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第1部
8話 どうしてこうなった?
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今から半月ほど前。
両親は罪を暴かれ『ざまぁ』された。同じくお姉様を虐げていた私もそうなるはずだった。
そして小説『聖女はドアマットを許さない』の世界の表舞台から消える。そのはずだったのに。
「どうしてこうなった?」
私は頭を抱え、少し前の出来事を回想した。
◆◆◆◆◆◆
両親が捕らえられたあの日。
私とマルグリットお姉様は、抱きしめあって泣いた。しばらくそうしていたら、聖女ミシエラ様が優しく声をかけてくださった。
「お二人とも、そんなに泣いてはお目々が溶けてしまいますよ」
「す、すみません」
私たちは我に返って体を離した。侍女長がそれぞれの涙を拭いてくれる。子供扱いみたいで照れ臭いけど、あまりにも動きが速かったので止められない。
照れ臭くて、でも嫌な気分じゃない。少しくすぐったくて笑ってしまいそう。お姉様も同じ様子だ。
お祖母様たちが生きていた頃は、こんな風に姉妹揃って涙を拭いてもらう事がよくあったっけ。
お転婆な私はもちろん、大人しい性格のお姉様も小さい頃は無邪気にはしゃぐこともあった。
はしゃいで転けて泣いたら、祖父母か侍女がこうやって涙をぬぐってくれたのだ。
優しい記憶を思い出してほっこりした。
「うふふ。アナベルと抱きしめあって泣くなんて、なんだか小さい頃みたいね。くすぐったいわ」
「えへへ。私もそう思いました。懐かしいです」
ああ、お姉様の安心しきった笑顔、久しぶりに見れた。それこそ小さい頃以来だ。
「最後に見れてよかった。もう何も思い残すことはない」
「え?アナベル?何を言って……?」
私はお姉様の疑問に笑顔を返し、姿勢を正し両手をそろえた。そして、深く頭を下げて土下座した。
「聖女ミシエラ様、聖騎士ルグラン様。お手数ですが、私のことも拘束して監禁して下さい」
お姉様には何一つ罪はないが私は違う。両親と共に、しっかり罪を償うのだ。そうしなければならない。
だから、聖女様方に身を委ねて裁きを受けるために頭を下げた。
私は言動は当然のものだ。そのはずだったけど……。
「えっ?アナベルを拘束?監禁?何故?」
「アナベルさん、何を言ってるんですか?」
「は?しかもまた土下座?」
「あ、アナベルお嬢様?一体なにを……?」
周りの反応がおかしい。信じられない物を見る目だ。
「え?だって、私もお姉様を虐待した加害者です。裁きを受ける立場でしょう?」
「そんな訳ないでしょう!貴女がお父様とお母様の罪を明らかにしてくれたのよ!むしろ私の恩人よ!」
「え?で、でもお姉様……」
聖女ミシエラ様とルグラン様も頷く。
「アナベルさん、確かに貴女のやったことはいけないことです。取調べも受けるでしょう。ですが、貴女は難病によって錯乱していたのですよ。しかも回復後はすぐに謝罪して態度を改め、ご両親の罪を暴く一助になったのです。
私は、貴女に重い罰は必要ないと思います」
「ああ、役人も罪に問わないだろう。
君を罪に問うなら、怪我や病で錯乱して暴れた患者全てを罪に問わなければならない。しかも君は未成年だ。ご両親の影響も強く受けていた。
アナベル嬢、君もまた被害者の一人だ」
「で、でも、理由があったからといって罪が許されるのはおかしいです。お姉様を虐げていた事実があるのに、私だけがお咎めなしになる訳にはいけません」
でなければ、虐げられていた頃のお姉様が浮かばれない。
……それに、罪悪感だけじゃない。打算もある。これからのことを考えると、私は刑務所か修道院に入った方がいい。
だから早く拘束して監禁して欲しいのだけど……あの、ルグラン様、聖女ミシエラ様、なんですか?その優しい眼差しは。
「アナベル嬢、君は責任感が強すぎる」
「そうですよ。自分を責めてしまう気持ちはわかりますが、必要のない罰を受けることはありません」
あああ!お二人の慈悲深さが辛い!
