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8 新たなる武器
71 実戦にて 1
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『手がかりもなしに、探すというのは難しい話です。魔力量が多い場所を調べるという事を前提として、明日以降から本格的に活動するとして、今日は軽い手ならしと、杖の使い方について考えてみてはいかがですか?』という、お姉さんからの提案に乗る形で、僕とアニーはいつもの森へとやって来た。
むろん、目的は役所に来ていた依頼を達成するためだが、お姉さんの言うとおり、杖の使い方を考えるためでもある。
うっそうと生い茂る森の奥地とは違い、比較的入口に近いところであるためか、空からの光も、街からの光もそれなりに入ってきてそれほど暗くはない。それでも視界良好というわけにはいかず、邪魔な木々をかいくぐって目的の魔物を探す。
「討伐依頼が出ていた魔物は……えっと、なんですかこれ?」
今しがたアニーから受け取った依頼書を見て、僕は自分の頭がおかしくなったのではないかと思った。
依頼書に記された文字を見るに、おそらく子供が依頼主なのだろうが、聞いたこともない魔物の名前が記されている。
「討伐依頼となっているけど、実質、探索依頼だと考えた方がいい」
淡々とした口調でアニーが言う。
「どういう事でしょう?」
「役所というのは、基本的にどんな依頼でも受け持つのだけれど、子供依頼というのは、大概が見間違いや嘘が多い。だから、達成報酬は多いけど、基本的に達成されることはなく、『未確認』が多くなりがち」
「『未確認』……ですか?」
始めて聞いた言葉だ。失敗ではなく、『未確認』とする意味はなんなのだろう。
「存在しない物を探して、見つからなかったら失敗になるんなら、誰も確認に行かなくなるでしょう? 冒険者は言ってしまえば自営業、フリーランスとも言える。会社員ほど失敗に対する保証はされていないし、失敗が続けば誰も依頼したくなくなる」
なるほど、嘘の依頼や勘違いでの依頼から冒険者を護るためのシステムという事か。
思っていたいたよりも、冒険者は人権があるらしい。底辺職というぐらいだから、最低限の保証しかない上に、役立たずは切り捨てられるものとばかり思っていた。
「もちろん。『未確認』でも報酬は出る。でももし仮に、その依頼書に記された魔物が本当に存在しているのだとしたら、私たちは全滅でしょうけど……そんな魔物は聞いたこともないからね」
それを聞いて僕は再び依頼書に視線を集中させる。
『背に翼が生え、口から火を吐くトカゲ種によく似た大きな生物』
まるで伝説上の生き物、ドラゴンだ。
この世界に来てから子供に読み聞かせるための伝記や児童文学的なものをいくつか見てきたが、やはり空を飛ぶトカゲというのは、この世界でも空想上の存在となっている。一応はコボルトのように空想上の生物の名が付けられている魔物は存在しているが、それでも僕の知っている生物の域を出ない。だから、たぶんドラゴンも存在しないのだろう。
もし仮に、口から火を吐くトカゲが存在しているなら、『ボア』なんかよりもよっぽど強力な存在だろう。そんな相手に僕たちが勝てるはずもない。
「いや、そもそも、背から羽を生やして空を飛ぶ大きな生物がいたら、もっと、目撃証言が多いはずですよね? ここほとんど門のすぐそばですし……」
状況を考えれば、子供によくありがちな嘘か……もしくは妄想というやつだろう。
だからこそ、お姉さんは僕たちにこの依頼を受けさせた。日銭を稼げるというわけではないが、すぐに達成して、修業に入ることが出来るからだ。もちろん、少ないだろうが賃金も出るらしいから、僕の不安も少しは消えるだろうと。
思わずため息が出てしまう。それにつられたかのように、アニーもため息を吐いた。
「そう。まんまと罠にはめられた。お姉ちゃんのやりそうなこと……私に同調したように見せて、実は別のところに罠を張る。冒険者としての実力はやっぱり、私なんかとは比べものにならない」
