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3 依頼を受ける
19 名前の意味
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何とかボアを倒すことが出来た僕達だが、残念なことにその素材をすべて回収することは事実上不可能である。
道具がないということもあるが、何せすでに荷物は弟切草でいっぱいだ。荷物を増やせば増やすほど街に帰るのは困難になる。
「だけど、弟切草なんかより、ボアの素材は遥かに高価だと思うよ。絶対、持って帰った方がいい」
ウィークがそう提案する。
僕も一応はボアを狩ったことがある身だ。相場までとは言わなくとも、高価で取引されていることは重々理解している。しているのだが――
「依頼を反故にすることは出来ません」
信頼はお金に勝る。
信頼されなければ仕事は手に入らないし、仕事が手に入らなければお金も手に入らない。信頼があればお金がなくともどうにかなることもあるが、信頼がなければお金があってもどうにもならないこともある。
今の僕にとって重要なことは、犬種の信用性を失わないこと。犬種は仕事をきちんとやってのけるという信用だ。お金が欲しくないと言えば嘘になるし、欲しいに決まっている。だけどそれは今である必要性はない。
しかし、それは僕の事情で、ウィークには何の関係もないことだ。
「そうだね。お姉ちゃんに迷惑かけるし」
思いのほかウィークは聞き分けがよかった。というより、ボアと戦っていた時よりもずいぶんと聞き分けがいい。
僕にとってはその方がいいのだけれど、なんだが気持ちが悪い。
余計なことを言って変な気でも起こされたら面倒だし、そのことに対しては何も言わないことにする。
「では、帰りますか」
投げ飛ばした短刀を回収して、乱れた服を整える。
こんなところで時間をつぶして、また魔物に襲われたら笑い話にもならない。出来る限り早めに家に帰りたいし、出来ることならシャワーを浴びたい。
それなのにウィークはボアの死体ばかりを気にしている。
「……肉や皮は無理でも、牙は持って帰らない?」
せっかく倒したボアから何も持って帰らないというのは確かに惜しい。ハンティングトロフィーとして持って帰らせてあげたいたいのはやまやまだが、牙をはぎ取るための道具は僕の折れた短刀ぐらいしかない。
折れた短刀ではぎ取るにはかなりの時間を要することだろう。
「申し訳ないですが、時間が――」
「――ボアの牙は薬として高額だってお姉ちゃんが……」
「そうだとしても、剥ぎ取るのは無理でしょう?」
彼女に解体の知識があるとは思えないし、道具がないわけでどうしようもない。頭を丸ごと持って帰ればどうにかなる可能性がなくもないが、そうなると次は頭を引きちぎるための道具が必要になる。
考えるだけ時間の無駄だ。申し訳ないけれど、あきらめてもらうほかないだろう。
「わかった。あきらめる」
ウィークは不服そうに頬を膨らませている。
最初からわかっていたことだが、ボアを倒すことは単なる徒労に過ぎない。いくら相手が魔物だったとはいえ、こんな山奥で静かに暮らしていた存在だ。何も取らずに帰るのは罪悪感すらある。
「お願いします」
僕は力なく頭を下げた。
少女に対して申し訳なく思ったということもあったが、それ以上にボアに対する謝罪の意味が大きかったと思う。
そんなことがあったからだろう、帰り道は嫌に静かだった。
