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10 伝説の魔法
132 伝説の魔法7
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「魔力は体の一部……まさにその通りだわ! それを理解することこそが、伝説の魔法を考えるうえで最も重要で初歩的なこと!」
ケントニスは僕の答えを聞いて嬉しそうに、そしてまた懐かしむようにそう言った。
正直なところ、僕には伝説の魔法とかどうでもいい。妹を……メリーを守れる力が持てるのならそれで十分だと、今でもそう考えている。それでもケントニスの嬉しそうな顔を見ると、どうしてだかその魔法を習得するのもいいと思えた。
「伝説の魔法……どんな魔法なんです?」
「前にも言ったけれど、私の口からそれを説明することは出来ないわ! 教えることが出来たとしても教えないけどね……ケン君が自分で理解できないと意味ないからね!」
思わせぶりなことばかり口にするけど、やっぱり彼女は『伝説の魔法』とやらについて全く教えてくれない。一体どんな魔法だというのだろう。彼女が訓練の初日に見せてくれたような、一瞬で何もないところから椅子を取り出すような、本当の意味でのファンタジックな魔法のことを指すのだろうか……それなら若干使ってみたい。
「そんなことより、早く立って! さっきと同じように、回復する魔力と消費する魔力がほとんど同じになるように魔力を放出してね!」
「……嫌です」
というか無理。もう立ち上がる気力すらない。体力のほうが消耗しているんだから、魔力が回復しようがそれは変わらない。
「無理だって思ってるんだよね? でも出来るんだよ! 勘違いしているかもしれないけど、根性が足りないとかそういう事じゃないよ! 魔法には限界を超えても獣人の体を動かせるだけの力があるって言っているの!」
「限界を超える……?」
そう言われてみれば確かにそうだったような気がしないでもない。
僕はさっきまで明らかに今よりも衰弱していた。それなのに立っていられたんだ。先ほどよりも幾分かマシな今なら、『魔力を体の一部』として全身に張り巡らせれば立ち上がれるかもしれない。
妹にこんな情けない姿を見せるわけにはいかない。
「ふぅ……」
大きく息を吐いてとぎれとぎれながらも、深呼吸を繰り返し少しずつ体中に意識を行き渡らせる。
ゆっくりと魔力は全身に流れていくのがわかる。だがその魔力も徐々に体の外に放出され、そして身にまとった魔物の毛皮に吸われていく。それと同時に体が、精神が重たくなっていくのを感じた。それでも体はさっきよりかは幾分か動く。
まず起き上がりそうになる地面を支えつつ、前傾姿勢になりながらも何とか足の裏を地面と平行に保つ。
「立ち上がれた?」
「当たり前だよ……魔力って言うのは気力だからね!」
だからこそ出来て当たり前だとケントニスは笑う。
しかし彼女の笑みは僕にとっては不幸の訪れも同じ、きっとこれから立ち上がってしまったことを公開するとになるだろう。女神の恩恵によって、魔力の扱い延いては武器の扱いについては常人以上の才能に恵まれている僕ではあるが、それ以外はてんでダメ。前世の経験すら全く生かすことが出来ない僕にとっては、単なる訓練、修業であったとしても地獄のようなのだ。
「それで?」
正直聞きたくもないことだが、何も知らないでいるよりかはこれから起こるであろう……いいや彼女が起こすであろうことを聞いておかなければなかった。
そんな僕の問いかけに彼女はまるで答えようとしない。ただただ笑顔をこちらに向けるだけで、何の指示すらもしてこないのだ。むろん、その意味を理解できないわけではない。というよりも、彼女の主張は最初からたった一つだった。
「わかりましたよ……」
僕はまるで長いマラソンから帰って来たところで、もう一度来た道を帰るように言われたような気分で体の奥底から魔力を放出し始める。
魔力の放出量を変えていないのに最初よりかはずいぶんとマシになった。だがそれでもやはり魔力が服に喰われる分辛いものがある。
「放出量が足りないよ!」
「いや、そんなはず……」
「魔力の回復量が増えたんだね! それじゃあ、もうちょっと放出量を上げてみようね?」
「え……いや……」
「上げてみようね!?」
ケントニスには有無を言わさぬ威圧感があった。
彼女は僕自身すらも理解できていなかったことを瞬時に理解して、そして僕が楽できないようにそんな指示を出したのだ。それはもうものすごい観察力と判断力だし、僕自身それには賛辞の言葉を送りたかったけれど、正直惨事になりそうなのでやめておこう。なにより今は彼女の力が恨めしい。
再び魔力放出量が魔力回復量と同じになるまで上げた僕の体中に絶望が蔓延する。
時間が経過するにつれて体の節々は痛み、疲労によって立っていることすら辛くなり、そしてやがては息が苦しくなって過呼吸気味になった。
「ずいぶんとなれたね?」と笑顔で問いかけてくるケントニスに憎しみすら覚えるようになった時、僕はふとあることに気が付いた。魔力が回復する感覚はまるでない……それどころか体中が悲鳴を上げているわけだが、やはり最初に比べるとずいぶんと楽になったような気がする。
「ケン君は集中していて気が付いてないだろうけど、今日訓練を始めてからもう5時間ぐらい経ったからね……そろそろ一定の魔力を放出し続けることに慣れてきたんだよ!」
「な、慣れて来た……?」
精神的面から考えてまるでそうは思えないんだけど、一ミリたりとも心当たりがないかと言われたらそうでもない。
そんなことよりもっと気になることが耳に入って来た。
「ていうか……5時間?」
5時間もこんなことをさせられていたのか? そりゃ、少しぐらい慣れもするわな。っていうか、5時間でほんの少し前進しただけって……あと一体どれぐらいこの訓練をやらされるんだろう。疲労で死んでしまいそうだ。
「丁度、折り返し地点だし……気を張りなおして行こうか!」
「え?」
「大丈夫、大丈夫! 私は最後まで付き合うからね!」
ちょっと待ってくれ、今彼女はなんて言った? 『折り返し地点』という言葉が聞こえた気がするが、聞き間違いだよな……いや、そうであってほしい。
ケントニスは僕の答えを聞いて嬉しそうに、そしてまた懐かしむようにそう言った。
正直なところ、僕には伝説の魔法とかどうでもいい。妹を……メリーを守れる力が持てるのならそれで十分だと、今でもそう考えている。それでもケントニスの嬉しそうな顔を見ると、どうしてだかその魔法を習得するのもいいと思えた。
「伝説の魔法……どんな魔法なんです?」
「前にも言ったけれど、私の口からそれを説明することは出来ないわ! 教えることが出来たとしても教えないけどね……ケン君が自分で理解できないと意味ないからね!」
思わせぶりなことばかり口にするけど、やっぱり彼女は『伝説の魔法』とやらについて全く教えてくれない。一体どんな魔法だというのだろう。彼女が訓練の初日に見せてくれたような、一瞬で何もないところから椅子を取り出すような、本当の意味でのファンタジックな魔法のことを指すのだろうか……それなら若干使ってみたい。
「そんなことより、早く立って! さっきと同じように、回復する魔力と消費する魔力がほとんど同じになるように魔力を放出してね!」
「……嫌です」
というか無理。もう立ち上がる気力すらない。体力のほうが消耗しているんだから、魔力が回復しようがそれは変わらない。
「無理だって思ってるんだよね? でも出来るんだよ! 勘違いしているかもしれないけど、根性が足りないとかそういう事じゃないよ! 魔法には限界を超えても獣人の体を動かせるだけの力があるって言っているの!」
「限界を超える……?」
そう言われてみれば確かにそうだったような気がしないでもない。
僕はさっきまで明らかに今よりも衰弱していた。それなのに立っていられたんだ。先ほどよりも幾分かマシな今なら、『魔力を体の一部』として全身に張り巡らせれば立ち上がれるかもしれない。
妹にこんな情けない姿を見せるわけにはいかない。
「ふぅ……」
大きく息を吐いてとぎれとぎれながらも、深呼吸を繰り返し少しずつ体中に意識を行き渡らせる。
ゆっくりと魔力は全身に流れていくのがわかる。だがその魔力も徐々に体の外に放出され、そして身にまとった魔物の毛皮に吸われていく。それと同時に体が、精神が重たくなっていくのを感じた。それでも体はさっきよりかは幾分か動く。
まず起き上がりそうになる地面を支えつつ、前傾姿勢になりながらも何とか足の裏を地面と平行に保つ。
「立ち上がれた?」
「当たり前だよ……魔力って言うのは気力だからね!」
だからこそ出来て当たり前だとケントニスは笑う。
しかし彼女の笑みは僕にとっては不幸の訪れも同じ、きっとこれから立ち上がってしまったことを公開するとになるだろう。女神の恩恵によって、魔力の扱い延いては武器の扱いについては常人以上の才能に恵まれている僕ではあるが、それ以外はてんでダメ。前世の経験すら全く生かすことが出来ない僕にとっては、単なる訓練、修業であったとしても地獄のようなのだ。
「それで?」
正直聞きたくもないことだが、何も知らないでいるよりかはこれから起こるであろう……いいや彼女が起こすであろうことを聞いておかなければなかった。
そんな僕の問いかけに彼女はまるで答えようとしない。ただただ笑顔をこちらに向けるだけで、何の指示すらもしてこないのだ。むろん、その意味を理解できないわけではない。というよりも、彼女の主張は最初からたった一つだった。
「わかりましたよ……」
僕はまるで長いマラソンから帰って来たところで、もう一度来た道を帰るように言われたような気分で体の奥底から魔力を放出し始める。
魔力の放出量を変えていないのに最初よりかはずいぶんとマシになった。だがそれでもやはり魔力が服に喰われる分辛いものがある。
「放出量が足りないよ!」
「いや、そんなはず……」
「魔力の回復量が増えたんだね! それじゃあ、もうちょっと放出量を上げてみようね?」
「え……いや……」
「上げてみようね!?」
ケントニスには有無を言わさぬ威圧感があった。
彼女は僕自身すらも理解できていなかったことを瞬時に理解して、そして僕が楽できないようにそんな指示を出したのだ。それはもうものすごい観察力と判断力だし、僕自身それには賛辞の言葉を送りたかったけれど、正直惨事になりそうなのでやめておこう。なにより今は彼女の力が恨めしい。
再び魔力放出量が魔力回復量と同じになるまで上げた僕の体中に絶望が蔓延する。
時間が経過するにつれて体の節々は痛み、疲労によって立っていることすら辛くなり、そしてやがては息が苦しくなって過呼吸気味になった。
「ずいぶんとなれたね?」と笑顔で問いかけてくるケントニスに憎しみすら覚えるようになった時、僕はふとあることに気が付いた。魔力が回復する感覚はまるでない……それどころか体中が悲鳴を上げているわけだが、やはり最初に比べるとずいぶんと楽になったような気がする。
「ケン君は集中していて気が付いてないだろうけど、今日訓練を始めてからもう5時間ぐらい経ったからね……そろそろ一定の魔力を放出し続けることに慣れてきたんだよ!」
「な、慣れて来た……?」
精神的面から考えてまるでそうは思えないんだけど、一ミリたりとも心当たりがないかと言われたらそうでもない。
そんなことよりもっと気になることが耳に入って来た。
「ていうか……5時間?」
5時間もこんなことをさせられていたのか? そりゃ、少しぐらい慣れもするわな。っていうか、5時間でほんの少し前進しただけって……あと一体どれぐらいこの訓練をやらされるんだろう。疲労で死んでしまいそうだ。
「丁度、折り返し地点だし……気を張りなおして行こうか!」
「え?」
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