このままじゃ許されてしまう!なんとか罪に問われないと!
「執事長、侍女長。貴方達は、私がどれだけ酷いことをしてたか知っているでしょう?マルグリットお姉様のためにも、ありのままを証言して下さい」
「……確かに、アナベルお嬢様のなさりようは酷いものでした」
「そうだよね!罪を償うべきだよね!」
よし!レッツ監禁のち裁判!刑務所または修道院!イェーイ!
「ですが、魔炎病に罹られるまでのアナベルお嬢様は、聡明で姉君想いのお優しいお方でした。ちょうど今のアナベルお嬢様のように」
「はい。やはり全ては、魔炎病とマルグリットお嬢様を虐げたご領主様方のせいだと思います」
え?なにその優しい言葉と表情は?え?私が元に戻ると信じて待ってた?お帰りなさい?
そんな簡単に人を信じないで!疑いなさいって!
「ち、違う。私は罪人で、許されるべきじゃなくて……」
「アナベル……」
お姉様の瞳からまた涙があふれた。嬉し泣きじゃない。悲しみの涙だ。
私が泣かせた?
どうしよう。私はまた、お姉様を傷つけてしまったの?
「私たちが小さい頃のことを覚えている?貴女とお祖母様とお祖父様が、お父様たちから私を守ってくれていた」
「お姉様……うん。覚えてるよ」
私たちの両親は昔から怠惰で傲慢だったし、お姉様と私を差別して余計なことばかりしていたけれど、前ベルトラン子爵夫妻である父方の祖父母は違う。
有能で努力家で自分にも他人にも厳しい。けれどとても優しくて愛情深い人たちだった。
◆◆◆◆◆◆
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投票、お気に入り登録、エール、感想、リアクションなど、皆様の反応がはげみです。よろしくお願いします。
両親は罪を暴かれ『ざまぁ』された。同じくお姉様を虐げていた私もそうなるはずだった。
そして小説『聖女はドアマットを許さない』の世界の表舞台から消える。そのはずだったのに。
「どうしてこうなった?」
私は頭を抱え、少し前の出来事を回想した。
◆◆◆◆◆◆
両親が捕らえられたあの日。
私とマルグリットお姉様は、抱きしめあって泣いた。しばらくそうしていたら、聖女ミシエラ様が優しく声をかけてくださった。
「お二人とも、そんなに泣いてはお目々が溶けてしまいますよ」
「す、すみません」
私たちは我に返って体を離した。侍女長がそれぞれの涙を拭いてくれる。子供扱いみたいで照れ臭いけど、あまりにも動きが速かったので止められない。
照れ臭くて、でも嫌な気分じゃない。少しくすぐったくて笑ってしまいそう。お姉様も同じ様子だ。
お祖母様たちが生きていた頃は、こんな風に姉妹揃って涙を拭いてもらう事がよくあったっけ。
お転婆な私はもちろん、大人しい性格のお姉様も小さい頃は無邪気にはしゃぐこともあった。
はしゃいで転けて泣いたら、祖父母か侍女がこうやって涙をぬぐってくれたのだ。
優しい記憶を思い出してほっこりした。
「うふふ。アナベルと抱きしめあって泣くなんて、なんだか小さい頃みたいね。くすぐったいわ」
「えへへ。私もそう思いました。懐かしいです」
ああ、お姉様の安心しきった笑顔、久しぶりに見れた。それこそ小さい頃以来だ。
「最後に見れてよかった。もう何も思い残すことはない」
「え?アナベル?何を言って……?」
私はお姉様の疑問に笑顔を返し、姿勢を正し両手をそろえた。そして、深く頭を下げて土下座した。
「聖女ミシエラ様、聖騎士ルグラン様。お手数ですが、私のことも拘束して監禁して下さい」