僕もウィークもお互いに何かを話すということはなく、行よりも早く移動することが出来た。――街に帰ってからもウィークは一言も話さない。ただすれ違う人たちの視線は痛かったし、僕たちが静かであっても街の人たちが何かを騒いでいたからそれほど気にもならなかった。
結局のところ、役所につくまで僕とウィークは一言も話さなかった。
――役所に入るなりお姉さんが僕たちを見つけて駆け寄ってくる。
「早かったですね! ってどうしたのですか、その怪我!?」
お姉さんの気遣いはありがたいが、幸いなことに僕たちは大した怪我を負っていない。ただ気持ち悪いぐらいに体にボアの血を浴びていたから、それをお姉さんは怪我をしたと勘違いしたのだろう。
「怪我じゃない。ただの返り血」
早とちりするお姉さんの言葉をウィークはすぐに訂正した。
「なんだ。そうなんだぁ。驚かせないでよ……え、返り血?」
「そうなのですよ。いろいろ大変でしたよ。本当に……それより、とってきましたよ、弟切草!」
いろんな意味で驚いているお姉さんを誤魔化すために、僕は必死に話題を別に移す。
情けない話はあまりしたくないからね。
「ああ、はい。確かに弟切草ですね! これで依頼は達成です。それより、その血……できれば落としてから入ってほしいのですが……」
お姉さんは依頼達成を喜ぶのと同時に、僕たちにまとわりついた血を見て申し訳なさそうに言った。
もともとボロボロの役所に、いまさら血がこびりついたところでなんら問題はないと思うが、確かに気持ち悪いし僕自身、血を落としておきたい。
「そうですね。ですが僕は代わりの服も持っていませんし、お風呂なんて入るお金は持ち合わせていません」
食費を抜けばほとんど無一文みたいな僕だ。服を複数枚買う余裕もなければ、お風呂やに行くために使えるお金はない。
「問題ない。私達冒険者は、公共の施設を無料で利用できる権利があるからね」
そう言って、ウィークが指差したのは入口横の壁に貼り付けられている施設案内、その中にあるシャワールームの文字だ。
役所にシャワールームがあるとは何とも斬新だ。これも冒険者なんて者達を雇うために生まれた僕の世界との違いというやつなのだろう。だがそれは僕にとっては非常にありがたい斬新さだ。――流石にイチゴのところで風呂に入れてもらうわけにはいかないからな。
それで一つ問題が解決したとしよう。だけど問題はある。
「それはよかった。ですが体を洗っても、また同じ服を着なくてはいけないので……」
「それも問題ありませんよ、ケンさん。冒険者の方々への援助は惜しむなと、所長からお達しが出ておりますので……代わりの服はこちらで用意させていただきます」
今度はお姉さんが僕の疑問を解消してくれる。
冒険者は最底辺の職業だと聞いていたが、まさに至れり尽くせりじゃないか。まあ命を懸けているのだからこれぐらい当たり前か。不遇すれば逃げ出すものもいるだろうしね。
――耳と尻尾の洗い方はよくわからなかったけど、久しぶりに浴びたシャワーはとても気持ちよかった。
その辺のインフラは村にいた時よりも、はるかにきちんと整備されているようで水はむらなく出ていたし、以前の世界で使われていたガスのような資源があるのか、温かいお湯でシャワーに対する不満は一切なかった。シャワーに対する不安はだ。
「もらっておいてなんですが、なんですかこのTシャツ!?」
町の名前とそれに続く『役所』の文字がでかでかと記載されている。こんなものを着て外を歩けば、間違いなく後ろ指差されるだろう。
それなのに、お姉さんはニコニコと笑って「お似合いですよ」なんて言っている。
いやいや、似合っているわけがないじゃないか。というか似合う人いないって、これは!
