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9 過去の英雄
83 魔力の根源
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「お前の能力はポーション作成に向いている。普通の魔法使いよりもな……つまりそういうことだ」
リグダミスは失笑する。そこには憐みも含まれているのかもしれないが、それよりも遥かに大きな目論見があるようにも見える。まるで、全てが思い通りになったかのような、だがそれをいまだに口に出来ずにいるような、そんな感じだ。
しかし、それが何かが僕にはわからない。彼がそう言った理由もだ。
「どういうことですか?」
「つまり、神より与えられた能力を都合よく使う……そういう事だろ、リグダミス?」
僕たちの会話に割って入るように、店の入り口から入って聞いたイチゴが僕の質問に答える。それを聞いてリグダミスはにやりと笑みを浮かべて、両手を広げて得意げに声を発した。
「その通りだイザベラ。私は神には屈することはないが、神の力を利用することは神に屈するという事ではないと考えている。すなわち、神の恩恵を受けた者をうまく使うことが出来たならば、それはこの上なく素晴らしいことだとは思わないかな?」
「私の名を気安く呼ぶな……神の名もな……」
「ほう……私の知るイザベラは神など信じていなかったはずだ。いつの間に敬虔な信徒となった?」
リグダミスはイチゴを訝しく見つめる。だがしかし、それが何に対して当てられた感情なのかはわからない。
「敬虔な信徒とは言えないが、神は存在している。だからこそ、気安く読んではいけない。神はいつでも私たちを見ているからな」
そんなリグダミスに警告するかのような言葉遣いでイチゴはそう返した。それを聞いてリグダミスは更に怪訝な表情をした。
「神を知っているのですか?」
僕は思わず尋ねる。
2人の会話の流れについていけずに思わず聞き逃すところだったが、神という言葉を聞いて黙ってはいられない。なぜなら、神という存在は確かに存在していて、僕をこの世界に押しやった張本人だからだ。
「いいや、ただそうに違いないと言わざるを得ないだけだ。そう思えることのことがあった……それだけのこと」
なんだ。あったことないのか……イチゴがこの世界で神に邂逅したというのなら、僕も会うことが出来ると思ったのに。そんで会えたなら『不満』をぶちまけようと思っていたが、どうやらそれは叶いそうにもない。
「そうなんですね。いやぁ、イチゴさんの口ぶりからもしかしたら知り合いなんじゃないかと思いましたよ。知り合いだったら一目会いたいなぁ……なんて」
「知り合いだとしても神を友のように紹介などできるはずないだろう?」
そりゃそうだ。僕だってそんなことは重々承知の上で、わずかな希望を抱きながら聞いてみただけのこと。それにイチゴが会わせてくれなかったとしても、あの『女神』に会えるという『希望』があればそれでよかった。
「なるほど……人とは簡単に持論を覆す生き物だ。さして驚くこともない。特に奇跡というものはいつも人をかどわかす……弱っている獣人ほど簡単にかどわかされる。勇者とてそれは変わらないという事だな」
今度はリグダミスが僕たちの会話に割って入ってくる。
すっかり忘れていたが、僕は彼と話している最中だった。
「まあ、そんなことはどうでもいい。話をもどそう。私に必要なのは神ではなく、神より授かった恩恵だ。犬、お前はその恩恵によって他の獣人には出来ないことが出来る……そうだろう?」
「まさか……無差別に魔力を吸い取って来いと?」
それはいくらなんでも犯罪だ。金を受け取っていても犯罪には協力するつもりはない。
僕の愚かな質問にリグダミスが怒鳴る。
「馬鹿言え! 私だって一応はこの国を動かす存在だ。自国民を傷つけるわけがないだろう……だったらどうすればいい。答えは簡単だ。魔力を買い取ればいい」
魔力を買い取る。確かにそれなら犯罪でもなく、(金さえかければ)簡単に魔力を集めることが出来るだろう。だがそれなら、僕がやる必要はない。彼が嫌っている犬を使う必要などないはずだ。
「他の魔法使いに頼めばいいんじゃないですか?」
「お前は馬鹿だな。他の魔法使いに出来ないことだからお前に依頼している」
「魔力の扱いに長けた魔法使いなら誰でも出来る筈でしょう?」
僕がそう言ったとたんに、リグダミスは黙り込んだ。
何かおかしなことを言っただろうか。
「……確かに魔法使いは魔力の扱いに長けている。まあ、それは自信の体表に溢れ出た魔力に限った話になるがな。魔法使いとはある意味では蔑称なのだ。底辺労働者の中でも最底辺の存在だ。なぜなら、そこに行きつく奴らのほとんどが努力をしないから。人生の中で努力を怠った人間が最後に行きつく場所だからだ。当然、ほとんどの魔法使いはその職に就いてからも努力はしない、ほとんどの魔法使いがポーション作りという単純作業で日銭を稼ぎ、冒険者として一攫千金しようとも思わない……まあそれでも、中には薬剤師になるものもいるが、そういったやつは魔法使いになるよりも前から努力をし続けている。ファンタジーのようにわかりやすい魔法でもあれば別だろうが、その実、冒険者としての魔法使いとは単なる魔力の譲渡者でしかないというわけだ。誰も魔力の根幹に触れることもなく、実戦にもっとも近い冒険者から遠ざかり、頭を使わない楽な仕事に就きたがる。私の言っている意味が理解できるだろう?」
息をつく暇もないぐらいにリグダミスは長々と説明し、大きなため息を吐くと同時に肩を大きく落とす。『努力もしない者に頼みたくはない』とその目が言っていた。
「それで僕を?」
「魔法使いで、魔力そのものを発展させようとするものは今の私の知り合いにはお前ぐらいしかいない。仕方なくだ」
そう言ってリグダミスはやれやれと首を振った。
リグダミスは失笑する。そこには憐みも含まれているのかもしれないが、それよりも遥かに大きな目論見があるようにも見える。まるで、全てが思い通りになったかのような、だがそれをいまだに口に出来ずにいるような、そんな感じだ。
しかし、それが何かが僕にはわからない。彼がそう言った理由もだ。
「どういうことですか?」
「つまり、神より与えられた能力を都合よく使う……そういう事だろ、リグダミス?」
僕たちの会話に割って入るように、店の入り口から入って聞いたイチゴが僕の質問に答える。それを聞いてリグダミスはにやりと笑みを浮かべて、両手を広げて得意げに声を発した。
「その通りだイザベラ。私は神には屈することはないが、神の力を利用することは神に屈するという事ではないと考えている。すなわち、神の恩恵を受けた者をうまく使うことが出来たならば、それはこの上なく素晴らしいことだとは思わないかな?」
「私の名を気安く呼ぶな……神の名もな……」
「ほう……私の知るイザベラは神など信じていなかったはずだ。いつの間に敬虔な信徒となった?」
リグダミスはイチゴを訝しく見つめる。だがしかし、それが何に対して当てられた感情なのかはわからない。
「敬虔な信徒とは言えないが、神は存在している。だからこそ、気安く読んではいけない。神はいつでも私たちを見ているからな」
そんなリグダミスに警告するかのような言葉遣いでイチゴはそう返した。それを聞いてリグダミスは更に怪訝な表情をした。
「神を知っているのですか?」
僕は思わず尋ねる。
2人の会話の流れについていけずに思わず聞き逃すところだったが、神という言葉を聞いて黙ってはいられない。なぜなら、神という存在は確かに存在していて、僕をこの世界に押しやった張本人だからだ。
「いいや、ただそうに違いないと言わざるを得ないだけだ。そう思えることのことがあった……それだけのこと」
なんだ。あったことないのか……イチゴがこの世界で神に邂逅したというのなら、僕も会うことが出来ると思ったのに。そんで会えたなら『不満』をぶちまけようと思っていたが、どうやらそれは叶いそうにもない。
「そうなんですね。いやぁ、イチゴさんの口ぶりからもしかしたら知り合いなんじゃないかと思いましたよ。知り合いだったら一目会いたいなぁ……なんて」
「知り合いだとしても神を友のように紹介などできるはずないだろう?」
そりゃそうだ。僕だってそんなことは重々承知の上で、わずかな希望を抱きながら聞いてみただけのこと。それにイチゴが会わせてくれなかったとしても、あの『女神』に会えるという『希望』があればそれでよかった。
「なるほど……人とは簡単に持論を覆す生き物だ。さして驚くこともない。特に奇跡というものはいつも人をかどわかす……弱っている獣人ほど簡単にかどわかされる。勇者とてそれは変わらないという事だな」
今度はリグダミスが僕たちの会話に割って入ってくる。
すっかり忘れていたが、僕は彼と話している最中だった。
「まあ、そんなことはどうでもいい。話をもどそう。私に必要なのは神ではなく、神より授かった恩恵だ。犬、お前はその恩恵によって他の獣人には出来ないことが出来る……そうだろう?」
「まさか……無差別に魔力を吸い取って来いと?」
それはいくらなんでも犯罪だ。金を受け取っていても犯罪には協力するつもりはない。
僕の愚かな質問にリグダミスが怒鳴る。
「馬鹿言え! 私だって一応はこの国を動かす存在だ。自国民を傷つけるわけがないだろう……だったらどうすればいい。答えは簡単だ。魔力を買い取ればいい」
魔力を買い取る。確かにそれなら犯罪でもなく、(金さえかければ)簡単に魔力を集めることが出来るだろう。だがそれなら、僕がやる必要はない。彼が嫌っている犬を使う必要などないはずだ。
「他の魔法使いに頼めばいいんじゃないですか?」
「お前は馬鹿だな。他の魔法使いに出来ないことだからお前に依頼している」
「魔力の扱いに長けた魔法使いなら誰でも出来る筈でしょう?」
僕がそう言ったとたんに、リグダミスは黙り込んだ。
何かおかしなことを言っただろうか。
「……確かに魔法使いは魔力の扱いに長けている。まあ、それは自信の体表に溢れ出た魔力に限った話になるがな。魔法使いとはある意味では蔑称なのだ。底辺労働者の中でも最底辺の存在だ。なぜなら、そこに行きつく奴らのほとんどが努力をしないから。人生の中で努力を怠った人間が最後に行きつく場所だからだ。当然、ほとんどの魔法使いはその職に就いてからも努力はしない、ほとんどの魔法使いがポーション作りという単純作業で日銭を稼ぎ、冒険者として一攫千金しようとも思わない……まあそれでも、中には薬剤師になるものもいるが、そういったやつは魔法使いになるよりも前から努力をし続けている。ファンタジーのようにわかりやすい魔法でもあれば別だろうが、その実、冒険者としての魔法使いとは単なる魔力の譲渡者でしかないというわけだ。誰も魔力の根幹に触れることもなく、実戦にもっとも近い冒険者から遠ざかり、頭を使わない楽な仕事に就きたがる。私の言っている意味が理解できるだろう?」
息をつく暇もないぐらいにリグダミスは長々と説明し、大きなため息を吐くと同時に肩を大きく落とす。『努力もしない者に頼みたくはない』とその目が言っていた。
「それで僕を?」
「魔法使いで、魔力そのものを発展させようとするものは今の私の知り合いにはお前ぐらいしかいない。仕方なくだ」
そう言ってリグダミスはやれやれと首を振った。
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