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第三章

110ー出発

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「レオン」
「はい、公爵なんでしょう?」
「危険な事に巻き込んですまない」
「何を仰るんですか」
「レオン殿下、ルルとの婚約発表パーティーも延びてしまって」
「先日、父には文を送りました。ケイが届けてくれるので、もう既に手元に届いているかと。私はこの地でルルと一緒に生きていくつもりです。お気遣いなさらないで下さい。父にもそう書きました」
「レオン殿下、有難う御座います。帝国の父に打診された殿下との婚約でしたが、本当に心から殿下で良かったと思いますわ」
「ああ、ルルを頼む。無事に帰ってきてくれ」
「はい、勿論です」

 やだわ、本当に皇子様みたい。

「ルル、本当に皇子なんだよ」

 そうでした。また心を読まれたわ。

「ルル、ディアナが呼んでたわ」
「お母様、ディアナですか?」
「ええ、出発までに来てほしいそうよ」
「分かりました。この後行ってみます」
「わふ」
「ルビも行くのー」
「ピ!」
「俺も行くぞ」

 はいはい、皆で行きましょう。遠足を引率している先生て、こんな気分なのかしら?

「ラウ、ジュード、セイバーはどうするんだ?」
「はい父上。リルとノトス、隊員各10名連れて行きます。このメンバーも、剣と武装が新しくなったので皆張り切ってます」
「そうか。剣と武装はよく間に合ったな」
「父上、俺達が王都に行ってる間に作ってくれていたみたいです」
「そうか、ジュード。そう言えばジュノー嬢とはどうなった?」
「いや、父上。今はタイミングが違いますよ」
「?」
「父上、ですからジュードが今回無事に帰ってきたら聞いてあげて下さい」
「ラウ! 何を言う! お前達は全員無事に帰ってくるに決まっているだろう。セイバーも全員だ」
「当然ですよ。嫌ですわ、ラウ兄様」
「え? ルル、そんな感じなのか?」
「ラウ兄様、そんな感じて何です?」
「モモ?」
「わふっ」
「兄貴、無駄だ。ルルだから」
「そうだな」

 何それ? 久しぶりにディスられてる気がするわ。
 さて、ディアナの研究室に来てます。

「ルル様!」

 はい、ディアナに抱きつかれてますよ。

「ウッ!」

 苦しい……!

「姉様、力加減を!」
「ああ、ごめんなさい」

 ふぅ、離してくれたわ。

「ルル様、これを持って行って下さい。無限収納なら邪魔になりませんよね?」

 ドンッ! とディアナが沢山のポーション類を出しました。

「ディアナどうしたの? これ。」
「昨日から頑張って作りました!」

 ええっ! この量を?

「ディアナ、寝た? 寝てないでしょう?」
「大丈夫です! これから寝ます!」
「スゲーな! ハイポーションにフルポーション、毒消しに、MPポーションまであるぞ」
「ルル様が薬草を沢山採取してきて下さったからこそ、作れたんです。これで大抵の事は何とかなりますわ!」
「ディアナ、有難う」

 なんか皆テンションがおかしいわ。ドラゴン相手だからだろうけど。

「有り難く持って行くわね」

 シュン! と無限収納に入れる。

「でもね、ディアナ。大丈夫よ。心配しないで。ユリウスも一緒だし」
「兄様も行くんですか? いつも兄様ばかりズルイわ!」
「姉様、落ち着いて」
「リアンカ! あなたもそう思わない!? 思うでしょ!?」

 あー、しまったわ。ユリウスの名前出さなきゃヨカッタ。

「リアンカ、行くわよ。レオン様行きましょう。ディアナ、じゃあまたね。帰ってきたら顔出すわ」
「ルル、いいのか?」
「レオン様、いいのよ」
「ルル様すみません。姉がまた…… 」
「いいのよ、慣れてるわ」
「?」
「レオン殿下、姉はルル様の事が好き過ぎて時々暴走するんです」
「あー、そんな感じ?」
「はい。そんな感じです」

 その日は平和に過ぎて行き、ドラゴンと会う為に出発する日になりました。朝からイワカムに食料を貰い、朝食を食べて部屋に戻りました。

「ルル様、武装に着替えますか?」
「ええ、リアンカそうするわ」

 バロールに作ってもらった武装に着替え、リアンカに髪を纏めてもらい、帯剣して準備完了です。

「ルル様、無事のお帰りをお待ちしてます」
「リアンカ、大丈夫よ。心配しないで待っててね」
「わふっ」
「大丈夫なの」
「ピー!」
「モモちゃんもルビちゃんもピアちゃんも無事に帰ってきてね」

 やだなぁ、皆んな大袈裟だわ。戦うと決まった訳じゃないんだから。

「わふっ。そうね」

 ね、モモさん。

「わふ」
「さ、行きましょう」

 お邸を出ると、前庭にもうセイバーが集まっていました。

「リル、ノトス。皆新しい武装が似合ってるわね。カッコいいわ!」
「「ルル様」」
「有難うございます。俺達もミスリルの剣もらいました!」
「ノトス良かったわね!」
「此処にいる隊員は全員ミスリルの剣です!」
「リル、凄いじゃない!?」
「はい!」
「皆、試したくてウズウズしてますよ!」
「でも皆、調子に乗って怪我しないでね。ディアナからポーション類を沢山預かっているから何かあったら直ぐに私の所に来てちょうだいね」
「「はい!」」

 セイバーの隊服は代々シルバーです。襟のラインの数でランクが分かります。リルとノトスは副隊長なので、同じシルバーでも濃いグレーぽいシルバーです。二人だけマントがあります。こうして整列してるとカッコいいわ!

「皆、揃ったか?」

 お父様が出てきました。後ろにお母様とラウ兄様、ジュード兄様がいます。レオン様はいつの間にか私の横にいました。ピアを肩に乗せて。
 ピアはケイに「頭に乗るものではありません」と、叱られてから肩に乗る様になりました。よっぽど怖かったのね。ドラゴンに怖がられるケイてどうなの?
 皆、新しい武装が良く似合ってます。ラウ兄様もジュード兄様もカッコいい!

「ルル、俺は?」
「勿論、カッコいいですよ」
「だろ? 惚れなおした? ん?」

 はいはい。

「皆、準備はいいか!? 気を引き締めて臨んでくれ! いいか! 必ず一人も欠ける事なく全員無事に帰って来てくれ! 絶対に無茶をするな! 健闘を祈る!」
「「はッ!」」

 セイバーが揃って手を胸に当てます。敬礼みたいなもんね。カッコいい!

「わふ……」

 何よ、モモちゃん。だってカッコいいでしょ?

「わふぅ……」

 呆れないで、モモちゃん!

「では、出発する! 全員騎乗!」

 ラウ兄様の号令で出発です。
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