BL小説に転生なんて誰か嘘だと言ってください!

ぴえろん

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第2話「目が覚めたら全然望んでいない世界だった」

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「・・・さ・・・・ま・・・・」


声が聞こえる。誰だろう。


「・・・様・・・・・様!!」


うるさいなあ。もう、まだ眠っていたいのに。

どうしてゆっくり寝かせてくれないの。私、事故に遭ったばかりで・・・。

ん?事故・・・?

そうだ!・・・事故!!私、生きてるの!?!?


がばっと飛び起きる。

私の目に飛び込んできたのは、白い綺麗なシーツと、金色の刺繍を誂えた、ふわふわで肌触り抜群の布団。


そして。


「奥様!ようやくお目覚めになられましたね!」



私の事を「奥様」と呼ぶ、赤毛でメイド服を着た女の子。


「ここは一体・・・?貴女は誰?」


私がそう聞くと、目の前の赤毛の女の子の顔が瞬く間に真っ青になっていった。


「奥様・・・・ショックで記憶が無くなってしまわれたのですか・・・!?

だ、旦那様に報告をしないとッ・・・!」


赤毛の女の子は青ざめた顔のまま、部屋を勢い良く飛び出て行った。


全く理解が追い付かない私は、ただただ混乱するしかない。


ショックで記憶が?いや、私は事故前後の記憶も含めてしっかり色々覚えているけれど。

というか、あの子、私の事を奥様なんて呼んでいたけど、誰かと勘違いしているの?


辺りをキョロキョロと見回してみる。


私が今いる部屋は、どう見ても病室ではなさそうだ。

床には高そうな絨毯が敷かれ、配置されている家具には黄金の装飾が施されている。


ここは一体どこなの?

ベットから降りて、部屋の中を歩く。

部屋の片隅には立派な姿見があり、目の前に立つと私の姿が映し出された。

映し出された・・・はずなのだが、その姿はどう見ても自分では無かった。


「え・・・だ、誰・・・?」




震える手で自分の頬を触る。

鏡に映る自分も、同じように頬を触った。

桃色の長い髪に、さくらんぼのようなチェリーレッド色の瞳。

みずみずしい白い肌には、目の下にいつもぶら下がっている青い隈も、目元の皴さえ見当たらない。

そして、極めつけに整った顔立ち。


私じゃない・・・!どう見ても疲れ切った30歳の私の顔じゃない・・・!


どういうこと!?

鏡の前で立ち尽くし、混乱に陥る中、突然後ろから。


バァンッ!!


扉が乱暴に開かれる音がした。

「アレシア。記憶が無いというのは本当か?」


開け放たれた扉から入って来たのは、紫がかった暗い髪を腰辺りまで伸ばした若い男だった。


「アレシア・・・?」


私がそう聞き返すと、男はさも不快そうに顔を歪めた。


「どうせとぼけているだけなんだろう。
リチャードばかり構う私の気を惹きたいがために記憶を失くした演技をしているのなら、無駄だから今すぐ辞めろ。」



偉そうに発言する男に、私も少しムッとしてしまう。

だけど、この男の顔。どこかで見たような気がしてならない。


褐色の肌に、紫がかった暗い色の長い髪、そして力強いエメラルドグリーンのその瞳。

見覚えがある・・・・だけど、どこで見たのか思い出せない。

明らかに日本人の顔立ちではないから、昔の知人とかでもなさそうだし・・・。


相手の顔をまじまじと見て思考を巡らせていると、突然。


「ヘリオス様・・・!アレシア様は大丈夫ですか・・・?」


少年のような、男にしては少し甲高い声が聞こえてきた。

視線を向けると、男の後ろに隠れるようにしてこちらを伺う青年が見えた。


「リチャード、どうしたのだ?部屋で待っていろと言っただろう。」


男は私に話しかける声とは打って変わって、とても優しい口調でその青年に声を掛けた。

あまりにも私とは違いすぎる対応に、開いた口が塞がらない。

ヘリオスと呼ばれたこの男は、人に対してこんなに優しく接することもできるのね。


そこまで考えて、ハッとする。


ちょっと待って。なんだかどこかで聞いたことが有る名前だ。

ヘリオス・・・?それにリチャード?

頭の中で言葉の響きを繰り返すうちに、すこしづつ、とある記憶がよみがえってくる。


嫌な予感とともに、リチャードと呼ばれた青年の顔を確認した。



柔らかそうで、少しくすんだ金色の髪、ぱっちりと大きな青い瞳。
女の子のように白い肌。


こ、これは・・・・!も、もしかして・・・!?



私はその時になってやっと、目の前の不快な態度を取る男に見覚えがある理由を悟った。


間違いない。目の前にいるこの二人は、とある小説の挿絵で見た二人にそっくりなのだ。


高校時代、夢中になって読んでいた、「貪り合う欲望の薔薇」という、18禁BL小説の挿絵に・・・・。



と言う事は、ここはもしかして・・・。

ようやく頭が理解してくる。

私は死ぬ直前に聞こえてきた声に導かれるまま、転生したいと願った。

もし、あれが幻聴で無かったとしたら。現実に起こった出来事だとしたら。

私は今あの声の言う通り転生していて、そしてその転生先の世界って言うのは・・・・。


目の前が真っ暗になる。どうしてこんな事になるの。よりによってこの私が・・・。


あまりのショックに、私はその時もう一度気を失ってしまった。





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