転生したら、犬だったらよかったのに……9割は人間でした。

真白 悟

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10 伝説の魔法

130 伝説の魔法5

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「ちなみに何の意味があってこれを?」

 外せないというのならせめて理由だけでも聞いておきたい。自分の命を危険にさらすことになるんだから、それぐらいの権利はあるだろう。
 ケントニスは僕の質問に呆れているようで大きなため息を吐いた。それでも彼女はきちんと質問に答えてくれる。

「感情のコントロール、恐怖を抑えること……時間がないからかなり早足でやったけれど、どのみちその二つは一朝一夕に身に着けられるものじゃないわ! ある程度は知って……覚悟しておかなければならないことだったし、戦いの中でただなれるというだけでもだめだから一応教えてけれどね。どっちも伝説の魔法を使うのには重要なことだよ!」
「それと僕の質問に何の関係が?」
「そうだね……なら聞くけど、魔法を使うのに最も重要なことってなんだと思う?」
「感情のコントロールですか?」
「半分は正解だけど、でもそれじゃあ足りない。何のために感情をコントロールするんだっけ?」
「それは……魔力を調整する為ですよね?」
「そう! 私みたいに魔法を自在に使うには、精密な魔力コントロールが必要とされるんだよ! だからそこで重要になるのがその服っていうわけ!」

 ケントニスは嬉しそうに悠々と僕をほめて頭をなでる。
 僕はまるで僕達が教師と生徒みたいなほほえましい関係であると錯覚しうれしくなるが、幾度も殺されかけたことを思いだして今度は反対に恐怖を感じ少しだけのけぞる。彼女は敵ではないが、かなり実践的な訓練をする。訓練として頭の上から強力な一撃を入れられる可能性は非常に高く、僕はそれを甘んじて受けれてはならない。
 もちろんどのような攻撃であったとしても、死なないように手心を加えてくれることだろうが、それでもなお死にかねないというのが常軌を逸した能力の持ち主と対峙している時の常識だ。短期間でそれをよく学んだ。

「そう、それでいい。相手が誰であろうと油断してはいけない。特に戦闘中と私との訓練中は相手に体を触らせるなんてことはしちゃいけない。でも一つだけ注意するなら、どれほど絶望的な状況においても怯えた表情をみせちゃだめ……それは魔法使いにとって、自分が弱っていることを教えるのと同じだからね。ケン君も死にたくはないでしょう? だったら敵に弱みは見せないこと!」

 小さな体であるにも関わらず、彼女の言葉は強く、そして恐ろしく真に迫っている。戦いには常に死がつきまとうという事を何度も思い知らせてくれた。
 もちろんそんな彼女のことを僕は恐ろしく感じているが、それと同時にある種の信頼も生まれている。それは恐怖や暴力、そこからつながる飴と鞭的な意味合いではない。むしろ彼女から飴なんてものを与えてもらった覚えはない。恐怖による依存もない。それなのに幾分かの信頼はある。
 単なる仕事なのだから都合のいいことを言って誤魔化すことも出来たはずだが、彼女はそれをしなかった。彼女はいつも本当のことを口にした。今回もそうだ。

「死にたくありません……妹のためにも……僕のためにも!」
「だったら考えてる余裕もないぐらいに頑張らないとね!」

 これが彼女の優しさなんだ。都合の良い優しさじゃない。本当のことを口にしてくれる優しさ。ようやくイチゴの言った『優しさ』の意味が理解できた。彼女は他人のために自分が嫌われることすらいとわないほどに『誰よりも優しい』んだ。
 そんな彼女が必要だと言うのであれば、僕はこの服を身にまとったまま魔力のコントロールが出来るようにならなければならない。

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