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10 伝説の魔法
104 才能と使い方 5
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「じゃあ、そろそろ実践してみようか!」
ケントニスはさも当たり前のことを当たり前に言ったと言うような顔をしている。
だが僕にしてみればそれはおかしな話だ。
「実践って……まだ全然、魔力の使い方については聞いてないんですが?」
何も実践できるようなことを聞いていない。なんだかよくわからない魔力の歴史というやつのごく一部を聞いただけだ。はてさて何を実践しろと言うのだろうか。
「百聞は一見にしかずって言うんでしょ? 私はよく知らないけど、その通りだと思っているわ!」
どこで聞いたかもわからないような、僕の前世にあったことわざを口にする彼女だ。この世界にも似たようなことわざはなくもないが、ことわざとしては全然別物だ。彼女がいま言ったことわざを日本語に直すと、ほぼたがえることなく『百聞は一見にしかず』という意味になる。もちろん、存在しない言葉は多少遠回りにはなっているが、それでも元のことわざを知っていないとそうはならないはずと言い切れるほどにそのまんまだ。
もちろん僕もそのことわざのとおりだと思うし、今も昔もその思想を抱いて生きて来た。だがそれはあくまで僕の意見でしかない。
「いや、あなたが、実践の前に座学が必要だって言ったんじゃないですか……」
どうやら彼女は、ほんの十数分前に自らが口にした言葉を忘れてしまったらしい。
だがそれは彼女が……ケントニスの頭がよくないという意味ではない。
「もちろんそうだけど、状況というのは常にめまぐるしく変わり続けるわけ! そんな世界に生まれて十数分という長い時の中、ずーっと同じ思考でいるのは不安定だとは思わない?」
僕のような常人とは違う思考回路を持っているというだけのことだ。
言われてみれば確かに彼女の言うとおりと思えなくもない。が、全く納得はできそうにもない。だが教えてもらう側の立場としては納得せざるをえないのも現実だ。
「そうですね……」
「そう! と言いたいところだけど、最初から魔力の使い方は実践でって決めてたんだけどね」
「そ、そうなんですね」
なんだこの人。以前の世界にいた大学の先輩に似ていて、話していても全くついていけない。話している内容はおそらくかなり僕にもわかりやすいようにしてくれているのだろうが、そもそもやっぱり全然優しくないよこの人。
でもなんやかんやで話が途切れないのはすごい。普通の天才なら、相手が話を理解できないとなると簡単に話そうとは努力してくれるものの、それでも結局伝わらなくて説明することをやめてしまうだろうに。
「そりゃ、物事というのは、少しでも妥協したらまるで違った意味に解釈されることがあるからね! 間違ったまま理解されたり、1だけ知って10を知ったように思われてしまうと、後世を育てるときに齟齬が発生してしまうかもしれないからね!」
「……本当に心を読んでいるわけじゃないんですよね?」
彼女はあっけらかんとしている様子だが、やはりそれでも人の思考を読むことに長けているらしい。
「1を聞いたら10を理解する。それが出来て初めて心が読めたと言っても過言ではないけど、私は所詮は一手先を読んでるぐらいだからね! その問いに答えるとするなら”ノー”だね!」
「まあ、いいですけど……それで、実践するって言いましたけど、何を実戦するんですか? 何も教えてもらってないのに実践も何もないですんよね?」
「実戦実践うるさいなぁ……それほど構える必要はないさ! 君には神より授かりし知識はあるけど、実戦で使うようなことはほとんどないでしょ?」
神より授かりし知識って大げさだな。確かに魔力を扱うための知識は、認めたくはないけれど神の恩恵により得られたものだ。
しかしそれを知る由もない彼女がそれを口にすると薄ら寒さすらある。
僕は少しだけ息をこぼすとともに、もう一度だけ問いかける。
「……それはいいんですが、あなたがおっしゃったとおり、僕には魔力を扱う才能がないんですよ。そんな僕が――」
「――おっと、みなまで言わないでもらえるかな? その言葉はきっと自身の喪失につながるからね……私の話をうまく理解してくれていなかったようだからもう一度説明させてもらうね。天才なんてものは、この世のどこにも存在しないんだよ……人より多少頭がいいというのも、人より多少力が強いというのも作られたものでしかない。天才というのは、ある一定の作られた土俵の上で努力を続けられるものに与えられる称号でしかない。自らを天才だとか、凡才だとか言うような輩には絶対に得ることが出来ない称号」
「それは――」
「――『違う!』って? 何が違うの? 何も違わないでしょ? 人並み外れた魔力量を持つ人がそこから何もせずに天才足り得るはずがないでしょう。もしかして、天才がたまに言う『何の努力もしてないのに……』って言葉を信じちゃった口の人なのかしら? 彼、彼女たちはそれを努力とすら思っていないだけよ。それだけポテンシャルに違いがあるというだけのこと!」
いやいや、そのポテンシャルを持っている人のことを天才と呼ぶんじゃないのか? と思ったが、彼女の目を見てそう口にするのはやめた。
