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「第十三話」ルルのふしぎな力? うわさ話の真相
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午後の仕事を一通りこなして外に出ると、村人たちが広場で何やら楽しそうに話しているのが見えた。どうやら行商人が来て、珍しい品を並べているらしい。アルトは興味をそそられてそちらに近づいてみることにした。
広場の端にある屋台には、町や王都で仕入れたという小物や雑貨、調味料などがずらりと並ぶ。村の女性たちが「これ、珍しいわね」「こっちの色もきれい」と目を輝かせて品定めをしているのが、なんとも微笑ましい。
「よう、アルト様。今日はいい天気ですねぇ」
行商人の男がにこやかに声をかけてくる。彼は定期的にこの村を訪れており、アルトとも顔馴染みだ。見慣れない品物を広げているあたり、新しいルートを開拓してきたらしい。
「こんにちは。今日はどんなものがあるんだ?」
「はいはい、実は王都のほうで話題になっている調味料をちょいと手に入れましてね。ほら、これが“スパイスミックス”っていうらしいんですが、料理にひと振りすると香りがすごく良くなるんですよ。お肉や魚に合うんだとか」
「へえ、面白そうだな。うちの料理は基本的に素朴だから、こういう刺激的な味も悪くないね」
アルトは興味深そうに小瓶を手に取る。そのとき、ルルが瓶の匂いを嗅いで「ぴくっ」と体を震わせた。どうやら少し辛そうな香りが鼻を刺激したらしい。顔をしかめながらくしゃみをするルルの姿に、周囲の村人がくすっと笑う。
「ルル、辛いのは苦手かな。いいよ、これはアルト様が買って、今度こっそり味見してみるよ」
アルトはルルを笑いながら落ち着かせ、小瓶を一つ買い求めた。すると、行商人が「そういえば」と声のトーンを落として話し始める。
「最近、王都方面では妙な噂が流れていましてね。どうも、珍しい幻獣やら精霊的な存在を探している輩がいるってんですよ。高値で買い取るだとか、研究したいだとか……。まあ、噂程度ですけど」
「珍しい幻獣……?」
「ええ。王都近辺じゃなくて、もっと辺境のほうを探し回ってるらしいんですが、ここら辺りにも変わった生き物がいるって聞きつけたらしくて。気をつけたほうがいいかもしれませんよ」
アルトは、ふとルルの姿を横目に見る。確かに、ルルは普通の動物とは少し違う雰囲気がある。王都の大図書館にも載っていない種だと聞いたことがあるし、もし変わった生き物を探している研究者がいたら、ルルに目をつけられてしまうかもしれない。
ルルはほわんとした顔でアルトを見上げるだけだが、今の話を聞いていると少し不安になる。
「そうか……。まあ、ルルは俺の相棒だから、仮に誰かが狙ってきても簡単には渡さないけどね」
「さすがアルト様、頼もしい! しかし、物騒な世の中になったもんです。戦争がめったに起こらない国とはいえ、変な研究者やら密猟者やらはいつの時代もいるもんですね」
行商人は苦笑しながら言う。アルトは礼を述べて、スパイスミックスを手に再び村の広場を歩く。頭の片隅には、ルルの存在がいつか厄介ごとを引き寄せるかもしれないという思いがよぎった。
しかし、アルトはすぐに気を取り直す。「心配したところで仕方ない。万一のことがあれば、俺がルルを守るだけだ」と胸中で決意し、ルルの体をそっと撫でた。ルルはそれを察したのか「ぴい」と一鳴きし、くるくると嬉しそうに尻尾を振った。
広場の端にある屋台には、町や王都で仕入れたという小物や雑貨、調味料などがずらりと並ぶ。村の女性たちが「これ、珍しいわね」「こっちの色もきれい」と目を輝かせて品定めをしているのが、なんとも微笑ましい。
「よう、アルト様。今日はいい天気ですねぇ」
行商人の男がにこやかに声をかけてくる。彼は定期的にこの村を訪れており、アルトとも顔馴染みだ。見慣れない品物を広げているあたり、新しいルートを開拓してきたらしい。
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「はいはい、実は王都のほうで話題になっている調味料をちょいと手に入れましてね。ほら、これが“スパイスミックス”っていうらしいんですが、料理にひと振りすると香りがすごく良くなるんですよ。お肉や魚に合うんだとか」
「へえ、面白そうだな。うちの料理は基本的に素朴だから、こういう刺激的な味も悪くないね」
アルトは興味深そうに小瓶を手に取る。そのとき、ルルが瓶の匂いを嗅いで「ぴくっ」と体を震わせた。どうやら少し辛そうな香りが鼻を刺激したらしい。顔をしかめながらくしゃみをするルルの姿に、周囲の村人がくすっと笑う。
「ルル、辛いのは苦手かな。いいよ、これはアルト様が買って、今度こっそり味見してみるよ」
アルトはルルを笑いながら落ち着かせ、小瓶を一つ買い求めた。すると、行商人が「そういえば」と声のトーンを落として話し始める。
「最近、王都方面では妙な噂が流れていましてね。どうも、珍しい幻獣やら精霊的な存在を探している輩がいるってんですよ。高値で買い取るだとか、研究したいだとか……。まあ、噂程度ですけど」
「珍しい幻獣……?」
「ええ。王都近辺じゃなくて、もっと辺境のほうを探し回ってるらしいんですが、ここら辺りにも変わった生き物がいるって聞きつけたらしくて。気をつけたほうがいいかもしれませんよ」
アルトは、ふとルルの姿を横目に見る。確かに、ルルは普通の動物とは少し違う雰囲気がある。王都の大図書館にも載っていない種だと聞いたことがあるし、もし変わった生き物を探している研究者がいたら、ルルに目をつけられてしまうかもしれない。
ルルはほわんとした顔でアルトを見上げるだけだが、今の話を聞いていると少し不安になる。
「そうか……。まあ、ルルは俺の相棒だから、仮に誰かが狙ってきても簡単には渡さないけどね」
「さすがアルト様、頼もしい! しかし、物騒な世の中になったもんです。戦争がめったに起こらない国とはいえ、変な研究者やら密猟者やらはいつの時代もいるもんですね」
行商人は苦笑しながら言う。アルトは礼を述べて、スパイスミックスを手に再び村の広場を歩く。頭の片隅には、ルルの存在がいつか厄介ごとを引き寄せるかもしれないという思いがよぎった。
しかし、アルトはすぐに気を取り直す。「心配したところで仕方ない。万一のことがあれば、俺がルルを守るだけだ」と胸中で決意し、ルルの体をそっと撫でた。ルルはそれを察したのか「ぴい」と一鳴きし、くるくると嬉しそうに尻尾を振った。
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