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第四章 リフシュタイン侯爵の陰謀
第53話 別離
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ミリーナがリフシュタイン侯爵と秘密の会合をもった2日後。
国に尽くす貴族の娘として、何より愛するジェフリー王太子のために。
ミリーナは身を引くことを決断しリフシュタイン侯爵へと伝えた。
身を引き裂かれるような深い悲しみにミリーナは必死に耐え忍ぶ。
そして、
『親愛なるジェフリー王太子殿下へ。
突然ですが今日をもってジェフリー王太子殿下の前を去ることを決意しました。
このようなことになってしまい本当に申し訳ありません。
ですが今もなお、私は心の中にいる想い人を忘れることができなかったのです。
今まで私のような下級貴族の娘に、夜空に輝く満天の星々のごとき多大なるご寵愛を賜りましたこと、感謝してもしきれません。本当にありがとうございました。
そして与えられたご寵愛をこのように仇という形で返してしまう愚かな私を、なにとぞお許しください。
ですが私はもう自分の心に嘘はつけないのです。
今まで本当にありがとうございました。そしてさようなら。
最後に、後生ですからどうか私のことは探さないでくださいませ。
ミリーナ=エクリシア』
ジェフリー王太子にそう書き置きを残すと、リフシュタイン侯爵の『手厚い支援』によって王都から遠く遠く離れた地へと極秘裏に出立したミリーナは、そのまま市井に紛れたのだった。
お腹の中にいる愛する人の子とともに――。
ジェフリー王太子が対グランデ帝国の同盟強化の交渉をまとめてローエングリン王国へと帰国したのは、ミリーナが王宮から消えてから既に2カ月と半月が過ぎた後だった。
「俺がいない間に一体なんだこれは! 何が起こったというのだ! 探さないでくださいだと? 馬鹿を言え! 一方的にそんな書き置きを残されて、はいそうですかと黙ってじっとなどしていられるものか……! ミリーナ、君を絶対に探し出して直接その口から理由を聞くまでは、俺は何があっても諦めはしないぞ!」
言葉の通りジェフリー王太子は死に物狂いで八方手を尽くしてミリーナを探そうとした。
しかしどれだけ探しても、まるでその存在が世界から消えたかのようにミリーナは見つかりはしなかった。
ここで1つ付け加えておくと、ジェフリー王太子の帰国が遅れたのは決してミリーナのせいでジェフリー王太子が軽んじられ、それで同盟交渉がもつれたからではなかった。
ジェフリー王太子とハンナブル王国タイナス王子が盟友関係にあることもあって、同盟各国の交渉は極めてスムーズに進んでいた。
しかしジェフリー王太子が滞在しているハンナブル王国に対して、グランデ帝国がありえないほど何度も何度もしつこく挑発をしかけてきたのだ。
国境沿いで大規模な軍事演習を毎日のように行い。
国境線ギリギリまで軍を前進させて、柵や砦を作り始めるのだ。
そういった度重なる挑発行動のせいで、ジェフリー王太子は帰国途中に襲撃を受ける危険性を考慮して帰るに帰れなかったのだった。
もしも全ての情報を知りうる神の視点を持つ者がこの状況を見たとしたら。
リフシュタイン侯爵によるミリーナ排除策を成功させるために、彼と密約を交わしていたグランデ帝国がわざと挑発行動を繰り返して、ジェフリー王太子の帰国を妨害していたと気づいたことだろう。
しかしこの世に神などという超越者は存在しない。
従ってリフシュタイン侯爵の陰謀は、明るみになることはなかった。
国に尽くす貴族の娘として、何より愛するジェフリー王太子のために。
ミリーナは身を引くことを決断しリフシュタイン侯爵へと伝えた。
身を引き裂かれるような深い悲しみにミリーナは必死に耐え忍ぶ。
そして、
『親愛なるジェフリー王太子殿下へ。
突然ですが今日をもってジェフリー王太子殿下の前を去ることを決意しました。
このようなことになってしまい本当に申し訳ありません。
ですが今もなお、私は心の中にいる想い人を忘れることができなかったのです。
今まで私のような下級貴族の娘に、夜空に輝く満天の星々のごとき多大なるご寵愛を賜りましたこと、感謝してもしきれません。本当にありがとうございました。
そして与えられたご寵愛をこのように仇という形で返してしまう愚かな私を、なにとぞお許しください。
ですが私はもう自分の心に嘘はつけないのです。
今まで本当にありがとうございました。そしてさようなら。
最後に、後生ですからどうか私のことは探さないでくださいませ。
ミリーナ=エクリシア』
ジェフリー王太子にそう書き置きを残すと、リフシュタイン侯爵の『手厚い支援』によって王都から遠く遠く離れた地へと極秘裏に出立したミリーナは、そのまま市井に紛れたのだった。
お腹の中にいる愛する人の子とともに――。
ジェフリー王太子が対グランデ帝国の同盟強化の交渉をまとめてローエングリン王国へと帰国したのは、ミリーナが王宮から消えてから既に2カ月と半月が過ぎた後だった。
「俺がいない間に一体なんだこれは! 何が起こったというのだ! 探さないでくださいだと? 馬鹿を言え! 一方的にそんな書き置きを残されて、はいそうですかと黙ってじっとなどしていられるものか……! ミリーナ、君を絶対に探し出して直接その口から理由を聞くまでは、俺は何があっても諦めはしないぞ!」
言葉の通りジェフリー王太子は死に物狂いで八方手を尽くしてミリーナを探そうとした。
しかしどれだけ探しても、まるでその存在が世界から消えたかのようにミリーナは見つかりはしなかった。
ここで1つ付け加えておくと、ジェフリー王太子の帰国が遅れたのは決してミリーナのせいでジェフリー王太子が軽んじられ、それで同盟交渉がもつれたからではなかった。
ジェフリー王太子とハンナブル王国タイナス王子が盟友関係にあることもあって、同盟各国の交渉は極めてスムーズに進んでいた。
しかしジェフリー王太子が滞在しているハンナブル王国に対して、グランデ帝国がありえないほど何度も何度もしつこく挑発をしかけてきたのだ。
国境沿いで大規模な軍事演習を毎日のように行い。
国境線ギリギリまで軍を前進させて、柵や砦を作り始めるのだ。
そういった度重なる挑発行動のせいで、ジェフリー王太子は帰国途中に襲撃を受ける危険性を考慮して帰るに帰れなかったのだった。
もしも全ての情報を知りうる神の視点を持つ者がこの状況を見たとしたら。
リフシュタイン侯爵によるミリーナ排除策を成功させるために、彼と密約を交わしていたグランデ帝国がわざと挑発行動を繰り返して、ジェフリー王太子の帰国を妨害していたと気づいたことだろう。
しかしこの世に神などという超越者は存在しない。
従ってリフシュタイン侯爵の陰謀は、明るみになることはなかった。
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