おそらくだが、彼女の言いたいことはそういう事ではない。
ケントニスはさも当たり前のことを当たり前に言ったと言うような顔をしている。
だが僕にしてみればそれはおかしな話だ。
「実践って……まだ全然、魔力の使い方については聞いてないんですが?」
何も実践できるようなことを聞いていない。なんだかよくわからない魔力の歴史というやつのごく一部を聞いただけだ。はてさて何を実践しろと言うのだろうか。
「百聞は一見にしかずって言うんでしょ? 私はよく知らないけど、その通りだと思っているわ!」
どこで聞いたかもわからないような、僕の前世にあったことわざを口にする彼女だ。この世界にも似たようなことわざはなくもないが、ことわざとしては全然別物だ。彼女がいま言ったことわざを日本語に直すと、ほぼたがえることなく『百聞は一見にしかず』という意味になる。もちろん、存在しない言葉は多少遠回りにはなっているが、それでも元のことわざを知っていないとそうはならないはずと言い切れるほどにそのまんまだ。
もちろん僕もそのことわざのとおりだと思うし、今も昔もその思想を抱いて生きて来た。だがそれはあくまで僕の意見でしかない。
「いや、あなたが、実践の前に座学が必要だって言ったんじゃないですか……」
どうやら彼女は、ほんの十数分前に自らが口にした言葉を忘れてしまったらしい。
だがそれは彼女が……ケントニスの頭がよくないという意味ではない。
「もちろんそうだけど、状況というのは常にめまぐるしく変わり続けるわけ! そんな世界に生まれて十数分という長い時の中、ずーっと同じ思考でいるのは不安定だとは思わない?」
僕のような常人とは違う思考回路を持っているというだけのことだ。
言われてみれば確かに彼女の言うとおりと思えなくもない。が、全く納得はできそうにもない。だが教えてもらう側の立場としては納得せざるをえないのも現実だ。
「そうですね……」
「そう! と言いたいところだけど、最初から魔力の使い方は実践でって決めてたんだけどね」
「そ、そうなんですね」
なんだこの人。以前の世界にいた大学の先輩に似ていて、話していても全くついていけない。話している内容はおそらくかなり僕にもわかりやすいようにしてくれているのだろうが、そもそもやっぱり全然優しくないよこの人。
でもなんやかんやで話が途切れないのはすごい。普通の天才なら、相手が話を理解できないとなると簡単に話そうとは努力してくれるものの、それでも結局伝わらなくて説明することをやめてしまうだろうに。
「そりゃ、物事というのは、少しでも妥協したらまるで違った意味に解釈されることがあるからね! 間違ったまま理解されたり、1だけ知って10を知ったように思われてしまうと、後世を育てるときに齟齬が発生してしまうかもしれないからね!」
「……本当に心を読んでいるわけじゃないんですよね?」
彼女はあっけらかんとしている様子だが、やはりそれでも人の思考を読むことに長けているらしい。
「1を聞いたら10を理解する。それが出来て初めて心が読めたと言っても過言ではないけど、私は所詮は一手先を読んでるぐらいだからね! その問いに答えるとするなら”ノー”だね!」
「まあ、いいですけど……それで、実践するって言いましたけど、何を実戦するんですか? 何も教えてもらってないのに実践も何もないですんよね?」
「実戦実践うるさいなぁ……それほど構える必要はないさ! 君には神より授かりし知識はあるけど、実戦で使うようなことはほとんどないでしょ?」
神より授かりし知識って大げさだな。確かに魔力を扱うための知識は、認めたくはないけれど神の恩恵により得られたものだ。
しかしそれを知る由もない彼女がそれを口にすると薄ら寒さすらある。
僕は少しだけ息をこぼすとともに、もう一度だけ問いかける。
「……それはいいんですが、あなたがおっしゃったとおり、僕には魔力を扱う才能がないんですよ。そんな僕が――」
「――おっと、みなまで言わないでもらえるかな? その言葉はきっと自身の喪失につながるからね……私の話をうまく理解してくれていなかったようだからもう一度説明させてもらうね。天才なんてものは、この世のどこにも存在しないんだよ……人より多少頭がいいというのも、人より多少力が強いというのも作られたものでしかない。天才というのは、ある一定の作られた土俵の上で努力を続けられるものに与えられる称号でしかない。自らを天才だとか、凡才だとか言うような輩には絶対に得ることが出来ない称号」
「それは――」
「――『違う!』って? 何が違うの? 何も違わないでしょ? 人並み外れた魔力量を持つ人がそこから何もせずに天才足り得るはずがないでしょう。もしかして、天才がたまに言う『何の努力もしてないのに……』って言葉を信じちゃった口の人なのかしら? 彼、彼女たちはそれを努力とすら思っていないだけよ。それだけポテンシャルに違いがあるというだけのこと!」
いやいや、そのポテンシャルを持っている人のことを天才と呼ぶんじゃないのか? と思ったが、彼女の目を見てそう口にするのはやめた。
おそらくだが、彼女の言いたいことはそういう事ではない。
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