重機巧セインレイヴ

白銀アイネス

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第一話 ラベンダー髪の少女

バンバラの街の領主ディマ

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12月の冬はとてつもなく寒い。

大雪が吹雪く午後三時、バンバラの街でも冬を越す準備は多忙の日々だ。

寒さをしのぐための暖房を焚くため、火力発電施設のボイラーに薪がいるが故に、膨大な数の木を伐り倒さなければならない。

そのため、木を切り倒す木こりとそれを賊や野生動物から護衛する憲兵団、

村の男たちが全長5m多脚式重機である小型機巧コンパクトギアアントラァ6機、チェーンソーと巨大ハンドを装備した伐採用装備と銃器で武装した戦闘用に乗り込み、村の外へ駆り出される。

「ぶえっくしょいぃぃぃ!!!」

木を伐り出している伐採用の機体三機と運搬用トレーラー、その周りを囲むように護衛している戦闘用の三機。

戦闘用の三号機に乗り込んでいる16歳の青年、黄土色のような金髪の中性的な、町を歩けば若い女性の視線を虜にするほどの容姿の美男子がコックピット内で大きなくしゃみをしながら鼻水を垂らす。

『うぉぉ!?びっくりしたぁぁ!!』

二号機のコックピットにいる第三憲兵団の団長 アストン・トーロイが頭部バイザーのスピーカー越しの大声に驚いたようだ。

『おいディマ!でかい声だすなよ!ビビっちまったじゃねぇか』

「悪いアストン、けどさぁ~このコックピットの暖房どうにかなんないのかよ、全然暖かくならねぇ、むしろ中途半端にぬるいから余計に寒いんだけど」

『文句なら整備したナターシャに言え、ていうかそんなに寒いんなら館に残っててよかったんだぜ?』

「領民が懸命に働いてるのに、が館でぬくぬくデスクワークしてるわけにいかねぇだろ?」

『とか言って、本当はそのデスクワークが嫌だからミリアルに全部押し付けてこっちに来たんだろ?』

「ご名答!」

自警団長であるアストンに軽口を叩いているこの青年は、ディミトリ・スターク。

親しい者達からは愛称のディマで呼ばれており、バンバラの街の若き領主である大公貴族だ。

本来ならこうして領民に交じって行動を共にできる立場ではないのだが、ディマは執務が大の苦手で執務に追われる日々がここ数日も続いていたのだ。

そこで、気分転換に今日の執務は幼馴染であり自身の補佐のミリアルに全部任せて、代わりに憲兵団に補欠団員という立場で行動を共にすることとなったのだ。

『ところで、ルーナには言って出てきたのか?』

「言ったら面倒なことになるからな、黙って出てきた」

『あんまり筆頭専属メイドに心配かけさせんなよ」

「あいつは過保護すぎなんだよ、俺もう来年で18だぜ?もう幼い頃じゃないんだからさぁ」

そんな、領民と領主らしくない他愛もない砕けた会話を続ける。

アストンにミリアル、そしてミリアルの双子の姉のルーナァに加えてアストンの妹の整備士のナターシャ、この四人とは幼い頃から面倒を見てくれていた一回り年の離れた幼馴染達。

12年前、先代領主である父ジェイダ・スターク卿とその妻であるアイシャ・スターク婦人が第七スペースコロニー群への道中にシャトルの事故で亡くなって以来、幼くして大公貴族となり、街の領主となったディマ。

アストンの祖父母であるスターク家のメイド長と庭師となってから、スターク家に使用人としてやってきた四人とはすぐに意気投合し今では兄弟のような存在でもある。

ちなみに、アストンとルーナァは半年前に結婚したばかりの新婚夫婦で現在ルーナァは妊娠半年で来週あたり出産予定でもある。

「そういや性別、どっちか分かったのか?」

『いや、前に医者に診てもらったときには詳しくはわかんなかった』

「お前からもルーナァに言ってやってくれないか?大事な時だから休めって言ってんのに聞かなくてよ」

『もう言った、そしたらアイツ鬼の形相で『じゃあなたがメイド仕事するの?』って言われちまった』

「相変わらず頑固だな」

木こり達が目標数の木をおおかた切り倒して、トレーラーに積み終えた。

『団長、目標数の伐採が終了しました』

「了解、それじゃあみんな、撤収準備にはいってくれ」

憲兵団員の報告と共にアストンが撤収命令をした、そのときだった。

ヴィーーー!!

