106 / 170
10 伝説の魔法
103 使い方と才能 4
しおりを挟む
「魔力は人の体内に存在する生命力みたいなものってことは知っているよね?」
ケントニスは意外にも教え上手らしく、まずは基礎的な知識から話しててくれるみたいだ。知っていることだけど基礎から教えてくれた方がわかりやすくて助かる。
「それはもちろん知ってます」
うんうんとうなずきながら彼女は説明を続ける。
「体外に放出することで、武器として使用できるってことも知っているよね?」
「はい」
だからこそ、僕に与えられた神の恩恵が通用したわけだ。
「いわば、足や腕とかと似たようなものなんだよ」
なるほどなるほど……うん?
「はい?」
いやいや、突然何の話だ。僕が聞いていないところで重要なことを話していたのか? もしかして聞き逃してしまったのか?
そんな風に理解がおよばない僕に対して、彼女は丁寧に説明しなおしてくれる。
「足や腕だって生命活動に必要で、いざというときは武器になるでしょう?」
わかりやすくはなったけど、全然だめだ。何が言いたいのかは理解できるけど、どうしてそんな話になったのかは到底理解できそうにない。
「言われてみればそうですが……全く納得できそうにないんですけど?」
「それはケン君に受け入れる気概がないからだよ」
「気概って……」
別に僕は難題を抱えた少女を受け入れないとか言ってるわけじゃないんだけどな。
「わかっていないようだから言っておくけど、魔力っていうのは自分の腕や足のように自分の一部ってことを受け入れることから始まるんだよ! 単なる武器じゃない。そこを理解しないようじゃ、コントロールできるとかできないとか以前の話だよ!」
重要な話だった。って嘘でしょ?
「そんなレベルの話だったんですか!?」
「そんなレベルの話だよ!!」
冗談っぽく話すから、また冗談を言っているのかと思っていた。
ケントニスは咳払いをして、続きを語り始める。
「足や腕を動かすことだって最初は出来なかったはず。もちろん、遺伝子に刻まれている程度には動かせたでしょうけどね……練習に練習を重ねてようやく歩けるようになったし、腕を自在に動かして様々なことが出来るようになったのが生物というものね! でも魔力はそう簡単じゃない。魔力というものは、太古の昔から生命力としてしか遺伝子に刻まれていなくて、それを扱うには絶え間ない修行を重ねなくちゃいけなかった」
確かに、僕が人間だったころの世界には生命力という概念はあっても、魔力という概念は空想上の物として扱われ、一部の特別な存在が使えたという伝説がある程度だ。
だがこの世界では、魔力というものは実在するものとして扱われ、一部ではあるが扱えるものが存在していることが認知されている。それが修行のたまものだというのならば、才能などと呼ばれる者は存在しないはずだ。
「それはちょっとおかしくないですか?」
「そう。おかしい。そのまま現在まで同じように受け継がれてきているというのならね! でも違う。獣人というものは進化し続けている。世代を重ねるごとに、必要なものは遺伝子に刻まれ、不必要なものは遺伝子から省かれ……そしていつかは完全な存在をめざし、そして絶滅する。それが生命の定めだから」
「いや、え? 何の話ですか?」
また話が逸脱し始めた。
それを気にすることなく彼女は語り続ける。
「今をその進化の過程とするなら……旧人類で言うところの生命力が、名前を変え、性質を変え、今となっては魔力と言う武器として扱えるようになったと言えるだろう。つまり、現在獣人たちは岐路に立たされているという事だ。重大な進化の岐路! 旧人類と同じ進化をたどり絶滅するか! 全く異なる進化を遂げて絶滅を先延ばしにするか! 神秘的よね……生命って!」
「あ、あの……」
研究熱心な人だという事は、今の今までのやり取りで十分に理解していたつもりだ。だが、これはマッドサイエンティスト並みに変だ。
「ごめん、ごめん。脱線したね! とにもかくにも、獣人の中でも魔力を放出出来るようになった者が出てきたのが数世紀前からのことなんだ!」
座学とは言われていたが、これじゃあ歴史の授業だ。
確かに歴史は知りたいのだが、今はそれ以上に魔力の使い方を学びたい。たぶん、彼女は僕の疑問に答えようとしてくれているのだろう。頭がおかしいんじゃなくて、頭がよすぎるゆえに行動がよくわからなくなっているんだ。
彼女の性格を考えてみれば何ら不思議ではない。
「うんうん。十分に分かっているわよ! でも時間は有限だから、カギとなることは今のうちに話しておかないとね」
「それはどういう意味ですか?」
また意味深なことを口走った。
「どう? 少しは魔力のことを受け入れられるようになった? 魔力の歴史を知ることで、少しぐらいは魔力について理解できたでしょう?」
「……はい」
これって、魔力を受け入れて、コントロールできるようにするための勉強だったのか……また彼女の頭がおかしくなったのかと勘違いして、頭の中で彼女のことを無理やり補正していた。
ケントニスは意外にも教え上手らしく、まずは基礎的な知識から話しててくれるみたいだ。知っていることだけど基礎から教えてくれた方がわかりやすくて助かる。
「それはもちろん知ってます」
うんうんとうなずきながら彼女は説明を続ける。
「体外に放出することで、武器として使用できるってことも知っているよね?」
「はい」
だからこそ、僕に与えられた神の恩恵が通用したわけだ。
「いわば、足や腕とかと似たようなものなんだよ」
なるほどなるほど……うん?
