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10 伝説の魔法
120 兄として4
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かつて、前世では誰にもすることができなかった話を今ようやく話すことができた。これは、メリーに夢を教えるということと同時に、僕の心をさらけ出すということでもある。
「もし今、夢が見つからなかったとしても……いつかは見つかると思う。やりたいと思う仕事が……なりたいと願うものが……でもいつかは夢を諦めなくちゃならない時だって来るかもしれない……だけど、だからその時までは自分の夢を……目標を目指して頑張ってほしい。それが今の僕の夢でもあるから」
僕はそう言ってメリーの澄んだ瞳を覗き込む。疑いというものが全く混ざっていない綺麗な目だ。そんな彼女の目がじっとこちらを向いていた。
メリーは少しだけうなずく動作をとったが、何かを口にすることはなく、ひたすらに話しの続きを待っている様子だ。そんな彼女に根負けして、僕は再び話し始める。
「分かっているとは思うけど、犬種はこの国では差別されているからたぶん大きな夢はかなわない。そのことだけは覚悟していてほしい」
こんなことを幼い妹に話すのはかなり酷なことだと胸が痛むが、メリーの瞳を見ているとそうしなければいけない気がした。事実を包み隠さず話すべきだと、そう誰かに諭されているような気分だ。
だけど事実、犬種と言うだけで差別されるこんなご時世だ。メリーの夢がかなう確率の方がかなわない確率よりもはるかに低いかもしれない。それは僕がどれほど努力して変えようとしても、すぐには変えられない現実だ。幾度となく挑戦と一杯を繰り返してきた所で、次が必ずしもうまくいくとは限らない。それは何度も失敗を繰り返してきた僕だからこそ分かることだ。もし仮に、今僕が話さなかったからと言って、その事実が変わることはないし、メリーも『差別の壁』にぶつかることだろう。
ガンジーが長い時間をかけて訴えかけたように……キング牧師が必死に夢を語りかけたように……僕も長い時間をかけて社会を変えていくことになるだろう。それでも、差別をなくすことは容易なことではない。それは僕が生きて来た現代社会の中で嫌という程思い知らされた。
だからきっと、メリーのために生きるという事は、自分の人生をほとんど差別問題に対して使うことになるだろう。
メリーはきっと『それ』を望んでいない。
彼女は僕の犠牲を望まない。そうあってほしいと僕が思っているだけかもしれないけど、きっとそうだろう。彼女は僕の唯一の家族で、僕は彼女の唯一の家族だ。僕は家族というものを長年勘違いし続けてきたが、どうやら家族というものは互いを思いやるものらしい。家族を憎んで気が僕が家族を思いやっているのだから、実のところはそれが正しい家族の姿なのだろう。
しかし、そんな『思いやり』がメリーにとっては迷惑なのかもしれないと考えると、彼女から目をそらしてしまった。
「兄ちゃん?」
メリーが心配そうな声で僕を呼ぶ。
突然、夢について語り始めたかと思ったら、挙動不審になる兄なんてかなり気持ちが悪いだろう。僕だって兄弟からそんな態度を取られたら気持ちが悪く感じる。そんなことを考えて、僕は再びメリーに視線を戻した。
本心を話さなければ今回の話し合いは意味のないものとなる。今まで通りと同じで、元の木阿弥だ。だから誰にも話さなかった夢の話をメリーには話したし、僕の不安についても話すべきだとは分かってはいるのだが、彼女の澄んだ瞳を見ると不安になる。
「何でもない……」
「辛そうだよ?」
「大丈夫だ。大丈夫だけど……一つだけ……メリーに確認しておきたいことがあるんだ。本当に勇者になるつもりは……いいや、『なりたくない』ってことでいいんだな?」
僕の質問にメリーは戸惑いの表情を見せている。
それもそのはずだ。メリーはさっき僕と会うなり、『勇者にならない』と断言したのだから。だけどそれは、僕とイチゴの話を聞いたうえでの言葉であり、メリー自身の気持ちを口に出したというわけではない。言ってしまえば、彼女から僕への『思いやりの言葉』なのかもしれない。僕が彼女を家族として思いやるように、彼女も僕を家族として思いやっていると考えるのは何ら不自然ではないだろう。
しつこい様に感じるかもしれないが、これはどうしても聞いておかなければならないことだ。
この世界における勇者は教会による操り人形にもなりかねないし、どれほど大きな危険が待ち受けているかもわからないが、それと同時に世界を救うことが出来る存在でもあるし、魔王に対応できる数少ない存在だろう。犬種とは言っても世界を救うことが出来る勇者だ……差別される事もなくなるだろう。
僕達犬種にとって、勇者として選ばれることは幸せへの近道でもある。
そんな大切なことを当事者の確認も取らずに、僕やリグダミス達の思想で止めてはいけない。最初からわかりきっていたことだ。ただ、僕はその事実から目をそらし続けてきた。イチゴも何も言わなかったから、きっとそれが正しいのだろうと考えないようにしてきたが、それじゃあ、僕の両親と同じだ。