コックピットのレーダーに反応。ここから北東30m先の方角に複数の熱源反応をキャッチ、熱源マークが複数、消えそうな小さなマークを追っているように見える。

『なぁディマ……デカいほうは間違いなく小型機巧コンパクトギアだよな?けどこのちっこい熱源反応って、もしかして」

「もしかしなくてもそうだ!人が追われてるんだよ!」


◇ 


70mm機関砲と爆撃砲ランチャーを装備したキャタピラ式小型機巧コンパクトギアビグィ、総勢6機が一人の人間を追っていた。

女だ、年は恐らく17歳前後、ボロボロの着たきたラベンダーの花のような薄紫のような銀髪の美しい……

いや、『美しい』なんて言葉では言い表せない、この世のものとは思えない美貌を少女は持っており、そんな彼女を追っているのは髑髏のマークがついた機体。ここら辺を拠点としている山賊の機体だ。

奴らがなぜ彼女を追っているのかは分からないし、彼女自身も、なぜ自分が追われているのかは分からない。ただ、捕まったらただでは済まない事だけは分かる。

彼女は走った、裸足であることも気にせずただひたすらに走り続けた、けどもう体力の限界だ、足も赤を通り越して青くなってきた。
少女は雪に覆われた地面に身を任せるかのように倒れこんだ。

(……私…このままどうなっちゃうのかな?……)

目から一滴の涙を流す少女の周辺に山賊のビクィが集まってくる。

『鬼ごっこはもう終わりか?ったく手こずらせやがって』

山賊の一人が少女の元へ行き、捕縛するため、機体のコックピットハッチを開けた。機体から降りた山賊は少女の元へ行き、

「オラ立てよ」

長い銀髪の髪を掴み、強く引っ張る。そんな時だった。

バン!!ドガァァァン!!

山賊の乗るビクィの一機が、どこからともなく撃たれたグレネード弾により爆散した。

『なっなんだ!?』『どこから撃ってきやがった!?』

そして、グレネード弾を撃ってきた南東の方角から、

「アストン!援護頼む!」

ディマの乗るアントラァが頭部の機関砲を発砲しながら山賊のビクィに接近戦を仕掛ける。

アントラァの機関砲から発射される装甲貫通弾がビクィのコックピットブロックを貫き、中にいるパイロットもろとも爆散させていく。残りは三機。

対するビクィ三機もランチャーと機関砲と爆撃砲をディマの乗るアントラァに向けて発砲するも、ディマは自身の優れた操縦技術を駆使しながら操縦桿を操作し、弾丸とグレネードの雨を軽々と避けながら、残りの三機に接近。

背中にオプションパーツとして装備している6m超振動カッターを展開、機体を時計回りに回転させながら三機を一機ずつ一刀両断する。

残るは、コックピットを降りた山賊一人、

「おっおい!っそ、それ以上近づくな!この女が」バン!!

腰のナイフを取り出し少女の喉元に刃を向けようとしたその時、山賊の最後の一人は、あとから来たアントラァ一号機のパイロットである赤毛の短髪の無精髭の青年、アストンにライフル銃で脳天を射抜かれ、絶命した。
「おい、おせぇぞアストン!俺一人で片が付いちまったぞ」

「おめぇが早すぎんだよ!それよりその娘を!」

ディマはアントラァのコックピットハッチを開き、少女の元へ駆けつけ、抱きかかえる。

両手両足は凍傷で完全に青くなっている。このままじゃ細胞が壊死してしまう。

「アストン!!ギリコ先生に連絡して湯とメディカルポットの用意をさせろ!!凍傷が激しい!!このまま間に合わなきゃ切断だぞ!!」

ディマは少女を抱きかかえながら、急いでコックピットに乗り込み、全速力で街の方角で駆け抜けた。

「こりゃ一刻を争うな」

アストンはコックピットに戻り、無線で街で唯一の病院、そこの最高医であるギリコ・ハスターに連絡を取ったのだ。



山岳地帯の奥の奥にある大きな滝、その下に位置する巨大な洞窟に偽装するかのようにその地下シェルター内の街はあった。

バンバラの街は数百年以上前、ギルヴァレス帝国との戦争に敗れ、セルゲント連合王国に亡命したアルティリシア共和国の人間を保護するために作られた行政特区である。
ここを管理していた大公貴族であった初代スターク卿は、街の住人たちとなる亡命者たちのために街の発展に全力を尽くしたそうだ。
王都から優れた人材たちを集め、地下水を利用した水道処理所、地熱を利用した火力発電所などの数多くの様々なインフラを整え、独自の農法を用いた農業施設や地下鉄道などが盛んとなり、現在では、王都に引けを取らない

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