150 / 170
11 魔法の言葉
148 言霊
しおりを挟む
「ケン君は言霊って信じる?」
ケントニスの唐突な問いかけに僕は少しだけ動揺しながらも、少しだけ考え込んで今の自分の状況を思い出す。
「考えても見れば、この状況じゃ考える間もなく信じるしかないじゃないですか!」
今まさに、言霊――『言葉の魔法』とやらで、体がケントニスの言葉通りに動いたばかりだ。
生まれてこのかた、言霊って言葉を知らなかった人間だとしても信じてしまうに決まっている。どれだけ否定しようとも現実に起きてしまったのだから。
「それもそうね。魔法をかける前に聞いておくべきことだったわ……」
ケントニスの口調はついうっかりといった風ではあるが、その表情と今まで表情を鑑みるに全くそうは思っていないらしい。
何がなんだかわけがわからない。
「それで、その言霊がどうしたんですか?」
「言葉の魔法って言うのは、簡単に言えば、術者の願いなのよ」
「願い……ですか?」
強く念じれば願いが叶うとでも言うのだろうか。それだけで願いが叶うなら、この世界はもっと優しい世界になっていることだろう。差別なんて生まれるはずもない。
たぶんもっと別の意味なのだろう。
「もちろん、口にした言葉がすべて実現するなんて都合のいいものじゃないわよ。そんな神のごとき力は獣人には使えないからね」
僕の心を読むように、ケントニスは否定した。
まあわかってはいたし、そんな力が実在したとしてもそれは生きる上では足かせにしかならない。強すぎる力というのは、いつの時代も妬みの対象になり、最終的には災いとして自身の身に降りかかることになる。それが前世で得た教訓の一つだ。
「じゃあ、どんな魔法なんですか?」
自分で言うのもなんだが、質問ばっかりだな。少しは自分で考えるべきなんだろうけど、正直なところケントニスの授業は今まで全く知らなかったことばかりで、僕の思考が入る余地はまるでない。
しかし、ケントニスは僕に「まずは自分で考えてみて」と言う。
僕は矮小な脳みそをフル稼働させる。
だけど全く分からない。そもそも、魔力は体外に出るとコントロールを失ってしまうはずだ。頑張って魔力を集めることぐらいは出来たとしても、相手の体を自由自在に操れるほどにまでコントロールできるはずがない。だとすると、魔力は関係なく『言葉』に何かしらの力が宿っているのだろうか……言霊みたいに、言葉自体に何かしらの力gあるのかもしれない。でも、もしそうだとしてもその正体はわからないし、そもそもそれを証明することも出来そうにない。
完全に僕の知識不足だ。
「わかりません」
降参だ。
もしも、言葉が武器になるというのであれば、僕のもつ恩恵でその使い方がわかるはずだが、そうでないという事は言葉そのものは武器になり得ないという事だ。
知識さえあれば理解できたかもしれないが、案外すべての武器が使える恩恵というのも役に立たたない。
そんな僕を馬鹿にするでもなく、ケントニスは「まあ、仕方ないわね……」とつぶやいて、そして続けて話した。
「説明書があっても実力や知識がないと使えないの。知識も武器なのよ。武器は使いこなせないと意味ないわよね……」
「ごもっともです」
自分が情けない。
なんてしょぼくれている僕を慰めるようにケントニスは僕の肩を二回軽く叩いた。
「だから仕方ないことなんだって、知らないことを理解することなんて誰にも出来ないんだから。だから知っていることをよく思い出して考えてみて」
そう言われて僕は再び思案する。
ケントニスは『言霊』という言葉を口にした。だけど、それと同時に『口にした言葉のすべてが実現するなんて都合のいいものじゃない』とも口にした。それなのに、僕の体は彼女の言葉通りに動いた……いや、言葉通りに動いたっけか? いいや、違う。彼女は確か僕に対して『座れ』と言った。それなのに、僕の体は地面にめり込んだ。つまり、言葉通りに作動しなかったという事だ。
つまり……どういうことだ。意味が分からな過ぎて頭が混乱してきた。だけど、いや待てよ。
「言葉の魔法が、口にした言葉が実現するなんて一度も口にしていませんでしたね……」
「そうね。私は『術者の願い』としか言ってないわ」
ケントニスはやっと気が付いたかとにっこりと笑った。
確かに彼女は、言葉の魔法が対象者の動きを言葉によって操るものだなんて一言も口にしていない。僕が勝手にそう言うものだと勘違いしただけだ。
「魔力に対する言葉……魔力に命令を出していたってことですか?」
まるで大学で講義を受けているかのような気分だ。
完全な答えなど存在しない質問に答えるかのような緊張感がある。
しっかりとこちらを見据えるケントニスの瞳に、僕の体中から汗が噴き出すかのような錯覚を引き起こす。
「それじゃあ、『言霊』をうまく活用できてないわね。その答えじゃ合格点は上げられないわね」と、ケントニスは厳しい言葉を口にするが、その表情はいつになくやわらかだった。
ケントニスの唐突な問いかけに僕は少しだけ動揺しながらも、少しだけ考え込んで今の自分の状況を思い出す。
「考えても見れば、この状況じゃ考える間もなく信じるしかないじゃないですか!」
今まさに、言霊――『言葉の魔法』とやらで、体がケントニスの言葉通りに動いたばかりだ。
生まれてこのかた、言霊って言葉を知らなかった人間だとしても信じてしまうに決まっている。どれだけ否定しようとも現実に起きてしまったのだから。
「それもそうね。魔法をかける前に聞いておくべきことだったわ……」
ケントニスの口調はついうっかりといった風ではあるが、その表情と今まで表情を鑑みるに全くそうは思っていないらしい。
何がなんだかわけがわからない。
「それで、その言霊がどうしたんですか?」
「言葉の魔法って言うのは、簡単に言えば、術者の願いなのよ」
「願い……ですか?」
強く念じれば願いが叶うとでも言うのだろうか。それだけで願いが叶うなら、この世界はもっと優しい世界になっていることだろう。差別なんて生まれるはずもない。
たぶんもっと別の意味なのだろう。
「もちろん、口にした言葉がすべて実現するなんて都合のいいものじゃないわよ。そんな神のごとき力は獣人には使えないからね」
僕の心を読むように、ケントニスは否定した。
