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10 伝説の魔法
126 伝説の魔法1
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◇
目を覚ました時には、ベットの上に寝かされていた。
見たこともない天井からは、金はおろか見たこともない鉱石が赤、黒、緑と輝いているシャンデリアがぶら下げられており、そこがイチゴの店ではないことは瞬時に理解できた。
僕が横たわっているベットも豪華絢爛を尽くしたと言っても過言ではないほどに、派手な装飾がなされており、犬種はおろか一介の獣人が寝そべって良い物ではないと自覚させられるものだ。
「目を覚ました?」
真っ赤な二つの瞳が、こちらを心配そうに見つめている。
開いたばかりの僕の目は少しぼやけた感じだが、それでもどこかで見たことがあるような気がするほどに綺麗な瞳だと感じた。
次第に視力が戻ると、その白すぎる髪と肌で思い出した。
「アルタ・ロットワイラー!?」
どうして彼女がここにいるのだろう。
僕はさっきまでケントニスの授業を受けていたはずだ。
いや、そんなことより、アルタは重傷を負ったと聞いていたが……無事だったのか。そうだ。そう言えば、リグダミスがポーションを作ったんだ。
まあ生きていてよかった。命の恩人だし、たぶん『良い人』だから。
「驚いているみたいだね。私もちょっと驚いているよ……でも確か、アルタって呼んでって言ったと思うけど?」
彼女は半分笑いながら、冗談ぽく頬を膨らませてみせる。その姿はお嬢様というよりかは、もっと親しみやすい感じだ。
「すみません。アルタさん」
「敬語も禁止! 私の前ではかしこまらないでって」
「いや、それはさすがに……」
大公の娘にため口を聞くなんて僕には無理だ。彼女は僕なんかと違って、オーラがすごい。初めて見た時からただならぬ気配を感じていたし、何より彼女は女神よりも女神らしい。人間に興味がなかった僕が初めて本当の意味で美しいと感じた存在だ。
いわゆる高嶺の花というやつだ。別段、特別な感情を抱いているというわけでもないが、あまりなれなれしくしていいような存在ではないと感じている。
「まあ仕方ないか……」と僕の様子を見て、彼女はそうぽつりとつぶやくと続けて言った。
「それで怪我はもう大丈夫なの?」
そう言われてようやく思い出す。あの恐怖心を。
初めての魔物退治で運悪く出会ってしまった大蛇の魔物、そんなものよりも遥かに強い死の感覚が僕の脳裏につきまとう。ケントニスの殺気、その感覚が頭にこびりついて離れない。
本当に殺すつもりだった。
確かに、訓練についていけないのなら、そのうち魔物に殺されることになるかもしれない。だがだからと言って訓練で人を殺してもいいという事にはならない。それが僕の考えだ。
しかし、ケントニスは違った。
「殺されるかと思いました……」
震えは今も止まらない。
「こんなこと言っても信じないかもしれないけど、あの人が命を奪うなんて考えられないわ……だってあの人は……」
「いえ、違います。殺す気でやってくれたからわかったこともあるんです。別に恨んでるってわけじゃないですよ」
彼女はケントニスのことを信頼して庇っているようだが、僕がケントニスのことを憎く思ったり、ただ怯えているわけではない。今回の負傷はそれよりも大きなものを得るための代償だったと、簡単に水に流すことだって出来るほどには僕は理性的でさえある。
たぶん、今回のことこそが、イチゴの言う『優しさ』というやつなのだろう。
ケントニスは自分の身を切ってでも僕を鍛えようとしてくれている。もちろんそのことはよく理解した。だけど、刻まれた恐怖というやつは簡単には拭い去れない。
「――それでいいんだよ……恐怖という感情は身を竦ませることもあれば、身を守ることだってあるからね」
僕とアルタは突然発せられた声の発生源を見る。入口の方だ。そこには小さな少女が開かれたドアにもたれかかるように立っていた。
「ケントニスさん!」
アルタは驚いたような声を発して腰に携えた剣から手を引いた。
全く気配を感じなかった。それはおそらくアルタもなのだろう。歴戦の勇者が、声をかけられるまで何の警戒もなく、けが人と話していたのがその証拠だ。
「やあ、アルタちゃん。積もる話もあるだろうけど、ちょっと席を外してもらってもいいかな?」
「もちろんかまいません」
そんなやり取りの後、すぐさまアルタが部屋を去って行き、ケントニスがドアをゆっくりと閉じる。そしてすぐに「で?」と僕に声をかけてくるんのだが、その意味がまるで分からない。
「何がです?」
僕が困惑していると、彼女は少しだけ不思議そうな顔をしてから、すぐ様に笑顔を取り戻しこちらに近づいてきてベットの傍においている少し高級そうな椅子にゆるりと腰を掛けた。
「そうか……私は君ならすぐに伝説の魔法を理解してくれると思っていたけど、少し早かったみたいだね」
すべてを理解したような顔で何度かうなずく彼女だが、やはり僕には意味が分からなかった。
「伝説の魔法?」
そんなもの説明すら受けていない。説明を受けていないものについて理解も何もないと思うが……どういうことなのだろうか。
目を覚ました時には、ベットの上に寝かされていた。
見たこともない天井からは、金はおろか見たこともない鉱石が赤、黒、緑と輝いているシャンデリアがぶら下げられており、そこがイチゴの店ではないことは瞬時に理解できた。
僕が横たわっているベットも豪華絢爛を尽くしたと言っても過言ではないほどに、派手な装飾がなされており、犬種はおろか一介の獣人が寝そべって良い物ではないと自覚させられるものだ。
「目を覚ました?」
真っ赤な二つの瞳が、こちらを心配そうに見つめている。
開いたばかりの僕の目は少しぼやけた感じだが、それでもどこかで見たことがあるような気がするほどに綺麗な瞳だと感じた。
次第に視力が戻ると、その白すぎる髪と肌で思い出した。
「アルタ・ロットワイラー!?」
どうして彼女がここにいるのだろう。
僕はさっきまでケントニスの授業を受けていたはずだ。
いや、そんなことより、アルタは重傷を負ったと聞いていたが……無事だったのか。そうだ。そう言えば、リグダミスがポーションを作ったんだ。
まあ生きていてよかった。命の恩人だし、たぶん『良い人』だから。
「驚いているみたいだね。私もちょっと驚いているよ……でも確か、アルタって呼んでって言ったと思うけど?」
彼女は半分笑いながら、冗談ぽく頬を膨らませてみせる。その姿はお嬢様というよりかは、もっと親しみやすい感じだ。
「すみません。アルタさん」
「敬語も禁止! 私の前ではかしこまらないでって」
「いや、それはさすがに……」
大公の娘にため口を聞くなんて僕には無理だ。彼女は僕なんかと違って、オーラがすごい。初めて見た時からただならぬ気配を感じていたし、何より彼女は女神よりも女神らしい。人間に興味がなかった僕が初めて本当の意味で美しいと感じた存在だ。
いわゆる高嶺の花というやつだ。別段、特別な感情を抱いているというわけでもないが、あまりなれなれしくしていいような存在ではないと感じている。
「まあ仕方ないか……」と僕の様子を見て、彼女はそうぽつりとつぶやくと続けて言った。
「それで怪我はもう大丈夫なの?」
そう言われてようやく思い出す。あの恐怖心を。
初めての魔物退治で運悪く出会ってしまった大蛇の魔物、そんなものよりも遥かに強い死の感覚が僕の脳裏につきまとう。ケントニスの殺気、その感覚が頭にこびりついて離れない。
本当に殺すつもりだった。
確かに、訓練についていけないのなら、そのうち魔物に殺されることになるかもしれない。だがだからと言って訓練で人を殺してもいいという事にはならない。それが僕の考えだ。
しかし、ケントニスは違った。
「殺されるかと思いました……」
震えは今も止まらない。
「こんなこと言っても信じないかもしれないけど、あの人が命を奪うなんて考えられないわ……だってあの人は……」
「いえ、違います。殺す気でやってくれたからわかったこともあるんです。別に恨んでるってわけじゃないですよ」
彼女はケントニスのことを信頼して庇っているようだが、僕がケントニスのことを憎く思ったり、ただ怯えているわけではない。今回の負傷はそれよりも大きなものを得るための代償だったと、簡単に水に流すことだって出来るほどには僕は理性的でさえある。
たぶん、今回のことこそが、イチゴの言う『優しさ』というやつなのだろう。
ケントニスは自分の身を切ってでも僕を鍛えようとしてくれている。もちろんそのことはよく理解した。だけど、刻まれた恐怖というやつは簡単には拭い去れない。
「――それでいいんだよ……恐怖という感情は身を竦ませることもあれば、身を守ることだってあるからね」
僕とアルタは突然発せられた声の発生源を見る。入口の方だ。そこには小さな少女が開かれたドアにもたれかかるように立っていた。
「ケントニスさん!」
アルタは驚いたような声を発して腰に携えた剣から手を引いた。
全く気配を感じなかった。それはおそらくアルタもなのだろう。歴戦の勇者が、声をかけられるまで何の警戒もなく、けが人と話していたのがその証拠だ。
「やあ、アルタちゃん。積もる話もあるだろうけど、ちょっと席を外してもらってもいいかな?」
「もちろんかまいません」
そんなやり取りの後、すぐさまアルタが部屋を去って行き、ケントニスがドアをゆっくりと閉じる。そしてすぐに「で?」と僕に声をかけてくるんのだが、その意味がまるで分からない。
「何がです?」
僕が困惑していると、彼女は少しだけ不思議そうな顔をしてから、すぐ様に笑顔を取り戻しこちらに近づいてきてベットの傍においている少し高級そうな椅子にゆるりと腰を掛けた。
「そうか……私は君ならすぐに伝説の魔法を理解してくれると思っていたけど、少し早かったみたいだね」
すべてを理解したような顔で何度かうなずく彼女だが、やはり僕には意味が分からなかった。
「伝説の魔法?」
そんなもの説明すら受けていない。説明を受けていないものについて理解も何もないと思うが……どういうことなのだろうか。
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