「どうでもいいじゃない。そんなこと」
ウィークはそう言ったが、そんなことを言えるのは、女性用の支給服が男物とはまるで違うからだろう。
女性用は余計な印字はなく、まとも服とズボンだ。なんなら生地もまるで違う。男物は薄っぺらで、寒々しい素材なのに対して、女性物は高級そうでいかにもあたたかそうだ。おそらく、所長というやつはかなりの女性贔屓なのだろう。――きっと女たらしだ。そうであるに違いない。
「わかりました。せっかくいただいたものですし、ありがたく使わせてもらうことにはします!」
これ以上文句を言っても待遇は変わらないだろうし時間の無駄だ。それよりも、報酬の話をする方がよっぽど有意義だろう。一瞬でも冒険者として一生働いてもいいかもなんて思った僕が馬鹿だった。やっぱり、危険で不毛な職業は一刻も早くやめて、悠々自適に生きるすべを探ることにしよう。
今はそのために耐える時だ。妹のためにも。
「それでは報酬をお渡しいたします……と言いたいところなのですが、その前に一つだけ確認させていただいてよろしいですか?」
よろしくないです……と言いたいところだが、ちょうど僕の方でも確認したい事はあった。
「はいどうぞ」
「ウィーク。妹はどうでした?」
予想通りの質問がお姉さんの口からこぼれ出た。
それに対する答えとして、『全然役に立ちませんでした。それどころか、余計なことをしてくれましたよ』なんてことを口にしてしまうのは簡単だ。だがそれでは僕に対するお姉さんの好感度は落ちることだろう。役に立たなかったとはいえ、最後には助けてももらえたし、あまりひどいことは言わないでおこう。
「それが――」
「――お姉ちゃん。私初めて誰かの前でまともにクラフトの弾を当てられたよ!」
僕の言葉に完全にかぶせるようにウィークが話してしまったから、僕の声は完全にかき消されてしまった。
弾を1発、奇跡的にあてられただけだというのに、いやにはしゃいでいる。よくそれで中級冒険者になれたものだ。
「それは本当に!?」
お姉さんはずっと開いているのか、閉じているのか、わからないぐらいに細かった目を見開いている。それほど衝撃的なことだったのだろう。
なんなら、ほかの役人たちも立ち上がってこちらを見ているほどだ。中には「嘘だろ!?」「ありえない!?」「槍でも降ってくるんじゃないか……?」なんてことを言っている人もいた。
どれだけ彼女の腕を低く見積もっているのやら……これじゃあ、いつまでたっても彼女が成長しない理由もよくわかる。誰も信じてやらないから成長しなかったのだ。――僕が言えたことじゃないけどね。
「うん」
「人と関わるのが苦手だからって、ソロで剣士として冒険していたけど、それじゃあ全然魔物が倒せないからって、仲間たちと組むためにひと月前にクラフトを使うようになって、ようやく弾が当たって喜んでいたけど、いざ誰かに見られながら撃ってみればまるで弾が当たらなくて、街の人達から弱い灰色なんて呼ばれて泣いていたあなたがねぇ……」
お姉さんは感慨深そうな表情を浮かべながら、ものすごく説明口調で時折、僕の方を見ながらそんなことを口走った。
道具がないということもあるが、何せすでに荷物は弟切草でいっぱいだ。荷物を増やせば増やすほど街に帰るのは困難になる。
「だけど、弟切草なんかより、ボアの素材は遥かに高価だと思うよ。絶対、持って帰った方がいい」
ウィークがそう提案する。
僕も一応はボアを狩ったことがある身だ。相場までとは言わなくとも、高価で取引されていることは重々理解している。しているのだが――
「依頼を反故にすることは出来ません」
信頼はお金に勝る。
信頼されなければ仕事は手に入らないし、仕事が手に入らなければお金も手に入らない。信頼があればお金がなくともどうにかなることもあるが、信頼がなければお金があってもどうにもならないこともある。
今の僕にとって重要なことは、犬種の信用性を失わないこと。犬種は仕事をきちんとやってのけるという信用だ。お金が欲しくないと言えば嘘になるし、欲しいに決まっている。だけどそれは今である必要性はない。
しかし、それは僕の事情で、ウィークには何の関係もないことだ。
「そうだね。お姉ちゃんに迷惑かけるし」
思いのほかウィークは聞き分けがよかった。というより、ボアと戦っていた時よりもずいぶんと聞き分けがいい。
僕にとってはその方がいいのだけれど、なんだが気持ちが悪い。
余計なことを言って変な気でも起こされたら面倒だし、そのことに対しては何も言わないことにする。
「では、帰りますか」
投げ飛ばした短刀を回収して、乱れた服を整える。
こんなところで時間をつぶして、また魔物に襲われたら笑い話にもならない。出来る限り早めに家に帰りたいし、出来ることならシャワーを浴びたい。
それなのにウィークはボアの死体ばかりを気にしている。
「……肉や皮は無理でも、牙は持って帰らない?」