自分以外の歩む人生は、家族で会ったしても完全に否定することは出来ない。出来ることは悪い方向に行かないように助言したり、導いたりすることだけだ。
「もし今、夢が見つからなかったとしても……いつかは見つかると思う。やりたいと思う仕事が……なりたいと願うものが……でもいつかは夢を諦めなくちゃならない時だって来るかもしれない……だけど、だからその時までは自分の夢を……目標を目指して頑張ってほしい。それが今の僕の夢でもあるから」
僕はそう言ってメリーの澄んだ瞳を覗き込む。疑いというものが全く混ざっていない綺麗な目だ。そんな彼女の目がじっとこちらを向いていた。
メリーは少しだけうなずく動作をとったが、何かを口にすることはなく、ひたすらに話しの続きを待っている様子だ。そんな彼女に根負けして、僕は再び話し始める。
「分かっているとは思うけど、犬種はこの国では差別されているからたぶん大きな夢はかなわない。そのことだけは覚悟していてほしい」
こんなことを幼い妹に話すのはかなり酷なことだと胸が痛むが、メリーの瞳を見ているとそうしなければいけない気がした。事実を包み隠さず話すべきだと、そう誰かに諭されているような気分だ。
だけど事実、犬種と言うだけで差別されるこんなご時世だ。メリーの夢がかなう確率の方がかなわない確率よりもはるかに低いかもしれない。それは僕がどれほど努力して変えようとしても、すぐには変えられない現実だ。幾度となく挑戦と一杯を繰り返してきた所で、次が必ずしもうまくいくとは限らない。それは何度も失敗を繰り返してきた僕だからこそ分かることだ。もし仮に、今僕が話さなかったからと言って、その事実が変わることはないし、メリーも『差別の壁』にぶつかることだろう。
ガンジーが長い時間をかけて訴えかけたように……キング牧師が必死に夢を語りかけたように……僕も長い時間をかけて社会を変えていくことになるだろう。それでも、差別をなくすことは容易なことではない。それは僕が生きて来た現代社会の中で嫌という程思い知らされた。
だからきっと、メリーのために生きるという事は、自分の人生をほとんど差別問題に対して使うことになるだろう。
メリーはきっと『それ』を望んでいない。
彼女は僕の犠牲を望まない。そうあってほしいと僕が思っているだけかもしれないけど、きっとそうだろう。彼女は僕の唯一の家族で、僕は彼女の唯一の家族だ。僕は家族というものを長年勘違いし続けてきたが、どうやら家族というものは互いを思いやるものらしい。家族を憎んで気が僕が家族を思いやっているのだから、実のところはそれが正しい家族の姿なのだろう。
しかし、そんな『思いやり』がメリーにとっては迷惑なのかもしれないと考えると、彼女から目をそらしてしまった。
「兄ちゃん?」
メリーが心配そうな声で僕を呼ぶ。
突然、夢について語り始めたかと思ったら、挙動不審になる兄なんてかなり気持ちが悪いだろう。僕だって兄弟からそんな態度を取られたら気持ちが悪く感じる。そんなことを考えて、僕は再びメリーに視線を戻した。
本心を話さなければ今回の話し合いは意味のないものとなる。今まで通りと同じで、元の木阿弥だ。だから誰にも話さなかった夢の話をメリーには話したし、僕の不安についても話すべきだとは分かってはいるのだが、彼女の澄んだ瞳を見ると不安になる。
「何でもない……」
「辛そうだよ?」
「大丈夫だ。大丈夫だけど……一つだけ……メリーに確認しておきたいことがあるんだ。本当に勇者になるつもりは……いいや、『なりたくない』ってことでいいんだな?」
僕の質問にメリーは戸惑いの表情を見せている。
それもそのはずだ。メリーはさっき僕と会うなり、『勇者にならない』と断言したのだから。だけどそれは、僕とイチゴの話を聞いたうえでの言葉であり、メリー自身の気持ちを口に出したというわけではない。言ってしまえば、彼女から僕への『思いやりの言葉』なのかもしれない。僕が彼女を家族として思いやるように、彼女も僕を家族として思いやっていると考えるのは何ら不自然ではないだろう。
しつこい様に感じるかもしれないが、これはどうしても聞いておかなければならないことだ。
この世界における勇者は教会による操り人形にもなりかねないし、どれほど大きな危険が待ち受けているかもわからないが、それと同時に世界を救うことが出来る存在でもあるし、魔王に対応できる数少ない存在だろう。犬種とは言っても世界を救うことが出来る勇者だ……差別される事もなくなるだろう。
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そんな大切なことを当事者の確認も取らずに、僕やリグダミス達の思想で止めてはいけない。最初からわかりきっていたことだ。ただ、僕はその事実から目をそらし続けてきた。イチゴも何も言わなかったから、きっとそれが正しいのだろうと考えないようにしてきたが、それじゃあ、僕の両親と同じだ。
自分以外の歩む人生は、家族で会ったしても完全に否定することは出来ない。出来ることは悪い方向に行かないように助言したり、導いたりすることだけだ。
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