のんびり領主とモフモフ相棒の異世界スローライフ

ポテトフライ

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「第四話」執務室でのんびり仕事

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 アルトは館の一階にある執務室へと向かう。ここは木目調の落ち着いた部屋で、壁に小さな本棚があり、領地に関する古い書類や地図などが収められている。机の上には、まだ処理していない書類の束がいくつかあった。

「さてと、まずはこの書簡からだな」

 アルトは領主宛に届いた手紙を開き、内容を確認し始める。書簡の内容は主に、周辺領主からの連絡や、王都からの知らせ、新しい商人が通行許可を求めてきた件などだ。といっても、フィンダレン領は地味で小さな領地だ。王都からの使者が頻繁に来るわけでもなく、大抵は年に一度の報告と税の納付などがメイン。それでも、王国への報告事項はきちんとまとめて返事を出さなくてはならない。

「ルル、手紙をかじらないでくれよ」

 肩に乗っているルルが、じっと書類に鼻先を近づけている。興味津々のようだが、紙を噛まれたりするとさすがに困る。そんなアルトの気持ちを理解したのか、ルルは「ぴい」と一声鳴いて、大人しくアルトの肩の上で丸くなる。

 書類仕事とはいえ、アルトにとってはそれほどストレスの多い作業ではない。彼ののんびりとした性格のおかげで、細かいところで焦ったり不安に駆られたりすることがあまりないのだ。一つずつ確実にこなしていけば、書類の山もいつの間にか片付いていく。それよりも、たまにぼんやり外を眺めたり、ルルのふわふわの毛を撫でたりして息抜きする時間が好きだった。

「……っと、これは少し面倒そうだな」

 アルトは一通の手紙を手にとる。差出人は隣接する小領地の領主であるリューク男爵。年齢はアルトとさほど変わらないが、幼少期から厳格な父親の教育を受けており、領地経営にはかなり力を入れている人物だ。しかし、その性格は少し堅苦しく、アルトののんびりした雰囲気を快く思っていないらしい。

 手紙の内容はというと――「最近、フィンダレン領との境界沿いで商隊の争いが起きたが、そちらの領主として対処しているのか?」といった尋問じみたものだった。どうやら、リューク男爵の領地で商人同士がトラブルを起こし、その影響がフィンダレン領にも波及していると考えているらしい。

「うーん……うちにそんな報告は来てないけど……」

 アルトは首をかしげる。フィンダレン領を通る商隊はそれほど多くなく、定期的に行き来するのは決まった取引先ぐらいしかない。もし大きな商隊が境界付近を往来しているなら、村人から何らかの報せがあるはずだ。それが一切ないということは、単なる男爵側の勘違いか、あるいは事件が起きたとしてもフィンダレン領には関係がない可能性が高い。

「どう返事を書こうか……。まあ、うちでは問題は起きていないから、その旨を伝えるしかないな。あとは、もし何かあれば情報交換しましょうぐらいか」

 アルトは簡単な文面を考え、羊皮紙にサラサラと筆を走らせる。書き終わる頃には、ルルが「きゅう」とあくびをしてアルトの肩からひょいと机の上へと降りてきた。ルルは机の隅に乗って大人しくしているが、何をするわけでもない。アルトは穏やかな気持ちで、その姿を眺めながら続きの書類を処理していく。
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