せっかく倒したボアから何も持って帰らないというのは確かに惜しい。ハンティングトロフィーとして持って帰らせてあげたいたいのはやまやまだが、牙をはぎ取るための道具は僕の折れた短刀ぐらいしかない。
折れた短刀ではぎ取るにはかなりの時間を要することだろう。
「申し訳ないですが、時間が――」
「――ボアの牙は薬として高額だってお姉ちゃんが……」
「そうだとしても、剥ぎ取るのは無理でしょう?」
彼女に解体の知識があるとは思えないし、道具がないわけでどうしようもない。頭を丸ごと持って帰ればどうにかなる可能性がなくもないが、そうなると次は頭を引きちぎるための道具が必要になる。
考えるだけ時間の無駄だ。申し訳ないけれど、あきらめてもらうほかないだろう。
「わかった。あきらめる」
ウィークは不服そうに頬を膨らませている。
最初からわかっていたことだが、ボアを倒すことは単なる徒労に過ぎない。いくら相手が魔物だったとはいえ、こんな山奥で静かに暮らしていた存在だ。何も取らずに帰るのは罪悪感すらある。
「お願いします」
僕は力なく頭を下げた。
少女に対して申し訳なく思ったということもあったが、それ以上にボアに対する謝罪の意味が大きかったと思う。
そんなことがあったからだろう、帰り道は嫌に静かだった。
僕もウィークもお互いに何かを話すということはなく、行よりも早く移動することが出来た。――街に帰ってからもウィークは一言も話さない。ただすれ違う人たちの視線は痛かったし、僕たちが静かであっても街の人たちが何かを騒いでいたからそれほど気にもならなかった。
結局のところ、役所につくまで僕とウィークは一言も話さなかった。
――役所に入るなりお姉さんが僕たちを見つけて駆け寄ってくる。
「早かったですね! ってどうしたのですか、その怪我!?」
お姉さんの気遣いはありがたいが、幸いなことに僕たちは大した怪我を負っていない。ただ気持ち悪いぐらいに体にボアの血を浴びていたから、それをお姉さんは怪我をしたと勘違いしたのだろう。
「怪我じゃない。ただの返り血」
早とちりするお姉さんの言葉をウィークはすぐに訂正した。
「なんだ。そうなんだぁ。驚かせないでよ……え、返り血?」
「そうなのですよ。いろいろ大変でしたよ。本当に……それより、とってきましたよ、弟切草!」
いろんな意味で驚いているお姉さんを誤魔化すために、僕は必死に話題を別に移す。
情けない話はあまりしたくないからね。
「ああ、はい。確かに弟切草ですね! これで依頼は達成です。それより、その血……できれば落としてから入ってほしいのですが……」
お姉さんは依頼達成を喜ぶのと同時に、僕たちにまとわりついた血を見て申し訳なさそうに言った。
もともとボロボロの役所に、いまさら血がこびりついたところでなんら問題はないと思うが、確かに気持ち悪いし僕自身、血を落としておきたい。
「そうですね。ですが僕は代わりの服も持っていませんし、お風呂なんて入るお金は持ち合わせていません」
食費を抜けばほとんど無一文みたいな僕だ。服を複数枚買う余裕もなければ、お風呂やに行くために使えるお金はない。
「問題ない。私達冒険者は、公共の施設を無料で利用できる権利があるからね」
そう言って、ウィークが指差したのは入口横の壁に貼り付けられている施設案内、その中にあるシャワールームの文字だ。
役所にシャワールームがあるとは何とも斬新だ。これも冒険者なんて者達を雇うために生まれた僕の世界との違いというやつなのだろう。だがそれは僕にとっては非常にありがたい斬新さだ。――流石にイチゴのところで風呂に入れてもらうわけにはいかないからな。
それで一つ問題が解決したとしよう。だけど問題はある。
「それはよかった。ですが体を洗っても、また同じ服を着なくてはいけないので……」
「それも問題ありませんよ、ケンさん。冒険者の方々への援助は惜しむなと、所長からお達しが出ておりますので……代わりの服はこちらで用意させていただきます」
今度はお姉さんが僕の疑問を解消してくれる。
冒険者は最底辺の職業だと聞いていたが、まさに至れり尽くせりじゃないか。まあ命を懸けているのだからこれぐらい当たり前か。不遇すれば逃げ出すものもいるだろうしね。
――耳と尻尾の洗い方はよくわからなかったけど、久しぶりに浴びたシャワーはとても気持ちよかった。
その辺のインフラは村にいた時よりも、はるかにきちんと整備されているようで水はむらなく出ていたし、以前の世界で使われていたガスのような資源があるのか、温かいお湯でシャワーに対する不満は一切なかった。シャワーに対する不安はだ。
「もらっておいてなんですが、なんですかこのTシャツ!?」
町の名前とそれに続く『役所』の文字がでかでかと記載されている。こんなものを着て外を歩けば、間違いなく後ろ指差されるだろう。
それなのに、お姉さんはニコニコと笑って「お似合いですよ」なんて言っている。
いやいや、似合っているわけがないじゃないか。というか似合う人いないって、これは!
