乙女ゲームのヒロインですが、推しはサブキャラ暗殺者

きゃる

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第四章 残酷な組織のテーゼ

連絡役は誰?

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「クラリス?」

 戸口にいた彼女の目は異様に光り、アルバーノにのみ焦点を当てている。
 次の瞬間、パタンと扉が閉じられた。

 私は慌てて走り寄る。

「どういうこと? ねえ、用事があるんじゃなかったの? クラリスってば!」

 取っ手をガチャガチャ揺らすけど、全く開かない。
 防音完備のせいなのか、扉一枚へだてると音がしなかった。

「アルバーノ、今すぐここを開けて! なかなか開かないなんて、とんでもない作りだわ」

 不平をらすと、アルバーノが肩をすくめた。
 開けてくれると思いきや、彼はその場を動かない。

「ちょっと、アルバーノ! 聞こえているでしょう? 私をここから出しなさいっ」

 ところが彼は、薄ら笑いを浮かべている。

 ――――何かがおかしい。

 不安を感じた私は、取っ手を揺らす手をとめた。

「もしかして、二人で何かたくらんでいる?」

 クラリスが、なぜか私を置き去りにした。
 そして、挙動不審きょどうふしんなアルバーノ。
 先日のルシウスへの態度に腹を立てたクラリスが、私を懲らしめるようアルバーノに頼んだとしたら?

「企むなんて人聞きの悪い。クラリス嬢はあなたがルシウス殿下を選ぶよう、この私に説得してほしいそうですよ。健気けなげですね」
「嘘よ!」

 アルバーノは、ゲームの中ではヘルプ係――つまり指南役。だけどヒロインの問いに答える程度で、望まぬ相手を薦めたりしない。
 クラリスもルシウスに憧れているので、推しと私をくっつけることはしないはず。

「嘘ではありません。本当ですよ」
「そんな……」

 まさかクラリスは、ルシウスのために自ら身を引こうとしているの? 私と一緒になれば、彼が幸せになれると考えて?

「クラリス」

 彼女の気持ちを思うと、胸が痛い。
 私もつい先ほどまで、好きだからこそ想いを諦めようとしていたから。
 
「ですが私は、あなたを説得するつもりはありませんよ」
「……え?」

 目を丸くした私の前で、アルバーノがガスマスクのようなものを装着した。次いで素早い動きで、机の上のウサギ型ロボット『わか~るくん』を操作する。

「なっ……」

 なんと、ウサギの口からけむりが噴射され、部屋に煙が充満する。

 慌てて手で口を覆ったものの、間に合わない!
 強烈な眠気は耐えがたく、私は床に崩れ落ちた。

「くくくっ。カトリーナ様、ごゆっくりお休みください。起きた時には、私が邪魔者を排除し終えた後ですよ。お楽しみ……」

 のどの奥で笑ったアルバーノ。
 その声を最後まで聞くことなく、私は深い眠りに沈んでいった。



  *****



 ガキイィィン、キンキン、キイィィン!

 近くで金属音が聞こえる。
 鋭くリズミカルで、騎士の手合わせの音に似ているような。

 違和感を覚えた私は、眠い目をこすった。
 そして、だるさの残る身体を無理に起こす。

「ここは……?」

 知らないベッドの上にいて、ドレスは着たままだ。
 石の天井に木のはりと質素な造りの石壁は、優雅さよりも機能性を重視しているみたい。

「ここは……研究塔?」

 覚醒かくせいした私は、転がるようにベッドを降りた。近くの壁に手を伸ばし、ふらつく身体を支える。

「まさかまだ、アルバーノの研究室にいるの?」

 隣に続くドアを開けた途端、瞳に異様な光景が映り込む。

「あれは……」

 クロム様がナイフを構え、仮面の男と戦っている!

 短剣を持った仮面の男は、黄土おうど色の胴衣に白色のズボンという服装だ。仮面といっても、カーニバルで見る目だけを覆うタイプで、紫色に金色の縁飾りが付いている。

「視界が狭いはずなのに、動きが早いわ」

 仮面の男は黒のナイフを持ったクロム様をものともせず、互角の戦いを繰り広げていた。

「誰なの?」
「カトリーナか。無事で良かった。ここは危ない、逃げてくれ!」

 黒一色のクロム様が怒鳴った。
 こっちに気を取られたすきに、仮面男が斬りつける。

「危ないっ」
「くっ……」
「よそ見をしている場合ですか? お前さえいなければ、カトリーナ様は……」

 仮面男の声を聞き、突如ひらめく。

 クロム様の偽の肩書きは、セイボリー王国出身の教師。
 これまでセイボリー王国に滞在していた人で、ハーヴィーと仲が良く、彼に意見できる人がいる。その人はこうして、個室も持っていた。

「アルバーノ!!」 

 彼がさっきまで羽織はおっていた灰色のローブは床に落ちている。戦闘の邪魔になると、脱ぎ捨てたものらしい。

「カトリーナ様、声だけで私がわかるなんて。やはり、あなたも私を……」

 ――ん? 感激したような響きだけど、全然違うから。

「組織の連絡役は、アルバーノ。あなただったのね!」
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