お姉様には何一つ罪はないが私は違う。両親と共に、しっかり罪を償うのだ。そうしなければならない。
だから、聖女様方に身を委ねて裁きを受けるために頭を下げた。
私は言動は当然のものだ。そのはずだったけど……。
「えっ?アナベルを拘束?監禁?何故?」
「アナベルさん、何を言ってるんですか?」
「は?しかもまた土下座?」
「あ、アナベルお嬢様?一体なにを……?」
周りの反応がおかしい。信じられない物を見る目だ。
「え?だって、私もお姉様を虐待した加害者です。裁きを受ける立場でしょう?」
「そんな訳ないでしょう!貴女がお父様とお母様の罪を明らかにしてくれたのよ!むしろ私の恩人よ!」
「え?で、でもお姉様……」
聖女ミシエラ様とルグラン様も頷く。
「アナベルさん、確かに貴女のやったことはいけないことです。取調べも受けるでしょう。ですが、貴女は難病によって錯乱していたのですよ。しかも回復後はすぐに謝罪して態度を改め、ご両親の罪を暴く一助になったのです。
私は、貴女に重い罰は必要ないと思います」
「ああ、役人も罪に問わないだろう。
君を罪に問うなら、怪我や病で錯乱して暴れた患者全てを罪に問わなければならない。しかも君は未成年だ。ご両親の影響も強く受けていた。
アナベル嬢、君もまた被害者の一人だ」
「で、でも、理由があったからといって罪が許されるのはおかしいです。お姉様を虐げていた事実があるのに、私だけがお咎めなしになる訳にはいけません」
でなければ、虐げられていた頃のお姉様が浮かばれない。
……それに、罪悪感だけじゃない。打算もある。これからのことを考えると、私は刑務所か修道院に入った方がいい。
だから早く拘束して監禁して欲しいのだけど……あの、ルグラン様、聖女ミシエラ様、なんですか?その優しい眼差しは。
「アナベル嬢、君は責任感が強すぎる」
「そうですよ。自分を責めてしまう気持ちはわかりますが、必要のない罰を受けることはありません」
あああ!お二人の慈悲深さが辛い!
このままじゃ許されてしまう!なんとか罪に問われないと!
「執事長、侍女長。貴方達は、私がどれだけ酷いことをしてたか知っているでしょう?マルグリットお姉様のためにも、ありのままを証言して下さい」
「……確かに、アナベルお嬢様のなさりようは酷いものでした」
「そうだよね!罪を償うべきだよね!」
よし!レッツ監禁のち裁判!刑務所または修道院!イェーイ!
「ですが、魔炎病に罹られるまでのアナベルお嬢様は、聡明で姉君想いのお優しいお方でした。ちょうど今のアナベルお嬢様のように」
「はい。やはり全ては、魔炎病とマルグリットお嬢様を虐げたご領主様方のせいだと思います」
え?なにその優しい言葉と表情は?え?私が元に戻ると信じて待ってた?お帰りなさい?
そんな簡単に人を信じないで!疑いなさいって!
「ち、違う。私は罪人で、許されるべきじゃなくて……」
「アナベル……」
お姉様の瞳からまた涙があふれた。嬉し泣きじゃない。悲しみの涙だ。
私が泣かせた?
どうしよう。私はまた、お姉様を傷つけてしまったの?
「私たちが小さい頃のことを覚えている?貴女とお祖母様とお祖父様が、お父様たちから私を守ってくれていた」
「お姉様……うん。覚えてるよ」
私たちの両親は昔から怠惰で傲慢だったし、お姉様と私を差別して余計なことばかりしていたけれど、前ベルトラン子爵夫妻である父方の祖父母は違う。
有能で努力家で自分にも他人にも厳しい。けれどとても優しくて愛情深い人たちだった。
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