「はい?」
いやいや、突然何の話だ。僕が聞いていないところで重要なことを話していたのか? もしかして聞き逃してしまったのか?
そんな風に理解がおよばない僕に対して、彼女は丁寧に説明しなおしてくれる。
「足や腕だって生命活動に必要で、いざというときは武器になるでしょう?」
わかりやすくはなったけど、全然だめだ。何が言いたいのかは理解できるけど、どうしてそんな話になったのかは到底理解できそうにない。
「言われてみればそうですが……全く納得できそうにないんですけど?」
「それはケン君に受け入れる気概がないからだよ」
「気概って……」
別に僕は難題を抱えた少女を受け入れないとか言ってるわけじゃないんだけどな。
「わかっていないようだから言っておくけど、魔力っていうのは自分の腕や足のように自分の一部ってことを受け入れることから始まるんだよ! 単なる武器じゃない。そこを理解しないようじゃ、コントロールできるとかできないとか以前の話だよ!」
重要な話だった。って嘘でしょ?
「そんなレベルの話だったんですか!?」
「そんなレベルの話だよ!!」
冗談っぽく話すから、また冗談を言っているのかと思っていた。
ケントニスは咳払いをして、続きを語り始める。
「足や腕を動かすことだって最初は出来なかったはず。もちろん、遺伝子に刻まれている程度には動かせたでしょうけどね……練習に練習を重ねてようやく歩けるようになったし、腕を自在に動かして様々なことが出来るようになったのが生物というものね! でも魔力はそう簡単じゃない。魔力というものは、太古の昔から生命力としてしか遺伝子に刻まれていなくて、それを扱うには絶え間ない修行を重ねなくちゃいけなかった」
確かに、僕が人間だったころの世界には生命力という概念はあっても、魔力という概念は空想上の物として扱われ、一部の特別な存在が使えたという伝説がある程度だ。
だがこの世界では、魔力というものは実在するものとして扱われ、一部ではあるが扱えるものが存在していることが認知されている。それが修行のたまものだというのならば、才能などと呼ばれる者は存在しないはずだ。
「それはちょっとおかしくないですか?」
「そう。おかしい。そのまま現在まで同じように受け継がれてきているというのならね! でも違う。獣人というものは進化し続けている。世代を重ねるごとに、必要なものは遺伝子に刻まれ、不必要なものは遺伝子から省かれ……そしていつかは完全な存在をめざし、そして絶滅する。それが生命の定めだから」
「いや、え? 何の話ですか?」
また話が逸脱し始めた。
それを気にすることなく彼女は語り続ける。
「今をその進化の過程とするなら……旧人類で言うところの生命力が、名前を変え、性質を変え、今となっては魔力と言う武器として扱えるようになったと言えるだろう。つまり、現在獣人たちは岐路に立たされているという事だ。重大な進化の岐路! 旧人類と同じ進化をたどり絶滅するか! 全く異なる進化を遂げて絶滅を先延ばしにするか! 神秘的よね……生命って!」
「あ、あの……」
研究熱心な人だという事は、今の今までのやり取りで十分に理解していたつもりだ。だが、これはマッドサイエンティスト並みに変だ。
「ごめん、ごめん。脱線したね! とにもかくにも、獣人の中でも魔力を放出出来るようになった者が出てきたのが数世紀前からのことなんだ!」
座学とは言われていたが、これじゃあ歴史の授業だ。
確かに歴史は知りたいのだが、今はそれ以上に魔力の使い方を学びたい。たぶん、彼女は僕の疑問に答えようとしてくれているのだろう。頭がおかしいんじゃなくて、頭がよすぎるゆえに行動がよくわからなくなっているんだ。
彼女の性格を考えてみれば何ら不思議ではない。
「うんうん。十分に分かっているわよ! でも時間は有限だから、カギとなることは今のうちに話しておかないとね」
「それはどういう意味ですか?」
また意味深なことを口走った。
「どう? 少しは魔力のことを受け入れられるようになった? 魔力の歴史を知ることで、少しぐらいは魔力について理解できたでしょう?」
「……はい」
これって、魔力を受け入れて、コントロールできるようにするための勉強だったのか……また彼女の頭がおかしくなったのかと勘違いして、頭の中で彼女のことを無理やり補正していた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
26
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる