カーテンコール〜完結作品の番外編集〜

凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
完結した作品の番外編を投稿する場所です。 時系列はバラバラです。 当該作品をお読みでないと理解するのが難しいかもしれません。 今後もテーマに沿って思いついた話や、脇キャラの話などを掲載予定です。 ※更新頻度は低めです。 ※全ての完結作品が登場するとは限りません。 ※全て作者の脳内異世界のお話です。

嫌われ公女に転生したけど、愛されたい願望を捨てたら全員がデレてきた

桃瀬さら
恋愛
嫌われ公女ナディアは、婚約破棄され学園で孤立し、家族からも見放されていた。 どれほど努力しようが周囲からは「嫌われ公女」と蔑まれ、誰も味方なんていない。 「もういい。愛されたいなんて、くだらない」 そう心に誓った瞬間から、状況が一変した。 第二王子が婚約破棄を撤回し跪き、寡黙な騎士団長が「君を守りたい」と熱く迫ってくる。 そして、冷ややかな兄まで「婚約など認めない。家を出ることは許さない」と……。 愛されることを諦めた途端、なぜか執着される。

わたくし、悪女呼ばわりされているのですが……全力で反省しておりますの。

月白ヤトヒコ
恋愛
本日、なんの集まりかはわかりませんが、王城へ召集されておりますの。 まあ、わたくしこれでも現王太子の婚約者なので、その関連だと思うのですが…… 「父上! 僕は、こんな傲慢で鼻持ちならない冷酷非道な悪女と結婚なんかしたくありません! この女は、こともあろうに権力を使って彼女を脅し、相思相愛な僕と彼女を引き離そうとしたんですよっ!? 王妃になるなら、側妃や愛妾くらいで煩く言うのは間違っているでしょうっ!?」 と、王太子が宣いました。 「どうやら、わたくし悪女にされているようですわね。でも、わたくしも反省しておりますわ」 「ハッ! やっぱりな! お前は僕のことを愛してるからな!」 「ああ、人語を解するからと人並の知性と理性を豚に求めたわたくしが悪かったのです。ごめんなさいね? もっと早く、わたくしが決断を下していれば……豚は豚同士で娶うことができたというのに」 設定はふわっと。

リアンの白い雪

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
その日の朝、リアンは婚約者のフィンリーと言い合いをした。 いつもの日常の、些細な出来事。 仲直りしていつもの二人に戻れるはずだった。 だがその後、二人の関係は一変してしまう。 辺境の地の砦に立ち魔物の棲む森を見張り、魔物から人を守る兵士リアン。 記憶を失くし一人でいたところをリアンに助けられたフィンリー。 二人の未来は? ※全15話 ※本作は私の頭のストレッチ第二弾のため感想欄は開けておりません。 (全話投稿完了後、開ける予定です) ※1/29 完結しました。 感想欄を開けさせていただきます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

これは王命です〜最期の願いなのです……抱いてください〜

涙乃(るの)
恋愛
これは王命です……抱いてください 「アベル様……これは王命です。触れるのも嫌かもしれませんが、最後の願いなのです……私を、抱いてください」 呪いの力を宿した瞳を持って生まれたサラは、王家管轄の施設で閉じ込められるように暮らしていた。 その瞳を見たものは、命を落とす。サラの乳母も母も、命を落としていた。 希望のもてない人生を送っていたサラに、唯一普通に接してくれる騎士アベル。 アベルに恋したサラは、死ぬ前の最期の願いとして、アベルと一夜を共にしたいと陛下に願いでる。 自分勝手な願いに罪悪感を抱くサラ。 そんなサラのことを複雑な心境で見つめるアベル。 アベルはサラの願いを聞き届けるが、サラには死刑宣告が…… 切ない→ハッピーエンドです ※大人版はムーンライトノベルズ様にも投稿しています 後日談追加しました

ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな
恋愛
 目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。  って、ベタすぎなので勘弁してください。  しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。  私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。

【完結】遅いのですなにもかも

砂礫レキ
恋愛
昔森の奥でやさしい魔女は一人の王子さまを助けました。 王子さまは魔女に恋をして自分の城につれかえりました。 数年後、王子さまは隣国のお姫さまを好きになってしまいました。

処理中です...