「まあ、どのみち、時間もないことですし、今回はお姉さんに感謝と行きましょう。そういう風に考えないと、無駄にストレスがたまるだけです」
僕は背中に背負っていた魔物の骨……もとい、杖を手に取る。
とはいえ、使い方が一朝一夕でわかる程度のしろものなら苦労もしていない。
とりあえず軽く魔力を込めてみよう。
魔力の込められた杖は、薄い光を帯びて、あたりを静かに照らす。しかし、それはあまりにも淡い光であるために、光源としては何の役にも立たないレベルだ。
それを軽く手で小突いてみる。まるで木の板でも叩いているかのような音がむなしく鳴り響いた。
「うーん……違うな」
確かに、ほんの少しだけは武器として使えるレベルの硬さにはなっただろうが、それでもやはり、最初から角材でも持って来た方がはるかに役に立ちそうだ。まあ、角材で魔物が倒せるかどうかを聞かれたら、無理だろうとしか言えないんだけど。
「そんなやり方は、他の魔法使いも試しているはず……もっと別の使い方……たとえばもっと、魔力を違う風にするとか」
「違う風って? なんです?」
まるで想像がつかない。
こんな棒っきれを武器として使うとして、それが打撃用以外の方法となると、どうすればいいかわからない。武器の使い方は全てわかるはずなのに……考えれば考えるほ分からなくなる。
それがわかるなら、僕が教えてもらいたいぐらいだ。
僕の能力を持ってしても……いやこの言い方では、さも自分が天才的な人間、もとい獣人だと思っているように勘違いされるかもしれないが、僕の『能力』を持ってしても、分からないことが、ほかの誰かにわかるはずがない。
だから、自分でも少し、意地悪な言い方をしたと反省する。
アニーもかなりしょんぼりしている。
「それは……わからないけど」
「そうですよね……ちょっと苛々していたので、当たってしまいました。申し訳ございません」
「いや、無責任なことを言った私が悪かった。ごめん」
解決策は浮かばないまま、空気だけが淀んでゆく。
僕は空気を和ませるために、話をそらす。
「魔物の骨って……魔力を他のものに移すための媒介になるんですよね?」
「私は詳しくないけど、そう言ってたね。他の人に魔力を送り込んだり、魔力水とかに魔力を注ぎ込んだりする時に使うらしい」
「やっぱり、武器じゃないですよね?」
「うん」
神ですら、武器として認めていないこれをどう使えばいいというのだろうか。
むろん、目的は役所に来ていた依頼を達成するためだが、お姉さんの言うとおり、杖の使い方を考えるためでもある。
うっそうと生い茂る森の奥地とは違い、比較的入口に近いところであるためか、空からの光も、街からの光もそれなりに入ってきてそれほど暗くはない。それでも視界良好というわけにはいかず、邪魔な木々をかいくぐって目的の魔物を探す。
「討伐依頼が出ていた魔物は……えっと、なんですかこれ?」
今しがたアニーから受け取った依頼書を見て、僕は自分の頭がおかしくなったのではないかと思った。
依頼書に記された文字を見るに、おそらく子供が依頼主なのだろうが、聞いたこともない魔物の名前が記されている。
「討伐依頼となっているけど、実質、探索依頼だと考えた方がいい」
淡々とした口調でアニーが言う。
「どういう事でしょう?」
「役所というのは、基本的にどんな依頼でも受け持つのだけれど、子供依頼というのは、大概が見間違いや嘘が多い。だから、達成報酬は多いけど、基本的に達成されることはなく、『未確認』が多くなりがち」
「『未確認』……ですか?」
始めて聞いた言葉だ。失敗ではなく、『未確認』とする意味はなんなのだろう。
「存在しない物を探して、見つからなかったら失敗になるんなら、誰も確認に行かなくなるでしょう? 冒険者は言ってしまえば自営業、フリーランスとも言える。会社員ほど失敗に対する保証はされていないし、失敗が続けば誰も依頼したくなくなる」
なるほど、嘘の依頼や勘違いでの依頼から冒険者を護るためのシステムという事か。
思っていたいたよりも、冒険者は人権があるらしい。底辺職というぐらいだから、最低限の保証しかない上に、役立たずは切り捨てられるものとばかり思っていた。
「もちろん。『未確認』でも報酬は出る。でももし仮に、その依頼書に記された魔物が本当に存在しているのだとしたら、私たちは全滅でしょうけど……そんな魔物は聞いたこともないからね」
それを聞いて僕は再び依頼書に視線を集中させる。
『背に翼が生え、口から火を吐くトカゲ種によく似た大きな生物』
まるで伝説上の生き物、ドラゴンだ。
この世界に来てから子供に読み聞かせるための伝記や児童文学的なものをいくつか見てきたが、やはり空を飛ぶトカゲというのは、この世界でも空想上の存在となっている。一応はコボルトのように空想上の生物の名が付けられている魔物は存在しているが、それでも僕の知っている生物の域を出ない。だから、たぶんドラゴンも存在しないのだろう。
もし仮に、口から火を吐くトカゲが存在しているなら、『ボア』なんかよりもよっぽど強力な存在だろう。そんな相手に僕たちが勝てるはずもない。
「いや、そもそも、背から羽を生やして空を飛ぶ大きな生物がいたら、もっと、目撃証言が多いはずですよね? ここほとんど門のすぐそばですし……」
状況を考えれば、子供によくありがちな嘘か……もしくは妄想というやつだろう。
だからこそ、お姉さんは僕たちにこの依頼を受けさせた。日銭を稼げるというわけではないが、すぐに達成して、修業に入ることが出来るからだ。もちろん、少ないだろうが賃金も出るらしいから、僕の不安も少しは消えるだろうと。
思わずため息が出てしまう。それにつられたかのように、アニーもため息を吐いた。
「そう。まんまと罠にはめられた。お姉ちゃんのやりそうなこと……私に同調したように見せて、実は別のところに罠を張る。冒険者としての実力はやっぱり、私なんかとは比べものにならない」
「まあ、どのみち、時間もないことですし、今回はお姉さんに感謝と行きましょう。そういう風に考えないと、無駄にストレスがたまるだけです」
僕は背中に背負っていた魔物の骨……もとい、杖を手に取る。
とはいえ、使い方が一朝一夕でわかる程度のしろものなら苦労もしていない。
とりあえず軽く魔力を込めてみよう。
魔力の込められた杖は、薄い光を帯びて、あたりを静かに照らす。しかし、それはあまりにも淡い光であるために、光源としては何の役にも立たないレベルだ。
それを軽く手で小突いてみる。まるで木の板でも叩いているかのような音がむなしく鳴り響いた。
「うーん……違うな」
確かに、ほんの少しだけは武器として使えるレベルの硬さにはなっただろうが、それでもやはり、最初から角材でも持って来た方がはるかに役に立ちそうだ。まあ、角材で魔物が倒せるかどうかを聞かれたら、無理だろうとしか言えないんだけど。
「そんなやり方は、他の魔法使いも試しているはず……もっと別の使い方……たとえばもっと、魔力を違う風にするとか」
「違う風って? なんです?」
まるで想像がつかない。
こんな棒っきれを武器として使うとして、それが打撃用以外の方法となると、どうすればいいかわからない。武器の使い方は全てわかるはずなのに……考えれば考えるほ分からなくなる。
それがわかるなら、僕が教えてもらいたいぐらいだ。
僕の能力を持ってしても……いやこの言い方では、さも自分が天才的な人間、もとい獣人だと思っているように勘違いされるかもしれないが、僕の『能力』を持ってしても、分からないことが、ほかの誰かにわかるはずがない。
だから、自分でも少し、意地悪な言い方をしたと反省する。
アニーもかなりしょんぼりしている。
「それは……わからないけど」
「そうですよね……ちょっと苛々していたので、当たってしまいました。申し訳ございません」
「いや、無責任なことを言った私が悪かった。ごめん」
解決策は浮かばないまま、空気だけが淀んでゆく。
僕は空気を和ませるために、話をそらす。
「魔物の骨って……魔力を他のものに移すための媒介になるんですよね?」
「私は詳しくないけど、そう言ってたね。他の人に魔力を送り込んだり、魔力水とかに魔力を注ぎ込んだりする時に使うらしい」
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