85 / 175
第2部 第5章 中間テストの勉強会

第84話 ~優香SIDE~、~美月のあのね帳~

しおりを挟む
~優香SIDE~

 自分の部屋の窓辺にもたれかかりながら、私は物思いにふけっていた。
 雲一つない夜空に明々と光る星々を見上げていると、

「はぁ……」
 私の口からは今日何度目か分からない、小さな溜息がこぼれ出た。

 最近の私はとても変だった。
 なにが変って、蒼太くんといると、言わなくてもいいことを言ってしまうのだ。
 今日のお勉強会でもそうだった。

 話の流れの中での偶然だったとはいえ、せっかく2人きりのお勉強会に誘えたっていうのに、

『決して個人的に蒼太くんと新婚さんになったみたいとかそんな風には思ってないんだからねっ! ほんとなんだからねっ!』

 焦った私は、思っていたこととはまったく正反対のことを、面と向かって蒼太くんに言ってしまったのだ。

 正直に言おう、めちゃくちゃ思っていた。
 ブレザーをハンガーにかけてあげるだなんて、新婚ほやほやの新妻さんみたいだよね、とか超思っちゃっていた。

『ご飯にする? 先にお風呂に入る? それとも……わ・た・し?』
 みたいなことを、思わず口走ってしまいそうだった。
 言わなくて本当に良かった。

 だっていうのに。

「ううっ、なんであんなことを言っちゃったんだろう……蒼太くん、傷ついたよね。ごめんなさい蒼太くん」

 窓辺から夜空を見上げながら、私は後悔と懺悔の言葉を口にする。

 なんでと言いながら、実のところ理由は分かっている。
 私は秘めた恋心を、蒼太くんに知られてしまうのが怖かったのだ。
 今の関係が壊れることを、私はとても恐れていたから。

「もし今の関係が壊れてしまったら、美月を悲しませることにもなっちゃうもんね」

 自分の気持ちを受け入れてもらえないだけでも悲しくて怖いのに、それだけじゃなくて美月も悲しませてしまうと思うと、私の心からは勇気という勇気が全部、零れ落ちていってしまって――。

「はぁ……」
 なんとも力なくついた溜息は、初夏の穏やかな夜風に乗って、誰に聞かれることもなく夜空へと消えていく。

「あ、夏の大三角……」

 デネブ、アルタイル、ベガ――夏の夜空に我が物顔で居座る一等星たち。
 雲一つない夜空で、自由気ままに気持ちよさそうにきらめく星たちを見て、私は無性に憎らしく感じてしまうのだった。


~あのね帳(姫宮美月)~

先生、あのね、今日は、こっそり作せんを、しました。
そうしたら、お姉ちゃんと、そうたお兄ちゃんが、お姉ちゃんの、おへやで、こっそり2人で、見つめ合って、いました。

こうこう生になると、こういうのが、大じなんだって。
美月も、はやく、こうこう生になって、そうたお兄ちゃんと、大じなことを、したいです。

そして、お姉ちゃんは、せきにんがあるので、そうたお兄ちゃんの、めんどうを、見るんだって。
お姉ちゃんは、やさしいなと、おもいました。
美月も、大きくなったら、そうたお兄ちゃんに、めんどうを、見てほしい、です。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

処理中です...