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第3章 文化祭

第30話 輪投げ

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 タピオカドリンクでのどを潤した後、俺とリエナはまずは校内のクラス出し物を見て回ることにした。


「さぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい、2年5組の輪投げアトラクション! なんと何回やっても無料だよ! しかも9個のマスでダブルビンゴ――ビンゴを2つつくると駅前のケーキカフェのケーキセット無料券2人分を進呈しちゃいます!」

 ちょうど2年5組の教室前を通りかかった俺とリエナに向けて、呼び込みの男子生徒からそんな声が投げかけられた。

「勇者様勇者様、なんだかおもしろそうなことをやっていますよ」
 興味を持ったのか、リエナがチョイチョイと俺の制服の袖を引っ張る。

「輪投げかぁ。懐かしいな、子供のころに縁日でやって以来だ」

 こういった日常ではまず見ない懐かしい遊びがあるのも、文化祭の楽しいところだよな。

「ほらほら、そこのカレシさん。金髪の可愛いカノジョさんにいいところを見せて、ついでに美味しいケーキをおごってあげませんかー?」

「どうやら勇者様をご指名みたいですよ?」
「ん-、そうだな……」

 チラリと2年5組の教室を覗き見ると、ちょうどカップルが1組輪投げに挑戦していたんだけど。

 どうやらカレシ君が何回やってもほとんど入れられないせいで、カノジョさんが怒ってしまっているようだった。

 カレシ君はもう面目丸つぶれって様子で、申し訳なさそうに下を向いてしまっている。

 ……なるほどな。
 俺はすぐに何が起こっているか気が付いた。

 どうもこのクラスは少々タチの悪いことをしているようだ。

 見たところ明らかに投げるリングのサイズが小さい。
 しかも投げる距離も文化祭のお遊びにしては長すぎだ。
 
 つまりこれはカレシ君が下手くそなんじゃない。
 そもそも最初からほとんど入らない「設定」になってるんだ。

 これは俺の勘だが、カップルを狙って誘い込んでるみたいだし、文化祭デートを楽しんでいるカップルを仲違いでもさせてやろうとでも思っているんだろう。

 はぁ、やれやれ。
 せっかくの楽しい文化祭だってのに、とんだ小悪党がいたもんだな。

「せっかく指名をしてもらったんだから、いっちょやってみるか」
「ふふっ、勇者様のかっこいいところを見られますね♪」
「ああ、いっぱい見せてやるよ」

「ではではカップル様、1組入りま~す!」

 おい、2年5組の呼び込みの男子。
 口元がにやけてるぞ。
 少しはその薄汚い悪意を隠そうとしろよな?

 おかげで疑惑が完全に確信に変わったぞ。
 これはもう徹底的にお灸を据えてやらないとだな。

 俺たちが入るのと入れ替わるように、すっかり険悪なムードになってしまったカップルが教室を出てきた。

 ドスドスと怒り心頭で出てきたカノジョさんに続いて、視線を落としてトボトボと出てきたカレシ君の前で立ち止まった俺は、カレシ君だけに聞こえるように小さくつぶやいた。

「見てたぞ、完全にハメられたな。けど安心してくれ、カタキは俺がとってやるから」

「……え?」
 俺の言葉に、カレシ君がハッと顔を上げる。

「だからお前も下を向いてないで、全力でカノジョに機嫌をなおしてもらう努力するんだ。なーに、文化祭はまだまだ始まったばかりなんだから、いくらでも取り返せるさ。下を向いて諦めるには早すぎる」

 俺はそれだけ言うとカレシ君の背中を軽くポンと叩いてやってから、2年5組へと乗り込んだ。

 幸せな2人に嫌がらせをして、あわよくば引き裂いてやろうだなんて、そんな程度の低いことを考えているヤカラにはキツイお仕置きをしてやる必要があるだろう。

 俺は渡された輪投げリングを小さく上に投げたり、指に引っ掛けて回したりして感触を確かめながら、まずはルールを確認する。

「3×3に配置された棒に全部で10個のリングを投げて、それで縦横斜めどれでもいいからダブルビンゴを作れば、その時点で景品がもらえるんだよな?」

「はい、そうですよ」
 俺の質問に、2年5組の運営担当の男子生徒は笑顔で答える。
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