重機巧セインレイヴ

白銀アイネス

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第一話 ラベンダー髪の少女

不穏な動き

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辺境の森をディマの乗るアントラァが、林を避けながらバンバラの街の門まで全速力で駆け抜ける。

そして、ついに街の入り口である滝下にある巨大な洞窟に偽装したゲートに到着する。

『IDの確認を』

ゲートのセキュリティシステムの音声ガイダンスがIDの提示を要求してきた。

ディマはアントラァのコックピットハッチを開き、機体から顔を出し、するとゲートの上部にある認証スキャナーがレーザーを放ち、ディマの身体を識別していき、

『住民No.O-7813、領主、ディミトリ・スターク様と認証、どうぞお通りください』

目の前の人物をディマと認証しシステムはゲートを開け始める。

再びコックピット内に戻ったディマは機体を操作し、奥にある第二ゲートまで向かう。

そこでは、数名の門番が見張っており、たとえ領主といえど、手順を踏まなければ通ることはできない。

そういう風にディマよりも以前の領主が決めたことなのだから。

「おかえりなさいませディミトリ様、すみませんが最終審査を」「ごたごたはいいからさっさと済ませてくれ!!、こっちは一刻を争うんだ!」

そして、再び機体から降りたディマに門番は声紋、指紋、ボディチェックを済ませる。

「最終審査を終了しました、お通りください」

審査を済ませたディマは人が入れる小型ゲートが開いた瞬間、コックピットから先ほど保護した少女を抱きかかえる。

「悪いけど、機体を戻しておいてくれ!!」

「あの、ディミトリ様、その者はいったい?」

「怪我人だ!!早く治療しないとやばい!!ギリコ先生近くまで来てるか!?」

「そうでしたか!基地内まで救護キャラバンで来てます!」

「ご苦労さん!」とディマは全力で少女を抱きかかえ走り去った。

ゲートの向こうはバンバラの街の憲兵団の軍事基地内の機体格納庫になっており、無数の小型機巧コンパクトギアであるアントラァのほかにバンバラの街の高価で貴重な戦力、

全長15~18mの人型機動兵器重機巧オーバーギア

セルゲント連合王国軍でも正式採用されている主力量産機ドグランが5機、



そして、その横には現在そのドグランの一機を改修中の機体、ドグランアサルトカスタム、

またの名をドグラージャが骨格がむき出しのまま、ドッキングクランプで固定されていた。

そして、その傍らには、救護キャラバンの横にいる白衣を着た初老の男性、街唯一の病院を経営している最高医、ギリコ・ハスターがストレッチャーをスタンバイしていた。

「おぉ!!ディマ坊!!こっちじゃ!!」

「ギリコ先生!!準備は!?」

「ばっちりじゃ!そこに寝かせろ!」

ディマは少女をストレッチャーに衝撃を与えないようにゆっくり寝かせた。

「先生、容体は?」

「両手足の凍傷が激しい、こっちも全力を尽くしてみるが、今は何とも言えん」

「わかった、最善を尽くしてくれ」

「わかった」とギリコは少女を乗せたストレッチャーをキャラバンに乗せると、そのまま病院までキャラバンを走らせ、その場を去っていった。

(……今は無事に完治することを祈るしかないか…)

走り去るキャラバンを見つめながら、とりあえず自分にできることはやり切ったと一息入れる。

それにしても、

「……きれいな娘だったな…」

最初に見かけたとき、凍傷ばかり気になっていたが、改めて思い返すとなかなかの、いや、この町の色町のキャバレーにもあれほどの美人はどこにもいないほど、美しい顔立ちをしていた。

大方狙われていたのも人身売買目的に違いないと思うが、なぜだかこのままじゃ終わらないような気がしてならないディマだった。



惑星ゴドンから遠く離れた宇宙域、無数の小惑星アステロイドが宙域内で散りばめられたかのように浮かぶ中、一隻の宇宙船、もとい宇宙航行用の戦艦が航行していた。

右舷の甲板に大きく旧ナチスドイツの紋章が付いた、ギルヴァレス銀河帝国第七宇宙艦隊所属のタイタニア級宇宙航行戦艦グリゴォール。

そのブリッジには、総舵手とオペレーターが数名、そして、真ん中の艦長席に座っている旧ナチスドイツの紋章の入った軍服を着た艦長らしき男が目の前のモニター越しにある人物と通信していた。

「それで、ターゲットはまだ捕まえていないと?」

男が通信している人物は、惑星ゴドンの山岳地帯を根城にしている山賊の頭である。

『あぁ、いいわけじゃあねぇが、残骸に残ってたレコーダーの映像によれば、小型機巧コンパクトギア一機にやられちまった』

「…君たちにはそれ相応の報酬額の前金を支払ったのに…それは冗談のつもりか?」

『うそじゃねぇ!!だったらテメェの目で確認しろってんだ!』

頭は舌打ちをしながらとある映像を送信した。

そこには、山賊たちのビクィ数機をたった一機のアントラァが殲滅する映像、、男はそれを見つめ、興味深そうな恍惚な表情を浮かべる。

「なるほど、君たちの言い分は分かった、約束通り残りの金額は払おう」

『けっ、そうしてもらうとありがたいね、なんせこっちは仲間の何割かを失ったんだからなぁ』

嫌味なように言う頭の男は、ある取引を持ち掛ける。

「それとは別に、我々の装備を君たちに与えよう、それで今度こそ捕縛に成功した場合、今回の額の倍支払う、どうだね?」

『………』

「もちろん、それで君の仲間が死亡した場合手当を追加する、悪い取引じゃないだろう?」

『……仰せのままに、ギルシュテッド・アルヴァーレ殿

ニヒルに笑いながら頭は通信を遮断する。

先ほど通信した金髪の将校の軍服を着た青年、ギルシュテッド・アルヴァーレ。

ギルヴァレス銀河帝国軍の軍人、階級は特務大尉、軍内部でも一際目を置かれている優秀な人物である。

「大尉、あのような者に我々の装備を提供してよろしいのですか?」

横から、眼鏡をかけた女性将校、ギルシュテッドの副官であるライザリット・シルファレンが声をかける。

「なに、渡すと言っても廃棄寸前の旧式ジェクスだ、新型ウルガルを渡すわけじゃない、少なくとも連合王国のドグランハリボテよりはいい戦力になるだろ」

ギルシュテッドは席の端末で整備班に装備の一式を用意するように促す。

(しかし、ビクィ数機を屠ったあのアントラァの家紋…あれは確かスターク卿の…)

ギルシュテッドが思い浮かべるのは、昔世話になった恩人、数年前に亡くなっていたとは聞いたが、それなら今はその息子が領主となっていたはず。

(…調べてみるか…)


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