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「ノラさん。そんなことより、ケンの装備を見繕ってほしい」
アニーが面倒くさそうに言う。
『そんなこと』という言い方はひどいが、当初の目的はそれだ。今ではむしろ早く目的を果たして帰りたいまである。
「そうじゃった。そうじゃった」
まるで自身の職業を忘れていたと言わんばかりにノラは「うっかりしておった」と言い切ると、そのままカウンターの向こうへと消えていった。
店内には充実した装備の数々が展示されていて、中には僕の所持金なんかでは到底買うこともできなさそうなものが並んでいるというに、何とも不用心だ。客のことを信頼しきっているとでも言うのだろうか……いや、初対面ではあるが、僕がノラから感じた印象はそういった感じではない。
むしろ反対に、全ての存在を疑ってかかるといった印象だ。
「ノラさんは用心深いから、盗みなんて考えちゃダメだからね」
僕の思考を読むようにアニーがそう耳打ちした。
「わかってます。というか、僕は盗みなんてしませんよ。ただ、客だけ残して奥に下がるなんて不用心そのものじゃないですか? まるで、ふるい駄菓子屋みたいですよ」
「ダ、ガシヤ……? それが何かはわからないけど、全てに対して用心しているノラさんにとって、店のカギを開けて買い物に行く――そんな大胆な行為をしたとしても、誰も盗みに入ろうだなんて考えもしないと思う」
一瞬だけアニーの言葉の意味を考えたが、店のドアを開けようとして止められた時のことを思い出した。
今、僕は罠だらけの空間にいるということなのだろう。ノラが僕たちを残して奥に下がったのもうなずける。いや、逆になんの説明もなく罠だらけの空間に客を残していったんだ。逆に理解できない。もし僕たちが罠に触れて死にでもしたらどうするつもりなのだろう。
現に、僕はアニーに止めてもらっていなければ、ドアに触れて罠の餌食になっていただろう。何も知らない客がドアを開けてケガをしたり最悪の場合死亡したりしたことだってあったはずだ。
「過去に事故は?」
「もちろん」
アニーは表情も変えずに僕の質問にそう一言だけつぶやいた。一体どっちの意味での『もちろん』なのかは分からないが、それ以上聞かない方がいい気がした。というより、彼女がそれ以上聞くなと言っているようで聞くに聞けなかった。
それから少しして、奥からノラが帰ってきた。手には何かしらを持っているのだが、それは黒い布で包まれていてノラが両手で抱えるほどには大きいということだけがわかった。
「なにやら青い顔をしているが……どうかしたかのう?」
ケタケタと薄気味悪い笑い声をあげながら、ノラがカウンターの上に黒い布で包まれたそれを置いた。
「なんでもないです……」
僕は何も聞けない。
ノラは老婆でありながら、彼女の放つオーラが恐怖心からか歴戦の兵士のように思えた。
「そうか、まあよい。おぬしは魔力を武器として扱うのじゃろう?」
「ええ、まあ。ってまた心を読んだんですか?」
思わずスルーするところだったが、僕はまだそのことについて話していない。またもや心を読まれたとでも言うのだろうか。膨大な魔力を使うといっていたが、そこまで簡単に使ってもいいものなのだろうか……いざという時のためにとっておくべきではないのだろうか。
そんな僕の言葉をノラはすぐに否定した。
「いやいや、さっきも言ったじゃろう。儂が読めるのはあくまで表層の事だけじゃ、言ってしまえばおぬしが今考えていることだけじゃな。おぬしは装備を買いに来たというのに、私が心を読んだ中では一度たりとも戦闘の想像すらしていなかった。到底冒険者に向いているとは思えないが……ともかく、武器に関してはウィークに聞いというわけじゃ。おぬしがここを訪れるよりも前にのう」
これまでの状況からいまいち信用できないが、今は彼女の言葉を信じるとしよう。というより、信じるほかないし、余計なことを言って怒らせたら、人が死ぬような罠のなかに客を残していくような人だ……殺されてもおかしくない。
そう思ったとこで、彼女が数秒前に考えていることを読めるといっていたことを思い出した。僕は慌てて取り繕う。
「なるほど! ……それで、これは何ですか?」
「これは、魔力を効率よく使うための武器じゃ……いや、武器というカテゴリーからはかけ離れているがのう」
ノラは僕の思考など読んでもいないようで、意識は目の前にある黒包みにいっている。
ノラが布切れをゆっくりと外す、黒い布は何層にも巻かれているらしく、中からはまた黒い布が姿を見せた。