まあわかってはいたし、そんな力が実在したとしてもそれは生きる上では足かせにしかならない。強すぎる力というのは、いつの時代も妬みの対象になり、最終的には災いとして自身の身に降りかかることになる。それが前世で得た教訓の一つだ。
「じゃあ、どんな魔法なんですか?」
自分で言うのもなんだが、質問ばっかりだな。少しは自分で考えるべきなんだろうけど、正直なところケントニスの授業は今まで全く知らなかったことばかりで、僕の思考が入る余地はまるでない。
しかし、ケントニスは僕に「まずは自分で考えてみて」と言う。
僕は矮小な脳みそをフル稼働させる。
だけど全く分からない。そもそも、魔力は体外に出るとコントロールを失ってしまうはずだ。頑張って魔力を集めることぐらいは出来たとしても、相手の体を自由自在に操れるほどにまでコントロールできるはずがない。だとすると、魔力は関係なく『言葉』に何かしらの力が宿っているのだろうか……言霊みたいに、言葉自体に何かしらの力gあるのかもしれない。でも、もしそうだとしてもその正体はわからないし、そもそもそれを証明することも出来そうにない。
完全に僕の知識不足だ。
「わかりません」
降参だ。
もしも、言葉が武器になるというのであれば、僕のもつ恩恵でその使い方がわかるはずだが、そうでないという事は言葉そのものは武器になり得ないという事だ。
知識さえあれば理解できたかもしれないが、案外すべての武器が使える恩恵というのも役に立たたない。
そんな僕を馬鹿にするでもなく、ケントニスは「まあ、仕方ないわね……」とつぶやいて、そして続けて話した。
「説明書があっても実力や知識がないと使えないの。知識も武器なのよ。武器は使いこなせないと意味ないわよね……」
「ごもっともです」
自分が情けない。
なんてしょぼくれている僕を慰めるようにケントニスは僕の肩を二回軽く叩いた。
「だから仕方ないことなんだって、知らないことを理解することなんて誰にも出来ないんだから。だから知っていることをよく思い出して考えてみて」
そう言われて僕は再び思案する。
ケントニスは『言霊』という言葉を口にした。だけど、それと同時に『口にした言葉のすべてが実現するなんて都合のいいものじゃない』とも口にした。それなのに、僕の体は彼女の言葉通りに動いた……いや、言葉通りに動いたっけか? いいや、違う。彼女は確か僕に対して『座れ』と言った。それなのに、僕の体は地面にめり込んだ。つまり、言葉通りに作動しなかったという事だ。
つまり……どういうことだ。意味が分からな過ぎて頭が混乱してきた。だけど、いや待てよ。
「言葉の魔法が、口にした言葉が実現するなんて一度も口にしていませんでしたね……」
「そうね。私は『術者の願い』としか言ってないわ」
ケントニスはやっと気が付いたかとにっこりと笑った。
確かに彼女は、言葉の魔法が対象者の動きを言葉によって操るものだなんて一言も口にしていない。僕が勝手にそう言うものだと勘違いしただけだ。
「魔力に対する言葉……魔力に命令を出していたってことですか?」
まるで大学で講義を受けているかのような気分だ。
完全な答えなど存在しない質問に答えるかのような緊張感がある。
しっかりとこちらを見据えるケントニスの瞳に、僕の体中から汗が噴き出すかのような錯覚を引き起こす。
「それじゃあ、『言霊』をうまく活用できてないわね。その答えじゃ合格点は上げられないわね」と、ケントニスは厳しい言葉を口にするが、その表情はいつになくやわらかだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~
Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。
それでも、組織の理不尽には勝てなかった。
——そして、使い潰されて死んだ。
目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。
強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、
因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。
武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。
だが、邪魔する上司も腐った組織もない。
今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。
石炭と化学による国力強化。
情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。
準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。
これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、
「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、
滅びの未来を書き換えようとする建国譚。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります
はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。
「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」
そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。
これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕!
毎日二話更新できるよう頑張ります!
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
1歳児天使の異世界生活!
春爛漫
ファンタジー
夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。
※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる