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11 魔法の言葉
147 言葉の魔法
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「実践してみせてみようか?」
ケントニスのその言葉を聞いて僕は震え上がる。
「……ケントニスさんの力は十分理解しているつもりです」
『じっせん』という言葉は、その後の文脈から考えるに文字としてはおそらく『実践』のほうを表すのだろうが、万が一にも『実戦』、つまるところ実際に戦ってみて理解させられるなんてことがないとは言い切れない。
出来ればケントニスとの実戦は避けたいところだ。今はまだ。日に何度も死にかけるのはごめんだ。
「大丈夫よ。この魔法は組手じゃなくても……見ているだけでも十二分に理解できると思うから」
身構える僕をよそに、ケントニスはそう言い切ると両手を脱力させて両目をゆっくりと閉じた。
雰囲気が変わった。それは今から何が行われるのかを理解していない僕にもわかる。
思えば、ケントニスは幾たびか魔法らしい魔法のような技を使っていた。どこからともなく椅子を取り出したり、いつの間にか懐に入り込んでいたり、物理法則を捻じ曲げるような動作を何度か行っていた。彼女の言う『全くの別もの』は、もしかするとそういう物なのかもしれない。僕はそれを期待した。
「す、すごい……」
目に見えるわけではないが、ケントニスの体に辺りの魔力が集まっているように感じる。いいや、実際はそんなことはありえない。魔力が溢れている場所でならありえるかもしれないが、この場所には僕たちが発した魔力のほかにはほとんど魔力が存在していない。だけど、今の彼女にはそう錯覚させるだけの威圧感があった。
心なしか空が曇り始めたような気さえする。
しかし、ケントニス本人にはまるで動きはない。まるで瞑想でもしているかのように静かだ。
「えっと、あのケントニスさん?」
あまりにも何の動きもないから僕は思わずケントニスに近づいて肩を二回ほど叩いた。
しかし、それでもケントニスからは何の反応も帰って来ない。
立ったまま目をつぶって脱力している幼女と、ただそれを見つめているだけの男。誰かに見られたらトンデモない勘違いをされそうだ。幸いなのは、この場所を通りかかる獣人は今まで一人もいなかったという事だが、それも単なる気休めにしかならない。
そんな風に誰かに見られた時用の言い訳を考えていると、ケントニスの目が突然見開いた。
「い、一体、どんな魔法なんですか?」
僕はあわてながらも意識が現実に戻ってきたであろうケントニスに訊ねる。
「待たせたわね。本当はここまでする必要はないんだけど、ケン君は初めての弟子だからちょっとだけ本気をみせて挙げようかなってね」
ケントニスは僕の質問には答えなかった。おそらく僕の質問に対する答えは、行動で返すということなのだろう。
しかし、異様だ。ケントニスの言葉遣いがいつもと違うというのは今さらなことだが、それ以上に気配がまるで違う。人間とか獣人とかを目の前にした時のそれとはどこか違う。ある種の神々しさすら感じる。僕はその気配をどこか別のところでで感じたことがあるような気がするが、ともかく目の前に立つ幼女から感じるそれは人とは遠くかけ離れた何かに変容してしまったのだと錯覚するほどに魂のレベルで何かが異様だ。これだけ言葉にしても、その異様さが僕の矮小な脳みそには理解できそうにもない。
僕はケントニスから感じる違和感の正体を探りながら、彼女の瞳に視線を合わせる。
「その目は、一体……?」
僕の脳が錯覚を起こしているのだろうか、たまにケントニスの目が青白く発光しているように見えた。まるで瞳から稲妻でも発生しているかのように何度もまばゆい光を放ち、それなのに魅入ってしまう程に美しい瞳だ。
よく見るとケントニスの体自体が薄明るく発光しているようにも見える。これも魔力の影響なのだろうか。
「この目に関しては、ごめんね私の口からは説明できないの……でもその代わりに、さっき言ってた魔法をみせてあげるね!」
「す、すごい……」
思わず感嘆の言葉が漏れた。
この状態のケントニスは、一体どれほどすごい魔法を使うのだろう。それを考えるだけで胸は張り裂けそうなぐらいに鼓動を早める。
氷の魔法、炎の魔法、果ては光とか闇の魔法を使ったりするのだろうか、ファンタジックな世界ではあったが、いまだに魔法らしい魔法が存在していることを誰の口からもきいてない。望んで転生したわけじゃないと言っても、僕も男だ。もちろん魔法が使えるなら使いたいに決まっているし、そんな子供じみた妄想に身を焦がすぐらいには愚かだ。
「――座れ!」
ものすごく威圧感のあるケントニスの言葉が僕の耳に入る。
その瞬間、激痛と共に世界が低くなった。あまりにも突然のこと過ぎて意味が分からなかったが、少しだけ時間が経過して冷静さを取り戻して気が付いた。
「体が勝手に……と言うか体中が痛いんですけど……」
僕は顔というか体中が地面に思いっきり突撃したらしい。地面が少しだけえぐれて僕を包み込んでいる。
そんな僕を見てケントニスがやれやれと首を何度か横に振った。
「やっぱり、ケン君相手だと、ここまで本気になる必要はなかったね」
「体が痛いんですけど!? というか、魔法が全く見れてないから、全くどういう魔法かも理解できなかったんですけど!? というか、あれだけ壮大な魔法の準備をしておいて結局ただ僕を痛めつける魔法なんですけど!?」
「ごめんごめん。まさかそうなるとは私も思わなかったから……」
深く反省しているのだろう。ケントニスの口調からは反省の色が見えた。どうやら今回は僕を痛めつけるつもりはなかったらしい。
彼女は申し訳なさそうに僕の手を軽く握り、「お詫びに、もう一つ面白い魔法をみせてあげるから許して……」と、そして僕の耳元で何かを囁いた。すると、彼女の体を包んでいた光が握られた手を通して僕に流れ込んでくる。
なんだか心地よい。そして痛みが少しずつ癒えてゆく。
「これは……回復魔法ですか!? リグダミスは使えないって言ってましたけど、こんなにすごいなら、ポーションなんて必要ないじゃないですか!?」
「痛みを感じないようにしただけだから……『言葉の魔法』でね」
ケントニスはさも知っていて当然だと言わんばかりにそう言った。だけど僕はまるで知らない。なんだろう『言葉の魔法』って。
ケントニスのその言葉を聞いて僕は震え上がる。
「……ケントニスさんの力は十分理解しているつもりです」
『じっせん』という言葉は、その後の文脈から考えるに文字としてはおそらく『実践』のほうを表すのだろうが、万が一にも『実戦』、つまるところ実際に戦ってみて理解させられるなんてことがないとは言い切れない。
出来ればケントニスとの実戦は避けたいところだ。今はまだ。日に何度も死にかけるのはごめんだ。
「大丈夫よ。この魔法は組手じゃなくても……見ているだけでも十二分に理解できると思うから」
身構える僕をよそに、ケントニスはそう言い切ると両手を脱力させて両目をゆっくりと閉じた。
雰囲気が変わった。それは今から何が行われるのかを理解していない僕にもわかる。
思えば、ケントニスは幾たびか魔法らしい魔法のような技を使っていた。どこからともなく椅子を取り出したり、いつの間にか懐に入り込んでいたり、物理法則を捻じ曲げるような動作を何度か行っていた。彼女の言う『全くの別もの』は、もしかするとそういう物なのかもしれない。僕はそれを期待した。
「す、すごい……」
目に見えるわけではないが、ケントニスの体に辺りの魔力が集まっているように感じる。いいや、実際はそんなことはありえない。魔力が溢れている場所でならありえるかもしれないが、この場所には僕たちが発した魔力のほかにはほとんど魔力が存在していない。だけど、今の彼女にはそう錯覚させるだけの威圧感があった。
心なしか空が曇り始めたような気さえする。
しかし、ケントニス本人にはまるで動きはない。まるで瞑想でもしているかのように静かだ。
「えっと、あのケントニスさん?」
あまりにも何の動きもないから僕は思わずケントニスに近づいて肩を二回ほど叩いた。
しかし、それでもケントニスからは何の反応も帰って来ない。
立ったまま目をつぶって脱力している幼女と、ただそれを見つめているだけの男。誰かに見られたらトンデモない勘違いをされそうだ。幸いなのは、この場所を通りかかる獣人は今まで一人もいなかったという事だが、それも単なる気休めにしかならない。
そんな風に誰かに見られた時用の言い訳を考えていると、ケントニスの目が突然見開いた。
「い、一体、どんな魔法なんですか?」
僕はあわてながらも意識が現実に戻ってきたであろうケントニスに訊ねる。
「待たせたわね。本当はここまでする必要はないんだけど、ケン君は初めての弟子だからちょっとだけ本気をみせて挙げようかなってね」
ケントニスは僕の質問には答えなかった。おそらく僕の質問に対する答えは、行動で返すということなのだろう。
しかし、異様だ。ケントニスの言葉遣いがいつもと違うというのは今さらなことだが、それ以上に気配がまるで違う。人間とか獣人とかを目の前にした時のそれとはどこか違う。ある種の神々しさすら感じる。僕はその気配をどこか別のところでで感じたことがあるような気がするが、ともかく目の前に立つ幼女から感じるそれは人とは遠くかけ離れた何かに変容してしまったのだと錯覚するほどに魂のレベルで何かが異様だ。これだけ言葉にしても、その異様さが僕の矮小な脳みそには理解できそうにもない。
僕はケントニスから感じる違和感の正体を探りながら、彼女の瞳に視線を合わせる。
「その目は、一体……?」
僕の脳が錯覚を起こしているのだろうか、たまにケントニスの目が青白く発光しているように見えた。まるで瞳から稲妻でも発生しているかのように何度もまばゆい光を放ち、それなのに魅入ってしまう程に美しい瞳だ。
よく見るとケントニスの体自体が薄明るく発光しているようにも見える。これも魔力の影響なのだろうか。
「この目に関しては、ごめんね私の口からは説明できないの……でもその代わりに、さっき言ってた魔法をみせてあげるね!」
「す、すごい……」
思わず感嘆の言葉が漏れた。
この状態のケントニスは、一体どれほどすごい魔法を使うのだろう。それを考えるだけで胸は張り裂けそうなぐらいに鼓動を早める。
氷の魔法、炎の魔法、果ては光とか闇の魔法を使ったりするのだろうか、ファンタジックな世界ではあったが、いまだに魔法らしい魔法が存在していることを誰の口からもきいてない。望んで転生したわけじゃないと言っても、僕も男だ。もちろん魔法が使えるなら使いたいに決まっているし、そんな子供じみた妄想に身を焦がすぐらいには愚かだ。
「――座れ!」
ものすごく威圧感のあるケントニスの言葉が僕の耳に入る。
その瞬間、激痛と共に世界が低くなった。あまりにも突然のこと過ぎて意味が分からなかったが、少しだけ時間が経過して冷静さを取り戻して気が付いた。
「体が勝手に……と言うか体中が痛いんですけど……」
僕は顔というか体中が地面に思いっきり突撃したらしい。地面が少しだけえぐれて僕を包み込んでいる。
そんな僕を見てケントニスがやれやれと首を何度か横に振った。
「やっぱり、ケン君相手だと、ここまで本気になる必要はなかったね」
「体が痛いんですけど!? というか、魔法が全く見れてないから、全くどういう魔法かも理解できなかったんですけど!? というか、あれだけ壮大な魔法の準備をしておいて結局ただ僕を痛めつける魔法なんですけど!?」
「ごめんごめん。まさかそうなるとは私も思わなかったから……」
深く反省しているのだろう。ケントニスの口調からは反省の色が見えた。どうやら今回は僕を痛めつけるつもりはなかったらしい。
彼女は申し訳なさそうに僕の手を軽く握り、「お詫びに、もう一つ面白い魔法をみせてあげるから許して……」と、そして僕の耳元で何かを囁いた。すると、彼女の体を包んでいた光が握られた手を通して僕に流れ込んでくる。
なんだか心地よい。そして痛みが少しずつ癒えてゆく。
「これは……回復魔法ですか!? リグダミスは使えないって言ってましたけど、こんなにすごいなら、ポーションなんて必要ないじゃないですか!?」
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