アニーが面倒くさそうに言う。
『そんなこと』という言い方はひどいが、当初の目的はそれだ。今ではむしろ早く目的を果たして帰りたいまである。
「そうじゃった。そうじゃった」
まるで自身の職業を忘れていたと言わんばかりにノラは「うっかりしておった」と言い切ると、そのままカウンターの向こうへと消えていった。
店内には充実した装備の数々が展示されていて、中には僕の所持金なんかでは到底買うこともできなさそうなものが並んでいるというに、何とも不用心だ。客のことを信頼しきっているとでも言うのだろうか……いや、初対面ではあるが、僕がノラから感じた印象はそういった感じではない。
むしろ反対に、全ての存在を疑ってかかるといった印象だ。
「ノラさんは用心深いから、盗みなんて考えちゃダメだからね」
僕の思考を読むようにアニーがそう耳打ちした。
「わかってます。というか、僕は盗みなんてしませんよ。ただ、客だけ残して奥に下がるなんて不用心そのものじゃないですか? まるで、ふるい駄菓子屋みたいですよ」
「ダ、ガシヤ……? それが何かはわからないけど、全てに対して用心しているノラさんにとって、店のカギを開けて買い物に行く――そんな大胆な行為をしたとしても、誰も盗みに入ろうだなんて考えもしないと思う」
一瞬だけアニーの言葉の意味を考えたが、店のドアを開けようとして止められた時のことを思い出した。
今、僕は罠だらけの空間にいるということなのだろう。ノラが僕たちを残して奥に下がったのもうなずける。いや、逆になんの説明もなく罠だらけの空間に客を残していったんだ。逆に理解できない。もし僕たちが罠に触れて死にでもしたらどうするつもりなのだろう。
現に、僕はアニーに止めてもらっていなければ、ドアに触れて罠の餌食になっていただろう。何も知らない客がドアを開けてケガをしたり最悪の場合死亡したりしたことだってあったはずだ。
「過去に事故は?」
「もちろん」
アニーは表情も変えずに僕の質問にそう一言だけつぶやいた。一体どっちの意味での『もちろん』なのかは分からないが、それ以上聞かない方がいい気がした。というより、彼女がそれ以上聞くなと言っているようで聞くに聞けなかった。
それから少しして、奥からノラが帰ってきた。手には何かしらを持っているのだが、それは黒い布で包まれていてノラが両手で抱えるほどには大きいということだけがわかった。
「なにやら青い顔をしているが……どうかしたかのう?」
ケタケタと薄気味悪い笑い声をあげながら、ノラがカウンターの上に黒い布で包まれたそれを置いた。
「なんでもないです……」
僕は何も聞けない。
ノラは老婆でありながら、彼女の放つオーラが恐怖心からか歴戦の兵士のように思えた。
「そうか、まあよい。おぬしは魔力を武器として扱うのじゃろう?」
「ええ、まあ。ってまた心を読んだんですか?」
思わずスルーするところだったが、僕はまだそのことについて話していない。またもや心を読まれたとでも言うのだろうか。膨大な魔力を使うといっていたが、そこまで簡単に使ってもいいものなのだろうか……いざという時のためにとっておくべきではないのだろうか。
そんな僕の言葉をノラはすぐに否定した。
「いやいや、さっきも言ったじゃろう。儂が読めるのはあくまで表層の事だけじゃ、言ってしまえばおぬしが今考えていることだけじゃな。おぬしは装備を買いに来たというのに、私が心を読んだ中では一度たりとも戦闘の想像すらしていなかった。到底冒険者に向いているとは思えないが……ともかく、武器に関してはウィークに聞いというわけじゃ。おぬしがここを訪れるよりも前にのう」
これまでの状況からいまいち信用できないが、今は彼女の言葉を信じるとしよう。というより、信じるほかないし、余計なことを言って怒らせたら、人が死ぬような罠のなかに客を残していくような人だ……殺されてもおかしくない。
そう思ったとこで、彼女が数秒前に考えていることを読めるといっていたことを思い出した。僕は慌てて取り繕う。
「なるほど! ……それで、これは何ですか?」
「これは、魔力を効率よく使うための武器じゃ……いや、武器というカテゴリーからはかけ離れているがのう」
ノラは僕の思考など読んでもいないようで、意識は目の前にある黒包みにいっている。
ノラが布切れをゆっくりと外す、黒い布は何層にも巻かれているらしく、中からはまた黒い布が姿を見せた。
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