「どうでもいいじゃない。そんなこと」
ウィークはそう言ったが、そんなことを言えるのは、女性用の支給服が男物とはまるで違うからだろう。
女性用は余計な印字はなく、まとも服とズボンだ。なんなら生地もまるで違う。男物は薄っぺらで、寒々しい素材なのに対して、女性物は高級そうでいかにもあたたかそうだ。おそらく、所長というやつはかなりの女性贔屓なのだろう。――きっと女たらしだ。そうであるに違いない。
「わかりました。せっかくいただいたものですし、ありがたく使わせてもらうことにはします!」
これ以上文句を言っても待遇は変わらないだろうし時間の無駄だ。それよりも、報酬の話をする方がよっぽど有意義だろう。一瞬でも冒険者として一生働いてもいいかもなんて思った僕が馬鹿だった。やっぱり、危険で不毛な職業は一刻も早くやめて、悠々自適に生きるすべを探ることにしよう。
今はそのために耐える時だ。妹のためにも。
「それでは報酬をお渡しいたします……と言いたいところなのですが、その前に一つだけ確認させていただいてよろしいですか?」
よろしくないです……と言いたいところだが、ちょうど僕の方でも確認したい事はあった。
「はいどうぞ」
「ウィーク。妹はどうでした?」
予想通りの質問がお姉さんの口からこぼれ出た。
それに対する答えとして、『全然役に立ちませんでした。それどころか、余計なことをしてくれましたよ』なんてことを口にしてしまうのは簡単だ。だがそれでは僕に対するお姉さんの好感度は落ちることだろう。役に立たなかったとはいえ、最後には助けてももらえたし、あまりひどいことは言わないでおこう。
「それが――」
「――お姉ちゃん。私初めて誰かの前でまともにクラフトの弾を当てられたよ!」
僕の言葉に完全にかぶせるようにウィークが話してしまったから、僕の声は完全にかき消されてしまった。
弾を1発、奇跡的にあてられただけだというのに、いやにはしゃいでいる。よくそれで中級冒険者になれたものだ。
「それは本当に!?」
お姉さんはずっと開いているのか、閉じているのか、わからないぐらいに細かった目を見開いている。それほど衝撃的なことだったのだろう。
なんなら、ほかの役人たちも立ち上がってこちらを見ているほどだ。中には「嘘だろ!?」「ありえない!?」「槍でも降ってくるんじゃないか……?」なんてことを言っている人もいた。
どれだけ彼女の腕を低く見積もっているのやら……これじゃあ、いつまでたっても彼女が成長しない理由もよくわかる。誰も信じてやらないから成長しなかったのだ。――僕が言えたことじゃないけどね。
「うん」
「人と関わるのが苦手だからって、ソロで剣士として冒険していたけど、それじゃあ全然魔物が倒せないからって、仲間たちと組むためにひと月前にクラフトを使うようになって、ようやく弾が当たって喜んでいたけど、いざ誰かに見られながら撃ってみればまるで弾が当たらなくて、街の人達から弱い灰色なんて呼ばれて泣いていたあなたがねぇ……」
お姉さんは感慨深そうな表情を浮かべながら、ものすごく説明口調で時折、僕の方を見ながらそんなことを口走った。
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