欲しがる妹アナベルは『ざまぁ』されたい!

花房いちご

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第1部

10話 アナベルの敵と味方(仮)

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「というか私、敵が多すぎる!」

 そう。この時点ですでに、私を利用していたり、殺そうしてたり、執着していたりするイケメンがいるのだ。

 一人目。私を利用するイケメンは、お姉様の婚約者だ。
 名前はジョルジュ・トリュフォー。
 トリュフォー伯爵家の三男で、金髪碧眼のイケメンだ。

 小説『聖女はドアマットを許さない』公式イラストでも、王子様っぽい貴公子に描かれていた。だけど性格は最悪だ。
 小説では、私と両親に取り入るためにお姉様への虐待に加担した上に、お姉様に暴言を吐いて婚約破棄する。そして、健康を取り戻した私と婚約を結び直すのだ。
 でもそれは、私が好きだからじゃない。ベルトラン子爵家の金と爵位が欲しいだけだ。お姉様を虐げたのも、私と婚約を結び直したのも、その方が両親に気に入られるし、子爵家の金を使いやすいからだ。
 しかも私と結婚した後は、両親ともども殺して家を乗っ取る計画を立てている。
 そんな男なので、小説では私と両親が借金苦におちいると速攻で見捨てて逃げた。

 現実でのジョルジュ・トリュフォーはどうかというと、最悪なことに小説そのままだ。
 つい最近も、私に対し『マルグリットは地味で華がないし、話していてつまらない。可愛くて楽しい君の方が、子爵家の後継ぎに相応しい』なんて、クソみたいな言葉を囁きやがった。

 はっきり言ってクズだ。クズ担当イケメン!お姉様に相応しくない!

 あの男とお姉様の婚約を壊したくて、ジョルジュ・トリュフォーの言動を思い出して記録したり、色々と調べた。
 最初はあの男の悪事を暴露すればお姉様との婚約を壊せると思ってたけど……少し調べただけで、そう上手くはいかないと判明する。

「お姉様への虐待に加担してたと言っても、嫌味ったらしい暴言を吐いていただけ。この国の貴族の婚約って、暴言だけじゃ破棄も解消も出来ないみたいなんだよね……」

 どうにかして婚約を無くしたいけど、どうしたらいいかわからない。

「おまけにジョルジュ・トリュフォーをなんとかしないと、二人目も怖いし……」

 二人目。私を殺そうとするイケメンは、お姉様の幼馴染だ。
 名前はアレクシス・デュラン。
 隣のデュラン男爵領の四男で、赤髪にオレンジ色の瞳のイケメン。心からお姉様を愛している文武両道の好青年……なんだけど、恐らく私を無茶苦茶憎んでいる。
 8年前。お見舞いに来た彼が、私を叱ってお姉様をかばった。
 私は癇癪を起こして暴れ、彼が屋敷に来ることと、お姉様と会うことを禁じたのだ。
 しかも、内定していた二人の婚約も破棄させた。代わりにお姉様の婚約者に決まったのが、あのジョルジュ・トリュフォーだ。
 
 小説の彼は私と両親を憎み復讐する。特に、お姉様を虐待し、お姉様と会うことを禁じ、ほぼ成立していた婚約を破棄させた私に対して苛烈だった。
 私と両親が破滅するよう裏から手を回し、裏社会の借金取りを差し向けたのも彼だ。両親は悲惨な死を遂げて、私は違法娼館に堕ちて生き地獄を味わう。
 全ては私を徹底的におとしめ、屈辱を与え、死ぬまで苦しめるためだ。
 私が娼館を足抜けしてからは、お姉様に危害を加えようとする度に阻み、私を殺そうとした。

 お姉様の敵を絶対許さない。腹黒担当イケメンだ。

 現実のアレクシス・デュランとは8年間会っていないけれど、恐らく小説と大差ないだろう。きっと私を憎んでいる。なんならすでに命を狙ってる可能性もある。
 前世ではマルグリットたんとアレクシスが最推しカプだった。アレクシスのことも『やべー奴だけど、マルグリットたんを一途に愛してて良いよね』と思ってたけど、自分が憎悪の対象になっていると思うとひたすら怖い。
 まあ、まだ殺意を持たれているかは確定してないけれど……。

「この段階でお姉様と和解して両親をざまぁしたから、ワンチャン許される可能性も……。でもアレクシス・デュランって、感情を隠すのが上手いキャラのはずだから、表向きでは許して裏で手を回して破滅させるってパターンもあり得る。
 ヤバい本音を隠しているといえば、三人目もそうだよね」

 三人目。私に執着しているイケメンは、ベルトラン子爵家の使用人だ。
 小説で読んだ記憶によると、準男爵家の出で青髪で色白のイケメンらしい。
 私に一目惚れして密かに想いを募らせ、借金取りに攫われた私を探し続ける。健気で一途な男だけど……。
 再会した私に幻滅し『違う!お前のような穢らわしい女がアナベル様な訳がない!売女め!消えろ!』と言って、ナイフで滅多刺しにする。
 執着狂愛。ヤンデレ担当イケメンってところかな。

「しかも使用人の内の誰かわからないんだよね。小説では、名前も役職も出ていなかったし」

 準男爵家出身、青髪、イケメン、恐らく成人しているはず。くらいの情報しかない。
 この世界では青髪は珍しくない。男性の使用人は三十人ほどいるけれど、そのうちの三人が条件に当てはまってしまう。
 だけど、三人とも私に気がある素振りはしていない。

「三人のうちの誰だろう?でも、三人とも私に執着してそうには見えないんだよね。私が気づいていないだけかもしれないけど。それとも、現実には存在していないのかも。だったら安心だけど……」

 現実にも存在してたら一番なにをするかわからなくて怖い。やっぱり油断できない!
 もうやだ!ヤバいイケメンばっかり!

「クズはお姉様にとっても百害あって一利なしだし、腹黒は私を許してくれるかどうか怪しいし、ヤンデレは居るのかすらわからないし、どうしたらいいの!」

「一人で抱え込まず、周りに相談したら良いんじゃないか?」

「へ?」

 びっくりして振り返る。なんと聖騎士エリック・ルグラン様がいた。
 背後のドアが少し開いている。普通にドアを開けて入ってきたのだろう。
 しまった。そういえばさっきドアの鍵を閉め忘れてた。
 自宅とはいえ、ルグラン様たち他人もいるのに油断しすぎた。反省反省……って、そんな場合じゃない!

「な、ななな何でここに!?というかこの部屋は私の部屋です!入室の許可を出していませんよ!?」

 ルグラン様は頷き、なんとその場で跪いた。

「君の言う通りだ。後でつぐなわせてくれ。これ以上近づかないと誓うし、俺の話が分からなければ人を呼んでいい。ドアは開けてるから、すぐに誰か来るだろう」

「は、はあ?話、ですか?」

 わざわざ二人きりで?最近では割と気安く話すようになったし、雑談する機会なんていくらでもあるのに?

「ああ、どうしても君と二人きりで話したかった。
 ……君は前世で、この世界を描いたアニメを観たことがあるのか?」

「へ?」


◆◆◆◆◆◆



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